プレイしていたVRカードゲームの世界にTS転生したらしい ~カードゲーマーは異世界でもカードから離れられない~ 作:黒点大くん
巨大な翼竜が窓から首を出してカードハンターを咥えた。
「助けに来たぞ。この生まれた時から双子の姉に適わぬ出涸らし野郎が」
翼竜の首が引っ込んで、翼竜の全身がよく見えるようになった。上に全身黒い服装の不審者がいた。あの時のアイツか。こんな所にいたのか。
ここであったが百年目だ。
「おい。アジ・ダハーカ返せ」
「いまはそんなことは重要じゃない。そんなにアジが欲しけりゃくれてやる」
黒い不審者にたい焼きを投げ渡された。どういうことか分からねえがバカにされてることは分かる。
コケにしやがって。ぜってえ許さねえ。
「ムキーー」
「たい焼きでも齧ってろ」
不審者は高く飛んで消えた。ムカつく奴だったぜ。早くアジ・ダハーカ取り返さなきゃな。
まあ色々なことがありつつもリルテックシティーに着いた。
「防壁のない街だなんて珍しいですわね」
「不用心な街よねー」
ラーナちゃんとお嬢様は地図を開いて互いに見る。
動きが止まった。
「パニックを招くといけないのでここで降りましょう」
着替えてから元着ていた服を上に着て、小高い山の麓で降りた。全員降りてからキャラメルキャメルをカードに戻す。
小高い山を登る。
「早くしなさいよー」
「待ってください。お願いのなので、ドンドン先行かないでください」
子供は元気だなぁ。ドレスでこの悪路を走れるなんて健脚すぎる。
それに引き替え俺は体力が尽きかけて、その辺の木の棒拾って杖にしてる。
「ゼェハァ。オェ。キッツ。体力が尽きかけだ。体力落ちたかな」
懐に入れてたたい焼きの中身を啜る。
「体力がないですのね」
こんなんだったらムキムキマッチョマンにキャラクリエイトするんだったぜ。後悔後に立たず。
小高い山の頂上まで杖を尽きながら歩くと街が見えた。
「死にかけなんだけど大丈夫なの?」
「先生殿大丈夫ですか?」
「そんな大げさに心配するんならもっと早く心配してくれよ。まあでも心配してくれてありがとう。かろうじて生きてる」
全くもう。
また歩いて街の近くで杖を捨ててから、街に入った。
「なんか変な街だな」
街自体はカラフルで住民は陽気で太陽もカンカン照りなのに、なんかどことなく雰囲気が陰鬱な感じがする。
なんか変なんだよね
「明るい街じゃないですか。先生殿の気のせいだと思いますよ」
「そうですわ。いきなり変と言うのは失礼ですの」
「アハハ。すみません」
まあクレーマーみたいな言動だったからなぁ。
会場までの地図に描かれていた道の裏路地を行くことにする。
「ヒャッハァ。金目のものを置いてけぇ」
上からガラの悪い男たちが落ちてきた。
ラーナちゃんとお嬢様はデッキを構える。
「げ」
男たちはバツが悪そうに道を開けた。
「失礼しやした」
カードがどれだけ強力なもんか分からねえが、それほど恐ろしいものなのか。
会場に着くとボロ屋敷があった。
「このボロ屋敷から蜂蜜のように濃密な陰鬱なオーラが流れ込んでる気がする」
「幽霊屋敷だそうですわ」
幽霊だと。俺昆虫と怖いの苦手なんだよなぁ。メタルアヤカシがお化けをモチーフにしてるのに怖くないのは絵のタッチがかわいいからだと思うんだよね。
アメラの後ろに隠れた。
「幽霊屋敷は勘弁してくれ。参加したくねえ」
「まあ毎年会場は違いますので、幽霊屋敷が選ばれたんでしょうね」
運が悪いぜ。
アメラさんに無理やり押し出された。
「デッキ持ってないと入れないんですよね」
「そんな無慈悲な〜」
お嬢様と一緒に受付で参加申請をする。
魔法を選んでから受付の人からデッキを渡された。
「デッキをお出しください」
持ってるデッキを二つとも出す。
「デッキロック。これで大会中これらのデッキは使用できなくなります。それではデッキを受け取りくださいませ。
紙とペンをもらって代筆してもらう。この世界の文字分からねえからなあ。
事前にデッキに入れる三種類の魔法を選び、受付の人は微笑む。
「誰に賭けるか決めましたか?」
「賭けませんわ」
ここ賭けごともあるのか。
「さようですか。私から見て左の方にある仮設控え室で待機してくださいね」
左の方に行った。
控え室には人がたくさんいた。
「ヨシ」
ラーナちゃんとお嬢様はドレスを脱いで、例の格好になる。
「ええい」
服を脱いで例の格好になった。
腕に目がやたら大きい六本脚の生物が引っ付く。ミルオクルパラサイトってカードのイラストに似てる生物なんだけど。
「なにこれ」
「ミルオクルパラサイトですわ。不正防止の為のモンスターらしいですわね。まあ詳しいことは分かりませんわ」
ミルオクルパラサイトはパラサイトの中じゃ一番素のステータスが高いんだよなぁと。
オウムが現れて俺の右肩に止まる。
「それは映像を記録して送るカメラオウムというモンスターですの」
そういやそんなモンスターもいたな。
控え室の出入口に大きな穴が空く。
「我々はテレポートゲートを使用した。これで会場の方に転移させる。中は広いから大丈夫だぞ。最後まで生き残った奴が優勝者だ。それでは開始」
続々と穴に入っていった。
穴に入ると本棚のある埃っぽい部屋にいた。
「けほっけほっえふん」
早いところこんな埃っぽい所から出たいな。
とりあえずコストを貯めてっと。
「この中に捕まえられそうなモンスターがいねえ」
本のモンスターはいるけどコストが足りねえ。