プレイしていたVRカードゲームの世界にTS転生したらしい ~カードゲーマーは異世界でもカードから離れられない~ 作:黒点大くん
お嬢様とラーナちゃんどっちにも勝ってほしい。
「メタルモンキーの機械義足でバロンゴーストに攻撃。辻斬りサキュバスでシーツのおばけに攻撃よ。破壊したわ。辻斬りサキュバスの効果発動よ。防御力を1増加するわ」
鎧が真っ二つになって消えた。
「大したことないでござるなあ」
切れ味抜群だ。
ミセスゴーストの近くに長手袋が現れた。
「ミセスゴーストで辻斬りサキュバスに攻撃ですわ」「何もできないわ」「そしてバロンゴーストで辻斬りサキュバスに攻撃ですの」「効かないでござるよ」
幽霊夫婦の攻撃が辻斬りサキュバスを襲う。
「気合の入った攻撃でござるなあ。まあ己の仇うちが出来るかもしれぬ以上気合が入るのは当然でござるがな」
「ガーゴイルで攻撃ですわ」
「ギリギリでござったな」
防御力を増やす効果が地味に効いているな。
一ターンが経過する。ちょっとテンポが悪いというかなんというか。
「メタルモンキーの機械義足でガーゴイルに攻撃」
「防御力は5もあるので、効きませんわ」
「バロンゴーストで辻斬りサキュバスに攻撃ですわ。そしてミセスゴーストで辻斬りサキュバスに攻撃ですわ」
「辻斬りサキュバスでバロンゴーストに攻撃するわよ」
バロンゴーストが真っ二つに切られた。
「破壊したから防御力を1増やすわ。これでガーゴイル以外殴れないわよ」
どうやら戦闘でモンスターを破壊しないとこの効果は使えないようだが、それでも強いぞ。
辻斬りサキュバスはちゃんと服を着る。
「それだけではなく拙者は反動も持っているでござるよ」
「あと一つ隠された効果も持っているのよ」
「攻撃力も高くて防御でも殴れる。強いモンスターだなあ」
こういう強いモンスターを実装しないあたりカードジョブオンラインの運営には良心があったのかもしれない。
辻斬りサキュバスはガーゴイルの一撃を受ける。
「この羽虫が存外厄介でござるな」
「これ以上は攻撃できませんわね」
ガーゴイルは一回の攻撃で1ダメージしか与えられないのがきつい。
コツコツと音がなる。
「システム音声ニャ~。これから2分につき一ターンニャ~」
コストゾーンにカードが置かれた。
「辻斬りサキュバスでミセスゴーストに攻撃よ」
「そうはさせませんわ。コスト4で魔法セカンドクラッシュを発動しますわ。自分のモンスターが破壊されるとき相手のモンスターと自分のモンスターを一体選んで破壊しますの。これで本望だと思いますわ」
辻斬りサキュバスがミセスゴーストを切り裂きこうとした瞬間ミセスゴーストが消滅して辻斬りサキュバスも消滅した。
「カネスキはダメージを与えられるけど、私はダメージを与えられないのよね。この勝負……負けね」
ラーナちゃんはらしくない言葉を吐く。
お嬢様は首を横に振った。
「普通ならそうですわ。しかしフィールドファイトはフィールドのモンスターを捕まえられますの」
ラーナちゃんは何かに気が付いたような顔をする。
「遠慮なく逃げるわね。これが逆転への第一歩よ」
ラーナちゃんは穴に飛び込む。
下の階に滑り込んで一気に階下に移動した。
「逃げるわ」
「階段を使って飛び降りますわ」
お嬢様は階段まで走る。
映像が切り替わって、ラーナちゃんメインとお嬢様メインになる。幻覚が二つに分離しているのだ。
「なかなかモンスターがいないわね」
「見つけましたわ」
お嬢様がラーナちゃんを追う。
穴の先の道でラーナちゃんが止まる。
「チェックメイトですわね」
「悪あがきをするわ」
ラーナちゃんが手札を三枚掲げるとシーツのおばけに首無しデュラハンに花瓶が出てきた。
ラーナちゃんは微笑んだ。
「最後まで分からなくなったわよ」
「やりますわねえ」
お嬢様とラーナちゃんは死闘を尽くす。
死闘を尽くしてラーナちゃんの場にモンスターが召喚された。
「ゼェハァ。ガーゴイルよ。最後まであきらめずなかったおかげね。最後まであきらめなかったのはカネスキのおかげなのよ」
「そうですのね」
勝負は分からないぞ。
……ラーナちゃんのデッキが残り一枚になるまで続いた。
「ハァハァ。ゼェ。シーツのおばけで攻撃。とどめよ」
「精神の摩耗や逆境にめげず勝とうとするなんてすごいですわ」
「一回めげたわ」
ラーナちゃんが勝った。ラーナちゃんは勝った直後に倒れて眠った。切れる寸前まで張っていた気力の糸が切れたのか。
幻覚が解けていた。アメラが泣いていた。
「というわけで優勝者はラーナ・フラムさんニャンですが……現場にテレポートした人曰く深い眠りについているそうなので、表彰式は明日執り行うニャ」
お嬢様が観客席にいた。
お嬢様は上機嫌な顔をする。
「負けてしまって悔しいですわ。しかしなぜかそれ以上に晴れやかな気分なんですの」
「お゛じょう゛さま゛あ゛。よく健闘いたしました。このアメラ涙が止まりませんでしたよ」
「いやあこんな光景見せられると八十八位とかそんくらいで負けたのが情けなくなるね」
会場中にたくさんの拍手が鳴り響いていた。それは選手へのねぎらいかもしれない。