つまらない奴だと思われたくなくて、嘘をついた
5歳児のついた稚拙な嘘は、直ぐにバレた
褒められたくて、嘘をついた
俺はできるやつなんだと、本気を出してないだけなんだと周りと己を騙したくて嘘をついた
そんな小さなくだらないプライドや見栄のために嘘をつき続けて本音を隠してきた
ある時は毒親のいる可哀想な中学生に、ある時は目の前で親しい友人をなくして心に傷を負った子供に、またある時は夢を追いかけて家を飛び出した俳優に、男は様々な人物を演じ、周りと繋がろうとした
男は寂しかったのだ
学力を盛り、体力テストの結果を盛り、ありもしない話をした
見てもいない作品を見たかのように振る舞い
どう足掻いてもつまらない自分を隠すためありもしない話で好きな人の気を引き
またある時は好きな人に寄り添いたいがためにいもしない彼女との話や、いもしないせフレとの話を話した
今まで嘘を吐き続けてきた男は、その方法以外に寄り添い方が分からなかったのだ
男は空虚だった
周りから賞賛を受けても、外側の自分を褒められてる気がして、虚しかった
だからもう嘘を吐くのはやめようと思った
しかし今まで作り上げてきた嘘の鎧を脱ぐには、もう遅すぎた
失望の目を向けられるのが、嘘つきだと言われるのが怖かったのだ
それだけの事をしてきたというのに
どこまでも男は自分のことしか考えていなかったのだ
男は嘘を貫き通せるほどの強さはなく
嘘を嘘だと打ち明けられるほどの強さも持ち合わせていなかった
男は嘘だと打ち明けない代わりに、周りの、自分と同じ人間を愛そうと思った
結果、寛容な人間だと誤解された、いやそれすらも男の計算のうちだったのだろう
その行動は、男の罪悪感を紛らわせつつ、周りからの好感度をあげるには最適解だったように思える
男は常に死にたかった
ただ、己を殺せるだけの勇気は持ち合わせていなかった
事故か病気か、はたまた別のなにかか
男は不運に見舞われて死にたいと願った
そうすれば今まで吐いてきた嘘も許される気がした
さらに、嘘をついて寄せ集めた友人達が男の死を悲しんでくれる気がしたのだ
男は時々、誰にも見せない形で自分でつけた火に焼かれる苦しみを吐き出した
当然、自分の罪が少しでも軽くなるように嘘で塗り固めて被害者のフリをした
男は許されたくて、社会奉仕活動をした
ちっぽけな正義感のせいで自分を許せず、当然周りの人間にも許されるはずがないと思い
罪滅ぼしのために社会奉仕活動を始めた
周りから見たら、人を助けずにはいられない善人に見えたのだろうか、周りから賞賛を浴びた、欲しいのは賞賛ではなく自分を非難する声だったのに
いや、そう思うことでまだ戻れる見込みがあると思い込みたかったのだろうか、男は自分でも本心がわからなくなっていた
男はどこまでいっても臆病で、卑怯で、見栄を張りたがるどうしようもないクズだった
いくら環境を変えても、もう嘘を吐かないと心に誓っても
二言目、三言目には嘘を吐いてしまう
友人を騙し、好きな人を騙し、家族を騙し、周りの大人も騙した
男は自らついた嘘に苦しみ、精神を病んだ
そうすると友人達が心配してくれた
なんだか許された気がして、少し心が楽になった
そしてまた嘘を吐いた
男はどうしようもない虚言癖の持ち主だった
男は自分が許されたくて、今までの事を文章にした
結果、己の醜悪さを己に知らしめるだけだった
男はこの文章を公開して、顔も知らない人間から非難を浴びることで自分の罪悪感を軽くしようとした
公開した後、死のうと思った
でも死ねなかった
男は今日も嘘を吐き続ける
心の奥底では誰か殺してくれと願っているが、それも本心かは誰も分からない
男すらも。