プレイしていたVRカードゲームの世界にTS転生したらしい ~カードゲーマーは異世界でもカードから離れられない~   作:黒点大くん

35 / 160
三十五枚目 トゥルーファイト

 俺は非常に退屈していた。

「誰も助けに来ないしな~。娯楽もない部屋だからなあ。暇で暇で退屈が俺の首を真綿で絞めてきやがる」

「言おうとしていることは分かりますが、言い回しが少々気持ち悪いですね」

「だな」

「ケチつけやがって。全身クレーム人間か」

 まったくもう。

 

 オメンオクは袖から変なものを出した。

「なんだそれ」

「ちょっとした暇つぶしのためのアイテムですよ。金貨一枚で売りますが、買いますか?」

「脱出するための物を入れとけ」

「そうだよ。間の悪い奴だな」

 オメンオクは袖に変なものをしまう。

 

 これじゃ出られねえ。怪我人の苦しみにあえぐ声も地獄にいるような気分にさせるので気が滅入る。

「出る方法を考えてくれないかなぁ!」

「分かっている。しかしながらイライラして騒ぎ立てたところで何にもならないだろ」

「モンスターを窓の向こうに召喚して壁を壊してもらえばいいと思うんですよ」

「「それだ」」

「何でそれをもっと早く言わないんだ。こうなったら何が何でも自棄になるしかねえから、こういうのも受け付けておりますよ。窓が壁より頑丈なわけないけどやるだけやってみようね」

「急に変な真似するんじゃねえ」

 黒い覆面ヤローにビンタされた。

 

 壁の向こう側に意識を集中してにわとりを召喚する。窓の向こうを確認すると、向こう側ににわとりがいた。

「これでよし」

 にわとりが壁に攻撃する。ちょっとひびが入ったな。もうちょっとだ。がんばれ。

「行け、行け」

 壁に穴が開いた。窓より脆い壁ってなんだよ

 

 穴から出た。

「あっさりしすぎて不気味ですねえ。私ならもうちょっと出れられないようにするんですけどね。こんなにあっさり出られるなんて罠でしょうか?」

 空間に穴が開きまくって穴からゴブリン系モンスターがたくさん現れた。盗賊ゴブリンに格闘家ゴブリンに鎧を着こんだゴブリンなどなどに囲まれている。いつの間に囲まれたんだ。

「ああそうだ。よくわかったな。場慣れしてるだけのことはあるぜ」

 脱獄王的な人だったのかな?

 

 オメンオクは袖からカードを三枚出す。

「私のデッキの恐ろしさの片鱗を味わいなさい」

 場に二つの剣が現れた。一つは白い剣、もう一つは黒い剣だった。

「あれ? あとの一枚はどこだろ」

「空気の流れで分かれ」

 それでわかったら苦労しないんだけど。

 

 三つの風が俺の頬を撫でた。

「二つは分かる。だが、もう一つはどこなんだ」

 黒い剣と白い剣の両方が宙に浮いて敵を切っている。いない方向の敵も切られている。

「見えないモンスターか」

 ギロチンフェイスデビルを召喚した。

「正解です。これを初めてやられた人はだいたい引っかかるんですよね」

 黒いは俺の前を通り過ぎる。

 

 あっぶねえなあ。前髪が少し切れたぞ。 

「スリル満点だね。もう少しおとなしくならないかな?」

「なりませんね」

「面倒だ。倒しても倒しても減っていないからな」

「実質二人で頑張っていますからねえ」

「バーン系は素の攻撃力が低いから参加したくても出来ない」

 なるほどなあ。

 

 倒しても倒しても数が減ってねえ。

「あきらめるのじゃ」

 空間に穴が開いて、女の子が現れた。年頃は十歳くらいかな。

「お前がこの屑どもの頭目か。屑の臭いがするぜ」

「同族嫌悪ってやつかな」

「いい加減なことを言うと口を縫い合わせるぞ」

 きゃーこわーい。

 

 女の子がカードを空中にばらまくと、ゴブリン系モンスターが消えた。カードが集まって一つの束になる。

「わらわはこのデス・コロシアムのオーナー ゴブリンプリンセスじゃ。因みにこの見た目はミミックスーツを着た結果じゃから……本当はこの姿じゃないのじゃよ」

「こそこそ隠れている施設のオーナーは己の姿さえコソコソ隠すのか。お前のような屑にお似合いだな」

「それはお前もだろ」

「私の商売をあなたの部下に邪魔されましたよ。どう落とし前を付けるつもりか教えてくださいよ」

 黒い剣と白い剣の切っ先がゴブリンプリンセスの目の前で急停止する。

 

 ゴブリンプリンセスは余裕そうに微笑む。

「貴様のようなハゲタカ人間はセイレーンやラミアの餌にするのがいいと思うのじゃよ」

「こんな所で価値のある人間を使い潰しにするよりはマシですよね」

「人は中身などと陳腐なセリフをほざくつもりじゃな」

「ええ。価値のない人間なんていませんから。人間を価値がないというのは、正しい使い方をわかっていないだけなのです」

 まともな会話をしてねえ。会話をする気がなさそうだな。

 

 ゴブリンプリンセスはデッキを構えた。

「トゥルーファイトじゃ」

「望むところです」

 トゥルーファイトだと。

 

 トゥルーファイトってなんだよ?

「トゥルーファイトってなんなのさ」

「生命力を失った敗者は闇に葬られる。その代わり勝てばすべてを得られる戦いだ。この戦いでは結界が貼られない為魔法の効果も痛覚も実際に体験することとなる。さらに上位の戦いが古代ビートダウンズ文明では繰り広げられていたらしい」

「命を賭けるなんて……何もそこまでしなくてもいいのに」

「認めたくはないが、ゴブリンプリンセスが倒れればうれしいだろ」

 この世界はヤバいぞ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。