プレイしていたVRカードゲームの世界にTS転生したらしい ~カードゲーマーは異世界でもカードから離れられない~ 作:黒点大くん
そのとき頭の中に一つの考えが浮かんだ。
「その方法があったか」
聞こえないようにつぶやいた。
俺は飛び降りてきた人を無視して、鉄の刃のいる階段を駆け上がった。
「おい。逃げんな」
「俺がそいつにライフ減らされたのに突っ込むとかおかしいだろお前」
俺には俺のやり方があるんでい。
鉄の刃が俺に向かって落ちてきた。
「ふん」
ジャンプしてギリギリで避ける。
「いてて。そこで一生争ってろ」
階段を勢いよく上がって近くの部屋に入ってドアを閉める。
部屋の中には三度笠を被り、植物の枝を咥えて、日本刀を持った輩がいた。この部屋だけ埃がないな。
「ヌーブ以外は使用できなかったはずなんだが」
刀を持ってるなんてそれは完全に侍の特徴だ。
ドアノブを指でなぞっても埃が付かなかった。
「何でこの部屋だけ埃がないんだ」
「すみ着くにはある程度綺麗な部屋でないと嫌でござる」
声からして女性だな。侍系女子って奴か。
三度笠を投げつけられる。三度笠の下には美しい顔と頭に生えた角が隠れていたことが分かった。
「拙者は辻斬りサキュバスでござる。お主を斬ることにするでござる。妖刀魅魔の錆となれでござる」
刀を持った奴は服をはだけさせて北半球を露出させる。かろうじてチクチラしてないな。
……はわわ。見ちゃいけない奴だよお。
「これをするとたいていの輩は目を塞いで隙を作るでござる。拙者これを色気の盾崩しと呼ぶでござる」
刀が凄い速さで右から襲い掛かってくる。
しゃがんでギリギリで避けた。
「格好も考え方もいやらしい奴だ。辻斬りサキュバスなんてモンスターご存知じゃなかったが、これだけは分かったよ」
辻斬りサキュバスの肌が紫色になる。
辻斬りサキュバスの背中にコウモリのような翼が生えた。
「今のお主の格好よりいやらしい恰好があったのでござるか」
「うるせえやい。俺だってしたくてこんな格好してるわけじゃねえ」
壁とドアが切れていたので、そこから逃げる。
あいつは本格的にマズいやつだ。
「とりあえず逃げて体制を整えるしかねえ」
適当に他の部屋のドアを開けて入った。
天蓋付きのベッドがある部屋だ。なんかお姫様がこの部屋で寝てそう。ここも埃っぽくないな。
「なんでここも埃っぽくないんだろ。あんがい真面目に掃除をする奴なのか?」
いや違うな。だとしたら埃のある場所があるわけない。
壁が切れる音がした。
「拙者は妖刀魅魔で斬ることで回復も出来るが、それでもたまに直接食らってみたくなるでござる。ここはそういう時に使う部屋でござるよ。ちなみに元はここの住人の子供の部屋だったそうでござる」
「ああそうかよ。このゲスが」
「モンスターの住処に家を建ててそのモンスターの力を独占したこの屋敷の一族よりははるかにましでござろう」
コストゾーンのカードが回復したのでコストを貯めた。
ブランクを掲げても何も起こらなかった。
「拙者を従えるにはコストが7必要でござる」
「ご丁寧に忠告ありがとな」
後ろから辻斬りサキュバスが切りかかってくる。
俺はそれをよけて部屋の外に出た。
「こいつをあいつらにぶつけるってのも手だな」
階段まで急いだ。
辻斬りサキュバスは俺を恨めしそうに見つめる。
「貴様。拙者がそのモンスター……ギロチンフェイスデビルを嫌っていると知っていてそうするでござるか」
「何で苦手なの?」
「理由は単純でござる。拙者の攻撃があまり通じぬし、拙者の体の防御が薄いのを知っていて切ろうとするからな」
なるほど。防御が薄いのか。
ならすることは一つ。
「ブンコバットで辻斬りサキュバスに攻撃」
辻斬りサキュバスはブンコバットの攻撃を受けて紫色の体液を出した。防御力は二未満かな。
辻斬りサキュバスは居合い抜きをする。
「肉を切らせて完膚なきまで骨を断つ」
辻斬りサキュバスはブンコバットを刀で斬って、ブンコバットを消した。一撃かよ。こっわ。
辻斬りサキュバスは刀を鞘に納めた。
「なんでやめちゃうんだ?」
「いやなに」
辻斬りサキュバスは谷間からコンパクトを出す。はわわ。
こんなところでお色直しかな?
「くらえ」
風船を破裂させたような音が聞こえたと思ったら、小さな鉄の板が飛んできた。
俺の左腕に鉄の板が刺さって、生命力が残り1になった。これは手裏剣か。
「ということはコスト7で防御力0攻撃力7か。攻撃力に特化しすぎだろ」
手裏剣が消えた。あと一撃受けたら終わりだ。
コストゾーンのカードが回復した。使えるコストは6。コイツを捕まえることは……出来ない。
「階段の下の悪魔のコストは6。速くあやつを従えて、拙者の前から消すでござる。お主にはもはやそれくらいしかさせぬでござる」
俺を道具としか見ていない。
……しかしながら道具として扱われないと負けるしか無いので、今は従うしかあるまい。従わなきゃ切られるからな。
「しょうがねえな」
階段の踊り場まで行った。
鉄の刃が浮いていた。
「てめえか。今ぶっ倒してやるよ。まずはかるくバーンアロー」
「げ」
飛び降りてきた人から火の付いた矢が放たれた。
火の矢は鉄の刃に当たった。
「運が良かったぜ。このノーコン野郎がよ」
ギロチンフェイスデビルをカードに閉じ込める。
後は逃げるのみ。
「あっちの健康体二人から切った方がいいと思うぜ」
「確かにそうでござるな」
辻斬りサキュバスは俺を飛び越えて、あの二人に襲いかかった。