魔法少女があらわれた!   作:ミ゙ヅヅヅ

7 / 14
書き置きないのにどうして投稿しているのか。それは後のことを考えていないからだ。


7話

「それじゃあ対策をはじめよう!」

 

 

「じゃあ先ず、かねかずの改造された現在の力について(まと)めていこうと思います」

 

 

 和水が司会者気取りで俺に言い放つ。実際司会を任せたので気取りでも問題無いが、普段の駄目人間ぶりから考えると凄く腹立たしい。

 いざというときに頼りになる女、それが『井東和水』だよ、と(のたま)っていたが本当にうざかった。

 

 現在地はリビングから移って俺の部屋。こういう作戦会議的なものは雰囲気が大切だと、満場一致の意見で場所が移されたのだ。満場って言っても二人だけなんだが。

 

 改造された現在の力……、そのことについては松村さんからある程度の情報は貰っていた。勿論、中途半端な身体強化手術になったのは初めての例なので多少臆測(おくそく)も混ざるが、と前置きされたが。

 

 自分的には、体力テストとかだったら余裕でA取れるぐらいには強化されているように思う。

 

 強化はおそらく足の筋肉を中心に施したと思われる。足が速くなったりジャンプ力が大幅に上がったりしているのでそれは明白だと思う。

 反対に腕や胸とかの筋肉は余り強化されていないように思える。元からそこそこ鍛えていたっていうのもあるのだろうが、変化が少ししか感じられないのだ。

 

 松村さん曰く、『足の強化を優先した方が実戦では役に立つ』とかなんとか言っていたので意図的にそういう風に改造したのだろう。攻撃を避けたり先手を取ることが出来たりと色々考えがあるのだと思う。

 

 

「私から見て左手にあるリビングから飛び降りて無傷でいられた。その際上方に5、6メートル程上昇して計8、9メートルで無事だったってことだね。私がその距離下方へ落下したとすると……まあ無事では無いよね。最悪南無(なむ)るよ」

 

「まあ、そうだよな。上方に跳ばなかったとしても頭から行ったら普通に危険だしな」

 

「身体が物凄く頑丈になってて、足の強化で逃げるのも容易くなった。守りに力でも入れてんのかね。その改造ってのは」

 

「腕の力自体も強化されてるみたいだけど……例えば片手で勉強机を持ち上げろ……と、なってくると無理があるかな、ぐらいの強化だしな。それでも十分凄いんだけど」

 

「その組織の科学力パないね。組織の敵と戦う為にそこまでの力注ぐかってぐらいの力だよ。ガチめの怪物と戦うんじゃないの?」

 

「怪物とは言い難いけど……説明通りなら似たようなものかもしれない」

 

「うわー、絶対危険じゃないですかやだ。今から辞めても遅くないんじゃないの」

 

 

 組織の目的と相手の目的とを考えてみたらそれもできない。知ってしまった以上、辞めるという選択肢はなくなっているようなものだ。

 

「辞めないってならせめて、危険を少し減らす為の手伝いをさせて貰うしかないんだけどね」

 

 和水は俺の態度に諦めたように呟く。それにしても、と彼女は付け加えて言う。

 

 

「何度見てもグロいねえ。身体から物体が浮かび上がるの」

 

 

 現在、和水の指示で身体への物体の収納を実演しているところだ。具体的にどんな改造されたのか訊ねられた際にこのことを言って見たところ、イメージが湧かなかったらしく実演してくれとせがまれた訳だ。

 しかし、実演してくれと言ったのはそっちなのにグロいとか言うのはなしだと思う。少し傷つく。

 

「収納できるのは身体の体積分だけらしいよ。あと、今気づいたけど入れた物の重さを感じる気がする」

 

「へえ、それじゃあそこにあるダンベルでも収納してみて」

 

「ああ、分かった。……って、おお。体重が一気に増したような感覚。物凄く重い」

 

「持ち運べるのは自分の体積分で重さは当然感じると。……えっ、漫画とかでよく見る収納魔法と比べて使い勝手悪くない?」

 

「そりゃしょうがないだろ。身体に覆った膜みたいなもんの内側に入れれるんだったら。現実的に膜の覆った分しか入らないだろうし、膜自体持ち運んでるんだからそこに入ってる物体の質量分も持ち運ぶことになるだろうが」

 

「ファンタジー的な膜の前にそんなこと言われた?!」

 

 

 衝撃的な顔をする和水。

 

 しかしねえ……。現実的に考えると質量保存則があってどうしようもないし。核反応でも起こせない限り質量保存則は乗り切れない訳で。身体に収納したところで重さが軽くなる筈がなく。

 

 和水の方を見る。

 

 

「……」

 

「現実的に考えろ、このクソ妹みたいな顔で見られた!?」

 

「現実的に考え」

 

「口に出さなくて良いよ!」

 

 止められた。少し残念だ。

 

「まあ現実的、に考えると変わる訳ないんだね。それだったらエネルギー保存則とかはどうなってるの。例えば、勢い良く収納したものは勢い良く飛び出したりすんの?」

 

 現実的を偉く強調して和水が訊ねる。

 

 

「うーん。どうだろ。一旦そこのテニスボール俺に向かって投げてみてくれ」

 

 和水は『わかったー』と答えると机の上に置いてあったテニスボールを(つか)む。

 昔無性にテニスをやりたくなり買うだけ買って使わなくなったボールが役に立つとは。

 

 

「いくよー。……せいっ!」

 

 和水が手からテニスボールが放たれる。ボールはふわふわと弧を描きながら俺の身体へと飛んでゆく。そのまま飛んでいくと丁度俺の首辺りにぶつかるのだろうか。

 身体に当たる少し前の位置に手を出す。間違ってキャッチしないようにボールを取り込むイメージを少しする。

 

 何も意識しないで取り込めたらそれこそ日常生活が大変だろうから、当然の手間だ。最初の時、意識しないで出来ていたのは何だったんだ……といった感じだがよくよく考えると何らかの切っ掛けがあって発動していた。

 

 何かやばいこと言ってる人がいる!通報しなくちゃ……的な切っ掛けで発動したんだろう。ただの推測でしかないが。

 

 

 俺がボールを取り込もうと意識したお陰かどうか分からないが、テニスボールは俺の手の平に触れるとするりと身体の中に吸い込まれた。

 

 これで勢いよく吸い込まれたことになる。若干頼りない速さの球であったが、一応運動エネルギー的にはまあ良いだろうと言える程度の速さだった。

 

 何とはなしにそのまま前に向かってボールを出してみる。

 

「うわー、ホント凄いね。身体の中にボールが吸い込まれ、ヘウッ!」

 

 何かふむふむ考えてた和水の脳天にボールが着弾した。

 

 あー、……取りあえずエネルギーは保存されるのか。先に試しといてよかったな。使いようによっては結構危険そうだ。

 

 なる程なる程。

 

 

「頭をおさえて(うずくま)ってる私に何か言うことはないのか!この畜生が!」

 

「あぁ、和水さんきゅーな」

 

「私が求めているのは感謝ではなく謝罪だ!勢いないとは言え、突然飛んできたから結構なショックだったんだぞ」

 

「ごめんごめん。頭、大丈夫?」

 

「煽りにしか聞こえん!」

 

 

 ぴーぴーと(わめ)く和水。しかし、ホントにツッコミ上手くなってきたな。早めにコンビ組んだ方が得策かな。

 

「感心すんな。早く謝れ」

 

「すみませんでした」

 

 ガチ謝りを一つ入れる。まさか、エネルギーが保存されてるとは思っていなかった。

 

「まあ、私からやろうって言い出したことだしね。別に良いよ。……それよりエネルギー保存されるってことは色々できることが広がるね」

 

 

 出来ることが大幅に広がりそうな発見だ。和水は少し考える素振りを見せると大袈裟に手をポンと叩くと言った。

 

「ナイフとか思いっ切り刺してみるのはどう?失敗すれば憂さ晴らしになるし、成功したら飛びナイフみたいになるし」

 

「本当に申し訳ありませんでしたぁッッ!!」

 

 

 床に穴を開ける勢いで誠心誠意、本気で謝る。やばいこの妹。()る気だ。ガチでやばい。

 それに成功したとしても危険過ぎる。それ、下手しなくても人死ぬ奴だ。やばい。語彙がやばいしかなくなるレベルでやばい。

 

 

「うおっ。冗談だったのにこれ程までの効果があるとは」

 

 こんなこと言ってるがアテにはなるまい。許して貰えたーと思って顔を上げた途端、『だが赦したとは言ってない』とナイフ片手に言われるような気がする。

 

「言わないよ?!私を何だと思ってるの!」

 

「気の所為じゃなかったら和水、今心読まなかったか?!」

 

 

 そう言って俺は和水の顔を見る。和水は、勘で言ったんだけど当たった?!私の読心の才能怖ぁ!みたいな顔をしていた。

 

 うわ、案外読心って出来るもんなんだな。

 

 しみじみと思った。

 

 

「ナイフは冗談にしても、例えばさっきみたいにボールを取り込んで『ガトリング砲だぁぁ!!』みたいなことも出来そうだねえ」

 

「普通に凶器だぞ、それ。うーん……やるとしても水鉄砲ぐらいじゃないか?」

 

「そんでもって、その水圧を以て人体をスライスすると?」

 

「すると?……じゃねえよ!それただの殺人鬼じゃねえか。他人事だと思って適当になりやがって……それやって捕まるのは俺だぞ」

 

「あくまで驚かせたり怯ませたりとサポート用に回す訳か。その能力と身体能力で何とか乗り切ろうと言う訳でよろしい?」

 

「よろしい」

 

「……まあ、アレだよ。やばくなったら命乞いすれば良いんだよ。何とか詭弁に詭弁を重ねて乗り切れば。正直それぐらいしか思い浮かばないよ」

 

「それだけ聞くともの凄く雑魚キャラ感があるな」

 

「大丈夫。それで何か功績あげても私の中では永久に雑魚キャラ扱いしてあげるからね」

 

「フォローのフの字も聞こえないな!」

 

 別に期待してなかったけど。

 

 

「正直言って対策とかってこれくらいじゃない?詳しい経緯(いきさつ)とかは知らないけど、今の能力で出来ることっていったらこんなもんでしょ」

 

「でもなー、このままじゃ瞬殺されそうだしなあ。瞬ころだよ。何とか自衛だけでと出来れば良いんだけど」

 

「カー○ィみたいに取り込んだものの能力コピーしたり出来ない訳?」

 

「出来ないよ。出来たとしてもそんな伏字含むような芸当はしない」

 

「んーーそうかあ……うん。自衛かあ……」

 

 俺の言葉に思案する様子を見せる和水。と、言っても自衛となると厳しいものがあると思う。

 

「んっ?少し思い付いたんだけど……例えば、収納したものって中でどれくらい自由に扱える?」

 

「えっと……ある程度は自由に動かせるよ。中で納豆かき混ぜれるぐらいには」

 

「例えが何か引っ掛かるけど、……それは置いておこう。それなら一つ、案を思い付いたんだよ」

 

「出来るかどうかは置いて話してみてよ」

 

「さっき見せて貰った感じなんだけどね……」

 

 

 和水はこれが出来たら面白いことになる、と言った感じで話し出す。

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

「と、いう訳で、今日は魔法少女との戦いの見学をして貰います」

 

 

 組織に着くや否や俺に向かって松村さんがそう言い放った。

 

 

「いやいやいや、唐突じゃないですか!なんか、こう……、説明的な何かがあっても良いと思うんですけど!」

 

 

 松村さんの言葉に少し反論してみる。

 

 昨日、入団の契約書を書いた翌日だ。もう少し心を定める時間が欲しい。

 そのときにはテンションがこう……ハイになっていた影響でイエスと応えてしまったけれど少しは反論はしたい。

 

 正直に何が起こるか分からない事柄は怖く、恐ろしい。

 

「なんか文句を言ったって問答無用なんだよ。今回ただ見て貰うんだけだし大丈夫だよ。ウチの数少ない戦闘員たちもそうやって成長していったんだからね」

 

「戦闘員って確か、俺の身体能力改造を数倍ぐらい強化したバケモンでしたっけ」

 

「強化って言ってもただただパワーがあるだけで特殊能力も何もない、一般の戦闘員だよ。その点キミは怪人だ。区別して扱われるから」

 

 

 (ただ)しその分どちらの力も半端なんだよな。普通に戦うと戦闘員には負けそうだ。

 昨日、和水と喋ったナイフライフルやガトリング砲は戦闘員の命の方を奪いかねないので何をしようにも使い勝手が悪い。

 

「ほら、そう悲観しないで。まだ怪人の実験段階でキミはプロトタイプ、初号機みたいなもんだし多少失敗しても問題ないよ。それに手術を耐え切っただけでもう十分凄いしね」

 

「耐え切った?」

 

「普通に考えて、身体能力を著しく上昇させる手術なんてその分負担が重くなるに決まってるんだ」

 

 

 その手術さえキツいのにまだ実験段階の怪人手術をも耐え切ったんだ。感嘆に(あたい)するよ、と松村さんは続けた。

 

 うーん、そう考えたら凄いのか?そう言えば、身体に集まってる謎パワーでこの収納能力を維持してるとか言ってた。それも怪人としての資格の一つかも知れない。

 

 結局、今まで謎パワーが過充電気味に筋肉に集まっていたのに (松村さん曰く)パーになっていない理由なんかも不明な侭だ。

 

 だから、不明瞭な点をもう少し減らしたかった。考える時間が欲しかった。今の自分の能力を確認、練習する期間がもう少し欲しかった。

 

 そんなことを思ってしまう。まあ、どれだけ準備したところで不安は拭えないのだから変わりはないのだが。

 

 

「魔法少女なんて自称してる集団なんて碌なもんじゃないと思うんすよ。もう少し期間空けましょう」

 

「その言い分だと、悪の組織自称してるウチも同じだよ。さっ、準備しようよ準備」

 

 

 そう言って、松村さんは先程の如く(かご)を俺の前に持ち出す。…………。

 

「……本当にこんな服着るんですか」

 

「……こうやって、戦闘員たちは成長して来たんだよ」

 

「その口上二度目ですよ!」

 

 

 準備不足とか情報不足とか色々理由はある。それは確かだ。しかし一番の理由は他にある。

 

 

「今どき、戦隊ヒーローものでも見ませんよ!こんな全身黒タイツの奴なんて!!」

 

「ボスの趣味を侮辱するなあぁぁ!!ボスと幹部たちの会議で数時間考えた末に完成した代物なんだぞ!!」

 

「デザイナーを通して考えろ!何で全身黒タイツなんだよ。圧倒的、不審者の鑑ですよ!!鏡見ろ!」

 

 

 口調が荒くなる。しかし、これはしょうがないとしか言いようがない。だって、これはないだろう。

 

 全身黒タイツに目と鼻と口の部分が赤くくり抜かれた仕様のもの。いや、これはない。ダサいなんてレベルではない。潰滅(かいめつ)的だ。

 今世紀にこんなものお目にかかれるとは思わなかった。

 

 

「ははは……乾いた声しか出ないな。アレだよ。ボスから見せられたときコレやばいなーとは思っていたよ。でも逆らえないしなぁって」

 

「そういう社会の不条理を押し返してこそ、反社会なんじゃないですか!松村さんだってやばいと思ってますし」

 

「ボスが突然戦闘員用の制服をつくると言った時点で何か不吉な予感はしたんだよ。でもまさかこんなのが出来上がる何て予想だにしなくて」

 

「……着るんですか」

 

 

 タイムマシンがあれば、戦闘員用の制服つくるなんて言い出した頃のボスを一発殴りに行きたい。

 

 ……ん、まてよ?戦闘員用の制服?

 

 

「さっき、俺のことを戦闘員とは区別して扱うって言ってましたよね。戦闘員と怪人は別の存在であると。これは何の服ですか」

 

「戦闘員用の服……」

 

「つまりは、それを着なくても良い……と」

 

「いやいやいや、流石にそれはアレかなぁーって。何というかズルいというか。ぶっちゃけ昔の僕の屈辱をキミにも味わって欲しいとかじゃなくて」

 

「……」

 

「ほら、一蓮托生とか。一心同体……とか。死なば諸共とか言うじゃない。ここは一つ、ねえ」

 

「……」

 

「分かった。装飾ありにしよう!それで区分は出来ることになる」

 

「……」

 

「えっ、結構妥協と思うんですけど……。装飾ありだよ。カッコいいじゃん。……決して僕が怒られるのが怖いから許してないとか、そんなんじゃないんだけど」

 

「……」

 

「……もう大丈夫です。後で一度ボスに掛け合ってみるよ。取りあえず私服で良いよ」

 

「ありがとうございます」

 

 

 井東くん怖い……と小さく呟く松村さんの声が聞こえる。ぼくにはなんのことだかさっぱりわからなかったです。

 

 平仮名だけの文ってもの凄く頭悪そうに見えるね。今気づいた。

 

 

「あっ、怪人用のコスチューム案出来たら一度見せて下さい。流石にあの衣装つくった人たちに任せっきりは絶対ヤバいと思います。ホント真面目に」

 

「それでもある程度はダサくなるとは思うけどね。やっぱり顔は隠さないとまずいしね」

 

 ──全身黒タイツの話は顔の時点ではないです。もう全てがやばいです──

 

 そんな言葉が脳裏に浮かんだが敢えて口にはしなかった。ちゃんとチェックすれば問題ないのだし。

 

「衣装の件は取りあえず解決したってことで……お待ちかねの魔法少女との対面といこうか」

 

「見学だけなら別に良いんですけど、こう……会おうと思って会える相手なんすか?何か拠点とか構えてたりするとか」

 

「いや、決まった拠点があるという情報はないね」

 

「魔法少女が活動する時間がある程度決まっていて予想できるとか?」

 

「そりゃあ、相手は見たところ成人しているようには見えないし学校とかがある時間……とか深夜とかは流石に現れないみたいだけど、いつ現れるかって言うのは予想出来ないね」

 

「それじゃあ、どうやって対面するんですか?これじゃあ打つ手がないように思えますが」

 

「相手もウチも狙っているものは同じだって話は昨日したよね」

 

「魔法石みたいな奴ですよね」

 

 

 ウチ側からの呼称は虹透石なんだけどね……と、松村さんは付け足す。

 

「つまりだね。良い感じの時間に虹透石を持って良い感じの場所で(たむろ)ってたら現れるわけだよ」

 

「そんな釣り針に魚がかかるみたいな方法で現れるんすか。早速馬鹿みたいな感じがしてきましたよ」

 

「どうやら、相手は虹透石を探し出す高度な電探(レーダー)を所有しているみたいでね」

 

「へえ、凄いですね」

 

「ウチも頑張って、虹透石から出る何らかのエネルギーに反応する電探は開発したんだけどねえ。いかんせん精度が低くてね。金ばっかりはあるから反応したとこ総当たりみたいな感じで集めているけどね」

 

 

 なるほど。そのレーダーは電気じゃなくて俗に言う魔力的な奴を目印に探し出す感じか。レーダーの訳語の電探は電波探知機と言う。

 

 それなら魔力波探知機で、魔探と漢字当てる感じかな。

 

「それでその電探を奪い取るのも戦闘員の役目だったりするんですか?」

 

「いや、まだ研究が進んでないだけでウチもいずれその電探より高度なものを開発出来そうなんだ。確かに欲しいと言えば欲しいけど、優先順位としては低いかな」

 

 

 どうやら、魔法少女に変身するための何らかを無効化させる。それと、組織が石探すのを邪魔されないようにする陽動が一番の目的らしい。

 そもそも、石が色々なところに存在するなら良かったのだが生憎石が発見されているのは此処の地域だけらしい。だからこそ魔法少女はこの地域において存在し、ウチの戦闘員もこの地域に存在する。

 

 電探の方もこの地域を中心に反応を見せいてるらしく、此処には何らかの基点があると考えられている。

 

 

「兎も角、石で少女を釣るんですね」

 

「言い方が微妙に危ないけど……そう言うことだよ」

 

 ……ああ、変装とかして行った方が良いかな。今回観戦するだけだし目立たないように。

 

「ええと、幹部の強い人一人と戦闘員十五名で行くんでしたっけ。戦闘員一人だけでも凄そうなのに十五名も……。凄いですね」

 

「本当にやばい相手だからね。だからこそ、奇策としてキミを投入することにしたんだ。キミを普通に戦闘員にした方がキミのスペック的には効率良かったのかも知れないけどね」

 

 圧倒的劣勢なのはウチだからね。大きな賭けをしないと埋められる差じゃないんだよ。松村さんは続けた。

 

 

「まあ、行けば分かるよ。彼らはすでに魔法少女を待ち伏せしている。彼女たちの傾向的にはそろそろ始まる頃だよ」

 

 

 場所を教えて貰い俺は目的地に向かうことにした。

 

 

 

◆◆

 

 

 山を少し登ったところにある第四公園。大きなグラウンドだけで遊具がなく閑散とした公園。前回は町外れにあった公園で戦っていたのだが……。もしかして、公園で戦うのがデフォなのかな。

 

 着くとそこではフリフリの服を着た二人の少女が仮面を付けた男率いる黒タイツ怪人たちが対立して立っている光景が見られた。

 

 

 何とか間に合ったか。まさかすでに待ち伏せ作戦が実施されているなんて思わなかった。俺が服装のことであーだこーだやっている間に事態は進展していたようである。

 

 

 

 

 

「やっぱり、見覚えのある顔だな」

 

 

 公園のグラウンドの中心あたりで何かを言い合っている集団に目を向ける。

 

 

 一方は、黒のタイツ姿の怪しい男たちの集まりで、もう一方は、煌びやかなドレスのようなものを着た幼気な少女二人だ。

 

 魔法少女と言うぐらいなのだから、あの二人の少女のことなのだろう。

 

 

「しかし、随分と派手だな。昨日は遠目だったから分からなかったが、ピンク髪に赤を基調としたドレス。水色の髪に青を基調としたドレス……ゴスロリって奴かな」

 

 

 俺はそう呟く。

 

 

「そうだ。一応携帯で動画でも撮ろうかな。この際、盗撮とかは考えないで」

 

 そう呟くと体内で携帯を操作する。事前に体内に携帯を入れておいて良かった。画面は見えないが録画モードになっていることだろう。昨日の作戦会議で思いついた能力の使い方だ。

 問題は取り込んだ後でもちゃんと撮影出来るのかだが、それは確認済みだ。結構クリアに撮影できる。

 

 

 それと、魔法少女との戦いは割愛させて頂く。流れは昨日と殆ど同じで魔法少女の勝利。しかし、今回の目的は魔法少女を倒すことではなく、魔法少女を消耗させることだったよう。俺へのお膳立てのようなものだ。

 

 連日で力は弱らせたから、怪人一号、やってくれよ……みたいな。

 

 今日の戦い振りを見るに守り中心だったから、そう言うことだろう。それか、巨大な魔石を発見して小さな魔石を囮に陽動しているか。ともかく、組織側も何らかを考えてのこの行動なのだろう。

 

 ともかく、俺に命令されたことは魔法少女の無力化だ。弱っている今日明日の間に何か行動を取ることにしよう。

 

 俺はそう考えた。

 

 

 そして、その行動を取るタイミングは意外と早く訪れることとなった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。