プレイしていたVRカードゲームの世界にTS転生したらしい ~カードゲーマーは異世界でもカードから離れられない~ 作:黒点大くん
辞表を出してきた。
「どういうことだね」
ラジーさんから聞いてきたことを雇用主に説明した。
「なるほど。責任を取って辞めたいというのだね。カネスキに苦労しすぎてやめたくなったわけではないので安心した」
「そういうことです。お嬢様は迷惑かけていないので大丈夫です。お嬢様には内密にしておいてくださいね。お嬢様が聞けば取り乱すと思うんですよ」
明るい親友がいきなり卑屈になるとか取り乱さないわけがないのだ。
雇用主はため息をついた。
「責任を取ると言って辞職するのは逃げだと思うけど。それにやめた後はどうするんだい?」
「えっ」
そこまで考えていなかった。判断が悪かったな。
「あのーそこまではー……考えていないです。はい」
判断力が欠けていたな。
後から考えるとどうしてそんな判断をしてしまったのかってのはよくあることだよね。
「そんな無計画なのか。やってしまったことから逃げてそのまま放置するとは見下げた奴だ」
「はい。そうですね」
「それに貴族のつながりがあった方が色々と治す方法が分かると思うのだよ。それにどこぞの一般市民よりもピンハネル伯爵家の関係者でいたほうが、フラム伯爵家にすぐ行けるようになるだろう」
「なるほど。それもそうですね」
判断の悪さがうつったな。
まあやめるのは判断が悪かったな。
「わかりました。ありがとうございました。何とかしてきます」
ここまでして俺がやめるのを止めるってことはなんかあるんだろうな。
「まあ打算でもいいや」
むしろ利用してくれなきゃお人よしすぎて気味が悪いというかなんというか。
二日後アポを取ってフラム伯爵家に訪問した。
「強くはなったけどこれでも及ばないわ」
ラジーさんとラーナちゃんがカードファイトしていた。
「コスト6でベイジャイロを召喚。ベイジャイロで高次元獣 フェネクスに攻撃。ベイジャイロの効果発動。攻撃対象を私にすり替えることができる。スピニグジャイロ。ダメージスイッチの効果でダメージは受けない。ターンエンド」
イフリートを出そうとしているな。
ラーナちゃんはドローしてから考え込む。
「フェネクスでベイジャイロに攻撃してターンエンドです」
エクストラスがいるのに攻撃しないところは相変わらずなのか。
「ドローする前にマジカランプの効果発動。プレイヤーが三回以上攻撃された場合、この魔法を破壊してデッキか手札か墓地から火の魔人 イフリートを場に出す」
炎の巨人が現れた。
「手札からコストを11払ってこのカードを場に出します。高次元獣 グリッター・パラサイト。グリッター・パラサイトは場に出たときに高次元のスピードラットと高次元獣と名の付くモンスターを一枚以上このカードの下に送りますさらにグリッター・パラサイトの効果を発動します」
とても長い線虫が出てきてイフリートを雁字搦めに拘束する。
イフリートがずりずりと動いて、ラジーさんを見下ろす。
「相手がコストを払わずにモンスターを場に出した時そのモンスターの名前を高次元獣の残痕として扱う。さらにグリッター・パラサイトにっは高次元獣の残痕と名のついたモンスターのコントロールを奪う効果があるんですよねえ。コントロールビーコン」
「……むぐぐ。ターンエンド。まさかコントロールを奪われるとは思わなかった」
「コントロールを奪うだと!? そんなカードがあるだなんて」
ラーナちゃんは俺を見る。
ラーナちゃんは笑顔になって俺に手を振った。
「あ、いたの。こんにちは。私強くなったわよ。でもまだまだ弱いけどね。イフリートでベイジャイロに攻撃」
大きなコマは消し炭になった。
「うぐあああああ」
ラジーさんに炎が浴びせられて火だるまになる。
「ターンエンド」
火が消えるとラジーさんはふらついた。ラジーさんの足元の芝生も焦げていた。
実の姉がふらついているのに心配しないとは薄情な子だ。
「ちょっとあついな」
ラジーさんの体にところどころ軽いやけどが出来ていた。
「もうやめろ。火傷しちゃってるだろ。何も実の姉妹でトゥルーファイトをする必要はないんです」
ラーナちゃんは首を横に振る。色々と展開が早すぎるぜ。
ラジーさんは膝をついてドローする。
「やはり熱さは本物だな。チャージ。コスト4で精霊の笛を発動する。生命力を1減らして相手モンスター一体の効果をこのターン無効化する。無効化するのは高次元獣 グリッター・パラサイトの効果だぁ!」
イフリートに巻き付いた線虫が離れて、イフリートはズルズル動き、ラーナちゃんを見下ろす。
「イフリートで高次元獣 グリッター・パラサイトに攻撃。さらにイフリートの効果で相手の生命力を焼き尽くす」
「ストーップ」
炎が線虫とラーナちゃんを焼いて場がすっきりする。ラジーさんの火傷が無くなった。
「これはトゥルーファイトじゃなかったということだ。痛みは受けるが死なない分こっちの方がえげつないのかもしれない」
ラーナちゃんはぴんぴんしていた。
ラーナちゃんは突然倒れる。ラーナちゃんは地面に倒れる前にラジーさんに支えられた。
「いつも通り卑屈になったと思ったらいきなりこうなった。しかしさっきのグリッター・パラサイトは初めて見るぞ」
「もう高次元獣デッキを捨てましょう」
そうしないと危ない。