プレイしていたVRカードゲームの世界にTS転生したらしい ~カードゲーマーは異世界でもカードから離れられない~ 作:黒点大くん
最近ピンハネル伯爵家の領地が増えたので、それに伴って七日前に経営コンサルタントを雇った。今までの人数だと人手が足りなさすぎる……らしい。妥当な判断だと思ったよ。
「ここまでは良い。ここまでは良いんだ」
「ここまでもの間違いでは?」
「俺にとっては都合が悪いの」
コイツさえいなきゃなあ。
顔が怖い経営コンサルタントにクビにされそうになっているのである。
「何でクビにするか理由だけ教えてください」
「教えてわかるわけではありませんが、教えましょう」
もったいぶるな。早くしろ。
経営コンサルタントは息を吐いた。
「貴女を雇ってもピンハネル伯爵家は何も得しないんですよね。いるだけ無駄なんです。毎日三食取るので他の先生よりも貴女の為に消費しているお金も多いのですよ。他の先生より金食い虫なわけです」
「なんで二回も言ったんですか」
「重要なことですからね」
嫌な奴だ。この時点ではテメーは金食い虫だから経営のジャマしかならない。だからクビにする(要約)と、経営コンサルタント視点ではまともなことを言ってるのも嫌だ。正論は時として人をイラつかせる。
ただ経営コンサルタントの言ったことに一つだけ間違いがある。
「俺は腕前だけでお嬢様にカードファイトを教えることになった男ですよ」
「貴女は女性じゃないですか。それはともかく要はカードファイトの腕前だけで雇われているよくいる貴族仕えのカードファイターですね」
「そういうことになりますね」
「雇われる前に貴女のことを調べたんですよ。闘争裁判では教え子のお嬢様よりも勝利数が少なく、第39回フィールドファイト大会では教え子のお嬢様より早く負けたとか。フラム伯爵家次女ラーナ様の助けがなければ名誉を挽回出来てないじゃないですか。腕については信用できませんよ。実績も含めて何も得しないだのいるだけ無駄だの言っていたんです。領地が増えて管理しきれなくなっているのは貴女のせいもありますからね」
「むぐぐ」
全くの正論だ。
でも領地が増えたのは良い事じゃないか。
「飛び地の領地も増えましたからね。それにこの国が領地を分けているのも一人じゃ管理が出来ないからです。貴女はいると問題を起こしそうなのでクビにしたいんです」
「この前辞めたいって言っても引き留められたぞ」
「うむむ。そうですか。困りましたねえ。貴女の存在は他の先生も嫌ってますからねえ。諸先生方の精神的負荷になりますよ」
今この場でそんなこと言われても信用出来ねえ。だって諸先生方ここにいねえもん。
このまま話し合いをしていても仕方あるまい。
「カードファイターとはカードファイトで決着を付ければいいと思います」
「出来るならお嬢様を証人にしてとっととやってます。しかし残念ながらカードを1枚も使えないんですよ」
そうか。カードが使えないからカードファイターである俺を逆恨みしてるのか(偏見)。一度俺にパンツを変えさせたほどに顔は怖い癖に性格は腐ってるな。
経営コンサルタントはわざとらしくせきばらいをした。
「しかしカードファイターの皆さんは裏では打ち合わせをしているかのようにカードファイターならカードファイトで決着をつければいいという回答をするんですよね。所詮カードファイターはカードファイトするだけの獣なので本能なんですかね。という訳でカードファイターとお嬢様を呼びました」
お嬢様とカシヨが入ってくる。なんでアメラはコイツを通したんだ。
経営コンサルタントはお嬢様に駆け寄った。
「お嬢様大丈夫ですか。そこの丸っきり変態に何かされてないですか?」
「お前が依頼してきたんだろうがぁ!」
「そうでしたね。なんでも凄腕のカードファイターだとか」
「そいつはカードハンターだぞ」
しかもアルカナ使ってる物好きだぞ。
経営コンサルタントは首を横に振る。
「何なんだコイツ」
「カードが一枚も使えないからカードファイターを逆恨みしてるんだって」
「嫉妬心って醜いね」
「私にはカードハンターとカードファイターの見分けがつかないのですよ。何しろ同類だと思っていますからね。あと逆恨みしてませんから」
言葉に怒りを感じるのも気のせいってことか。
カシヨはデッキを構えた。
「報酬は高いしガマンすればいいか。コイツは俺に勝ったことないし、序列は俺よりも低いザ……」「わーわーわー。その話はあと。早くカードファイトをしようね」
コイツ暗黒邪教怒労蛮苦団に入ってた時に事を言おうとしただろ。困るんだよなあ。あと勝ったことないのも相性が悪い回復デッキ使ってたからだぞ。舐めてもらっては困る。と言いたいのを我慢する。
お嬢様の目を手で隠してやがる。何がしたいんだこいつ。
「緑色の覆面している褌人間を見ておかしいと思わないんですか」
「モラルハザードではありますが、カードファイターってそういうものですよね」
「違うな。俺はカードハンターだ」
「訂正すべきところはそこじゃねえんだよなあ」
俺はデッキを構えた。カシヨのデッキが赤く光る。