モンスターハンターライズ ~瑠璃色の歌姫と黎明の剣斧~   作:丙玄武

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四話 肩慣らし

 剣斧、ダイダロス。

 骨素材の武器で、切れ味は今一つだが、この手の素材の武器としてはそこそこの重さと硬度を活かした強い攻撃が可能。頑丈なのも手荒に扱う俺にはありがたいポイントではあった。

 

 剣斧を構える俺を眺める、二人の少女。

 

 一人はリンコ。瑠璃色の髪を持つ、狩猟笛を使う少女。

 

 一人はルイン。双剣を練習し始めた少女。

 

 二人は年の頃合いも似てるし、いい友達になればいいなと思っている。二人とも割合素直だし、現時点でいがみ合ったりはしてないみたいだ。それに心底ほっとする。

 

「まず、スラッシュアクスと言えば、斧モードと剣モードの使い分けになるね」

「そもそも、なんで分けてるの?」

「そうだね。まず斧モードは先端に重さが集中し、速く振ることが難しい。逆に剣モードの時は――」

 

 実際に、持ち手の部分のトリガーを引く。

 ここがスイッチ式かトリガー式であることが大体ではある。昔は動作によって可変するスライド式が一般的だったけど、思わぬところで変形してしまうので、トリガー式やスイッチ式に切り替えられた。

 

 スイッチ式は押せば変形する。トリガー式は剣モードの際に引き続けなければならない。

 どちらにせよ、属性突きをしたら反動によって、強制的に斧モードに変形してしまうのだが。

 

 人差し指でトリガーを入れる。ギミックが作動し、斧の部分が下がり、刀身があらわになった。

 

「剣モードは、斧だった部分が下に来る。重心が手元にくるから、動かしやすい。斧よりも攻撃速度を上げることができる。ただ、重心が下がることによって重さがダイレクトに来るから、移動速度が鈍るんだ」

「そういう仕組みなんだ……」

「さ、さすがです、師匠!」

 

 ルインは俺のことを師匠と呼ぶようになったけど、ぶっちゃけやめてほしい。同じ仲間なんだから。ハンターには格があるけど、それはクエストを選別するためのもので、初心者や上級者に貴賤はない。

 唾棄すべきは他人の妨害をしたりする愉快犯だが、そう言う連中は『事故』で死ぬことになる。それを分かっているため、ハンター達は基本的にそう言う行いはしない。

 

「基本的にスラッシュアクスに防御は存在しない。ただモンスターの攻撃を避け、攻撃を叩きこむスタイルなんだ。つまり、モンスターのパターンを知れば知るほど、攻撃を叩きこめるようになる。防御ができない分、攻撃性能は折り紙付きだよ。リーチもそこそこ長いし、習熟すれば無双もできる」

「し、師匠! 持ってもいいですか、そのスラッシュアクス!」

「どうぞ、ルイン」

「はい! う、うぐっ……お、重い……!?」

「軽い方なんだけどなぁ」

 

 ルインから取り上げる。片手で持ちあがってしまう。

 骨の素材は案外軽いものだ。軽くて頑丈だが、切れ味に欠ける。それが骨素材。

 俺が元来怪力なのもあるけど、それにしたって。スラッシュアクスを持てないとは。この筋力のなさはハンターとして少し致命的か。

 

 いや、それを補う武器があるじゃないか。

 

「ルイン、ライトボウガンを練習してみたらどうかな」

「ボウガン、ですか。で、でも、ワタシは、師匠みたいにカッコよく戦いたいんです!」

「あはは、そう言ってくれるのは嬉しいよ。でも、スラッシュアクスを持てるようになるまで、それこそ死ぬ気で訓練しないといけない。持てる限界が双剣程度なら、力による威力向上も見込めない。現実的に、君の華奢な骨格ではパワーが出せないんだ」

「……」

「何も、俺だけがハンターじゃない。それに、ボウガンは凄くカッコいいんだよ。属性弾で敵を蹴散らし、異常状態にして、戦略的に敵を追い詰めていく。俺のような突撃しか能がない連中をサポートできるし。万能なんだ」

「ぼ、ボウガン……! わ、ワタシに、扱えるでしょうか?」

「大丈夫。教えてあげるよ。リンコ、君は試してみるかい?」

「うん!」

 

 スラッシュアクスを危なげなく構えるリンコ。

 

「わぁぁぁ! 持てるなんて、すごいです、リンコさん!」

「ふふん、どうだ! なるほど、斧モードの時は走りやすいね。先っぽが重いから、どうしても……こう、振り回されちゃうけど」

「慣れなきゃそんなものだよ。変形してごらん」

「えっと、これか!」

 

 トリガーを引くと、いつも通り武器が変形していく。

 

「おお! 確かに、重みは増すけど、使いやすい……!」

「で、剣には特別な瓶を詰めてるんだ。この機構にセットすることで、瓶の中身が染み出して、剣の刀身に纏わりつく。これは強撃瓶。弓用の瓶をスラッシュアクス用に調合してるものでね、より深く傷を抉ることができる……んだけど。なんだこれ、染み渡ってないなあ。他の場所のスラッシュアクスより、武器への染みこみが悪い……? 本領を発揮できなさそうだな……」

「普段はそうなの?」

「ああ。強撃瓶以外はあんまり使われてなかったんだけど。これは他のも試してみなきゃなあ。とまあ、講義はこんなところ。リンコ、このまま試すかい?」

「いいや。肌に合わない。ボクは笛とかハンマーがいいや」

 

 ごくあっさりと武器は返却された。

 俺はいいと思うんだけどな、スラッシュアクス。

 

「それじゃ、ルインを鍛えていこうかな」

「おーい!」

 

 ヨモギが走って来た。こんなところまで、どうしたんだろう。

 リンコがそれに応じた。俺はスラッシュアクスを背中に担いだ。

 

「どうしたの、ヨモギ」

「手紙! ユウリさんに! 後これ、頼まれてたよろず焼き!」

「ありがとう、助かるよ」

 

 これで食料の方は問題ないだろう。

 狩場では時間が経過する。それは夜にまで及ぶ可能性もある。満足な食事を摂らないと、あっという間にヘタってしまう。

 こういう携帯食料があればそれでいいし、肉を焼いたり魚を焼いたりして、空腹を満たすのがハンターの常だ。

 

「ねえねえ、誰から誰から?」

「……街の加工屋からだな。えっと、武器と防具の修繕、了解。ただ素材回収に腕利きを呼んでからやることになるので、お前の街にいた頃の貯金などを使わせてもらう。ギルドに確認は取っている、余った金は新しく作ったギルドカードと一緒に送る……なるほど」

「あのカッコいー武器、戻ってくるんだね! いやー、よかったじゃん、ユウリさん!」

「そうだね。ありがとう、ヨモギ」

「あ、これコミツからみんなに!」

 

 ヨモギは更に持っていたりんご飴を俺達に配った。

 齧ると、甘みを覚えた。ぱりぱりとした飴の部分と、爽やかな林檎の風味と甘さが相まって、とても幸せな気分になる。

 

 でも、少し甘さに違和感。

 

「これ、黒蜜でも入れたのかな」

「お、ユウリさんせいかーい! 新しいりんご飴なんだってさ! 感想は?」

「上品な風味だね。でも、男性からしてみたら少し甘みが強いかも。後、少しコストが高めっぽいから値段が不安かな」

「ボクは美味しいと思う! メニューにあったら食べちゃうなぁ」

「わ、ワタシは、とてもいいと思います!」

「ふむ、女性陣には好評、男性陣には甘すぎるかも……ありがと! 茶屋と飴屋を御贔屓に! 仕事に戻るぜよ―!」

 

 ヨモギは嬉しそうに笑いながら、去って行った。

 あの子も訓練している。ボウガンを操っているのを見たが、小型のモンスターを撃退できる腕前に留まっているようだ。

 

 ルインには、まずヨモギを超えてもらわないといけないな。

 

「それじゃ、ルインの装備を作りに行こうか。ボウガンにも慣れなきゃね。まずはアオアシラあたりで試そう」

「そだね。ルインちゃん、ガンバロー!」

「う、うん、リンコちゃん!」

 

 小さくガッツポーズを決めるルインに苦笑しつつ。

 俺達はアオアシラ討伐に赴くことになった。

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