死途の徒   作:三羽世継

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十八灯

 徒……仲間。同輩、という意味。

 

 あの時聞こえた声は、白達やアカツキ、ヨルツキちゃんの声とも違う、自らと同位置から聞こえてくるヨツギのそれとも異なった色味をしていた。その声色も、聞こえてくる方向も。

 天上、という表現が一番しっくりくる。空というより、上。

 けれど耳をつんざくような音量でも、蟻の声を聴くような微かさもなく、まるで対面しているかのような音圧だった事を覚えている。

 

 あれが誰の声だったのか。

 死途の徒を目指せ、というのは……どういう意味なのか。

 

「……ふぅ」

 

 最近はこうして、ベッドでダラダラする事も減った気がする。

 調べものに、相談に。常に外へ出かけている事が多かったからだろう。部屋着で、腕を額に乗せて。

 

 顔の隣には、部長から貰ったタマゴみたいなぬいぐるみを置いて。

 

「汝、初夏であるからといってそう腹を晒していると、病にかかるぞ?」

「プライバシーとかセンチメンタルって言葉知ってる?」

「横文字には疎くてな」

 

 疎かったら何でもしていいとでも思っているのか。

 

「……(はく)はさ、死途の徒、って言葉、知ってる?」

「知らぬな。死途に徒がいるなど、聞いたこともない」

「白って余計な事は知ってるのに、肝心なことを知らないよね」

「ああ、それはそうなのだろう。我自らが望んだ願いに至る術。その全てを、我は知らぬ」

「アカツキのいる神社の本当の名前も知らないし」

「何?」

 

 仰向けからうつ伏せになる。

 うつ伏せになって枕に顔をうずめて。

 

「どういう意味だ。あそこは朱月(あかつき)神社。何百年我があそこにいたと思っている。他の名前があるなら知らぬはずはない」

「おしえなーい」

 

 変なテンションになっている事は認める。

 ナイーブで、でも別に悲しんでいるわけじゃなくて。自分の我儘を先輩にぶつけて、喚くだけ喚いて当たり散らして帰ってきてしまった事が、少々、多少、恥ずかしい。そういう戒めが、いつもの自分を保てなくしている。

 多分(はく)は今、私の事をがっつり睨んでいる。でも見えない。顔をうずめているから。

 顔の見えない白なんて、ちょっと声の厳正なだけの犬だ。

 

「おい」

「うわ」

 

 ……と、思っていた。

 首根をグイ、と引っ張られる感覚がして、無理矢理枕から引き剥がされるまでは。

 

「ポルターガイストだ」

「我が触れ得る事を忘れていたのか?」

「そういえばそうだった」

 

 雨に濡れる事が出来る。透けない事が出来る。

 白の体格なら、私の身体を持ち上げることなんて容易だろう。

 

「その状態は別に、生者じゃないの?」

「違うな。(なれ)は虹や雷を見て、生者であると判断するのか?」

「屈折現象と放電現象だって思うかな」

「似たようなものだ。生きていない者が生者に干渉する現象。一時のもの故、長続きもせんしな」

「そっか」

 

 生きていない者は生者に過干渉しない、とか言っていたけど。

 それは過干渉すると生きていない者側が危ういからであって、生者を慮っての事ではない、んだったっけ。

 ただ現象として、生者の法則の中に現れるもの。

 

「アカツキも触れるようになるの?」

「どう、だろうな。知らぬ。している所を見た事がない。ただ、風を起こして生者を殺し得るのだ。干渉が出来ぬというわけではないだろうな」

「へえ」

「それよりだ。話を逸らすな。どういうことだ? 朱月神社の別名とは」

 

 わざわざ、人の枕に腰を下ろして。

 言わねば寝るのも許さぬとばかりにこちらを睨みつける。怖いよ顔。

 

「なんで知らないのかはこっちが聞きたいくらいだけど。学校の先輩に聞いたら、その人の家のお爺さんが知っていたくらいなのに」

「ああ、生者が勝手につけた名、という事か? それなら知らぬのも無理はない」

「でもアカツキは知っていたし、この神社の名前だ、って言ってたよ?」

「……いいから教えろ」

 

 ぶすぅ、と。

 口を閉じて、鼻で息をして。心なしか、拗ねたように。

 ちょっとだけ可愛いと思った。動物苦手な私が。

 

「朱歹神社、だってさ」

「シュガツ? ……殊か。ああ──そういうことか」

「何か思い当たる節ある?」

「ふむ。まぁ、いいだろう。(なれ)は品場神社に行った時、目にする事はなかったか? 境内の四隅に配置された四つの切り株を。そして朱月……朱歹神社にある、同様のものを」

「あ、うん。朱歹神社の方が後発だ、って事も聞いた」

「ああ。そもとして、品場神社はこの土地一体の水害を治めるために建てられた神社だ。蓮柄は盆地でな、たびたび水害に見舞われていたという」

「白の生まれて無い頃だよね、まだ」

「うむ。そしてその水害を起こしていたのが夢の神ヨツギだ」

 

 そういう順番なのか。

 アカツキは、元からあった神社に発生した、という感じだったけど、ヨツギは品場神社が出来る前からいたのか。

 ……でも、盆地だから、ヨツギがいなくても水害が起きていたんじゃないか、って考えてしまう。

 

「少なくともここら一帯で水害が起きた時点で、ヨツギが関わっている。たとえ地の揺れによって大波が来た、という過程を踏んでいるように見えても、大波を起こしているのはヨツギだし、それが害となるにはヨツギの意思が必要だ」

「ちょうど噛み合ってる、ってこと? 生きていない者(そっち)の事情と、生者(こっち)の法則が」

「そういうことだ」

 

 でもそうなると、アカツキの殺戮は話が合わない。

 近づいただけで惨殺される、なんて、こっちの自然現象には無いのだから。

 

「アカツキのそれは干渉。ヨツギの水害は性質。アカツキには広範囲にわたって台風や竜巻を引き起こす事など出来ないし、ヨツギは水を浮かべたり、水で生者を切り殺すような真似も出来ぬ。生者に害があるという点で似てはいるが、行っている事は全くの別物だ」

「性質」

 

 それだ。

 知りたかったことの一つ。でも今は。

 

「切り株の方を、先に教えてほしい」

「うむ。ヨツギがたびたび起こしていた水害の中で、最も多かったのが河川の氾濫だ。蓮柄に流れる二つの川。それらから竜がうねる如く、濁流が溢れ出す。故に生者……人間達は、蓮柄において最も主要となる地点の傍に、四本の木を植えた。太く、大きく、堅固で長命の樹木」

「スギとか、クスとか?」

「エドヒガン、という。所謂彼岸桜の一種だな」

 

 彼岸桜。春分の日周辺をかけて咲くから、そういう名前の付いた桜。

 確かに強い樹だ。成長は遅いけど、太くなるし、大きくなる。

 

「二本の川。それぞれを挟むように配置された樹木は、見事に水害を抑えた。人間達は川岸に幾本ものエドヒガンを植え、ヨツギを完全に抑え込んだ。……つもりだった、のだろうな」

「出来なかったの?」

「川の氾濫だけが水害ではない。抑え込まれたが故にヨツギは手加減をしなくなった、と聞いている。大雨を降らし、頻繁に土砂崩れを起こし、家々を腐食させ倒壊を起こす。紛う方なき災害。作物は全てがダメになり、再興すらも許さない。その暴虐に──けれど、人間達は諦めなかった」

 

 祟り神。

 アカツキのそれなんか可愛い方だ。被害の点において、ヨツギは一線を画している。

 

「その暴威の最中であっても無事だったエドヒガンを用いて、人間達はある神社を造った」

「それが、品場神社?」

「うむ。蓮柄を流れる二つの川の源流から水を汲み、それを本殿へ祀る。ヨツギの水を防ぎ得るエドヒガンが建材だ。神を守る社でも、神の坐す社でもなく、神を閉じ込めるための社として、品場神社は十分な機能を果たした」

「水害は収まったの?」

「半減した、が正しいだろう。それほどヨツギの力は強く、閉じ込めた程度では抑えきれなかったと聞いている。もっともこれはヨツギ本人の談故、多少は己の誇張も混じっているやもしれぬが」

「ふぅん」

「けれど、余裕は出来た。生者たちの余裕がな。ヨツギの力が半減した事を機に、瞬く間に復興を遂げた生者たちは、更にもう一つの神社を拵える」

「それが、蓮柄神社だね」

「ああ」

 

 蓮柄は生すがら。生者のための土地。

 そこにいた生者は、自らたちが生きるためなら、生き抜くためなら、なんでもやったのだろう。その果てに神に縋ったけれど、神に縋る事すら生存戦略の一つと考えた。

 

「生者の願いを受け、生の神が発生する。命の神だ。名を、ホシミ」

「じゃあホシミの役割は、生者を生かす事?」

「……それはどうだろうな」

「え」

 

 今の今まで、こんなにも事細かに語ってくれて、そこははぐらかすのか。

 意味が分からない。素直に教えてくれたらね、とは先輩が言っていたけれど、こんなにもあからさまに隠すとは思っていなかった。

 

「とかく、ホシミは動いた。発生したばかりだというのに全てを理解しているかのような素振りで、閉じ込められ、荒れ狂うヨツギの元までやってきたという」

「もしかしてそこでも告白したの?」

「知らぬ。ここまで語っておいてなんだが、そこで何が起きたのかは知らぬ。ホシミか、ヨツギに聞け」

「えぇー」

「我が知っているのは過程と結果だけだ。詳細は知らぬ」

 

 本当に肝心な事を知らない犬だな。

 そういう呪いでもかけられているんじゃないだろうか。

 

「ホシミの交渉の結果、ヨツギとは和解し、過度な水害は起こさないという取り決めが成された」

「過度じゃないなら、いいんだ」

「譲歩という奴だ。絶対に水害を起こさない、などという取り決めでは、ヨツギが頷かなかっただろうよ。だが、和解した、などという言葉では納得できないのもまた人間達だ」

「あぁ、アカツキの時と同じだね」

「そうだ。人間達はその恐怖から、ヨツギを囲う物を増やした。それが四つの木。かつて主要な地点を流る河川を抑え込んだ、その時にはもう高齢で、傷だらけになっていたエドヒガンを運び出し、品場神社に移植した」

「それはちょっと可哀想」

「可哀想? ヨツギがか?」

「ううん。エドヒガンが」

 

 ずっとそこにいたかったんじゃないかな。

 樹って、元々あった場所から動かされるのを嫌がるイメージがある。樹の意思なんか聞いたことないから本当に偏見だけど。

 

「気になるのなら、聞いてみればいい」

「切り株に?」

「ああ。我も話した事などないが、聞き得る者ならあるいは、だ」

「ふぅん。まぁいいや、続けて」

「もう話も終わりに近いがな。河川を抑え込んだ四本のエドヒガンは、ヨツギの力をさらに弱めた。目に見えて水害が減り、起こったとしても、規模の小さいものである事が多くなった。無論、ホシミとヨツギの取り決めの後に行われた暴慢故、ヨツギは怒っていたらしいが、ホシミがなんとか宥めたようだな」

「なるほど」

 

 なんだろう、つたない知識で例えるなら、結界、みたいな話なのかな。

 囲って、出られなくする。抑えたものなら防壁になると判断した。

 

「でも、なんで切っちゃったの?」

「……それもまた、人間達の勝手な行動だ。樹木とは生命の象徴。故、祟り神のいる品場神社には似つかわしくないと、切り倒してしまった。あぁ、だが、それだけではない。先も述べたように傷だらけで、倒木の危険性が大きかった、というのもある。生者を愚かであるとしか見ていないヨツギの罵倒が前者で、ホシミの擁護が後者だ。どちらを信じるかは(なれ)次第だな」

「どっちもでいいでしょ、別に」

 

 でも、切り倒されて尚機能するのだから、やはり凄い樹木なんだろう。

 エドヒガン。ヒガンザクラ。

 彼岸とは、あちら側。死。あちら側に立つ樹。

 

「ここから先は、推測だ。我も知らなんだが、切り倒されたエドヒガンの行く末の話となる」

「もしかして、朱歹神社の建材?」

「先回りをするなと言っている。……そうだ。殊には胴体を切り離して別々にする、という意味があってな。人間達が名付けたのであれば、そういった名になるのも頷ける」

「そしてそこに宿ったのが、アカツキ」

「発生した、だ。成程、先に汝が言った可哀想という言葉……まさにそれが正解やもしれんな」

「?」

「アカツキは発生時から生者の気配を悍ましく思っていた。そこには、自らが守り抜いた人間達に切り殺された、四本のエドヒガンの怨念のようなものも混じっていたのやもしれぬ、ということだ」

「ああ」

 

 だからアカツキは、近づく生者全てを切り殺していた、って?

 ……因果応報、になるのかな、これは。

 

「そうして、汝の知っての通り、アカツキは調停される。ヨツギとの相互監視を条件に、調停された事にする。しかしそれにしたって、見える目を、聞き得る耳を持たぬ生者には、わからないことだ。故に」

「ヨツギと同じように、エドヒガンが四隅に配置された。死の神には似つかわしくないと、切り株にされた状態で」

「水害を遮る役目のエドヒガンだ。アカツキの風には全くの無力なのだろうが……見えぬ者にとっては、関係が無いのだろうな。生者にとって神は神。同じ手段で封じられるだろうとでも考えたのだろう」

 

 なるほど。なるほど。

 それで話は終わり、か。

 朱歹神社の成り立ち。その由来。

 

「あれ、でも、なんで白は、というか白達は、朱歹神社をアカツキ神社だと思っていたの?」

「……単純に知らなかっただけ、と言ったら、信じるか?」

「えぇ」

「恐らくはだが、ヨツギやホシミが、"アカツキのいる神社"、"アカツキの神社"と呼んでいたのが災いしているのだろうな。アカツキとて自らの社を"この神社"だの"ここ"だのとしか言わぬ。成り立ちの話にならぬ限り、朱歹神社という名を使うモノがいなかった」

 

 人間側もあまり広く伝わっていないのは、その成り立ちが過ちによるものだから、なのかもしれない。

 自分たちの勝手な行いで祟り神を一柱増やしたようなものだ。それを覆い隠すために、シュガツを朱月と書き記し、伝えようとしたのだろう。

 部長の家のお爺さんがそれを知っていたのは、彼女の家がお金持ちであった理由……蓮柄の土地に深く携わる家で、もしかしたら、朱歹神社の成り立ちにも関わっていたから……とか、だったりするのかな。

 全てがかもしれないの域を出ないけど、少しくらいは当たっている気がする。

 

「ありがとう。少しだけ、欲しい知識もあった」

「そうか。それは良かったな。……感謝をするのであれば、なのだが」

「なに?」

「今日、朱歹神社に来てはくれぬか。最近汝が来る事が減っているだろう? ……こころなしか、アカツキのアタリが強くなっていてな」

「ストレスたまってるんだ」

「汝に会いたいのか、汝の歌を聞きたいのか、どちらなのかはわからぬが」

「……」

 

 ううん。

 最近、というか、あの告白を受けてから、朱歹神社には一度も行けていない。

 どういう対応をしたらいいのかわからないし、何か余計な事を言ってしまいそうで怖いし。

 

 でも確かに、私も久しぶりに歌いたい。

 正直先輩と違ってアカツキは素直だから、私も素直になれる、気が、しないでも……ない、というか。

 その。

 

「わかった。一緒にいこっか」

「助かる」

 

 大丈夫。

 私はもう、高望みはしないから。

 

 

 

 ○

 

 

 

 ──ふわり、ふわり、流る、かんざし。

 ──きいろい髪に、からから揺れて。

 ──どこへ、いずこへ、求めていくの?

 

 

 ついて早々、パァっと顔を輝かせたアカツキに、これは歌わざるを得ない事を確信した。

 もうこれでもかという程にそわそわしているアカツキに苦笑して、じゃあ吹いて? と言えば、喜び勇んで笛の歌を奏で始めるアカツキ。

 (はく)がアカツキは赤子同然とか言ってたけど、本当にそうだ。

 可愛らしい赤子。子供。待つ事は出来るけど、我慢は出来なくて、好きな物を好きだと言える、子供。

 

「──ふわり、ふわり、流る、かんざし──」

 

 もとより歌詞の少ない歌。

 何度も何度もループする。同じ歌を、同じ笛に合わせて、ずっと。

 毎日を繰り返すように。

 

 風が吹く。人を切り殺すようなそれでなく、けれどそよ風の類ではない暴風。

 朱歹神社を取り囲むように、誰も寄せ付けないとでもいうかのように、私と、アカツキと、静かに見守る白だけの空間を作り上げる。

 

「──きいろい髪に、からから揺れて──」

「……?」

 

 見上げる。

 夕方に近い時間帯。赤と青の境を見せるその空には、いつものように、あの大きな手があるばかり。

 そこから、聞こえてくる。

 歌が。

 同じ歌が。

 

「──どこへ、いずこへ、求めていくの?──」

 

 自然と歌い上げる。

 奏上する。

 

 この歌を歌う誰かと共に、アカツキの笛に合わせて、歌を、歌を、歌を。

 

「イヨリ?」

「え? あ……ごめん」

「いいえ、大丈夫よ。でも、どうしたのかしら? 途中から、ずっと空を見上げて、動かなくなってしまって……」

「一瞬、呑まれたのではないかと焦ったぞ」

 

 いつの間にか、歌うのを止めていたらしい。

 気が付かなかった。

 

「天上から、歌が聞こえて」

「まぁ」

「何?」

 

 アカツキは手を合わせて、白は怪訝そうに牙を剥いて。

 

「あの手……なのかな。歌を、笛の歌を歌っているのは」

「誰も、ヨツギでさえも会話の出来なかった存在だぞ。たった一つの生者に声を聴かせるなど……」

「ふふ、流石ね。()()()()()()。佚依は、宙の神にも好かれているのね?」

「んんん?」

 

 またなんか段階飛ばしてませんか。

 愛が育まれてしまうのは仕方がなくて、これから愛を育んでいきましょう、みたいな段階じゃなかったですか。

 まだあの日からほとんど日数を経ていないのに、愛しいにまで成長しているんですか。

 愛ってなんですか……。

 

(そら)の神?」

「アレのことよ。まぁ、名前なんて知らないのだけれど」

「知らないんだ」

「話した事、ないもの」

 

 そっか。

 別に神様って全能じゃないから、ホシミもアカツキも、自己紹介されなければ名前なんてわからないのか。……ヨツギは除く。夢の神だから記憶探れるとか、何を言っているのかわからない。

 見ることが出来るからと言って見るなっていう。

 

「笛の歌は、宙の神が歌っていたんだね」

「なら、ホシミもまた、宙の神に好かれていたのかしら」

「あ、ホシミに宛てられた歌なんだっけ」

「ええ。ホシミのための歌。素敵だけど、少しだけ、嫉妬してしまうわ。ホシミを他の神に渡す気はないもの」

 

 ちょっと怖いとこ出てる。

 祟り神怖い。学んだ。

 

「……えとさ、アカツキ」

「何かしら」

「あー、その」

「?」

 

 断ろうかと思っていた。

 でも、何かあれば、それを前向きに捉えられるんじゃないかって考えた。

 

 それを、どう切り出せばいいのか。

 ……こんなに悩む事あるんだなぁ、私。

 

「歌おっか」

「ええ、お願い」

 

 まだ、勇気は出なかった。

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