プレイしていたVRカードゲームの世界にTS転生したらしい ~カードゲーマーは異世界でもカードから離れられない~   作:黒点大くん

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三十三枚目 デス・コロシアム

 空間に穴が現れて、穴から人が出てきた。

「出ろ」

 素直に従った。

 

 なんか怪我人のたくさんいるタコ部屋みたいな牢屋を過ぎて、少しきれいな壁の前に立たされた。

「行き止まりじゃん」

「テレポートゲート」

 空間に穴が開いてそこから押し込まれた。

 

 俺たちが押し込まれたのは少し明るい部屋だった。

「なんだここは」

「ここはモンスターと人が戦う非合法施設 デス・コロシアムだ。最近召喚するモンスターがワンパターンになってきたから、ここでお前らにモンスターを召喚していてほしい」

 壁の向こう側から苦しみにあえぐ声が聞こえる。気が滅入る。自分がやったのならなおさら気が滅入るに違いない。

 

 それに単純に何も悪いことしてない人痛めつけるのやだし。カードファイト中はダメージ食らっても痛くないからセーフだと思ってるけど、生身で戦ったら痛いだろ。

「やだね」

「したがっておけ」

「そうだ。聞き分けがいいじゃねえか。モンスターを召喚するだけで凡人がチマチマ働いて稼げるお金を一年で稼げるんだ。聞いておいた方がいい。なんなら俺が変わりてえぐらいだな。ガハハハッ。まあ俺がやったらバリエーションが足りなくて飽きられる」

 なんて奴だ。

 

 デッキを変えた。

「あそこで苦しんでいる人たちもさらってきた人たちだろ」

「借金苦の為に自ら志願してきた人たちだ」

「お前らが借金させたというオチだろ」

「小っちゃい子にもそういうのが分かっちゃうのかあ。擦れてる子が多すぎる」

 どうしようもない。

 

 黒い覆面ヤローはため息をつく。

「なんで金のためだけにそういうことをするんだ。まだカードのためにするならわかるが、こういうやり方はいろいろとマズいだろ。トバクファイトでレアカードを合法的に奪い取るぐらいにしておけ」

 それもダメだろ。自分のことを棚に上げるなんて屑だなあ。

「後ろ盾が強大だから大丈夫だ。俺たちゃなあお前らのようなカードを盗むだけのしみったれドブネズミとは違うんだよ。バーカ」

 俺たちを部屋まで連れ出した人が消えた。

 

 二人とも倫理観が欠けてやがる。

「お前ら悪人だろ。見た目とやることが違うだけじゃないか」

「人間の本質は悪だ。世間の悪人と呼ばれていない人間は善人の皮を被っているだけだ。面の皮が厚いのは悪い事だ。善人の皮を被ってない分悪人の方が皮が薄くて、善人よりも善良だ」

「うわぁ……」

 厨二病の子が言いそうで言わない言葉ランキング第三十位らへんに入りそうで入らない言葉だあ……

 

 部屋にもう一人現れた。腕を拘束された青いお面を被った人だ。体型が分かりにくいな。

「同業者からも平然と搾り取ろうとするなんて、新人教育がなっていませんねえ」

 声もノイズがかかっているから、性別も分からない。ただ身長から成人済みということだけが分かる。

「誰だお前は」

「ちょっとしたせこい商売をやっていただけのただの商売人です。気軽にオメンオクとお呼びしていただければ」

「俺はドロウだ。よろしくな」

 商売人にしては怪しすぎる。全体的に胡散臭い。

 

 オメンオクは腕の拘束を外す。

「意図的に緩い拘束にしてあるようですね。まあ先客のあなたたちも拘束されてないので、よっぽど自信があるんでしょうね」

「ああ。そのようだな。虫しか通れなさそうな空気穴と割っても子供一人しか通れなさそうな窓しかねえ。出入りも魔法によるテレポートのみで、俺たちのデッキはここに来た時点で魔法だけデッキロックされてる。出られるのはここに誰かが入って来たときだけだな」

「何でそんなこと知ってるんだ?」

「お前が寝ている間に確かめただけだ」

 黒い覆面ヤローは俺を見た。

 

 やりたいことが分かったぜ。

「おあつらえ向きに子供が一人いるじゃないですか。やはり無価値な人間なんてものはいないんですよね」

「誰が今そんな話しろって言ったんだよ。そんなことよりモンスターの召喚頼むぜ」

「なんか嫌な予感がするんだけど」

「早くしてくださいよ」

 なんか嫌な予感がするんだよなあ。まあいいか。オメンオクが胡散臭いだけだから心配性になってるだけだろ。

 

 適当ににわとりを召喚した。

「なんだそれは」

 にわとりが窓に攻撃すると消滅する。

「あの窓頑丈すぎねえか」

「アジ・ダハーカがいれば楽に壊せたんだろうけどなぁ。誰かから盗まれなければなぁ。今のにわとりがデッキの最高火力キャラだからなぁ」

「嫌味なことを言う奴だ」

 パワーが足りなかったのかもしれないからね。

 

 オメンオクは窓を叩く。

「あんなデカブツだしたら天井がぶっ壊れる。出せても出せなくてもよかったということだ。そもそもコスト200なんて滅茶苦茶なカードをノーリスクで使えるかどうかわからねえから、お前みたいな短絡的なバカが持っていなくてよかったよ」

「なんだと。このバーン戦法しかできねえせこせこマン」

「立派な戦術だ。それをお前にどうこう言われる筋合いはない」

「醜い喧嘩はやめましょう。それよりもどうやってここから出るか考えるべきです」

 冷静さを欠いていた。苦しみの声が鬱陶しくて、精神が削れてたのかもしれないな。

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