プレイしていたVRカードゲームの世界にTS転生したらしい ~カードゲーマーは異世界でもカードから離れられない~ 作:黒点大くん
順調にモンスターを封印できていますの。
「序盤でこれだけ手数が揃えば完璧ですわね」
今いるのはコスト2の空飛ぶ花瓶とコスト3のシーツのおばけですわね。
このお屋敷少し広いのでなかなか他の方々が見つかりませんわね。
「見つかりにくいですわね」
鎧がやたらと並んでいる廊下を歩きましたの。昔からこういう形式の廊下ってあるんですのね。
「鎧が一つだけ消えているのが不自然ですわね」
元からないとすれば不自然ですわね。
鎧が動きましたわ。
「モンスターですわね」
鎧の首が取れましたの。デュラハンでしたのね。
鎧の剣が花瓶に当たりましたわ。それでも花瓶にひびは入っていませんの。
「心臓に悪いですわねー」
こう見えて鉄板よりも硬いのですが、見た目が花瓶なので過敏な反応もやむなしですわね。
鎧の脚を引っ掛けて転ばせましたわ。
「ラーナちゃんが良くやっていた奴ですの。役に立ちましたわね」
鎧の目をくらませるために近くの部屋のドアを開けて部屋に入りましたの。
この部屋埃がひどいですわね。
「けほっけほっ。掃除を怠っていましたのね」
左腕で口を塞ぎましたの。
部屋の中には書類がたくさんありましたわ。そして部屋の中央に乱雑に紙の上に置かれた羽ペンと埃を被った乾いたインク瓶がありましたの。
「まるで仕事中にいきなり消えたかのような感じですわね」
そんな危険な場所に仮設控え室を建てていろいろと問題があるような気がしますの。
外から鎧の歩く音も聞こえなくなりましたので、そろそろ出た方がいいですわね。
「開きませんわ」
ドアノブを押しても引いても扉は少しも動きませんの。
「まさか幽霊モンスターに閉じ込められましたの!?」
うかつでしたわね。窓があれば窓から出ることも出来たのでしょうが、窓もありませんからね。まあ危ないので窓があっても飛び降りませんの。
空飛ぶ花瓶とシーツのおばけに扉を攻撃させましたが、ビクともしませんでしたわ。
「ありえないほど硬くなっていますわね」
シーツのおばけが壁にぶつかって大きな音を立てましたの。
幽霊モンスターはカードに閉じ込めなければ未練を解消させて成仏できると言いますし、ちゃんと出られるかどうか謎を解かないとダメなのでしょうか。
「だとすればこの机に何かヒントがあると思われます」
机のイスの方に回って引き出しを開けましたの。
埃をかぶってところどころ文字が消えているカードがありましたの。
「なんですのこれ」
埃を落としましたわ。
ミセ…ゴー? コストは5ですわね。
「カードの絵からドレスが浮いているモンスターだと伺えるので……おそらくミセスゴーストですわね」
ミセスゴーストは幽霊モンスターですわね。
「事前にこういうカードを取り除いてくれないと不正が出来てしまいますわよ」
カードを机の上に置きましたの。
コストカードのカードが回復しましたの。
「ドローしてから貯めますわ」
さてどうしますかね。
ミセスゴーストのカードの絵に描かれているようなモンスターが現れて、野生のモンスターのように奥行きのある見た目になりましたわ。
「こんにちは。私はミセスゴーストと言いますわ。貴女の名前は?」
「私はサツターバ・ピンハネルが娘カネスキ・ピンハネルですわ」
「よろしくね。無理やりドアを壊そうとするなんて野蛮ですわ」
気品の感じられるモンスターですわ。
モンスターになる前はこのお屋敷の偉い人だったと思いますわね。
「この部屋はわたくしをどうにかしない限り出られない部屋ですわ。ちなみに生前は夫の仕事部屋でしたの」
「そういうことですのね」
このモンスターなんだか私と似た雰囲気がしますの。
ミセスゴーストがふわふわと浮いた。
「今日はなぜこんなにも我が家が騒がしいのかしら」
「この家が第39回フィールドファイト大会の会場だからですわ」
「もう第39回になりましたのね。我が家があのモンスターに襲われる前は第11回でしたのに」
およそ30年くらい前の出来事ですのね。
ミセスゴーストの帽子が私を見ましたわ。
「フィールドファイト大会は優勝者がみんなそういった破廉恥な恰好を……」
「ゲン担ぎですわ」
「そうですのね。返事が食い気味ですわ」
恰好としてはハレンチなのは認めざるを得ませんが、ゲン担ぎは大事ですので。
ミセスゴーストと談笑していましたら、ターンが1ターンほど過ぎていましたの。
「ドローして貯めてますわ」
「あなたが実力のあるカード使いとして見込んで話がありますわ」
「なんですの?」
「我が家を襲ったあのモンスターは図々しくも我が家に居座っています。どうかあのモンスターを捕まえてください」
ではこの会場は実は危険なのでは。
そのモンスターの名前を聞く必要がありそうですわね。
「そのモンスターは何という名前ですの?」
「辻斬りサキュバスと名乗っていましたわね。曲がった剣で切り裂いて死体ごと生気を吸い取る恐ろしいモンスターですの。夫が最初のターゲットになりましたわ。そのモンスターを倒すために力を貸しますわ。死してモンスターとなり、カードに閉じ込められたふりをした日々が報われましたの」
その辻斬りサキュバスって危険なモンスターでは。
ブランクを掲げてミセスゴーストを閉じ込めると、埃をかぶっていたカードが消えましたの。
「頑張ってくださいまし」
「はい」
扉を開けましたわ。