死途の徒 作:三羽世継
「部長」
「なんだね佚依クン」
「愛って、なんですか」
「躊躇わない事、かな……!」
なんだそれ。
○
告白、された……のだろうか。
一段階、すっ飛ばした気もする。
先輩の時は、告白にすらなっていない劣悪なものだと感じた。後にそれは払拭されたけれど、やっぱり、モノになってくれないかな、は告白じゃあないと思う。
それで、今回。
此度。
愛が育まれてしまうのは、仕方のない事。
これは……告白、では、ない、よう、な?
「
「あ、うん」
「それで、どうした。またヨツギに何か言われたか?」
「あ、うん」
「またか……。ふん、あの悪霊め、
「あ、うん」
「……今日の天気は槍だな?」
「あ、うん」
混乱の極致にある。
先輩の好きが、一目惚れで……本物だと言われてしまった。それは、信じざるを得ない。けれど信じ切ったわけじゃない。まだ、先輩はアカツキを忘れているから、その全てを思い出した時にどうなるかはわからない。神の味噌汁。神、たくさんいるけど。
先輩の事は、これで言い訳できる。考えないようにできる。
けど問題は神様だ。アカツキだ。
──"貴女とはちゃんと、愛を育まなければいけないのだとね"
──"愛が育まれてしまうのも仕方のない事"
これはどう、言い訳をしたらいい。
アカツキは素直だ。ヨツギのような陰湿な感じも、先輩のような演技染みた感じもない、本当に素直な神様。我慢が出来なくて、自分を偽るのが苦手で、ある意味で子供みたいな、そんな、そんな。
まだ好きと、言われたわけではない。……というのが、今できる最低限の自己防衛ラインだろうか。
愛といっても色々種類がある。恋愛だけじゃなく、親愛。友愛。アカツキの言い方を出来るだけほぐして飲み込むのなら、私とアカツキが過ごす時間の間に、絆だとか縁だとか、とかく信頼のようなものが生まれても仕方がない、という風にとらえられないだろうか。
アカツキにとって恋愛の愛と親愛の愛の区別がついていないから、まるで同義のように、同列の様に扱っただけ、とか。
「心此処に在らずといった様子だが、
「うぇっ」
「ほう、
「せ、生者には過干渉するべきじゃないって
「何、
「詭弁だぁ」
相変わらず犬故表情の変化は分かりづらいけど、多分"イイ顔"をしている。
これは、逃げられそうにない。そもそも
「とりあえず、そこいらに座るといい。今の
「うん……そうする」
言われた通り、近くにあったバス停のベンチへ座る。
蓮柄は田舎だから、バス停で待っている人なんかめったにいない。その上で半個室になっているから、独り言を話していても多分、訝しまれないと思う。訝しむ人がいないから、だけど。
「それで?」
「急くね。……まぁ、好きな人が出来たわけじゃないよ」
「なんだ、違うのか」
「告白された、が正しいかな。……二人同時に」
「ほーぉ」
なんだほーぉって。
お前はフクロウか。
「でも、それが本当かどうかわからない」
「どういう意味だ」
「片方は、本心かわからない。もう片方は、恋愛感情なのかわからない」
「ふむ。生憎だが、我に恋愛感情の云々について相談されても、わからぬ。生きていない者故な、そういう情動には疎い。が、もう片方……本心であるかわからないというのは、どういう意味だ。常から嘘を吐いているような奴なのか」
「そうだと、思ってた。ずっとずっとその人の言葉は嘘だと思ってた。……けど告白された時に、違ったんだって知った。でも、信じられない」
「ほぅほぅ」
恋愛感情云々についてはやっぱりか、という思いだ。
そんなのが、生者への愛恋を自覚できるはずない。うん。きっとそうだ。
「信じたくない、という風に聞こえるな」
「……やっぱり?」
「
「そうかな」
「断言するが、そうだ。そして
「……」
信じたくない。
それはきっと、そうだ。きっと、というか……そうだ。
多分私は純愛主義者なんだと思う。告白に理想の敷居があったように、自分ではわかっていなかったけど、恋に夢見る女の子なんだ。
だから、だから、先輩が……一途でない事が許せない。
アカツキへもそう。あれほど愛を語って、長い長い年月を待って、それでも愛し合った二人。そこへぽっとでの、二十年も生きていない私が入り込んで、二人に愛されるなんて……あり得ないと。
あってはならないと。
そう思ってしまっている。
「どうしたら、いいと思う?」
「どちらの好意を受け取るか、か?」
「……わかんないよ。私はそれを、受け取るべきじゃないと考えてる。どっちも。どっちも断るべきだって。でも」
「好きなのだろう?
──ああ。
そうだ。
ちゃんと、好きなのだ。アカツキを美しいと思っている。そうして、話してみて、好ましいと思えている。嫌いじゃない。無関心。それを、そのラインは、既に軽々と飛び越している。
星命先輩。今日までの毎日、いつもいつも、人目を気にする事も無く好きを囁いてきた人。あの人を可哀想だと思ったのは、その想いが真剣であると感じられたからだ。本心で、心底アカツキを愛している。だから私なんてフィルターを見てしまうのは可哀想だと同情した。
けどそれが、フィルターとしてでなく、私個人をちゃんと見てくれていたのなら。
その真剣さは、本心であることは、今までの私が十二分に知ってしまっている。
ちゃんと、伝わっている。
ちゃんと……私もだと、思えてしまっている。
「神にとって」
「……」
「あるいは、生きていない者にとって。愛というのは縁遠いものだ。何故ならば、生きていない者とは、移ろうもの。永遠を存在すると言ったがな、変わらないわけではない。アカツキがホシミに変えられた様に、あるいはヨツギが少しばかりでも丸くなったように」
「あれで?」
「あれで、だ。生きていない者とは、言ってしまえば"心"のみの存在だ。生者は肉の鎧で心を守るが故、生半な事では変わらない。他者の思想に触れただけで、などという場合もあるだろうが、それはその者の思想が余りに強かっただけのこと。基本、生者とは変わらないものだ。定命であるが故に、堅く、強い」
「人間に詳しいね」
「我とて何百の間、人間を見てきたからな」
生者は変わらない。変わり難い。
それは多分、そうだ。私がそうだった。今までずっとずっと、変わらなかった。何が起きても、何を言われても、変わり映えが無かった。ずっとずっと、灰色だった。
あの日アカツキと出会ってから、先輩と出会ってからの毎日が余りに色付いているだけで、それまでは本当に特筆すべきことのない毎日だった。そう認識してしまうくらい、私は堅かった。
「生きていない者にその鎧は無い。容易に他者の影響を受ける。それはある意味で、自らの死をも意味する」
「生きていない者は死なないんじゃないの?」
「命を落とす事だけが死ではない、という話だ。たとえばホシミに会う前のアカツキ……その時代の事を我が詳しく知っているわけではないが、祟り神として在った頃のアカツキは、今どこにいると思う?」
「……死んだ、って事?」
「そうだ。ホシミに諭され、恋し、愛し、それが故に死んだ。暴虐の限りを振り撒いていたアカツキはもうどこにもいない。変わったのだ。今のアカツキがたとえ生者の気配を悍ましく感じるようになったとしても、神社に近づく者を惨殺したりはしないだろう。ただ風で社を閉じて、誰も寄せ付けなくするくらいだ」
「取る手法が変わったんだ」
「そうだ。価値観が変わった。価値観の死。心のみの存在である生きていない者にとって、それは自らの死と同義になる」
生きていない者は変わりやすい。価値観に変動があれば、すぐに死んでしまう。
ならば、愛なんて強いものを覚えてしまったら。
……祟り神が他神と笛を愛する神に変貌するくらいの、強い衝撃に襲われる。
「故に基本、生きていない者は生者と関わらない。死を恐れてな。我の様に雨に濡れる事が出来る程の力を持つ者でさえ、何もせず、何もしない日々を過ごす。
「じゃあ、ホシミは、鮮烈だった?」
「ああ。あれはおかしな神だった。奇矯な神だった。毎日違う事をやりたがる。生者に過干渉をしたがる。他の神にも、動物霊にも、積極的に絡む。自身の変革をまるで恐れていないのか、あるいは」
「確固たる己があるのか……かな?」
「先回りをするな。だがまぁ、そういう事だ。ホシミは強い強い意思を持っていた。強く強く、強い意思だ。あれの心は神でありながら生者に近い。それほど堅固であるが故に、アカツキもヨツギも簡単に崩されたのだろうさ」
……そして私も、かな。
「それでも関わると決めた。自ら、歩み寄ると決めた。名を教え、名を乞い、愛を育むと決めた」
「え、あれ」
「我はアカツキの娘、になる。血縁だのは無いが、関係上そうだ。だが、アカツキの事は娘のような存在だと思っている。あの赤子同然の神は未だ情緒に疎く、経験も浅い。だが、だがな」
「顔近い顔近い」
「先も言ったが、我に恋愛感情の云々はわからぬ。その上で言う。アカツキが、
「……うん」
今まで関わってきた生きていない者の中で、
そんな彼女が、こうも声を荒げて、感情を露にする。
何より、変わる事を恐れていると、そう言った
それが意味する事を理解しない程、私は浅慮じゃない。
「無視を、しないでやってくれ」
「うん」
「
「また言われると思うよ。アカツキに、余計な事言わないで、って」
「それを言われるのは
「似たもの夫婦だよ。どっちも。余計な事覚えてて、余計な事言う。そっくり」
「それは……嫌、だが」
嫌なんだ。
嫌なんだ。
「いつ気付いたの?」
「初めに気付いたのは、
「その同タイミングで、私からのこの相談と」
「ああ。聞いている内に、どう考えてもアカツキの事にしか思えなくてな。何より
「いいの? 生者に干渉すると変わっちゃうんでしょ? そんな私に付き纏って、白、死んじゃわない?」
「我はもう、変化を恐れぬよ。なんせ、ヨルツキを生んだ時に我は一度死している。それ以前からやもしれぬがな。我は元より生者の流れを見るのが好きだった。ホシミの影響が多大にあるのだろう。アカツキの下にいたが故、ホシミと会う機会も多かった」
じゃあやっぱり、ホシミのおかげなのかな。あるいはせい、か。
ホシミが変えたんだ。尖っていたアカツキを殺して丸くして、アカツキに似ようとしていた白を殺して変化を楽しめるようにして。
怖い怖い神様だ。
そうして今、私も殺されかけている。
──"殺してしまおうかとは、思ったよ"
あの時のそれは本来の意味だったのだろうけれど。
なるほど。もしかしたら、ホシミも十分に祟り神なのかも。
「一つだけ、いいか」
「ん」
「今の話とは関係がない事だ」
「あ、いいよ。何?」
「先日
ああ、それか。
それも……どうするかはまだ、決めあぐねている。
部長に言われたように、身勝手にする、というのも良いと思うけど、そもそもヨルツキちゃんの意思を聞いていなかったと思い出した。部長は意思も確認せずに助けない選択肢を取るようだけど、私は……やっぱり、助けたいと思う。
でも、己が身一つで出来るとは思わないし、もし、ヨルツキちゃんが助かりたくないと思っていたのなら、潔く身を引く所存だ。
腐っても、なんて言ったら失礼だろうけど、ヨルツキちゃんとて神様。私には知り得ない事を知っていて、私には理解し得ない価値観を持っている可能性だってあるのだから。
「我にとって四ツ木は他人の子だ。ヨルツキこそが娘だ。それは変わらない」
「うん」
「だが、どちらも助けたい」
「──」
……わぁ。
はっきりと。それはもう、しっかりと。
明言した。ずっとずっと思っていた、当事者なのに当事者意識が薄い、という文句の類が、今ここで掻き消される。
「傲慢な願いだ。何より、自らが蒔いた種だ。故に頭を下げる。懇願する」
「なんで?」
「変わったのだ。汝に接した事で」
なーにが今の話とは関係ない、だ。
思いっきり関係あるじゃないか。
「どうでもいいと思っていた。所詮は生者であった我の、他人の子。ヨルツキもまたアカツキを監視するという軛から外れ、現状、夢の神としての任に縛られずにいる。だがな、目的が無いままの生きていない者が危うい、というのは知っているのだろう?」
「あぁ、悪霊になっちゃうとか。でもそれって死途にある子だけじゃないの?」
「目的が無いから、悍ましい、という理由だけで惨殺を繰り返した祟り神を知らぬのか?」
「……祟り神になっちゃうんだ」
生きていない者は、変わりやすいから。
ちょっと嫌な事があっただけで、変貌してしまう。
「だが、どうでもいいと思っていたのだ。それすらも。あの子が祟り神となり、生者を殺し、いずれ処理されることになろうとも、そういう運命だったのだと。あるいはアカツキによって殺され、この世に溶けてしまっても、あの子の責任であると」
「でも、変わった」
「ああ。今、この状況は……奇跡に近い。生者となったホシミが蓮柄の土地に根を下ろし、ヨツギが面白半分とはいえ生者に興味を示していて、アカツキまでもが歩み寄っている。そしてその中心にいるのが
「随分、重い期待だね」
「言っただろう。その体質の者は、数奇な運命に恵まれると」
つまりは。
「汝の一挙手一投足が、三柱の神に影響を与える、という事だ」
「ホシミはもう神様じゃないんじゃ?」
「生の神の性質は引き継いでいる」
あぁ、それは。
なんて重い圧だろう。つい最近まで灰色の毎日を送っていた少女には到底耐えきれない。
……自分を少女なんて形容する程には、落ち着いているけれど。
「でも、どうやって?」
「……」
「えぇ……」
無言。
無言かぁ。
「わからないんだ」
「……。出来るのなら、知っているのなら、とっくにやっている」
「だよね」
その上でわからない、と。
ヨツギでさえ、完璧な方法は知らない、と。
「……とりあえずさ、もうすぐ満月だし」
「ああ、そうだな。あの子にも聞こう」
「私ももっと調べてみるからさ。ヨツギも、聞きたい事があったら聞けって言ってくれてるし」
「アレが、そんなに協力的なのか」
「え、うん。あ、でも確かに、悪霊云々はどうでもいいとか言ってたけど」
「それは我ですらそうだが……あのヨツギが、そこまで入れ込むか。……ううむ、それは真、か?」
そんなに信用無いんだ、ヨツギ。
無いんだろうなぁ。
「さてと。じゃ、お昼から部活だから」
「あ、ああ。うむ。精を出せ」
「ありがとう。アカツキの想いには、ちゃんと答えるよ。もう少し待ってもらうかもだけど」
「急く必要はない。頼みはしたがな、汝の意思を阻害してまでの事であれば、切り捨てても構わぬ」
「しないよ、そんなこと」
そう、即答できるくらいには。
ちゃんと、好いてしまっているらしい。参った、参ったね。
○
「部長」
「なんだね佚依クン」
「愛って、なんですか」
「躊躇わない事、かな……!」
無言で針を持ち上げる。
「わー! 待って待って! 傷害罪傷害罪!」
法律を盾にするのは卑怯。
大人しく刺されろ。
「……そういえば部長って、星命先輩と同級生ですよね」
「おふぅ、一瞬でテンション戻るよね佚依ちゃんって。……で、あぁ、そうだね。去年一緒だったよ。っていうか同じクラス。しかも隣の席になったこともあったりする」
「どんな人でした?」
「怖い子だった」
ううん。だよね。
私もあの貼り付けたような笑顔はちょっと怖い。
「それまで一度も話した事が無かったのに、いきなり私の手を握ってきて、"君、もしかして霊媒師?"とか聞いてきたり」
「それは怖い」
「文化祭で私の作品を手に取って、"人の身でここまで……気に入った。買うよ"とか言ってきたり。ちなみに販売してない」
「骨董品コレクターか何かか」
でもちょっと、気になる。
生を繰り返さずとも、生きている間にどんどん記憶が零れて行く、というのはわかっている。
もしかして、去年の先輩は今よりもう少し知っている事も多かったんじゃないだろうか。
というか、先輩にヨルツキちゃんと四ツ木ちゃんに関する相談、してないかも。
「怖いよね……。確かに私、昔からポルターガイストとか金縛りとかよくあってさー。佚依ちゃんにも言ってる人形には命が宿る~みたいな話は、そういう経験からだったりするんだけど」
「……」
わぁ。
いた。知らないピース。
「幽霊はいますよ」
「や、やめてよぅ! 私そういうの弱いんだから」
「部長の持ってるソレ……裁縫道具にも、宿ってます」
「そ、それは若干嬉しい……」
「嬉しいんですか?」
「この道具はちっちゃい頃からずっと使ってるから……。あれでしょ? 長く使った道具には神様が宿る的な。害のある幽霊は怖いけど、そういう守り神的なのはちょっと嬉しいかな」
「成程」
部長の持つ、裁縫道具。待ち針や縫い針、剣山。縫い糸やフェルトの切れ端に至るまで、白い靄がかかっている。光だ。光源にならぬ光。
意思を持たぬ程に弱い、生きていない者……だったか。
それが、部長の持ち物のあらゆる場所に宿っている。この部屋自体にもそれは多い。私の持ち物もそうであることが多いから普通に思っていたけれど、違う、のかな。
「ポルターガイストって、どういうのですか」
「えぇー、この話深堀するぅ?」
「聞きたいです」
「最近素直過ぎて怖い」
「お願いします」
「わ、わかった、わかったよ。……でも大して面白い話じゃないよ?」
「早く話せ」
「こわっ!?」
この人との雑談は星命先輩との雑談の二、三倍の時間を浪費する。
本題に入るまでが長いのだ。
「ホントに大した話じゃないんだけどね。家に帰ると、玄関にある傘とか、靴とかが揺れたり、動いたり。玄関の風圧なのはわかってるけど、ちょっとおかしすぎる動きがあって、それで怖いっていう。他にも朝起きたら懐かしのぬいぐるみが枕元にあるとか、壁に掛けてある刺繍絵画が他のと入れ替わってたりとか……」
「物凄いですね」
「うん。私も初めは誰かがやってるんじゃないかって思って、家族とか、お手伝いさんとかに聞いて回ったんだけど、何も知らないっていうし。じゃあ私が自分でやって、自分で忘れてボケてるだけなのかな、って思って監視カメラつけたら」
「映ってたんですか」
「映ってたっていうか、映像に乱れがあったというか」
「それは、確実に"居"ますね」
「うぇぇええ……」
居るけど。
害がある、っていうか、なんか、懐いているだけのようにも聞こえるけど。
「金縛りの方は?」
「あー……うー。つい昨日もあったんだけどね。なんか……めっちゃ重い何かが私の上に乗っかってる、みたいな感覚になるのよ。漬物石でも乗せられてるんじゃないかってくらいの重さがお腹とか全身にかかってて、動けないー! みたいなのが」
なんか、あれだな。
朝起きたら猫が乗ってて重かった、みたいな話に似ている。
というかそうなんじゃないか。
「明日、暇ですか」
「え、うん」
「家行っていいですか」
「もしかしてついにデレた?」
「家、カチコミに行っていいですか」
「怖いって!」
何かを感じた。
先輩風に言うなら──運命が合致するのを感じた、気がする。
そこにある、気がする。
気がするだけでも……行動する理由に足るだろう。
「で、いいんですか」
「許可しなかったら、不法侵入したりしない?」
「部長の首にナイフ突きつけて無理矢理入ります」
「人質!?」
いいから。
結論を、早く。
「に、睨まないで~。大丈夫、いいから。勿論ウェルカムだから! ぶっちゃけ友達を家に呼ぶとかあんまりなくなってたから、めっちゃ嬉しいから!」
「友達じゃなくて部活の後輩です」
「ええーっ!?」
「……嘘です。友達ですよ。部長は」
「良かったぁ!」
本当に。
……うるさい人だ。