プレイしていたVRカードゲームの世界にTS転生したらしい ~カードゲーマーは異世界でもカードから離れられない~   作:黒点大くん

22 / 160
二十二枚目 二人のターゲット

 部屋にあるクローゼットの中で休みを取っていた。ちなみに事前にクローゼットがモンスターでないことは確認済みである。このボロ屋敷の中じゃ何がモンスターでもおかしくはない。ちなみに二回ほどコストゾーンにカードを貯めたからニ十分は経っているだろう。

「まさかギロチンフェイスデビルに生物を見分ける本能があったとはな」

 まあ舌に乗ったものを何でも食べたら毒も摂取してしまうかもしれないし、そういうのは必要だよなあ。

「しかもギロチンフェイスデビルには姿を消す本能もあるから、このクローゼットを開けられない限り無事ってことだ」

 逆に言えば開けられてギロチンフェイスデビルを突破されたら死ぬんだけどな。

 

 扉を見つめていると骸骨が現れた。

「ギャアアアアア」

 もらしていないのは水をあまり摂取していないおかげだと思う。気絶していないのはギロチンフェイスデビルがいて一回までは安心だからだと思う。

「おばばばばば、おばけ」

 スケルトンっていうモンスターのイラストに似てるな。もしかしてこいつがそうなのか?

 

 クローゼットを開ける。

「いけぇ。ギロチンフェイスデビル」

 ギロチンフェイスデビルが現れて、スケルトンを嚙み消した。

「膀胱と心臓に悪いモンスターだぜ」

 心臓がすっげえ音立ててる。

 

 偶然通りかかったスケルトンにしてはタイミングが良すぎるではないか。

「恐怖を抑えられずに飛び込むとは甘ちゃんでござるよ。お嬢さん」

「げっ」

 辻斬りサキュバスがいた。

 

 ギロチンフェイスの刃でギリギリ防がれたが、最低でももう二回この攻撃が来たらヤバいぞ。

「あの二人と違って粘るでござるねえ。くたばりぞこないでござるなあ。あっさり切られるでござるよ」

「やーだね。誰がお前に倒されてやるもんか」

「あと二回で倒しきってやるでござる。そこに正座するでござるよ」

 導火線の短い奴だ。

 

 でもこのままじゃ打つ手がないんだよなあ。

「ギロチンフェイスデビルなんとかしろ」

 ギロチンフェイスデビルは一対の黒い珠を露骨に俺から遠ざけた。対処方法がないってことか。

 

 ドアが開いた。

「あなたは辻斬りサキュバスですわね」

「お嬢様声変わりました?」

「私はまだ一言ももうしておりませんわ。もうしましたのはこのミセスゴーストですの」

 お嬢様は浮いている服を指さした。

 

 剣豪サキュバスは謎そうな顔をする。

「お前はお化けが苦手なのでござろう。先ほどスケルトンを投げてよくわかったでござるよ。しかしなぜこれには怖がらぬのでござるか?」

「服が浮いてるだけだからな」

「話が脱線していますわ。辻斬りサキュバス、旦那様の仇を取らせていただきますわ」

「この世界じゃ野良モンスターにどうにかされる方が悪いんでござるよ」

 このサキュバス最低な奴だ。

 

 ドレスの近くに長手袋が現れて、辻斬りサキュバスを殴った。

「痛いでござるねえ。まずはもう一回この妖刀魅魔で斬るでござるよ」

「やってみなさい」

 辻斬りサキュバスは手裏剣を投げてドレスに突き刺す。

 

 手裏剣が消えたころにドアが開いた。

「偶然じゃない」

 ドアを開けたのはラーナちゃんだった。ラーナちゃんのそばにはコートを着た透明人間がいる。

「旦那様」

 ドレスと透明人間は抱き合った。

「モンスターであるがゆえに生前の名前が思い出せないのがつらい」

 生前ってことは透明人間じゃなくて幽霊ってことか。

 

 辻斬りサキュバスめ。許せない奴だな。

「「家族の仇を取るための戦い」ですわ」

「妻が捕まって嫌そうな顔をしていないということは、はしたない恰好はともかく人格者だな。恰好はともかく立ち姿が上品だ」

「私はピンハネル伯爵が娘 カネスキ・ピンハネルですわよ。礼儀作法は叩き込まれていますの」

 名乗りからして気品を感じる。

 

 透明人間はドレスから離れた。

「吾輩はバロンゴーストと申します。これより貴方様に仕えましょう。共に剣豪サキュバスを倒しましょう。カードを掲げてくださいませ」

 男爵幽霊とは大層な名前の幽霊だなあ。

「あなた。辻斬りサキュバスですわよ」

 ピンハネルがカードを掲げるとバロンゴーストが幽霊の隣に移動した。

「そうだったか。すみませぬな」

「私の時と対応がまるで違うじゃないのよー」

 ラーナちゃんはほっぺたを膨らませて、露骨に機嫌を悪くした。

 

 辻斬りサキュバスは刀を揺らしてカチャカチャ鳴らす。

「茶番はもうよいでござるか」

「ああ。ここで終われ」

 バロンゴーストは杖を辻斬りサキュバスの右のわき腹に叩きつける。

 

 辻斬りサキュバスは右のわき腹を抑えた。

「ミセスゴーストで攻撃ですわ」

 辻斬りサキュバスは足取りがおぼついていない。

 

 ラーナちゃんはお嬢様を見た。

「いる?」

「要りませんわ。己と家族の仇と手を取り合って戦えだなんて残酷ですわ」

 それそうよ。

 

 ラーナちゃんは俺をちらりと見る。その上目遣いはとてもズルイ。かわいさをナーフしろ。やっぱするな。

「俺はギロチンフェイスデビルがいるからいい」

 そもそもコイツの性格が気に食わない。ラーナちゃんがモンスターを持ってないからラーナちゃんが持つのが一番いい。

 

 ラーナちゃんはブランクを見る。

「封印よ」

 ラーナちゃんがブランクを掲げると辻斬りサキュバスがラーナちゃんに近づく。

「今後とも頼むでござる。この大会の後も、従うでござるよ」

 捕まえたカードは持ち帰れたりするのか。便利だ。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。