やはり俺の武偵ラブコメは間違っている。   作:みにぃ

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第七話

今日も一人で家を出る。普段俺は朝飯を作る関係上、遠山よりも早く起きる。そして朝食を作り終えれば、他には特にやることはなく、必然的に俺は遠山よりも早く準備が済む。

去年、遠山がルームメイトになった最初の登校日に、同じ部屋なのに時間をずらすのも変な話、と言われ、それ以降はずっと二人で登校してきた。

まあ、それも神崎の出現によってしばらくは脅かされていたわけだが。やれ朝食が手抜きだの、やれ一緒に登校するだの。お前が男子寮から出てくるのを誰かに見られたら学校中の騒ぎだろうに。

しかし、ある日を境に神崎はうちの寮から出ていった。何やら遠山が『神崎が最初に関与した事件を一度だけ手伝う。』という契約の元、解放されたらしい。それ以降、誰かと一緒に登校することもなくなっていった。

 

一人で登校していて、今までがおかしかったのではないかと、そう思うことがある。俺たちの関係性がどこかでずれ始めていて、それが露見したのがあの夜だったのだと。ならば、またこのような関係性に落ち着くのは当然であり、わざわざ一緒に登校する必要もない。

…自分に言い聞かせるような言葉を並べ立てながら、俺は傘を開く。

 

今日の東京は局地的に降雨、との予報だったが、どうやらこの武偵校のある浮島は、ピンポイントでその局地に分類されるらしく、そこそこな強さの雨が降っていた。

今年はもう既に春の暖かな陽気を感じることも多くなってきたが、雨と合わさると急激に気持ち悪い。生暖かく、まとわりつくような陽気だとそうなるのだろうか。

まあ確かに、陽キャパリピみたいな連中は見てる分には特に何も思わないが、こっちに絡んでくるのはとんでもなく不快なので、陽気というのは元来、過度に接したりするのは不快なものなのかもしれない。

しかしそうなると、陽キャは他人に絡むという行為が大好きであるため、結果的に不快な生き物、ということになる。なら逆説的に、ぼっちの俺は誰も不快にしようがない、完璧な生き物であるという方程式が成り立つのでは?

なるほど、俺が話しかけたりしても冷たくされるのは俺を不快にさせまいという気遣いだったのか。超納得。

 

そんなことくだらないことを考えていると、どうやらゆっくり歩きすぎたらしく、目の前でギリギリ乗る予定だったバスが行ってしまった。まあ、見る限りめちゃくちゃ満員だったようなので、間に合っていても見過ごしたかもしれないけど。

 

次のバスが到着すると、寮暮らしの生徒達がぞろぞろとバスに乗り込む。俺はほぼ前の時間から待っており、バス待ちの行列の先頭に陣取っていたので、座ることができた。災いを転じて福となす。予定より一本遅くて正解だったかもしれん。

 

バスの中から何を見るでもなく、ぼーっと外を眺めていると、ふと、違和感を感じる。直感と言っても良いかもしれない。誰かに見られているような、気持ちの悪い感覚。好奇の視線と似ている。まだ新学期初日のことを気にしている奴でも、バス内にいるのだろうか。

 

―プルルルルル、プルルルルル

 

ふいにバス内に、誰かのケータイの音が鳴り響く。

 

「ご、ごめんなさい…。マナーモードにしてたはずなのに…。」

 

どうやら音の出どころはバス前方の座席に座っていた女子生徒のようで、焦って鞄からケータイを取り出そうとしている。おいおいマナーがなってないな。俺だったらバス、電車、家に関わらずケータイが鳴ることなんてありえないというのに。それ俺の連絡先知ってるやつがいないだけじゃねーか。

 

「このバスには、爆弾がしかけてありやがります。」

 

突如聞こえてきたその声に、俺はハッとし、その声の聞こえてきた方を見る。

先程ケータイが鳴っていた女子だ。そのケータイから声がしている。そして聞き間違うはずもない。この、継ぎ接ぎじみた機械音声は…。

 

「速度を落とすと、爆発しやがるです。」

 

「武偵殺しだ!」

 

バス内の誰かが叫ぶ。一言でその情報が行き渡り、車内は騒然とし始める。

だが、武偵校は伊達ではない。強襲科で見る顔以外でも、多くの生徒は、現状をどうやって打破するかを考えているようだ。既に臨戦態勢に入っていると言っても良い。

 

「乗客は、おとなしくしやがれです。」

 

どうやら手口は俺たちのチャリジャック事件の時と同じだ。運転手も、この学園島での勤務が長いのだろうか、出来るだけ信号に捕まらないようなルートを選択しているように見える。落ち着いている、とまではいかないにしても、冷静さは保ってくれているようだ。

 

…時間は、ある。

 

チャリジャックと同じであれば、爆弾以外にも、何かバス外からこちらへの攻撃手段があるはずだが…。

そう思い、窓の外を見回す。

特に変わった物は見つけられない。しかし、本当にこの前と同じ犯人だとするのであれば、いないということはありえない。俺の窓から見える範囲だと限界がある。別の部分からも探したいところだが…。

ふと、あるものが目に付く。窓から見えた、バスのサイドミラー。その中に赤い何かが映り込んでいる。目を凝らしてよく見れば、真っ赤なオープンカーが後ろを走っている。スピードを上げるしかなくなったバスと同じ速度で、だ。運転席を見ると、そこにハンドルを握る運転手の姿はなく、さながらミニ四駆のように、車だけでこのバスの後ろを付けてきている。

間違いない。あの車だ。あの車だけだろうか、他にそれらしきものは見えない。この前の銃付きセグウェイのようなものはないだろうか。

と、頭を巡らせつつ、学園島を一周したくらいだろうか、

 

「青海南橋を、渡りやがれです。」

 

今までになかった明確な指示が、件のケータイから聞こえる。青海南橋?

渡って何をするつもりだろうか、学園島から青海南橋を渡ればお台場に着くはずだ。お台場で何かあるのか、それともお台場の更に先にある何かを目的としているのか。

いや、それは今考えるべきではない。既にバスは青海南橋に向かっている。武偵殺しの手口としては、爆弾で自由を奪ってから、銃のついた何かで追い回す、というものだ。

となれば、今現在の問題点はわかりやすい。バスに仕掛けられた爆弾の位置、そして銃のついた何かがどれくらい、どこに、どのようにして用意されているのか、という点だ。

爆弾の位置は、武偵の防弾制服、を身に着けた生徒の指示で、俺含め車内にいた生徒たちが今も捜索しているが、恐らくは徒労に終わるだろう。俺なら絶対に車内には設置しない。最も効果を発揮し、更に解体もしにくい位置がベスト。

…俺なら車体下に爆弾を張り付ける。とはいえ、俺は車の構造に明るいわけでもない。間違っているかもしれないし、よしんば当たっていても具体的な細かい位置までは分からない。爆弾についてはここで一度切り上げだ。

次に、銃をつけ、このバスを追い回しているはずの何か。とりあえず、あのオープンカーは確実だろう。挙動が怪しすぎる。

しかし、前回と同じ犯人であれば、ここまで簡単な計画の穴を残しておくとは考えにくい。一台だけとは思えん。しかし先程から気になるものと言えばその一台のみ。地上ではない?陸でないなら、海、あるいは…。

思考がそこまで達した瞬間。窓の外からヘリコプター特有のプロペラ音が聞こえることに気付く。やはり空からも見られていたのか。

…いや、だとしたらおかしい。武偵殺しは過去、ラジコンヘリを使っていたこともあったはずだ。それがバス一台に本物のヘリ、というのは、流石に行き過ぎだ。

そうして思考をまとめていくと、一つの可能性に行き当たる。男子高校生二人が、誰も気付かないようなチャリジャックに遭っていることすら見逃さず、救出の危険性を考慮するまでもなく助けに来てしまうような、わがままで傍若無人。果ては融通も利かず、助けると言ったら絶対に、何が何でも助けにくるような、バカ真面目でとんでもなく優秀な武偵を、一人知っている。

バスの上に何かが落ちてきたような音が聞こえる。そして、言い争うようにしている、一年も前から聞き慣れているルームメイトの声と、…ちょうど最近聞き慣れた、わがままで、そしてとんでもなく優秀な武偵の声。

 

…対応早えよ。流石はSランク。

 

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