やはり俺の武偵ラブコメは間違っている。   作:みにぃ

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第一話

東京武偵高校、レインボーブリッジの南、東京湾上に位置し、南北二キロ、東西五百メートルに及ぶ巨大な人口浮島に存在する高校である。この人工浮島(メガフロート)は、学園島などと呼ばれており、その浮島の全てが校舎というわけではなく、学生寮などのおよそ学生らしい生活をするための施設が揃っている。

今日は武偵高校の始業式、当然武偵高校の生徒である俺も本来であればもう通学路の半分は過ぎ、新学期に胸を躍らせる他の学生もちらほらと見え始めるはずだったのだが…。

 

 

 

ーー俺は今現在、チャリジャックにあっている。恐らくこんなものを経験するのは世界広しといえども俺、比企谷八幡と…、こいつだけだろう。

 

「なあ遠山…。」

 

「なんだ比企谷!何か助かる方法を見つけたのか!?」

 

ぜえはあと息を切らしながらも、現状を打開できる可能性に期待を寄せ、こいつ、遠山キンジは聞いてくる。しかしながらこの現状を打開する術を俺は持たない。俺が今この状況でできることはただ一つ…。

 

「なんで俺らこんなことになってんの…。」

 

「現実逃避じゃねぇか!」

 

そう、現実逃避である。てかこの状況でツッコんでくれるとかこいつ意外と余裕あるな。

だがまあ、現実逃避の一つもしたくなるというものだ。新学期早々こんな事件に巻き込まれ、しかも元はといえばこいつが俺に一緒に登校しようぜなどと言ってきたくせに、幼馴染の女の子とイチャコラした後、なぜか部屋でグダグダしていた結果バスに乗り遅れ、チャリで行くことになったせいである。むしろこいつに何一つ文句を言ってないことを褒めてほしい。

 

「お前の方は何かないのかよ。」

 

「さっき言ったろ!俺に考え付くのは人のいないところに行くってくらいだ!」

 

息が切れているせいか、遠山はがなるように叫ぶ。この様子じゃ解決策を考える余裕もなさそうだ。

俺も再度打開策を考えるべく、周りを見渡す。まず目につくのは、後ろから俺たちの後をついてくる二台のセグウェイ。人は乗っておらず、その代わりに大きめのスピーカーと一基の自動銃座に、恐らくUZIと思われる銃が据えられている。いわゆるセントリーガンのような出で立ちである。こいつらはまさに今回のチャリジャックの犯人であり、通学路を走っている俺たちに

 

・自転車に爆弾が仕掛けられていること。

 

・自転車を降りる、減速する、またはケータイなどを使用すると爆発する

 

ということを伝えてきた。

現在走っているのは第二グラウンド。朝ここに人がいることは全くない。…恐らく遠山は最悪爆発することも考えてここに向かったのだろう。

しかし、そのせいもあり、周りに利用できそうなものは一つも…。

 

ふと、隣を走っていた遠山が遠くを見ていることに気付く。視線を追ってみると…、ずいぶん小さな少女。中学生くらいだろうか。女子寮の屋上からこちらを見つめている。髪色は鮮やかなピンクで、かなり高めの位置で結んでいるツインテールだ。

このチャリジャックの犯人か?何かの実験でこのようなことをしているのだろうか。

 

「比企谷、あいつ…。」

 

遠山が信じられない、といったように話しかけてくる。

 

「ああ、怪しいが、とりあえずは俺たちの現状をどうにかしないと…」

 

そこまで言った瞬間、その少女は空中にその身を躍らせる。

 

「飛び降りた!?」

 

目を丸くして遠山は叫ぶ。何が起こっているのかわからないのだろう。俺もよくわからんが…。

少なくとも確信する。あの少女は敵ではない。恐らく彼女は俺たちを助けようとしている。武偵高の人間だ。

でもなければ、わざわざあんな行動を起こす意味がない。

 

「おい。」

 

声をかけると遠山はこちらへと顔を向ける。恐怖や期待、そしていくつもの疑問が入り混じった表情をしている。

 

「あいつは多分俺たちを助けるつもりだ。」

 

「マジかよ…!」

 

遠山はいまだ半信半疑といった様子で再度少女を見つめる。少女は空中でパラグライダーを開き、こちらに視線を向けている。

 

「だが、多分俺たち二人ともお世話になればかなり危険性は上がる。だから、お前はあいつに助けてもらえ。俺は一人なら何とか出来る。」

 

言って、俺は自転車の向きを海岸線へと向け、全力で漕ぎ始める。一台のセグウェイが俺の方へ向かって追走してくる。どうやら一人一台。ということらしい。

ちらと、もう一度少女の方を振り返る。

 

「…!……!!」

 

こちらに何か言っているが、すでに声が届く距離ではない。しかし少女は、こちらが何かの考えをもって分かれたことを察したのか、すぐに遠山の方へ向き直る。

他人とのコミュニケーションがこんなにうまくいくとは…。俺史上一番スマートなやりとりだったかもしれん。俺あの人と何も喋ってないけど。

ともあれ、うまくいって良かった。さっき言ったが、俺は、一人ならなんとかできる。

海岸線へ近づき、堤防が見えてくる。

…そろそろか。

 

ーー俺は能力を発動する。

とはいっても、火を出したり、見えない力で何かできるわけではない。

 

ただ、消えるのだ。

 

俺が乗っていた自転車も、俺自身ももう誰にも見えない。俺を追ってきたセグウェイも、今俺のことは認識できていないだろう。

そして、そんなイレギュラーが起これば犯人は何をするか、そんなのは簡単に予想できる。

 

当然、起爆だ。

 

瞬間、海が爆裂する。堤防に積まれていたテトラポットがバランスを崩し、何個かガラガラと海に沈んでいく。被害はその程度だ。

周りが水というのもあり、本来であればマンションも解体できるほどの威力がある爆弾だったらしいが、この程度の被害で抑えることができた。

後はセグウェイだが、俺が能力を発動してからは完全に機能停止したかのように動かない。放置していれば犯人のもとへ帰っていくかとも考えたが、特にそんなこともなく、五分ほど待っても動かなかったので、持っていたハンドガンで銃身を破壊しておく。タイヤも破壊しておいたので、あとで探偵科の誰かが回収してくれるだろう。

 

…登校、ここから徒歩かよ。

 

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