プレイしていたVRカードゲームの世界にTS転生したらしい ~カードゲーマーは異世界でもカードから離れられない~   作:黒点大くん

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八十五枚目 盗み聞き

 そよ風が吹いた。

「フェネクスでペルーダに攻撃。例のごとく蘇ってターンエンド」

 俺の12ターン目だ。

「ドロー。チャージ。コスト4で鯵テーターを召喚。俺はセイアジンに攻撃する。鯵テーターでセイアジンに攻撃。ビーコンパラサイトでセイアジンに攻撃。ターンエンド」

 コスト10だから相当硬いね。

 

 ラーナちゃんの13ターン目だ。

「ドロー。チャージ。フェネクスでビーコンパラサイトに攻撃」

「ビーコンパラサイトの効果でペルーダに攻撃してもらう」

「げぇ。手札と墓地にフェネクスがいないから効果が使えない」

「使えるようにしてやるよ。このターンは全員ペルーダに攻撃してもらうつもりだから使えるぜ」

「鯵テーターって厄介ね。フェネクスでペルーダに攻撃。破壊されるけど効果で蘇る。セイアジンでペルーダに攻撃。むぐぐ。破壊されちゃった。蘇ったフェネクスでペルーダに攻撃。破壊。ターンエンド」

 攻撃しなければならないのって使い方によってはこんなに刺さるんだな。場ががら空きになったぞ。

 

 俺の13ターン目だ。

「ドロー。チャージ。俺はラーナちゃんに攻撃するぜ。とどめだぁ」

 場がすっきりした。なんか弱いな。言い方は悪くなるけど引きが良ければもっと早く倒せてたわけだからね。

 

 手ごたえがない。本当にここに転がっている人全員倒せたんですかね。 

「どうだった?」

「まあ強かったですよ」

「物足りないって顔に出てるわよ。正直に言うと?」

「なんかちょっと物足りなかったなぁと。前のデッキの方が何倍も強い気がします。まあ相性がよかったからかもしれませんがね。フェネクスは普通に相手してたら厄介ですし。毎ターン攻撃を一回無効化出来ると考えたらとか相手したくないです」

 相手のモンスターを手札に戻せる魔法があればいいのに。

 

 ラーナちゃんはため息をつく。

「今回はなぜか引きが悪かったけど、それを言い訳に出来ないくらいには私は弱いのね」

「だから相性の問題だって言ってるじゃないですか。それに毎ターンエクストラスで攻撃していれば勝てていましたからね」

「それもそうよね。私って駄目ね」

 本格的にウジウジしてやがる。いいとこの貴族さんだから拾い食いしたとかじゃなさそうだし、何があったんだ。

 

 めんどくさいことになったぞ。

「倒しちゃったから説得力はないけど今のラーナちゃんは強いと思うよ。ただそれだけが言いたかった」

 転がっている人を起こした。

 

 転がっている人は辺りを見る。ラーナちゃんを見つけると顔を青くした。

「ヒ、ヒエエエエ。カードハンター止めるから助けてええええ」

「今しがた起こした人はラーナちゃんにトラウマを抱えている。それほどまでにラーナちゃんに打ちのめされたってことだ。今の人からラーナちゃんの実力は高いことが分かるよね」

「ドロウの言った通り相性が良かっただけだから。私の実力が高いわけじゃないもん」

 今のラーナちゃんはとことん自分をけなさないと気がすまないみたいだ。めんどくせーーーー。

 

 ……イラついてないで冷静に考えてみよう。

「人の性格がいきなりほぼ真逆になることなんて有り得ないことなんですよ。何かきっかけがあるはずなんですよね」

 ラジーさんは目をそらす。

「何か知っているんですね?」

「シラナイヨー」

「知っているんですね」

「話すけどこんなところじゃ話せない。ラーナもいつまでもここにいないでお部屋で勉強でもしてなさい」

「はーい」

 ラーナちゃんは意気揚々とお屋敷の中に入っていった。

 

 お屋敷にあるラジーさんの家まで通される。

「ラジーさん心当たりとは一体何ですか?」

「その前にすべきことがある」

 ラジーさんはナイフを投げる。

 

 ナイフは俺の顔を横切った。

「始末しようという訳ですね」

 嫌な予感がしていたので袖の中にカードを仕込んでいたのが役に立った。

「森を守るエルフを召喚」

 森を守るエルフは天井に矢を撃つ。

 

 天井から人が落ちてきた。

「この人たちに聞かれてるからね。後ろ向いてみて」

 森を守るエルフが後ろから何かを引きずって落ちてきた人の横に置く。

「この人たちは誰なんですか?」

「貴族とか豪商とかが情報収集とか始末とか様々なことに使っている工作員だね。私は使ってないから安心してくれないかな」

 嫌な予感がなくなったので森を守るエルフを消す。

 

 ラジーさんはベッドに座る。

「高次元のスピードラットいう見たことも聞いたこともない未知のカードをラーナが持っていたことが始まりだった」

 俺のせいじゃん。

「俺の責任ですねこれは。高次元のスピードラットをあげたのは俺ですから」

 要らないけど押し付けちゃダメとか面倒なカードだ。

 

 ラジーさんは指でバッテンを作る。

「話は終わってないよ。突然C(コモン)カードが光って高次元獣とかあのデッキのカードに変わったんだ。しかもフェネクスは焼鳥屋に賛成するにわとりというカードが高次元のスピードラットというカードの影響で四枚増えて変化したものなんだよね」

 焼鳥屋に賛成するにわとり……またしても俺があげたカードだ。

「ただそれだけのことであって責任を取ることじゃないよ。話は終わった」

 辞表出さなきゃ。教え子の親友が俺のせいで性格が卑屈になったんだからな。

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