「それにしても、まさかハルだけじゃなくてマクダウェルまで魔法使いだったとはな」
「魔法使いなぁ~、ホンマに魔法ってあったんやね」
「ま、コイツは魔法学校を3年も留年した落ちこぼれとジジイはぬかしてたがな」
学生としては不純行為が一段落した部屋の中で、ハル達4人と部屋の外で待機中だった茶々丸を含めて交流を深めていた。
「すると学園長も魔法使いって事かよ。この学園には何人魔法使いが居るんだよ」
「おじいちゃんも魔法使いなん?なぁ、ウチも魔法が使えるようになるん?」
だからこの学園は非常識な事が多く起きるのかと頭を抱える千雨だったが、祖父が魔法使いと知った木乃香は自分にも魔法が使える様に成るのかとエヴァンジェリンに尋ねた。
「お前の保有する魔力は封印が解けた私を遥かに超えるという話だからな。訓練さえすれば極東最強の魔法使いは確実だろう」
「魔法使いの世界も才能に左右されるからな。だから俺はやる気無くなった訳だけど」
魔法学校時代を思い出して少し気が滅入るハルだったが、その様子をいち早く察した木乃香がハルの頭を抱きしめて頭を撫で始める。
「ハル君も苦労しとったんやね。ウチで良かったらまた慰めたるで?」
「木乃香さん、折角着付け直した着物をまた脱ごうとするのは如何なものかと」
帯に手を掛けた木乃香を茶々丸が諫め、4人と+1の話題は今後どうするかというものへと移っていく。
「ま、とにかくジジイに知られると面倒なのは分かりきってる。暫くは今まで通りに振る舞う事にして、後々最善策を考える事にするぞ」
「要するに問題の先送りじゃねえか。ま、私に出来る事なんて殆ど無いから従うけどさ」
「ならウチはコッソリ魔法の練習始めてみるわぁ。ウチが早うお爺ちゃんより強なったら力ずくでいうこと聞かせられるやん?」
今後の方針が決まった事で解散という事になったのだが、最後に付け加える形でエヴァンジェリンと千雨がハルに対し釘を刺してくる。
「いいか?近衛木乃香までは許してやるがこれ以上増やすなよ」
「特にクラスの連中は駄目だからな。フリじゃないぞ」
「え~、ウチせっちゃんもハル君パーティに入れて貰うつもりやったのに」
二人の忠告に対しその場では了解の意思を示したハルだったが、恐らく今後も増え続けてしまうだろうという予感が脳裏をよぎるのであった。
2月も下旬となり、麻帆良学園は学年末試験の時期が近くなる。
麻帆良学園の各部活は活動停止期間に入る前という事で、普段よりも練習に熱中する生徒が少なくなかった。
水泳部に所属する2-A生徒の大河内アキラもその一人であり、進級する前に自己記録を更新しようと休憩する時間も惜しいと泳ぎ続けていた。
「ねえねえ、アキラのクラスの担任って例の新人教師だったよね?」
「ふぅふぅ、そうだけど……葱野先生がどうかした?」
部活終了後、更衣室で着替えていたアキラに他のクラスの女生徒がハルの事で話しかけてきた。
「どうしたっていうかさ、実際のとこ同い年の男の子先生ってどう思う?」
「どう思うって……普通かな?」
ハルの教員としての振る舞いに問題が有ったと感じていないアキラはそう答えるが、その女生徒が聞きたい事は別の意味だったらしく。
「そうじゃなくて。クラスの女子の中に付き合ってそうな人とか居ない?って話。他の先生と違って葱野先生って歳が同じだし、一人か二人そういう噂になってる人いるでしょ?」
女生徒が聞きたい事は単なるゴシップ話だと知り、アキラは自分には興味が無いからと言って更衣室を出て行ってしまう。
(葱野先生と付き合ってる子か……皆考える事って同じなんだな)
女子寮への帰路についていたアキラは、今2-Aの一部の生徒達で行なわれているハルに関する賭けの事を思い出していた。
その賭けの内容とは誰がハルと交際しているのか当てるという物であり、2-Aの生徒全員の名は勿論の事、副担任の源しずなの名やアキラと面識の薄い生徒や教員の名などがリストに入れられていた。
「本当に朝倉と早乙女はこういう事考えるのが好きだよ。クラス全員って悪ふざけ枠が有るのも」
大穴として用意された枠に一票誰か入れていた事に呆れたりもしたが、アキラも内心誰がハルと付き合う事になるのか全く興味が無い訳でも無かった。
「今の所一番人気がエヴァンジェリンさんってのは皆もあの態度の変化をそう感じてるからかな?それともう一人対抗馬が……あっ」
駅に着いたアキラがホームに入り込もうとすると、現在エヴァンジェリンに次いで得票数を得ている木乃香の姿が目に入った。
「どうしたんだろう近衛さん?学校に忘れ物でもしたのかな?」
他の生徒達とは反対方向に駆けて行く木乃香の姿が気になり、アキラも今来た道を引き返して中等部の校舎へと足を進めるのだった。
「やっぱり近衛が葱野先生と付き合ってたのか。でも、まだちゃんと確認取った訳じゃないし」
校舎に引き返した木乃香がハルが寝泊まりしている宿直室に入って30分以上が経過した。
その間アキラは中を覗くべきかどうか葛藤していたが、これ以上プライバシーを詮索するべきではないと判断してその場を後にする。
「はぁ、なんだか知らないけどモヤモヤする。一泳ぎくらいならバレないかな」
ハルと木乃香の関係を知ったアキラは何故か自分が不機嫌になっている事を認めたくないのか、気分転換をしようと誰も居ないプールへと来ていた。
「飛び込んだら音が響いちゃうから……潜水をメインにして泳ご」
照明も点けずに薄暗いプールに入ろうとするアキラだったが、それを呼び止める人物が現れた。
「コラ!!勝手にプールに入るんじゃない」
「ご、ごめんなさい!!あ、葱野先生」
アキラを注意したのは先程まで木乃香と密会していたハルであり、思いがけない人物が現れた事にアキラは驚きを隠せずにいた。
「大河内、部活を頑張るのは良いけど決められた時間外を誰の許可も無く泳ぐのは感心しないぞ。特にプールなんて事故が起きたら命にも関わるしな」
「は、はい。どうもすいませんでした」
今回は大目に見るから早く着替えて帰宅する様に促すハルに対し、アキラはどうしても確認が取りたかった事をハルに尋ねてみた。
「あの、先生。実はさっき私……宿直室の前に居たんです」
「え、マジか?じゃあ部屋の中を覗いたって事か?」
ハルがそう聞いて来たのでアキラは本当は会話を少し聞いただけだったのを一部始終目撃したと嘘をつく事にした。そうする事でハルに鎌をかけるつもりだったのだが、ハルは頭を抱えてアキラに近付いて来る。
「二度ある事は三度あるって言うけど、少し警戒心が低すぎるな俺」
「あ、あの先生?どうしたんですか?」
クラスで3番目に身長が高いアキラはハルよりも背が高かったのだが、ハルから普段とは違う雰囲気を感じて思わず後ずさりしていまう。
「この口封じはあまり褒められた方法じゃないんだけどな」
「せ、先生っ、んむっ!?むふぅ!!ンンッ!!」
アキラに木乃香への魔法指導を見られたと勘違いしたハルは、文字通りアキラの口を自らの口で塞ぐのだった。
日中では生徒が泳ぐ水音が響き渡るプールの片隅で、アキラとハルは別の水音を発していた。
「んちゅ、んあぁ、せんせぇ、ダメっ」
プールマットの上に押し倒されたアキラは水着の上からクラスでも上位に入る胸を揉まれ、何度も体に電流が流れる様な感覚に襲われていた。
「駄目って言ってる割りには全然抵抗してないじゃないか。それとも」
胸を揉んでいる手とは逆の手がアキラの足の付け根で動きを速めると、周囲に響いていた水音は更に大きくなり、それに比例してアキラの発する嬌声も大きくなっていく。
「アアアアアッ!!せ、先生っ!!も、もう私ぃ!!」
「声が大きいぞアキラ。他の誰かに見られても良いのか?」
そう言われて慌てて自分の手で口を押えるアキラだったが、ハルは敢えて両手の動きを止めて立ち上がった。
「そうだ。自分で言って気付いたけど誰かに見られるかもしれないんだ。もうこの辺で終わりにするかな」
「えっ?そ、そんな!!アンッ」
突然のハルの中止宣言に思わずアキラは体を起こして身を乗り出そうとするが、それを予測してたのかハルは身を翻してアキラを後ろから抱きしめる。
「その反応はこのまま続けて欲しいって解釈で良いんだよな?」
「アッ、あっ、アンっ、先生の意地悪ぅ」
上半身だけ水着を脱がせてアキラの双丘を弄りながら同意を求めると、アキラは力なく頷いてマットの上に四つん這いになった。
「せ、先生……きて下さい」
その誘いに乗ったハルはアキラと下半身を密着させ、より一層激しく水音を響かせるのだった。
「は~やっぱ先生はウチらだけじゃ勿体ないなぁ」
アキラとハルの行為の一部始終を覗いていた木乃香は、今後もっと増え続けるであろうハルパーティの為にも魔法訓練に精進しようと心に決めるのであった。