俺の居場所は幻想郷   作:明希☆

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プロローグ

 

ここで一つ昔話をしようと思う。

それはまだ俺が小学生の時の出来事だ。

 

八幡「ぐすんっ…。どうして、まわりは、おれを、いじめ、るん、だよ。何にも悪いことしてないじゃないか!」

 

俺は生まれつきの腐った目が原因でクラスの奴にいじめられている。家に帰っても俺に化け物を見るような視線を浴びせる両親と妹。そんな状態なので両親からの愛情なんてものを俺は一度も貰ったことがない。

意味がわからない。どうして俺がこんな理不尽な目に合わないといけないんだ。

そう思いながら一人公園で泣いていた。

 

そんな時だった。

 

?「どうしたの僕?こんな所で泣いちゃって?」

 

一人の女性が俺に話しかけてきた。

凄く大人びた金髪の女性だ。

いじめのことがあり人間不信気味の俺は少なからず警戒をしてしまう。

こういう優しそうな人には裏がある俺はそう考えてしまうのだ。

 

?「ふふふ、そんなに警戒しなくて大丈夫よ。私の名前は八雲紫。あなたは?」

 

八幡「………比企谷八幡」

 

紫「そう。八幡君ていうのいい名前ね」

 

なんだこの人、急に下の名前で少し馴れ馴れすぎないか?

俺はそんなことを考えながら八雲さんの方へと視線を向けた。

 

紫「‼︎」

 

その瞬間、凄く驚いた表情を浮かべる八雲さん。ああ、やっぱりそうか。一見、優しそうな人でも俺の目を見ると気持ち悪いと罵り心を踏みにじる。この人もそうなんだな…。

そのまま俺の目は心と連動してどんどんと腐っていくのが分かる。

 

しかし

 

紫「八幡君、あなた相当苦労してるみたいね」

 

八幡「え?」

 

俺の予想とは違い八雲さんから悪意が発せられることはなかった。それどころか自分のことを心配してくれたのだ。

 

紫「多分、あなたが泣いてた理由もその目ね。あなたは生まれながらにしてこんなハンデを背負ってしまった…」

 

そう言いながら俺のことを抱きしめてくれる八雲さん。

俺はこの瞬間、初めて愛情というものを与えられたのだ。心が急速に満たされていくのを感じる。

そして…。

その思いは尋常なく溢れ出た。

 

八幡「う。うえ〜〜ん」

 

俺は八雲さんの胸の中で沢山の涙を流した。

それは数分間続く。八雲さんはその間、何も言わずただ黙って俺を包んでくれた。

 

八幡「ぐすん。すみません。服を汚してしまって…」

 

紫「いいのよ八幡君。あなたは今まで苦労してきたんだから泣く権利はあるのよ」

 

八幡「ありがとうございます。でも、八雲さん。あなた、俺の目が気持ち悪くないんですか?俺はこの目のせいで学校ではいじめられ、両親や妹にも嫌われています。俺に優しく接してくれたのはそれことあなたが初めてです」

 

俺はこのような疑問を八雲さんにぶつけた。

だって、今までこのように接してくれた人はいなかったのだ今の八雲さんは良い意味で俺にとって異質なのである。

 

紫「……」

 

すると急に黙り込む八雲さん。

何かまずいことを言ってしまっただろうか?そう思いながら今言ったことに不自然なことがないか思案が特には思いつかない。

俺はそんな八雲さんに不安になりながら八雲さんの口が開かれるのを待つ。

 

紫「…いいわ。教えてあげる」

 

やっとのことで口を開いてくれた八雲さん。

どうやら、怒っているわけではないようだ。

一安心。

 

紫「実はあなたの目には物凄い力を感じとったの。その力は普通の人間が浴びると物凄い嫌悪感を持ってしまう程にね。恐らく、あなたの能力なのでしょうね」

 

は?わけが分からない。

第一、俺の質問の答えにすらなっていない。

一体、八雲さんは何を言ってるんだ?

 

紫「わけが分からない。そう言いたそうな表情ね」

 

おっと、どうやら俺の感情が表情に出てしまっていたようだ。とりあえず、謝らないと

 

八幡「すみません…」

 

紫「謝らなくていいわ。目に物凄い力が感じ取れるなんて言われても混乱して当然だしね。でもね、八幡君それは本当のことなの。

あなたの目には力が宿っているのよ」

 

八雲さんの真剣な表情。

そこからは何か強い意志のようなものが感じられとても冗談には思えなかった。

しかし、八雲さんの言うことが正しかったとして疑問は残る。

それは…

 

八幡「…本当に俺の目にファンタジーのような力が宿ってるとしてどうして八雲さんは大丈夫なんですか?」

 

そう何故、八雲さんは俺の力を受けつけないのだ?この事が気がかりになってくる。

 

紫「あ〜、それはね。私は普通の人間じゃないからよ」

 

八幡「普通の人間じゃない?」

 

紫「ええ、実は私妖怪なの」

 

八幡「………は?」

 

今、なんて言ったんだ?

妖怪?いよいよファンタジーのど真ん中にきちまったか!!

と、ふざけた考えは辞めて、本当にどう言うことか頭の処理が追いついてこない。

 

紫「まあ、少し混乱してるようだけどこのまま続けさせてもらうわ。私は普通の人間と違い妖力を持っている。だから、あなたの目の効果をそれで相殺してるのよ。そう言う系の能力は基本的に操れてないうちは効果も薄く多少の霊力の持ってる人や妖怪なら何も起こらないの」

 

八幡「な、なるほど…」

 

とりあえず、頭の中を整理しよう。

俺が今まで嫌われてきた理由は目に不思議な力を宿すからで能力を操れないが故にオートで発動してたと…。でも、紫さんのように多少不思議な力を持った人なら俺の目を相殺して何も影響を受けない。

ああ、やっと理解してきたぞ。

 

紫「どうやら、理解できたようね」

 

八幡「は、はい。それで紫さん。頼みたいことがあるんですが…」

 

紫「言わなくても分かるわ。能力の制御を教わりたいのね」

 

やっぱり、お見通しか。

俺は紫さんの言葉にすぐ頷く。

 

紫「ふふふ、良いわよ。能力を制御出来るようにしてあげる。ただ、しばらく家には帰れなくなるわよ。それでもいい?」

 

しばらく家に帰れない恐らくかなりの時間を費やすのであろう。しかし、どうせ家に帰っても家族は俺を嫌っている。それなら、しばらく会えなくなるが能力の制御を覚えて家族と幸せに暮らしていけるようになりたい。

こう見えてリスクリターンはしっかり考えれる方だ。

 

八幡「はい!」

 

俺は思考の末、八雲さんに同意する。

そんな俺に対し八雲さんは優しい笑みを返してくれた。

 

紫「分かったわ」

 

その瞬間、俺の目の前の空間が割れた。

これは比喩でも何でもない本当に割れたのだ。

 

八幡「…は?え?」

 

いやいや、何だよこれ。

え?何?ここの中に入ればいいの?

そう思いながら俺は八雲さんの方へと視線を向けた。

八雲さんは相変わらず笑顔で俺を見ている。

どうやら、この中に入らないといけないらしい。

いくら、同意したとはいえ、流石にこの中に入るのは怖い。俺がそう怖がっていると。

 

ガシッ

 

俺の手は強く握られた。

 

紫「何ボサッとしてるの?さっさと行くわよ」

 

そう言いながら俺を引きずるように連れて行く。なんか、少しフレンドリーになっただけでかなり態度が変わってるような…。

まあ、いっか…。

半ば諦めた気持ちで八雲さんに連れて行かれるのだった。

 

紫「あ〜、そうそう。さっきから気になってたけど私のことは八雲さんじゃなくて紫って呼んでね」

 

……この人はとんでもない人だ!!

 

 

 

 

 

 

八雲さ「紫」…。

ねえ、この人今俺の心に言葉を重ねてきたんなけどどうなってんの?

妖怪って心まで読めるのかよ。

 

紫「ん〜。確かに心を読めるのもいるけど私は読めないわよ」

 

八幡「あ、そうなんですか」

 

どうやら、八雲さ「紫」…紫さんは心を読めないよだ。なんだ、俺の考えすぎか。

あれ?でも、「それ以上は考えちゃダメよ」

どうやら考えてはいけないらしい。

よし、考えるのはやめよう。

そして、大人しく紫さんと呼ぶことしたのであった。

 

紫「着いたは八幡」

 

謎の割れ目を抜けた後、目の前に神社が見えた。

 

八幡「あの?ここは一体?」

 

俺は率直な疑問を紫さんにぶつける。

 

紫「あ〜、そういえば説明してなかったわね。ここは幻想郷といって忘れ去られたものが来る場所よ」

 

八幡「忘れ去られたものですか?」

 

紫「ええ、ここには神や妖怪や人間。さまざまな種族が暮らしているの」

 

八幡「な、なるほど…」

 

どうやら、俺は思ったより凄いところにきているようだ。

 

紫「そして、今来た場所は博麗神社って言ってね。この幻想郷の摂理を守ってる巫女がいる場所よ」

 

八幡「巫女ですか…」

 

紫「ええ、そして、その博麗の巫女にあなたの能力が制御できるように鍛えてもらうわ

 

八幡「え!!紫さんが鍛えてくれるんじゃないんですか!」

 

てっきり紫さんが俺を鍛えてくれるとばっかり思っていた。

 

紫「う〜ん。本当はそうしたいけど私は忙しいし何より博麗の巫女は人間がやってるからそっちの方が馴染みやすいと思ったの。それに今なら次期博麗の巫女である貴方と同い年ぐらいの子もいるしね」

 

なるほど、確かに同じ人間の方が分かり合える部分も多い。恐らく、紫さんなりの気遣いなのだろう。でも、同じ人間てことは…。

 

紫「あ〜、心配はいらないわよ。ここにくる前にも言ったけど多少の霊力を持ってる人間なら貴方の能力は受けないの。博麗の巫女は、多少どころか物凄い霊力を持ってるから大丈夫よ」

 

どうやら、俺の懸念してた問題は大丈夫なようだ。いざ、鍛えてもらうとなっても目のせいで嫌われたらたまったものじゃない。

 

紫「さあ、安心したならさっさと行くわよ」

 

そう言って紫さんは俺の手をとり神社の中に入っていくのであった。

 

紫「霊奈ーーー!いるーーーー!!」

 

急に大きな声を出す紫さん。

どうやら、神社の中の人を呼んでるようだ。

すると…。

 

???「どうしたんですか、紫さん。貴方が急に来るなんて珍しいですね」

 

中から巫女服を来た女性が現れた。

 

紫「いてくれて良かったわ。実は貴方に頼みたいことがあってきたのよ」

 

???「頼みたいことですか?それはそちらの少年に関することですか?」

 

そう言いながら俺の方に目をやる巫女さん。

 

紫「ええ、そうよ。ねえ、霊奈。この子の目を見てあげて」

 

???「目ですか?」

 

そう言いながら巫女さんはしゃがみ込み俺に視線の高さを合わせる。

 

???「初めまして、私は博麗霊奈。博麗神社の巫女をやっているわ」

 

こんな小さな俺に対しても礼儀正しく挨拶をしてくれる博麗さん。

こんなこと初めてなのでどこかむず痒い。

 

八幡「…ひ、比企谷八幡です」

 

俺は少し緊張しながら挨拶を返す。

 

霊奈「八幡君って言うのね。よろしく」

 

そう言いながら霊奈さんは俺の目を捉えた。

目の前に美人さんの顔が現れ自分の顔が赤くなるのが分かる。

 

霊奈「なるほどね…」

 

何かを理解する博麗さん。

恐らく、俺の目にある力に気づいたのだろう。

すると、霊奈さんはポケットからお札のようなものを取り出す。

 

霊奈「八幡くん。少しこのお札を持ってもらっていいかしら?」

 

俺は博麗さんに言われた通りそのままお札を手に取った。

その瞬間、お札は淡い光を放たれた。

しかし、俺が驚いたのはそこだけではない。

なんと、お札からは光と共に文字が現れたのだ。

紫さんと博麗さんもそのお札を覗き込む。

そのお札にはこう書かれていた。

 

『自身に対する拒絶を操る程度の能力』

 

霊奈「やっぱり、この子の目にはこんな力が宿ってしまってるのね」

 

そういうと俺の手からソッとお札を受け取る霊奈さん。

そして…

 

ガバッ

 

抱きしめられた。

 

霊奈「貴方はよく頑張りました。その年で辛かったでしょう。でも、大丈夫ですよ。貴方には今味方ができました。紫さんも私も貴方の味方です」

 

その声は母性が感じ取られ紫さんとはまた違った母の愛のようなものを感じ取れた。

それがたまらなく嬉しかった。

 

八幡「ありがとうございます」

 

自然とその言葉が溢れる。

博麗さんは俺を抱きしめるのを辞め笑顔を向けてくれたのであった。

 

霊奈「それで紫さん。貴方は、この子が能力の制御を出来る様に鍛えて欲しい。そういう要件でよろしいでしょうか?」

 

紫「流石、霊奈ね。その通りよ。私は貴方にそれを依頼しにきたの」

 

霊奈「なるほどね。勿論、オッケーですよ。こんな子をほっておけるわけありませんし。何より霊夢に同い年ぐらいの友達ができるのは嬉しいことですから」

 

そういうとチラッと神社の中の方へと視線を向ける。

そこには、障子の隙間からチラッとこっちを覗いてる少女がいた。

 

霊奈「霊夢〜、出てきていいわよ」

 

霊奈さんが女性に対してそう声をかける。

その声を聞いた瞬間、少女はそそくさとこちらへやってきた。

 

紫「あら、霊夢。こんにちは」

 

紫さんが少女に挨拶をする。

 

???「紫。久しぶり〜!」

 

少女は、紫さんに対して元気いっぱいに挨拶を返した。

 

霊奈「こら、紫さんでしょ」

 

???「え〜、別にいいじゃん。めんどくさいし」

 

霊奈「まったくもう」

紫「あらあら。ふふふ」

 

博麗さんこめかみを抑え、紫さんは笑顔だ。

なにこの状況。

 

???「そんなことより君は?」

 

おっと、どうやら少女は俺に興味を示しているようだ。

しかし、そんな少女に対してまたしても霊奈さんは叱りつける。

 

霊奈「こら、人に名前を聞くときはまず、自分からでしょ?」

 

???「は〜〜い」

 

少女は少し間延びした返事をしている。

まったく、反省はしてないようだ。

 

???「私の名前は博麗霊夢。次期、博麗の巫女よ」

 

ない胸を張りドヤ顔をかます少女。

うん、可愛い。俺じゃなきゃ告白してふられるまであるな。ふられるのかよ。

 

八幡「俺は比企谷八幡…」

 

霊夢「八幡?変な名前〜」

 

うん。この子あれだわ。

思ったことをズバズバ言うタイプだわ。

霊夢の横に立つ霊奈さんは慌てて霊夢に注意する。(霊夢と霊奈さんの区別をつけるため下の名前で呼ぶことにした)

 

霊奈「こら、霊夢!謝りなさい!」

 

その顔は先程までの笑顔とは真逆で恐怖すら覚える顔であった。

 

霊夢「ご、ごめんなさい」

 

少し声が震えてる。

分かるよ。今の霊奈さんめっちゃ怖かった。

 

霊奈「八幡君。ごめんね。霊夢ったら同年代の子と会うのが初めてだから少しワクワクして心が浮ついてるの」

 

八幡「いえ、大丈夫ですよ。それに悪口なんかには耐性があるんでなんなら、言葉のサンドバッグにだってなれますよ」

 

そうだ。俺は今まで何度も悪口をぶつけられた今更この程度、屁でもないのだ。

すると、霊奈さんの怖い顔が次は俺に向けられていた。

え?なんで?俺なんかした?

 

霊奈「八幡君。そんなこと言ったらダメよ。心を強くすることは大事よ。でもね、自分はこんな存在だからと諦めるのは絶対にダメ。君はなにも悪くないんだから。自分に自信を持ちなさい」

 

どうやら、霊奈さんは俺のことを思って叱ってくれているようだ。

確かに今のは俺に落ち度がある。

自分のことをサンドバッグなんてこれからは冗談でも言わないようにしよう。

そう思いながらふと霊夢の方を向くと紫さんから話を受けている。

どうやら、俺の事情を話してくれているようだ。

 

紫さんから話を聞き終えた霊夢は俺の前までやってくる。

その目は、涙で潤んでいた。

 

霊夢「八幡!私は貴方の味方よ。絶対に裏切ったりしないわ」

 

霊夢…。

俺の境遇を心から悲しんでくれる存在。

俺は同い年で初めて自分のことを分かってくれる存在が目の前に現れたのだと嬉しさが溢れてきた。

 

八幡「ありがとな…」

 

俺のこの一言で霊夢の目の潤みは消える。

そして、最高の笑顔を浮かべた。

 

霊夢「うんっ!」ニコッ

 

ああ、どうやら俺には居場所ができたようだ。

 

 

 

 

 

霊夢「それで八幡?能力のせいで理不尽を受けてきたんでしょ?これからどうするの?」

 

どうやら、紫さんは俺が能力で周りから嫌われてしまっているということしか話していないようだ。

 

八幡「あ〜、えっと、霊奈さんに能力を制御できるように鍛えてもらう予定だ。しばらくは家に帰れないらしい」

 

霊夢「え?じゃあ、八幡どこに住むの?」

 

あっ!霊夢の問いに対してそのことを考えていなかったことを思います。

俺はチラッと紫さんの方を向いた。

 

紫「そうね〜。一応、私の家か博麗神社に泊まってもらおうと思ってるんだけど。どうしようかしら」

 

どうやら、紫さんも決めていなかったようだ。俺自信、まったく考えていなかったので紫さんを責めることはできない。

しかし、この問題は意外とすぐ決まることとなる。

 

霊夢「それなら神社でいいじゃん!それなら、紫が毎日送り迎えする必要もないし私も八幡と一緒に過ごせるし一石二鳥よ!」

 

前者は分かるが後者は勘違いしてしまいそうになるんですが…。でも、確かに効率を考えるならそれが一番かもしれない。

 

霊奈「う〜ん。確かにそうね。霊夢も同年代の子と関われて嬉しそうだしそれでいいと思うわ」

 

紫「あらそう?なら、そうしましょうか」

 

こうして俺は博麗神社に住むことが決まったのだった。

霊夢は万歳しながら喜び更には俺の手を取ってくる始末。

霊奈さんと紫さんはなんか、「あらあら、これは」とか「次の次の博麗の巫女も安泰ね」とか言ってる。

八幡理解不能。

でも、確かに霊夢は今まで友達が一人もいなかった。その点については俺と似てるのかもしれない。俺だって心では霊夢というはじめての友達ができたことに喜んでいるのだから。

 

 

紫「あ、よく見たらもうこんな時間ね。じゃあ、八幡のこと頼んだわよ!」

 

紫さんは、そう告げるとまたしても空間に割れ目のようなものができ、そこへと入っていった。その時に霊奈さんに教えてもらったのだが紫さんは結界を操る程度の能力を持っており、空間に隙間を作れ自由に場所を移動できるようだ。なにそれチート。

 

霊奈「さあ、八幡君。私たちも中に入りましょ」

 

霊奈さんが俺にそう告げると霊夢は俺の手を掴み神社の中へと引っ張る。

 

霊夢「こっちこっち!」

 

霊奈さんは笑顔でその光景を見ていたのであった。

 

 

 

そこから俺の修行生活が始まる。

毎日、朝8時に起床し朝食を食べすぐに修行へと移った。特訓内容は能力を抑える為、霊力を高めコントロールするというものだ。勿論、休憩時間や昼食の時間もあった為、そこまでハードスケジュールではないのだが何分、霊力のコントロールなんて何一つ出来ないど素人のため凄く大変だった。霊夢と一緒に訓練をやってたのだが霊夢と俺では全てに差があり半分絶望しかけていた。

霊奈さんは「霊夢は今までも修行をしてきたから差があるのは当たり前ですよ」と慰めてくれたが同年代でこれほどまでに差があるとなんとなく虚しくなる。

 

しかし、めげずに霊夢にアドバイスを貰おうと思って聞いてみると「う〜んと。こうギュイーーンって感じよ」と効果音で説明された。こいつはあれだ、才能で全てをこなす奴なのだとその時、悟ったのだった。

 

 

〜10日後〜

 

なんやかんや修行を始めて10日が経った。

俺も少しづつ霊力を操れるようになり空まで飛べるようになった。

霊奈さん曰く、想像以上のスピードで俺は成長しているようで能力をコントロールできるようになるのも時間の問題のようだ。

そのことを聞いた俺は少し喜んだ。

しかし、それとは対照に霊夢の表情は少し暗い。

 

八幡「どうしたんだ?霊夢?」

 

霊夢の奴が少し暗いので心配になって声をかけた。

 

霊夢「いや、ただ八幡が思ったより早く霊力をコントロールできるようになってきてるから悲しいだけよ」

 

え?なにそれ?それって俺如きが才能を持つなんておかしいということか?もし、霊夢が俺にそんなこと思ってたら泣いちゃうよ。

 

霊奈「ふふふ、大丈夫ですよ八幡君。霊夢は貴方に悪意を持ってそう言ったわけじゃありませんから」

 

俺の心情を察したのか。

霊奈さんが俺と霊夢の間に合いの手を入れる。

 

霊奈「霊夢はね、寂しいのですよ。もし、八幡君が能力をコントロールしたら元の場所に帰っていってしまうことがね」

 

ああ、そういうことか。

確かに幻想郷に来てから考えてなかったが俺は能力をコントロール出来たら元の世界に帰る。そのために今、修行しているのだ。もし、修行が終わったら霊夢と会えなくなる。

そう思った瞬間、俺の心に今まで沸いたことのない感情が生まれた。

この感情は一体…。

 

霊夢「ねえ、お母さん。もし、八幡の修行が終えたらもう八幡はこっちに来ちゃダメなの?」

 

謎の感情と葛藤していると霊夢が霊奈さんに尋ねる。確かにその通りだ。修行が終わってもまたこちらに来れるのなら別れを惜しむ必要はなくなる。紫さんなら俺をいつでもここに連れてくることができるのだから。

しかし、霊奈さんの表情は思案顔になる。

 

霊奈「う〜ん。どうでしょうね。そのあたりは紫さんと交渉してみないと分からないわね」

 

やはり、そうなるか。

霊夢の顔が見て分かるほどに落ち込む。

そういう俺も悲しん気持ちは同じだ。

と、その時だった。

 

紫「そうねぇ〜」

 

急にスキマが現れそこから紫さんが出てくる。どうやら、俺達の話を聞いてたようだ。

 

霊奈「紫さんいたんですか?」

 

紫「ええ、八幡がどれだけ成長したか見ようと思ってね。すると、思った以上に成長してて驚いたわ」

 

紫さんが霊奈さんと対面した。

すると、横から霊夢が紫さんに近づく。

 

霊夢「ねぇ、紫。修行が終わった後でも八幡をこっちに呼んじゃダメ?」

 

今までにないほど弱々しい声を上げる霊夢。

 

紫「流石にそれはね…。八幡は、あくまで修行という理由でこちらに呼んだのよ。だから、修行が終わったらお別れね…」

 

流石は紫さんだ。

こういうことは濁さずハッキリという。

これは俺と霊夢が変に期待しないようにとせめてもの配慮だろう。

しかし…。

 

霊夢「そんなのやだ〜」ウェーン

 

霊夢は泣きだし紫さんに駄々をこねる。

流石の紫さん達も霊夢は泣くのは予想外だったのか。

アタフタとしていた。

そういう俺も霊夢にどう声をかければいいのか困る。

そこで紫さんは一つの結論を出したのだった。

 

紫「あ〜もう、霊夢泣き止んで頂戴。それならこうしましょう」

 

そう言いながら紫さんは俺の前に来た。

そして、スキマからボタンを出し俺に渡す。

 

紫「八幡、外に帰ってどうしても困ったらそのボタンを押しなさい。そうすると幻想郷に来ることが出来るわ」

 

八幡・霊夢・霊奈「‼︎」

 

なんと、このボタンを押せば幻想郷に来れるようだ!まさか、こんなものがあったとわ…。これには、俺も霊夢にも笑顔が浮かぶ。しかし、紫さんの説明はまだ続いていた。

 

紫「ただしそのボタンを押して幻想入りしたらもう二度と貴方の世界には戻れないわ」

 

八幡「え?」

 

戻れないだって?それじゃあ、意味がないじゃないか。俺と霊夢の顔に戸惑いが浮かぶ。

そんな気持ちを代弁してか霊奈さんが紫さんに問いかけてくれた。

 

霊奈「これは一体、どういう意味で八幡君に渡したのですか?」

 

まさにその通りだ。

 

紫「まあ、簡単にいうと元の世界に戻って仮に能力をコントロールできたとしても向こうの世界で能力関係なしに周りから拒絶され居場所がなくなった時にこっちに来なさいってことよ」

 

なるほど、ここに来て紫さんの意図が要約理解できた。

 

霊夢「つまり次に八幡がこっちに来ることがなかったら八幡は幸せな人生を歩んでいる。だから、その時は妥協しなさいってこと?」

 

お〜、俺が今言おうとしたことを先に霊夢が言ってくれた。

 

紫「まあ、そういうことよ。もし、八幡がいなくて寂しいと思ってもそれなら、八幡は幸せに暮らしてるんだからって思えるでしょ」

 

本当によく考えられる。

これなら、最悪俺は幻想郷で暮らすことができると思うことでモチベーションを下げることなくこれからも修行を続けることが出来る。横を見ると霊夢も渋々ながら納得したようだ。

 

 

 

それからのことは早かった。

俺はその後も修行を続けてなんと約1カ月で霊力をほぼ完璧にコントロール出来るようになった。

 

霊奈「ここまでコントロールできたなら大丈夫ね。それじゃあ、八幡君。いよいよよ」

 

八幡「はい」

 

そう霊力をコントロールできるようになった俺は今から能力を抑え込むというところだ。

俺は全身の霊力を集中させ拒絶の能力を抑え込む。

その時だった。

霊夢と霊奈さんの目が大きく開く。

俺は、え?と首を斜めに倒し二人の驚く顔を眺めていた。

 

八幡「あの〜どうかしましたか?」

 

二人は一体なにに驚いているのだ?

頭の中ではクエスチョンマークが並ぶ。

 

すると、霊夢はどこからともなく鏡を持ってきた。

 

霊夢「八幡!鏡をみて!」

 

そう言いながら俺に鏡を向ける。

そこには、目の腐りが取れた俺がいたのだった。

 

八幡「俺の目が普通の目に!」

 

あまりの変わりように俺自信驚いてしまう。

こりゃ、霊夢も霊奈さんも驚くはずだわ。

 

霊奈「ヘェ〜、とてもイケメンですよ八幡君」

 

霊奈さんが俺をイケメンと評価する。

今までそんなこと一度も言われたことがなかったので思わず顔を赤くして照れてしまった。

 

すると…。

 

霊夢「むっ‼︎」

 

なにが不満なのか頬っぺをリスのように膨らませて不機嫌さをアピールする霊夢。

そんな霊夢に霊奈さんは笑いながら「あらあら、霊夢。嫉妬しちゃいましたか?」とからかっていた。

霊夢は「そんなんじゃないし!」と慌てながら反論してる。うん、可愛い。

 

と、その時!

 

紫「どうやら、能力をコントロールできたみたいね」

 

またしても何処からともなく現れた紫さん。

このタイミングで姿を出したということはそういうことだろう。

 

霊奈「紫、来たのね…」

 

そう言いつつ霊奈さんの目は霊夢の方へと向けられた。俺も霊夢の方へと視線を向ける。

そこには、悲しみを浮かべた霊夢がいた。

 

霊夢「今日で八幡とお別れってこと?」

 

霊夢は涙ながらに紫さんに尋ねる。

 

紫「ええ、外の方でも彼が行方不明扱いになってるからね。1日でも早く帰さないといけないのよ」

 

そう忘れてはいけない。外の世界では彼がいなくなったことでかるくパニックが起こっているのだ。人がいなくなったのだ。そこまで来ると嫌われてる嫌われてない関係なく警察が動く。

 

俺は霊夢の方に振り返った。

 

八幡「霊夢、これでお別れだ…」

 

涙が溢れそうだ。

しかし、泣くわけにはいかないここで泣いたら別れが辛くなるからだ。

霊夢もそれを分かっているのか涙を堪えている。

 

霊夢「八幡、外の世界で困ったことがあればすぐにこっちに逃げてきてね。私はいつでも八幡を歓迎するしここに住んでもいいから」

 

八幡「ああ、ありがとな。もし、外の世界でダメだと思ったらすぐにこっちへ来る」

 

俺と霊夢の最後の会話。

 

そして…。

 

ガバッ

 

俺と霊夢は抱き合ったお互いに初めてできた友達。しかし、2人の中ではすでに友達という領域を超えていたのである。別れ際になって2人はそのことに気づいたのだ。

 

霊夢「八幡、私貴方のことが好きみたい」

 

霊夢は俺に告げる。

俺はその言葉に対しすぐに返答する。

 

八幡「ああ、俺もだ」

 

これで最後かもしれない。

それが俺と霊夢の歯止めを取り外しお互いに思い思いのことを告げあったのだ。

これが最後かどうかは分からない。

ただ、少なくとも外の世界に居場所がなくても俺にはここがあるそう思えたのであった。

 

紫さんと霊奈さんは俺たちの事をただ黙って見届けてくれている。

しかし、そんな時ももう終わりのようだ。

 

紫「さあ、八幡。そろそろ行くわよ」

 

紫さんの言葉を聞き俺たちは抱き合う事をやめた。霊夢の顔は真っ赤だ。きっと俺の顔も同じくらい赤いであろう。

 

そして、俺は元の世界に戻った。

 

その後は色々と大変だった。

一ヶ月も行方不明だった俺が突然帰ってきて世間は大混乱だった。

しかし、そんな混乱も一週間もすれば治り日常へと戻った。

家に帰った時、家族からは目が綺麗になってることについて聞かれたが適当に誤魔化した。そして、その後の生活は前までの生活とは大違いである。能力を制御した俺は家族から愛を受けるようになった。前までとは違い本当の家族というものを手に入れたのである。ただ、学校では今まで同様にボッチだ。

何故かと言うとそもそもの話、今までの都合上、俺は集団というものには慣れていなかった。だから、あえて一人でいる事を選んでいるのだ。しかし、前のような嫌がらせを受けることは特にない。それは俺にとって普通の幸せだったのだ。寂しいが恐らく霊夢と会うことはもうないであろう。俺はそう思っていた。

その後、俺はすくすく育ち無事、小学校、中学校を卒業した。

しかし、何故か知らないが俺が誰とも関わらずに過ごしているのを見た平塚先生に無理矢理、部活に入れられた。そこには何もやっていないのに罵倒してくる部長や理不尽にキモいを連発する部活仲間がいる。

どうして、こうなった…。

俺は、正直、ストレスだったが能力をコントロールできてなかった頃に比べればマシだし何より今は家族から悪意を受けることがない。それが救いでなんとか耐えてきた。

 

しかし…。

 

それにも限界が来た。

それは修学旅行の時である。

 

『貴方のやり方嫌いだわ』

『人の気持ち考えてよ』

 

俺は理不尽な依頼を解消する為に嘘告白をした。

それによって、部活仲間から罵られ、

クラスでも俺が告白の邪魔をしたと噂になりまるで能力のせいで虐められてた時のような境遇に成った。

 

ははは、何やってんだろ俺は…。

せっかく紫さんや霊奈さん達が協力して能力を制御出来たのにこれじゃあ意味ないじゃないか。

そんな時、俺はあの時のボタンをポケットから出した。

 

八幡「まさか、これを使うことになるなんてな…」

 

そうして、俺はボタンを押す。

 

目の前にはあの頃と変わらない神社が立っていた。

 

 

 

 

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