プレイしていたVRカードゲームの世界にTS転生したらしい ~カードゲーマーは異世界でもカードから離れられない~ 作:黒点大くん
会議から一か月後に俺はまた黒覆面ヤローに負けた。まあわざとなんだけどね。
「何度負けたら気が済むんだ貴様は。何度も何度も勝負を挑んで根気が尽きるのを待つつもりか。もう十回目だぞ。やめろよ」
「ここでやめろよと言えるだけいい子ちゃんだな。まあ頭をよく見ることだな」
黒覆面ヤローは自分の覆面を触る。取れたのかと思ったのかな。
黒覆面ヤローはほっとため息をついた。
「因みに覆面のことじゃねーぞ」
「分かっている」
「見栄を張らなくてもいい。何のことか分からなかったらちゃんと頭を見るんだな」
「貴様ふざけるな」
「俺は監視されているから、貴様は二人に見られているということになる」
全速力で逃げる。
足元にワープゲートを展開して逃げた。
「よし。しがみつかれてないようだな。とりあえず助かったぜ。俺にしがみついて一緒に手レポートするのが一番手っ取り早いからなぁ」
後ろから肩を触られる。
「うぇ!」
「監視役です。同じ相手に九回も負けるなんて学習能力がないですね」
監視役にほっぺをぷにぷにされた。
監視役の手を払う。
「ただ単純にあいつが強かっただけだからな」
「雑魚カードばかり渡していましたね。かさばるので実質押し付けたようなモノでは?」
「そうともいう」
ただ俺の場合は謎の工具箱があるのでかさばらない。
人気のないところまで歩いた。
「これでよし」
「何が良いんですか?」
「こういうこった。なるべく早く倒れてくれ」
デッキを構える。
監視役は首をかしげてからデッキを構えた。
「貴女スパイだったんですね」
「違うな。こいつと一旦入れ替わったんだよ。いくらカード裁きがあっても、殴ればどうとでもなる」
入れ替わったことにすると、俺がスパイだと疑われにくくなるからな。
監視役を倒した。なぜか監視役が都合よく気絶してくれたのだった。
「こいつにはいろいろと見られたくないこと見られてるからな」
例えば黒覆面ヤローにトバクファイトでわざと負けて、頭文字が本拠地の座標になるようにしていたところとかな。
「カードハンターと俺たちは一応敵だから、堂々とカードを渡すわけにもいかないのが面倒だったぜ」
あんな回りくどい方法しか取れなかったのも全部コイツのせいだ。
倒れた監視役を引きずってなるべく注目されることにする。
「んしょんしょ。コイツ重いな。装備も込みだからか?」
声をかけられた。
「あのどうなさったのですか」
「その前にコイツを持ってくれ」
俺に声をかけた人は監視役を肩に担いだ。
らくちんだよ。
「こいつがいきなり俺に変装した奴に倒されただけだ。気にするな」
「ちなみにその曲者はどういたしましたか?」
「すでに倒した。けど逃げられた。アイツの体は身軽だったからな。あとそいつが俺のことを偽者やスパイって言っても気にするなよ。正真正銘の本物だからな」
「はい」
担いだまま医務室に向かった。
施設内をうろつく。
「やることはやったと思う」
「何をやったのですか?」
ギクゥッ!
まさかもうバレたのか。
「この支部に俺に変装した不審者が出たんだ」
「もしかして貴女が侵入者ではないでしょうか。そういえば最近情報が流されているらしいですね」
俺と協力者が色々と情報を流しているのだ。警備兵の協力者もいるから案外やりやすいぞ。
「バカを言うな。俺はちゃんとはいってきたぞ」
魔導回復生命体を見せた。
俺を疑った奴は一瞬で納得する。
「お前たちも侵入者の捜索しっかり頼むぜ」
「「かしこまりました」」
素直なのは良いことだ。おかげでもっとやりやすくなったぞ。
この支部全体が緊急事態になる。
「そろそろだね」
人気のないところまで行ってからテレポートゲートでお嬢様の家の近くまで転移してから着替えた。
塀とか壁とかよじ登ってお嬢様のところまで行く。
「どうも」
お嬢様に部屋に入れてもらう。
「だいたいの事情が分からなければ協力していませんでしたわ」
お嬢様と別れて二週間後に事情を説明したのだ。誤解を解くために色々がんばりましたよ。
お嬢様に最新の情報を話した。
「情報のご提供ありがとうございますわ」
「どういたしまして。もっと期待してくださいね」
「はい」
お嬢様に色々なことを話してから元のところに戻った。
まだ警戒事態になっていた。侵入者が目当てなので、探している感を出すためにうろついていた。
「どこに行っていたのですか?」
「ちょっとかく乱作戦を計画したり、足止めしてたりしてたよ。でも作戦虚しく失敗してあんま結果が出なかったんだよね」
「さようですか」
役立たずを見るかのような視線を送られた。実際は役立たずどころか裏切り者なんだけどね。
結局不審者をもつけることが出来ずに、緊急事態は終了した。聞くところによると緊急事態の終了は侵入者がもう逃げているだろうという判断のもとで行われたらしい。
「つまりこいつらが倒されたりすれば、一気に壊滅に近づくってことか」
「不吉なこと言わないでくださいよ」
「あっ。ごめん」
ついつい不吉なことを口走ってしまった。バレないようにしないとな。