the final terra ■■■■■■■ next episode LOST/REVELATION 作:八咫鏡光
~LOST part1~
雑音から誰かの呟く声が聞こえる。その声は一体誰で、何処からなのか分からない。ただ、それは紛れもなく俺に対して発している声だというのは、なんとなく分かった。
『もう‥‥‥遅すぎたんだ』
諦念を促す小さな声‥‥‥。俺はなぜそいつがそのような事を言うのか?初めはよく分からなかった。
*****
「瑚太郎‥‥‥瑚太郎!」
俺の名前を呼ぶ声に微睡んでいた意識が冴えた。声の主はちはやだった。わざわざ俺を起こしに来てくれたのか?
「ああ‥‥‥おはよう」
「おはよう‥‥‥じゃないですよ!!早く支度しないと!!」
「支度?」
「もう‥‥‥寝ぼけてる場合ですか?今日は朱音さんや他の偉い方との合同会議なんでしょう?瑚太郎はメシアのトップなんですから、しっかりしてください」
「ん?‥‥‥いっけね!!そうだったわ!!」
メシア‥‥‥。そんな言葉を聞いて、俺は忘れかけていたことを即座に思い出した。『メシア』という組織はかつて『鍵』と呼ばれる存在を巡り、『ガイア』と『ガーディアン』と呼ばれる組織が対立していた頃、俺と俺の仲間がこの二大勢力の一部を和解させ、より良い未来のためにと新たに作り上げた組織だ。その中で一番貢献したとして、俺がそのメシアのリーダーとして選ばれたわけだ。そして、その合同会議は、その騒動の原因となった『鍵』が突如消息を絶ち、その『鍵』の消息を絶ったことで各地で天変地異が起き始め、その対策及び消息を絶った『鍵』の捜索のために話し合おうというものだ。
「でも瑚太郎。まさかリーダー専用オフィスで雑魚寝してたなんて、珍しいですね。いつもなら自宅で自分の部屋で寝ているでしょ?」
「そうだな‥‥‥。帰りにはいつも小鳥が夕飯を作って待ってくれてるから、それが楽しみでいつも帰りはルンルン気分で帰るんだけどな‥‥‥」
「お熱いですよね。相変わらず二人は‥‥‥」
からかうように、少し羨むように言うちはや。現在、俺と小鳥は恋人となって一年の歳月が経つ。だが、ここんところメシアでの仕事が爆発的に多くなってきたせいで、ろくにデートも出来ていない。それでも二人の仲は全然冷めてないのが幸いか。なら、何故今回は家に帰らなかったのかは、先述したとおりメシアの仕事が最近増えて、徹夜でそれを終わらせていたのだ。この激務ですごく疲れて、今夜は会社で泊まると小鳥に一報してそのまま寝てしまったわけだ。
「それじゃあ、会議行ってらっしゃい」
「ああ‥‥‥。起こしてくれてありがとうなちはや」
「どういたしまして」
*****
会議室にはすでに七名の代表が集まっていた。ガーディアンの代表として江坂さん、ガイアの代表は朱音さん。それ以外にもガーディアンやガイアほどの勢力はないが、他の勢力の代表も集まっている。
「遅いじゃない天王寺。メシアの代表でもあろうお前がそんな体たらくで、一体どう動かしていくのかしら?」
長く待たされて相当不機嫌なご様子の朱音さん。それ以外は何も表情を出さないが、朱音さんと同じ心境だろう。とんでもない大失態だ。
「あの‥‥‥遅れてしまって本当すいません」
「まあまあ、昨日は相当な量の仕事に追われていたんだろう?君はまだ、こういうのには慣れていないはずだ。それは仕方のないことだ、天王寺君」
「すいません。江坂さん」
「さあさあ、天王寺代表‥‥‥。自分のお席へ」
江坂さんに擁護され、別の代表の方(見た感じ江坂さんと同い年くらいの男性)に着席を促されて、俺はもう一度「すいません」と断りをいれて自分の席に座った。
「改めて、今回の会議で突如消息不明になった『鍵』の行方の捜索、その後の天変地異の対策について‥‥‥」
俺が、今回の会議の内容について読み上げようとした時、朱音さんが突然スッと左手を挙げた。
「ちょっといいかしら天王寺代表」
「はい‥‥‥朱音さん」
俺がそう答えると、朱音さんは一度周りを見渡し、改めて正面を向いて話し始めた。
「今回の会議でもう一つ取り上げてほしいことがあるの。それは、天王寺率いるメシアに敵対する一部のガーディアンとガイアの連中についてよ」
朱音さんが告げたその内容に、一同がざわつき始める。だが、俺の左隣に座っていた江坂さんが「静粛に」と声を上げたので、それもすぐに収まった。
「我々ガイアは決して統率のとれている組織ではないことは、皆さんにも周知の事実。私が率いる『穏健派』と加島桜が率いる『聖女派』今は亡き洲崎が率いていた『強硬派』そして近年我々が目をつけている『過激派』が存在する。その中でも『聖女派』と『過激派』が最近、おかしな動きを始めているそうなのよ」
「おかしな動き?『過激派』の連中はともかく、あの『聖女派』が動き出しただって?」
「ええ‥‥‥。『鍵』の存在が無き今、あの連中はもう動くことがないと思っていたのだけど、たった今ミドウとテンマ、テンジンの三人からその報告があがったのよ」
ミドウとテンマ、テンジン‥‥‥。三人とも、かつては俺たちと敵対したガイアの『強硬派』の暗殺者達だったが、紆余曲折を経てなんとかこちら側に付いてくれた人物たちだ。
「おう!呼ばれたんで邪魔するぜ大将」
そういって、ミドウが会議室の中へ入ってきた。
「邪魔するなら、帰って頂戴」
「あいよ~っておい!!呼んだ癖にすぐ帰らせようとすんじゃねぇ!!てめぇ!!」
‥‥‥とまあ、主ともいうべき朱音さんとも関係は良好?だったりする。てか、このやりとり何回も見た気がする。そんでさっきの『大将』呼びは俺のことである。彼らの説得後、なぜかそう呼ばれた。
「で?そのおかしな動きとは一体何だね?」
そんな珍妙な光景を気にせず、江坂さんがミドウに質問をした。
「ああ‥‥‥。その動きを確認できたのはつい最近なんだが、風祭市‥‥‥いや、ほぼ世界全域で『聖女派』と思しき連中が少なくて三人、多くて十人単位で何やら動き回ってることが分かった」
「まだ目的は定かではないけど、加島桜は新たな鍵ともいうべき何かを探っているのではないか?と私はそう踏んでいるわ」
新たな『鍵』?
「ちょっと待ってくれ!!新たな鍵?篝の代わりになるやつを、加島はもう見つけたとでもいうのか?」
俺のそんな質問に、朱音さんは「いいえ」と首を横に振った。
「まだ目的は定かではない‥‥‥と言ったはずよ。だけど、私がまだあの屋敷にいたとき、加島桜は私にこう伝えていたの」
「伝えていたって?」
「ええ‥‥‥といっても意味はよく分からなかったのだけどね。その内容は‥‥‥」
朱音さんが俺にその内容を伝えようとしたとき、
『鍵が無き世界に、秩序は‥‥‥』
ギィィィィンという耳障りな音が俺の頭に響いた。
「どうしたの?天王寺」
そんな俺の様子に気づいたのか?朱音さんが訝しそうに尋ねる。
「だいじょう‥‥‥ぶ」
『世界に‥‥‥秩序は‥‥‥』
「くっ‥‥‥」
耳障りな音と共に聞こえる誰かの声。俺はその不協和音に呑まれ、意識は深い闇の底へ落ちた。
*****
「うわああああああ!!‥‥‥ってここは?」
気が付くとそこは、辺りが真っ白になった世界。空と海は濁った灰色。街の建物はみんな真っ白い何かに覆われていた。そして‥‥‥、
「嘘‥‥‥だろ?」
人間達も真っ白な彫像のような感じになっていた。そこには生気すら何も感じなかった。
「なんで俺はここに?」
俺が首を傾げながら、そっと地面から立ち上がると‥‥‥。
ガシャンッ!!
「うおっ!?」
俺の左横に何かが猛スピードで飛んで、建物の壁にぶつかった。俺はその壁の方へ視線を移す。
「なっ!?ルチア!?」
その正体は俺の仲間の一人、此花ルチアだった。なんでだ?なんでルチアが吹き飛ばされ‥‥‥。
「!?」
今度は、反対から衝撃音が聞こえた。俺のいる方向から北西。そこから煙が立ち上っていた。
(行ってみるか‥‥‥)
俺は全速力で、煙が立ち上る方向へ向かった。高いビルに囲まれ、よく見ると煙は二か所に出ていて、真ん中には大きなクレーターが一つ。そのクレーターの中には‥‥‥。
(誰だ?)
クレーターの真ん中には、背の高い紺色のフードを被っていて、フードの中から一部白い髪がちらついていた。体つきからして、フードはおそらく男だろう。そして、上っていた煙が晴れ、そこに倒れていた人物を目にして思わず声を上げた。
「静流!!テンマ!!」
俺のそんな叫び声に気づいたのか、フードの人物がこちらに振り向き近づいていく。
「下がれ!大将!!そいつは敵だ!!」
怒鳴るように、上からそんな声が聞こえた。同時に空から複数の炎の球が一斉に、フードの人物に目掛けて襲い掛かる。
「おい!怪我はないか?大将」
「ミドウ」
俺のすぐそばで、ミドウが姿を現した。さっきの攻撃はミドウだったのか。
「あれは何なんだ?」
「さあな‥‥‥。けど、これだけは分かる。あの野郎は、間違いなく
「マジかよ」
「ああ。その証拠に俺の仲間がやられたからな」
じゃあ、さっきのルチアや周りで倒れている静流達は、全部アイツの仕業だということなのか?
「呑気に考えてる暇はねぇ!俺はぜってぇ~あの野郎をぶち殺す!!大将!!巻き込むとやべぇから下がってろ!!」
「でも」
「いいから下がれ!!‥‥‥ってぐわあ!!」
俺に向かって檄を飛ばすミドウを、その隙を狙って向こうから途轍もない風圧を以て吹き飛ばした。
「嘘だろ‥‥‥?ミドウ!!」
俺が倒れているミドウに声をかけていると、
「騒ぐな。彼は意識を失っただけだ。他の連中もな」
フードの男は後ろから冷ややかな声で、俺にそう伝えた。
「お前は誰なんだ?」
俺は土気が混じった唾を飲み込み、警戒を向けた目で男に訊ねる。フードの男は、頭にかかっていた紺色のフードを取り、その素顔を見せた。
「な、なんだ?お、お前は‥‥‥」
「ほう‥‥‥。一発で俺が誰か見抜いたか。あんな漠然とした理想論を騙る男だ。もう少し腑抜けた面を期待していたが‥‥‥」
その素顔を見て察した俺に向かって、男は嘲笑を浮かべた。髪は白の長髪。それまでは
「どうして?
紛れもなく、天王寺瑚太郎の姿だった。見た目は特に髪型はもう完全に別人だ。だが、素顔はこっちの自分よりいくらか大人ではあるものの、俺であることに気づいた。
「はぁ‥‥‥。
俺には聞き慣れない言葉を堂々と使うあっちの俺に、段々イラつき始めた。
「おい!テメェはなんで他の皆をあんなふうにしたんだ?」
「ふん。俺の姿を見た瞬間、突然襲い掛かってきたからだ。さすがに問答無用に刃を向けられたら、如何せんこうなるだろう?」
突然襲い掛かってきたからだ?
「分かりやすい嘘をつくんじゃねぇ!!テメェから襲い掛かってきたからこうなったんだろうが!!」
「阿呆。俺とてそこまで好戦的じゃない。怒りのあまりまともな考えが出来てないやつが、あれこれ決めつけるんじゃない」
滅茶苦茶だコイツ。確かに俺は怒りを感じてはいるが、そこまで頭が回らないほどそこまでキレていない。冷静さを欠けばどうなるかぐらい、今までの経験で身に沁みて分かっている。
「どうだか?まあ、それよりもお前には予め忠告‥‥‥いや、忠告ってもんじゃないな」
「一体なんだ?何を伝えたいんだ?」
奴は一度俺と視線を逸らし、考える仕草をしながら、そしてまた視線を俺の方に戻し、口を開いた。
「唐突に告げよう。お前達がどうあがいたところで無駄だ。滅びは変えられん。『鍵』なきこの星に、未来はない」
「は?」
無駄だ?未来はない?コイツ、俺をおちょくりやがって‥‥‥。
「あがいたところで無駄だ?未来はないだぁ?いい加減なこと言ってんじゃねぇ!!一体お前は、何を根拠にそう答えられんだ?」
俺は人差し指を相手に向けながら、これ以上にない憤りを声に乗せて言い放った。対して相手は、相変わらず冷めた目を俺に向けている。
「無駄なんだよ。この周りを見てみろ。世界は白く染まり、生命の息吹は止まり、人類は滅びの一途を辿った」
「じゃあ、これが‥‥‥この世界は俺たちが辿る未来だって言いたいのか?」
「ああ‥‥‥。それがお前達の未来。定められた人類の終焉だ」
前編『LOST part2』へ続く‥‥‥。