プレイしていたVRカードゲームの世界にTS転生したらしい ~カードゲーマーは異世界でもカードから離れられない~ 作:黒点大くん
後ろから誰かにぶつかった。
「いって」
子供が前を走り去っていく。
あやまりもしないで去るなんて感心しない奴だ。
「まったくもう……許せねえ」
多分スリだろうな。まあ俺給料日前で金がねえからノーダメージなんだけどな。デッキケースもあるし、今回は許してやるか。怒りから許すまで三秒である。出来る大人の切り替え術。
気にせず街を散歩することにした。
「冷やかしなんだけどさ」
女性陣からは冷ややかな目線、男性陣からは珍獣を見るような目線を向けられているのが分かる。やっぱりあの人(名前忘れた)を倒したのが悪かったのかな。
「八つ当たり気味に挑まなきゃよかったよ」
考えなしに行動するのはやっぱりマズい。
市場を歩いていると色々な人でごった返していた。
「市場に人はいるのに俺の財布はないのだ。世知辛いね」
給料日はいつなんだろうか。
「金が欲しい」
いきなり口をふさがれて眠くなった。
目が覚めると薄暗いところにいた。鉄格子が見えてるから牢屋に入れられてるみてえだな。これはもしかしなくてもとてもマズい。
「ここはどこだ?」
鉄格子を見張っている男に話しかける。
「誰が教えるか。このクソガキが。おとなしく売られちまえ」
なるほどね。人身売買的なアレか。
「この国じゃ人身売買ってどうなんですかね」
「合法だったらこんな後ろめたい真似しねーよ」
やっぱりか。こいつ他人の人生をなんとも思ってない犯罪者だ。
そんなやつに利用されたかないよ。
「うおおおおおおお。出せえええええええ」
「うるせえええええ。何のためにこっそりさらってきたと思ってんだ。俺たちのアジトがバレるだろ」
「みなさあああああん助けてくださああい。ここにいまあああす」
「だまれあああああ。盗賊ゴブリン召喚」
檻の中に盗賊ゴブリンが出てきて俺の首元にナイフの刃を近づける。おとなしく黙った。両手を上げようとしたら両手足が縛られてたのでやめた。死にたくないからね。
盗賊ゴブリンが消えた。
「あんたは誰だ?」
「お嬢ちゃんを売ってお金を儲けようとする悪い大人だ。お嬢ちゃんのようなデッキの使える幼女はとても高い値段で売れるんだよ。愛玩用にもボディーガードにもなるぜ。しかもお嬢ちゃんはこの街最強の警備兵を倒した奴だから、実力は折り紙付きってわけだ」
たしかにモンスターを何体も出せるのは強みかもしれないな。ペルーダと戦えって言われて勝てる気が全くしないしな。
「そいつには利用可能があるから解放してもらおうか」
このどっかで聞いたことがある声は……黒い覆面ヤローだ。
黒い覆面ヤローが見張りの男に顔面パンチを食らわて赤い液体を噴出させる。
「てめえ何しやがる」
「今そいつにいなくなられては困る。なので味方も連れてきた」
「なんだと」
「召喚きらきらほうきぼし」
黒い覆面ヤローはほうきをカードから出して、ほうきで見張りの男を叩きのめした。
黒い覆面ヤローはほうきを消す。
「もうすぐだ」
屋根が破壊されたのか急に光が差し込んだ。
「おい。ここでリベンジさせろ」
「断る。時間がない。お前がレアカードをたくさん持っているのは知っているが、欲張って捕まりたくない。召喚ワイバーン」
黒い覆面ヤローはワイバーンを召喚して鉄格子を数本壊してから出て行った。
足縛られてるんだけど。そこ解いてから帰れよな。
「まったくもう」
自称この街の警備兵最強の男がやって来る。
「どうしたナハ?」
「ちょっと油断しただけだ」
拘束を解いてもらった。
解放感が半端ねえ。
「ところでアンタの名前聞いてなかったな」
「なんで知りたいナハ?」
「助けてくれた奴の名前を知りたいと思うのは当たり前だろ」
キョトンとした顔をする。
陰から人がたくさん出てきて、警備兵最強の男を襲う。が、モンスターを召喚されて逆にねじ伏せられてしまった。
「ハナメデル・ブロッサナハ。因みにブロッサは出身地の名前ナハ。ナハは平民だから家名がないナハ」
ハナメデルね。ピンハナエルだのなんだのこの世界って分かりやすい名前が多いな。
「ブロッサってどこだ」
モンスターが消える。ハナメデルは倒した人たちをその辺にあったロープで縛った。
「何もない田舎町ナハ。そこが嫌で嫌で家出してきたナハ」
うーん。この親不孝者。
ハナメデルはさらわれた人の資料を懐に入れる。
「それどうするのさ」
「この組織の悪行をまとめたものとして警備隊の本部に持ち替えるナハ」
「真面目だねえ」
こういう真面目な人間は嫌いじゃない。
ハナメデルと別れてから本屋に立ち寄った。文字を理解するためである。カードのテキストも何だかんだ日本語だからなあ。この世界の常用文字とは別物なのでこの世界の文字が読めないのである。
「文字が読めないとまともに立ち読みも出来ないもんなあ。不親切だなあ」
本の文字と発音をどうにか覚える。
「お客さん。いつご購入なさるのですか」
「げっ。すみませんでした」
本屋から出た。やっぱりちゃんとした人に教わるのが良いのかなあ。
ふらりと別の本屋さんに立ち寄る。
「いらっしゃいませー」
立ち読みして文字を必死に覚える。
「文字が読めないってのは不便ですよね。お客さん。良かったら教えましょうか?」
「ありがとうございます」
よし。