プレイしていたVRカードゲームの世界にTS転生したらしい ~カードゲーマーは異世界でもカードから離れられない~ 作:黒点大くん
あのあとラーナちゃんやお嬢様と別れた後に、敗退した。生命力1だと死にやすいのだ。
「まさか隣の部屋に選手がいるとは思わなかった。あのスケルトンが伏線だったとはね」
観客席に行く。観客席はボロ屋敷から少し遠い野外ホールの様なところだった。
負けたあとすぐ受付まで転移してミルオクルパラサイトとコウモリを外されて魔法カードで体をきれいにされてデッキを返された。そのあと、観客席まで空飛ぶじゅうたんに運ばれたのだ。
「百人中八十八位ですなんて言われたときは驚いたけどなぁ。まあ初めて七日の初心者ボーイだからね。そこまでやれれば上等だ」
一番の収穫はギロチンフェイスデビルを手に入れた事だな。効果がトリッキーで、ステータスがちょい高めとか言う理想のカードだぞ。
観客席で見ていたアメラの隣まで行った。
「負けちゃいました」
「まあ先生殿は運が無いうえに初心者ですからねえ。よくあそこまで生き残れましたね」
生徒が残ってるのに、先生は負けてるなんて少し不甲斐ない。
まあ生徒の活躍でも見物することにしますよ。
「強そうな奴らがたくさんいるなぁ」
空中に映像がたくさん浮かんでいる。これで同時に見ることが出きるのか。便利だなあ。
ん? マイスさんみたいな人がいるぞ。白い半袖Tシャツに半ズボンという普段の鎧を着込んだマイスさんからは想像できない格好もしてるし口元も赤い布で隠れてるけどあれは絶対マイスさんだ。
俺は指を指した。
「あそこにいるのマイスさんじゃないですか?」
「きっと似てるだけの別人ですよ。双子とかそういう話も聞いたことがないですからね。それに口元が隠れてるからなんとも言えないじゃないですか。それに今頃フラム伯爵家で仕事をしているはずですよ」
「それもそうですね」
気のせいだったのかな。
……アメラの言う通り気のせいだったってことかな。
「まあむさくるしい男よりもお嬢様の活躍を見ましょうね」
「そうですね」
スタッフさんが持ってきた水の入った紙コップ(無料)をちびちび飲む。食事には困ってないけど給料がまだ入ってねえから惨めだ。すげーかねほしー。のどからてがでるほどほしー。
お、ラーナちゃんがもう一匹捕まえたぞ。兜を被り盾と剣を持ったスケルトンだった。
「ギャ……」
「静かにしてください」
アメラに口を塞がれなかったら叫び声を出していたところだった。危ない危ない。
他の人達に見られている。
「あっすいません」
心を落ち着けた。ここからはコソコソ話すことにする。
「あれは……スケルトンソルジャーだな。映像越しで見ればかろうじて平気だな」
だって漏らしてねーし。
でも見てられねーからお嬢様の方を見ておく。応援できなくてすまんな。
「お嬢様がピンチです。参加できたら今すぐ助けられたのに……」
ということは参加条件とかあるのかな?
後でそれとなく聞き出してみよ。
「そんな過保護なこと言ってたらお嬢様の成長の妨げになりますよ」
「そういうものですかね」
「そういうものですよ」
水を配るスタッフさんが近づいて来たので、急いで水を飲み干しておかわりをもらう。
今は特に動きもないから聞き出してみるか。
「この大会って参加条件とかあるんですかね」
「カードを数十枚以上使える人だけが参加できます」
「なるほど」
マイスさん五枚しか使えないって言ってたしあの赤い布の男がマイスさんじゃないってことは余計強調されたな。
それにしても会話が続かねえ。気まずい……どうしたらいいのか。
「あっ」
「先生殿なんですか?」
「お嬢様が戦ってる奴って以前俺を倒した奴なんですよね」
「そうなんですか」
お嬢様と黒い覆面のやつが戦っていた。ちょっと体格が貧弱になってるけど、俺の滅龍・アジダハーカを奪いやがったあんちくしょうか。
カード目当てでこの大会に来たんだろうな~。
「お嬢様。そいつぶっ倒して仇を取ってくださいね」
実際黒覆面を追い詰めてる。
「このままだと勝てるな。自分より実力のない生徒に仇を取ってもらうと言うのは情けないが致し方無い」
「いずれ先生殿を追い越すと思いますよ」
「そうじゃないと仕事してない扱いされると思うのでちゃんとそこまで鍛え上げますよ」
俺程度倒せないんならまだまだだ。倒されたくないけど腕前もせめて俺を倒せるくらいにはしたいよね。複雑だなあ。
お嬢様は黒覆面を倒して、どこからか飛んできた攻撃を避ける。
「疲弊したところを狙うとは卑怯な」
「でも実際理にかなってますからね。過保護になっちゃいけませんよ」
それはそれとして実際やられたらむかつく。
お嬢様は第二の相手も倒した。
「連戦でへばってないなんてやりますねえ」
「でしょう。お嬢様は凄いんですよ」
「なんであなたが威張ってるんですか」
「あっすいません」
アメラはバツが悪そうに謝る。
ふとラーナちゃんの方の映像を見たら、手負いの相手に合意を取ってから戦っていた。律儀なのか卑怯なのか分からないね。
「あなたのようなお嬢様スキーが護衛にならない理由が分からないですね。絶対に裏切らないだろうに」
「まあなりたいのはやまやまなのですが、代々の仕事は捨てられませんからね。カシヨが家出してなければなあ」
アメラはため息をついた。