プレイしていたVRカードゲームの世界にTS転生したらしい ~カードゲーマーは異世界でもカードから離れられない~   作:黒点大くん

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八十七枚目 感謝厨

 ラジーさんはラーナちゃんをベッドに寝かせた後に倒れた。

「誰かいませんかー」

「人は呼ばないでほしいな。どうせ何の異常もないから、だれにも治せない」

「働き過ぎかもしれませんよ」

「ちゃんと1日七時間寝てるから」

 さっきの戦いで精神的な負荷がすごくかかったのかもな。

 

 ラジーさんはため息をつく。

「次元獣というカードに心当たりがある」

「心当たりがあるんですか?」

 そこにヒントがあるのかもしれない。

「次元の巫女だな」

「なんですかそれ」

 ラジーさんは目をそらす。

 

 ラジーさんはしばらく考え込む。

「とにかく力があって途轍もない伝説の存在かな。一部の地域ではカードの神よりも信徒が多いらしいね。暗黒邪教怒労蛮苦団でも信仰対象になってたらしいんだよね」

「初めて知りました」

 幹部にまで登り詰めてたけど知らなかったぞ。本部のくせに真面目な信徒が誰一人いないとかどうかと思うの。トップでさえ信仰している素振りは無かったんだよね。

 

 ラジーさんは首を横に振った。

「まあ今はそんなこと知らなくても重要じゃないんだ」

「重要じゃないんですね」

「重要じゃないんだ。問題は次元の巫女の力の方なんだよ。知り合いから聞いた話なんだけど次元の巫女の力は残りかすみたいなものでも、カードを書き換えるぐらいのことはできるらしい。それ故に一部ではデスティニードロー現象は体内に眠る次元の巫女の力が一時的に覚醒しているという説まであるけどこれも関係ない」

「話が脱線してますよー」

 ラジーさんはわざとらしく咳ばらいをする。

 

 ラジーさんは俺にカードを手渡した。このカードならいけるかもしれないな。

「高次元のスピードラットというカードがカードを増やして書き換えたってことは前にも言ったと思う。恐らくその高次元のスピードラットというカードが次元の巫女の力と何かしら関係があるのかもしれないと推測しているんだよね。だって次元の巫女にも高次元獣にも次元の巫女にも次元というワードが含まれてるわけだし」

 この世界で高次元のスピードラットと関係しているのは俺とラーナちゃんだけだ。まさかね。

「次元の巫女ですか」

 そこも調べてみる必要がありそうだ。

 

 ラジーさんは俺をじっと見つめる。

「なんですかね」

「高次元獣の力はどんどん増している。幻の炎でさえ痛みは身を焦がし炎そのもの。この調子でどんどん力をつけていけばカードファイトでも人を始末できてしまうかもしれない。それじゃマズい。一刻も早く解決方法を見つけて欲しい」

 そのまなざしは真剣だった。

「分かりました」

 ラジーさんは笑顔になって目を閉じる。

 

 ラーナちゃんは目を開けて飛び起きた。

「我は次元の巫女の意思の残痕なり」

 ラーナちゃんから威圧感をヒシヒシと感じる。

「なんだお前」

「この体は我の意思によくなじむ。貴様が高次元のスピードラットを手渡したおかげで、この体に我の意思が近づけた。貴様に感謝しよう。そしてこの体に高次元獣を何度も使わせた実力者であることにも感謝しよう」 

 なんだこいつ。

 

 ラーナちゃんが妖艶な笑みを見せた。

「様々な実力者が来るようになったのもこの体が色々と頑張ったからだな。おかげで我はより一層強くなった。この体にも感謝しよう」

「感謝厨かよ。まあ感謝するのは良いことだ」

「それらすべてに感謝したうえで我は今後この体を支配し、様々な実力者に高次元獣を渡すことで我を拡散する。我の中に眠るこの体の意思には墓に入るまで黙っていてもらおう」 

 高次元獣は寄生虫の卵みたいなもんだったのか。そして俺は寄生虫そのものを知らずに渡していたということだ。 

 

 ラーナちゃんは右腕を動かす。

「なんで右腕が動いているんだ……まさかこの体の意思はしぶといのか」

 デッキケースを投げ渡された。

「何かと思えば、デッキを渡しただけか。それだけで力尽きたか」

 投げ渡されたデッキを見る。なるほど。

 

 俺はデッキを構える。

「ラーナちゃん。次元の巫女の残痕倒してからこのデッキ後でちゃんと返す」

「そういえばこの体の元々のデッキとは戦ったことがなかった。貴重な体験をさせてくれて感謝するぞ」

 ポジティブすぎる。

 

 俺の……いやラーナちゃんのデッキが赤く光る。

「後攻か。じっくり考えられるということだな。運に感謝しよう」

「余裕かよ」

 余裕そうだな。その余裕の表情を崩したい。 

 

 俺の1ターン目だ。

「チャージ。ターンエンド」

 ラーナちゃんの1ターン目だ。

「ドロー。チャージ。ターンエンド。我の引きが悪いことに感謝せよ」

 まあ高次元のスピードラットがなければ何もできないからな。

 

 互いに3ターン目までほとんどなにも起こらなかった。ハイパービーストを出しただけだな。

 

 ラーナちゃんの3ターン目だ。

「ドロー。チャージ。コスト1で勝利の高次元 エクストラスを召喚。そして相手が勝つところを高次元のスピードラットを場に出すことで無効化する。そしてコスト2で高次元獣 ヴァンピアを召喚」

 黒い靄が現れて柱になる。

「効果で高次元のスピードラットとエクストラスをヴァンピアの下に置く。ヴァンピアの効果で下にあるカードを二枚墓地に送ることでデッキから好きな次元と名の付くカードを手札に加える。高次元の防壁を手札に加えてターンエンド」

 サーチカードとは厄介な。でもサーチで高次元のスピードラットを墓地に落とすようじゃまだまだだな。

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