この後輩に、困ってます〜ヤンデレ男子に愛されて〜 作:泡沫ヒナ
プロローグ
「先輩のことが好きです」
そう言われて、大抵の人は
ときめいたりするのだろう。
しかし私はそうではない。
私だって恋心の一つや二つくらいは
持ち合わせているつもりだ。
しかし今の状況とそれは別。
今、千歳の目の前にいる男。
彼は一つ下の後輩の呉宮千慧。
かなりの美男子に分類される。
そして成績優秀。
こんな優良物件を女子たちが放っておくわけがない。
ちなみに性格も表面的には優しいらしい。
……裏の顔を見たらみんなどう思うのだろうか。
彼は少しだけ難しそうな顔をして、
人の顔をじっと見つめてくる。
そして、花が咲いたかのようにぱぁっと笑った。
「先輩、少し前髪伸びましたね?
んーっと、2ミリくらい! 」
「うん、よく見てるね!? 」
どうやら前髪の長さを目視で測っていたようだ。
細かいところまで見られている時点で
かなりの気持ち悪さだ。
しかしそれ以上に彼の行動は常軌を逸している。
盗聴からGPS 、個人情報の収集までを
一人でやってのけるのだから犯罪級で怖い。
このように彼は一言では言い表せないほどの
ヤバいやつである。
「あの、別にキミを否定しようと
しているわけではないんだけどね。
キミのその行動もう少し
自重してもらってもいいかな!? 」
「えー!
これは僕の、先輩に対する愛情表現なんですよ!
先輩のことが好きなだけです。
好きな人のことは詳しく知りたいでしょ?
……ほら、普通のことじゃないですか」
彼はそう言いながらジリジリと距離を詰めてくる。
私はその歩みから逃げるように
ゆっくりとあとずさりをした。
「君の普通は私にとっての異常なんだけど。
それに好きな人のことを詳しく知りたいなら陰でこそこそ調べないで本人に聞けばいいじゃない」
「えー、だって先輩聴いても
教えてくれないじゃないですか」
それはキミが答えにくい質問をするからだ。
下着の色やら、自分のことをどう思っているのかやら。
返答に困ることばかり聞いてくるのだ。
「うーん……じゃあ、すごく無難な質問しますね」
「うん」
「好きな色って何ですか」
「お、まとも」
失礼ですよ、と叱責された。
千歳は少しの時間悩んだ後、こう答える。
「ラテカラーとか……あとはミントグリーンが好きだよ」
すると千慧は目を見開いた後、
何かをひらめいた様子でにっこりと笑った。
千歳は嫌な予感を感じて、少し体が震える。
「へえー。今度ミントグリーンの
パジャマプレゼントしますね。
……あ、下着とかのほうがいいですか? 」
「キミねぇ……」
千歳は呆れてものも言えないなと、心で悟っていた。
しかも真顔で語ってくるのだから、質が悪い。
最近は役員でもないのに生徒会室にまで
顔を出すようになった。
こうなったのはいつからなのか。
千歳が千慧に懐かれはじめた原因としては
入学式の心当たりはある。