ありふれてないスライムが世界最強   作:Kaimax

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すまんかった


 前回の後書きでまた二週間後にとか言って完全に投稿するの忘れてました。
 いやね?Apexのシーズン9が始まったじゃん?新キャラが意外と楽しくて投稿も忘れてApexやってた俺は悪くないと思う。悪いのはApexだっ!!


 冗談はさておき、ほんとにごめんなさい。以後気をつけます。


 この作品は私がpixivにて投稿しているものです。そのため基本的にpixivの方を先に更新します。

 参考にしている作品
・web版 転生したらスライムだった件 【完結済み】
・マンガ版 転生したらスライムだった件 【未完結】
・アニメ版 転生したらスライムだった件 【未完結】
・公式スピンオフ 転生したらスライムだった件〜魔物の国の歩き方〜 【未完結】
・web版 ありふれた職業で世界最強 【本編完結:番外編未完結】
・単行本版 ありふれた職業で世界最強 【未完結】
・マンガ版 ありふれた職業で世界最強 【未完結】
・アニメ版 ありふれた職業で世界最強 【未完結】

 以上のことを理解したうえで読んでください。
 場合によってはネタバレが含まれます。


トータスの現状

 メルドさんと別れた後、俺達は今日迷宮で獲得した素材をギルドにて買い取ってもらっていた。

 最初は浅い階層の素材だけ売ろうと思っていたが、どうせメルドさんに俺達の事を報告されると思い、開き直って回収した素材を全て買い取ってもらうことにした。

 しかし、60階層の魔物の素材など滅多に入ることなどないらしく買い取り担当の人は目を丸くしていた。さらにそれだけでなく、回収した素材全てと言った通りほんとに全て出したので現在進行形で買い取り担当の人3人がかりで換算中だ。

 それを待つ間ギルド内の酒場にて適当に待つことになり、椅子に座ったがする事がなくボケーっとしていた。買い取りの際に目を付けられたのか、それとも元々目を付けられていたのか分からないが、下卑た笑みを浮かべた男3人が俺達に近づいて来た。

 

「なぁ、嬢ちゃん。そんな本ばっか読んで相手してくんねー奴よりもよ、俺達とちょっくら遊ぼうぜ〜?」

「そうそう、きっと楽しい夜になるからさ〜」

「さっさと宿に行こうぜ〜」

 

 うん、やっぱりこういう事だよね。知ってた。

 ちなみに本ばっか読んで相手してくんねー奴っていうのはもちろんヴェルドラのことだ。読んでるのはもちろんマンガ。はたから見ればこれは確かに、本を読んで相手してくれなくて退屈している(自分で言うのもなんだが)美少女という構図になるだろう。

 

主様(マスター)この汚い物を排除してもよろしいですか?》

 

 いやいや、シエルさん?いくらなんでも沸点低すぎでしょ。このチンピラを「物」って言ったよね?

 それにしてもこいつらはアホなんだろうか?俺達が買い取り担当を困らせている=実力者だって分からないんだろうか?そうだとしたらかなりアホ、いや、バカだぞこいつら。

 こういうバカは言っても聞かないだろうから実力差をわからせるしかないが、ギルドで騒ぎにならず実力を測れるものと言ったらあれしか無いだろう。そう!腕相撲だ!!

 腕相撲は単純にその人の腕っ節が問われる戦い!実力差を見せつけるにはもってこいだ!

 決して一回こういうのシチュエーションやってみたかったとかでは無いのだ。

 

「あ〜………それじゃあ俺に腕相撲で勝ったらいいよ。ヴェルドラもそれでいいよな」

「うむ」

「そんなの了承してるようなもんじゃねぇか!まぁ、でもしょうがないから俺たちで一番弱いこいつに相手させてやるよ!ガハハハハ!!」

「おいおい〜その言い草はないぜ〜」

「何言ってんだ?俺対お前ら3人だろ?どんな手を使ってもいいから俺の手をテーブルにつけてみせろよ」

「あぁ!?舐めてんのかテメェ!!………まぁ、いいぜ。でも勝った時は一晩中苛め倒してやるからな?」

 

 そうして、俺は3人の内1人と手を合わせ、残り2人がそれを抑え込む形で手を添えた。

 手を合わせる前に何か話している様子だったが、どうせロクでもないことだろう。

 

「それじゃあ、レディー……g」

「オラァ!」

「行くぞ!」

「やっちまえっ!!」

 

 俺がゴーと言い終わる前に3人は一斉に力を込めてきた。しかし、俺の手はびくともしない。

 なんとも典型的な不意打ちだろうか……スタートの合図前に不意を突こうと思ったのだろうが通用するわけがない。

 

「「「な、なんだと!?」」」

 

 チンピラ達は、俺の手が全く動かないことにかなり驚いた様子で力を入れるのも忘れて茫然としていた。

 しかし、それも一瞬ですぐに力を入れ直した。それでも動かない俺の手に反撃出来ないと判断したのか笑みを浮かべ始めた。チンピラ達の考えとは裏腹に俺が反撃出来ないなんてことは無くただ、こんなもんか……という悲しみに浸っていた。

 まぁ、筋力679075の俺に対抗できる人間なんてこの世にいるのかどうかすらも怪しいくらいだ。

 そろそろ反撃しようとしたとき、チンピラのの内一番ガタイがいいやつが詠唱を始めた。

 

「へへ、“金剛”だ。これでお前は反撃などさらに出来なくなっただろ!」

「いんや?」

 

 ズドン!!という音と共にチンピラの腕がテーブルを破壊して沈んでいった。

 何が起こったかというと、俺は相手の技能(スキル)を突破するために少し力を入れたのだが、技能の強度はそこまででは無かったらしく一瞬で効力を失ってしまった。そして、技能の効力なんてもはや関係ないが、少しでも力を入れてしまったために筋力679075が火を吹いた。というわけだ。

 この光景には流石に集まっていたギャラリーも、開いた口が塞がらない状態になり石化でもしたかのように固まってしまった。この硬直が解けたのはギルド職員さんが買い取り査定が終了したと言いにきてくれてからだった。

 

 

「こちらが素材の買い取り金額の75万6000ルタです」

 

 さっき素材を渡したカウンターで俺はかなりの大金を前になんだか申し訳ない気持ちになっていた。

 なにせ今現在トレーに乗っている大量の金貨とそれを見て若干涙目になりつつある職員がいたからだ。

 確かに1日でこんなに稼ぐのはあまりよろしくないことかもしれない。ギルドにも貯蓄しておかなければいざというときどうしようもないからな。

 ということで、俺は25万6000ルタをギルドに寄付した。この世界で生活するのに50万も有ればなんとかなるし、最悪別のギルドで買い取って貰えば良い話だ。初めて世話になったギルドなのだしこれくらいはお礼の範囲内だと思うことにした。

 それを聞いてギルド職員は何度も頭を下げてお礼を言ってきたが、元はと言えばこちらの狩りすぎが問題のでお礼を言われてもむず痒いだけだ。

 そのせいで、硬直から解けたばかりのやつらがまたこちらに意識を傾け始めたので、だんだん居心地が悪くなり、そのまま立ち去ろうとしたところでギルド職員さんはハッとした表情で俺達を呼び止めた。

 

「え、ええと、大変申し訳ないんですが、支部長がリムルさんとヴェルドラさんにお話があるようなので、ついてきて貰えませんか?」

 

 支部長が話?うーん……オルクス大迷宮でのことか?メルドさんが話に行ったから、もしかしたら呼ばれるかもしれないと思っていたが、案外早かったな。

 とりあえず、断る理由もないので職員さんの案内のもと応接室に通された。

 

「君達が()()冒険者登録をしたリムル=テンペストとヴェルドラ=テンペストか?」

 

 やけに「昨日」を強調した声の主は60歳過ぎくらいの左目に大きな傷のあるガタイのいい男だった。流石に荒くれ者が集まるこのホルアド支部を任されるだけはある。なかなかの覇気を纏っている。

 さらに、応接室のソファーにはさっき別れたばかりのメルドさんもいて、今の「昨日」という言葉を聞いて固まっていた。

 

 

 俺達は2人でソファーに並んで座り、対面には冒険者ギルドホルアド支部の支部長、ロア=バワビスと隣にハイリヒ王国騎士団団長メルド=ロギンスが座っていた。

 

「さて、リムル、ヴェルドラ。君達は何者なんだ?」

「そ、それは………」

「クアーーーハッハッハ!!我は暴風ryむごっ!?」

「すみません、すみません。えぇっと、俺達は適当に旅をしている………兄弟、です」

 

 とっさに兄弟なんて言ったけど大丈夫か?一応名前の“テンペスト”が同じだから一応理に適ってると思うんだが………

 誤魔化せてるかいまいちわからないので、これ以上は何も言わずにじっとしていると「ハァーー」という深い、それは深いため息が聞こえたので思わず苦笑い気味に目を合わせると。

 

「わかった。君達は兄弟、それでいい。こんな得体の知れない実力者を敵に回したくもないもんな」

「あ、ありがとう。助かるよ」

「いや、例はいい。……まぁ、その代わりと言ってはなんだが……」

「俺からの依頼を受けてくれ」

 

 単純にいい人かと思ったが、流石にタダで信用してもらえるわけはなかった。ロアさんの言葉を遮ってメルドさんは「依頼」と言った。

 依頼って、あれかな?みんなに聞いても生返事しかもらえなかった。行方不明の1人の捜索とか?でもみんなのあの様子だとかなりの確率でもう手遅れな気がするんだけど………

 

「王都まであいつらの護衛をしてくれないか?」

「護衛、ですか?」

「あぁ、今のあいつらは仲間を失ったショックと恐怖でまともに戦えるとは思えん。もちろん何人かはそんな状況じゃないと分かっている者もいるが………」

「なぁ、メルドとやら。王都と言うにはそれなりに発展しておるのだろう?」

 

 緊迫した雰囲気だったのにこのおっさん(ヴェルドラ)が一発かましやがった!

 メルドさんはヴェルドラの質問に驚いたようで俺に視線で「知らないのか?」と尋ねてきた。

 

「な、なにぶん、田舎から出てきたばかりなもので………ハハハハハ……どうぞ続けてください」

「あ、あぁ。ええっとだな、それで道中も魔物は出る。もちろん俺も戦うがリムル達がいてくれると安心できる。もちろん王都についてから、お礼もするつもりだ」

 

 どうしようか?とりあえずこの世界について探りたいとは思ってたけど、王都か………何か文献でも読ませてもらえるなら、行く価値もあるかもな。

 俺がメルドさんに了承の返事をしようと口を開きかけると、また先のヴェルドラが何か言い出した。

 

「王都には美味しいものがあるのか?」

「ああ、あるぞ。なんなら俺から言って王城でもてなしてもらってもいい。あいつらもだいぶリムル達に気を許してるみたいだからな」

「うむ、それならば受けようぞ!その依頼とやらを!!クアーーーハッハッハ!!!」

「「「……………」」」

 

 なんとも言えない空気の中、一応メルドさんとロアさんは俺に「いいのか?」という視線をそろってむけてきたので、苦笑いしつつも首肯で返した。

 そのまま、出発の日時を聞いて解散となったが俺はヴェルドラとOHANASIがあるのでとりあえず宿に戻った。

 その日の夜、とある宿の一室ではおっさんのすすり泣く声が聞こえて怖いという苦情が入ったのだった。

 

 

 王都へと向かう日になり、まだ日が上ってまもない時間に俺達はホルアドの門にいた。

 

「一旦王都に戻ることになったが、護衛としてリムル達が同行してくれることになった。それでもすべての戦闘をリムル達に任せるのはもったいないからな。体慣らしと腕が落ちない程度には最低でも戦ってもらうぞ」

 

 メルドさんの言葉に難色を示すものもいれば俺達が来ることに喜んでいるものもいる。

 特に信治なんかは、あわよくばヴェルドラの漫画を読もうと思っているのか、早くもヴェルドラの方へにじり寄っている。

 しかしおあいにく様、ヴェルドラには他の人に漫画を見せたら王都についても自由に行動させないと言ってあるので、おそらく誰にも見せないだろう。まぁ、読むくらいはするだろうが………

 メルドさん主導の元、先頭の馬車にメルドさんと勇者の光輝に雫などの強い人が乗り、比較的戦闘が苦手のものが真ん中付近の馬車に乗っていた。俺はというと、最後尾の馬車で後方警戒を任された。

 俺には万能感知があるからどこにいても襲撃なんかは防げるんだけどな。あんまり不自然な事してると雫の時みたいに築かれるなんてことはなくても余計な疑いを向けられるかもしれない。

 ちなみにヴェルドラは俺の乗っている馬車の上で漫画を読んでいる。

 馬車に乗り込んですぐに漫画を取り出そうとしたヴェルドラに

 

「漫画を読みたいなら見えないとこで読め」

 

 と言ったら、口をとんがらせて馬車の屋根へ上って行った。

 そうまでして読んでたいのか……と、思わなくもないが、おとなしくしてくれるのなら別にほっといてもいいか。と思い、そのまま放置している。

 

 

 結局これといって大きなイベントは起こらず、至って平和に王都に到着してしまったわけなんだが、今現在俺とヴェルドラは王都にある城の応接室にいる。

 メルドさんが国のお偉いさんと教皇さんへの、報告の時に俺達の事も話したそうなのだが、その時に教皇さんが俺達に興味を持ったのか、城への入城が許可された。すぐに来ると言っていたのだが、もうかれこれ25分は待っている筈だ。

 

《正確には25分37.1秒です》

 

 いや、別にそんな正確な情報求めてないです。

 そんなどうでもいいやりとりをしていると、応接室の扉が開いて妙ににっこりしているおじいちゃんと、かなりレベルの高い美少女が入ってきた。

 

「お待たせしました。私が聖教教会の教皇イシュタル・ランゴバルトです」

「ハイリヒ王国王女リリアーナ・S・B・ハイリヒです。光輝さん達を助けてくださってありがとうございます」

 

 …………おうじょさま?おじょうさまの間違いじゃなくて?え?マジもんの王女様?

 あまりに唐突すぎる王女様の自己紹介に俺が固まっている間に、めんどくさいおっさん(ヴェルドラ)が動いた。

 

「いや、構わぬ。それよりもうまい料理があると聞いてな、どこに行けば食べられるのだ?」

「お、おい!何言ってんだよ!すみませんすみません。こいつ礼儀作法とか全く知らないんでほんとすみません」

「いえいえ、大丈夫ですよ。ヴェルドラさん、おいしい料理なら厨房に行けば何か作ってくれると思いますよ。城内の人に聞けば案内してくれると思います」

「そうかそうか!ではリムルよ後のことは任せて我は先に行くぞ!!クアーーーハッハッハ!!」

 

 バタン!と扉を閉めて城内へ消えて行ったヴェルドラに、俺は後であいつを締めてやらねば!という強い意志を持って王女様達に意識を戻した。

 

「えーっと、すでにご存知かと思いますが……俺がリムル・テンペストです。こんな見た目ですが俺は男です。で、さっきの失礼な奴がヴェルドラ・テンペストです」

「はい、先程メルドから聞きました。数日前に冒険者になったばかりなのにその強さで、さらに金ランクとは……いやはや、素晴らしいですな」

 

 そう、実は俺達、ホルアドを発つ前にロアさんから冒険者ランクを金にしてもらっていた。

 本当は色々功績とかがいるようなのだが、勇者達の護衛が最低の青ランクだなんて、もしめんどくさい輩に知られたらギルドに苦情が来るからとのことだった。それと、どうせ近いうちに金付近のランクになるんだったら別に今金にしてもいいだろ。というなんとも適当な感じで金ランクになった。

 もちろん、ロアさんだけで決められることではないようなので人の出入れが激しい、商業都市フューレンのギルドに俺達を金ランクにする旨の手紙を渡すようにと言われた。

 

「まぁ、い、色々ありまして………」

「今そこを探ろうなどとは思っていません。そのうち話してくれればこちらとしても安心できるというものです」

「それでリムルさん達はこれからどうするんですか?」

 

 どうすると言われても、俺達には土地勘がないため道に迷うことはないが、そもそもどっちに向かえば何があるかが分からないのだ。それでも手紙の件があるため目的地はある。することがないよりはまだマシだ。

 

「……ホルアドの支部長さんからフューレンの支部長への手紙を預かっているので、とりあえずそこに向かおうかと思ってますけど。どこかいい素材の狩場とかがあれば少し寄り道してもいいかな?と思ってます」

「そうですか。………それならライセン大峡谷などはいかがですかな?」

 

 ライセン大峡谷と聞いて、リリアーナさんはギョッとした顔をしたがすぐに佇まいを戻した。

 ライセン大峡谷には何かあるのだろうか?

 

「さすがにライセン大峡谷は厳しいのではないでしょうか?」

「いえいえ、勇者様達よりも強いのなら問題ないでしょう。それに御二人はどうやら武闘派のようですし。あそこの特性も問題ないでしょう」

「うーん……そう言われればそうですけど」

「じゃあ、そこに行ってみます」

 

 実際、素の戦闘力は俺もヴェルドラも一般人の比じゃないし、最悪スキルでなんとかなるだろうから大丈夫だろ。

 

「それでも何日かは王都に滞在するんですよね?よろしければ城内の部屋を使ってもいいですよ」

 

 嬉しい申し出だが、あまりにも待遇が良すぎる。余程お人好しなのか、打算があるのか……

 王女様の方は可愛らしくニコニコしているが()()()()()好意で話してくれているが、問題はこの教皇だよなぁ……なんか胡散臭そうな笑顔で今にも手でごますりしそうな雰囲気を醸し出している。

 

「迷惑でなければ嬉しいんですけど…いいんですか?身元不確かな冒険者を城に滞在なんて」

「それなら大丈夫ですよ。勇者様方も信頼されているようですし」

「それに聞いた限りの戦闘能力ならば此度の戦争でも活躍してくださいますしな」

 

 なるほど……ここで俺達に媚を売って戦争に駆り出そうって魂胆か。

 そりゃあ知り合いがピンチだったりしたら助けるけど自分から殴り込みに行くなんてことはしないと決めている。これは魔人族相手でも同じだ。万が一魔人族にも知り合いができたら、もちろんそっちを優先する。

 

「えぇっと、実はですね。事情があって戦争にはあんまり積極的に参加しないことにしてるんですよ。もちろん自分が狙われたりしたら迎撃はしますけど……」

「その事情というのは」

「すみません言えないです」

 

 はっきりと俺がそう言うと、王女様のはじっと俺の顔を見て頷いた。

 

「すみません。事情は人それぞれですよね。あまり無理なさらないでくださいね」

「ありがとうございます」

 

 さて、王女様はああ言ってくれたが……教皇の方はあまりいい顔をしていない。やはりここでも宗教絡みで一悶着ありそうな予感がするが、ヒナタ達の時のようにはならないだろう。

 今この王都にいる者で俺と渡り合える、というか傷をつけられるほどの魔素(エネルギー)を持った人はいない(普通いるはずがない)し、印象操作なんかも勇者が俺を信頼してくれているため効果的ではないはず。

 

「……それでは気が変わったらお話ししていただくと言うことでいいですかな?」

「はい、気が変わったらその時は」

 

 少なくともこの人に話すのは何か危険なものを感じるので絶対に話さないが、そのうち誰かに話すことになるかもしれない。

 もしそうなったらどうにか騒ぎにならないようにしてもらわないと……また討伐されそうになったりしたら面倒だし。万が一にもやられることはないとは思うけど、街を利用できなくなったりしたらそれはそれで面倒だし。

 

 

 その後俺はリリアーナ姫と教皇と分かれてヴェルドラのいる厨房に向かった。

 万能感知があるので迷いなくヴェルドラのところへ行けるのだが……頭の痛い問題が一つ出来ていた。

 

「これもおいしい!」

「冒険者さんでこんなに料理できるなんてすごいのねぇ」

「クアーーーハッハッハ!!まだまだ食べるがよい!材料は山ほどあるからな!!」

「………おい、ヴェルドラ、お前何してんの?」

「おぉ!リムルか!リムルも我のお好み焼きを食べるか?」

 

 目の前のオッサンは笑顔でお好み焼きの乗った皿をこちらに突き出している。

 いい香りだ。鰹節(もどき)の香りとソースの香りが食欲をそそるが、ここは我慢しなければならない。なぜなら俺にはまずすべきことがあるからだ。

 

「なんで料理を食べにきたお前が料理振舞ってんの?いや、振る舞うこと自体はいいけど、なんでお好み焼きなの?」

 

 もっと他にあったよね?という無言のプレッシャーにヴェルドラの笑顔は苦笑いに変わる。

 先程言ったように料理を振る舞うことは別に問題ではないのだ。しかし、作ったものが問題だ。

 通常時は良かったかもしれないが、仮にもここには日本の高校生達が1クラス分まるまる滞在している場所なのだ。もしこのお好み焼きを彼らのうちの誰かが見たり聞いたり食べたりしたら、俺達が少なくとも日本に(ゆかり)のある事がバレてしまう。

 そうなれば、最悪俺達までもが神の使徒認定されかねない。そんな事態は面倒だから避けるに越したことはない。

 

「あの、私達がヴェルドラさんにお好み焼き?を作ってくださいって言ったので……」

「あぁ、お姉さん達は悪くないよ。お好み焼きは美味しいしね。でもできればここでのことは誰にも話さないでくれるとありがたいな」

「……はっ、はい!」

 

 厨房を出てとりあえず城の中庭みたいなところに出る。今のところ周りに人はいないので俺は後ろについてきているヴェルドラに向き直る。

 

「あのなぁ………ここは俺達の世界と違って異世界人なんて滅多に、というかほとんどいないんだぞ?今の時代に俺とお前しかいないならまだしも、ここに滞在している現役の高校生がいるのに文化の象徴の一つと言っても過言ではない食を迂闊に外に出すなよ」

「むぅ………」

 

 まぁ、今現在八重樫さんに日本との関係を疑われている俺が言えた義理ではないのだが………そんな都合の悪い事情は俺の中で封印すればいいのである。

 

「だいたいマンガを読むことを許可してるんだからそれで我慢しろよ。それになんか食べたくなってもお前なら自分で作れるだろ?まぁ…暇だったら俺もなんか作ってやるから、それで手を打ってくれ」

「……そこまで言うのなら分かった。しかし、ちゃんとリムルも我に何か作るのだぞ?我にも作れないものが有るのだからな?約束だぞ?」

 

 ヴェルドラは少し考えた様子で頷いた。

 しかしまぁ、オッサンに「約束だぞ?」って言われてもなぁ……可愛くないし、若干キモいと思っちゃたじゃん。

 

 

「リムルさんはこれからどうするんですか?」

「ん?えーと、ライセン大峡谷?ってところに行ってみようかなって」

「へぇ〜、どんなところ何ですか?」

「いや実は、強い魔物が出るってこと以外知らないんだよね」

 

 今現在俺は勇者一行の女子グループに囲まれて夕食を取っている。ヴェルドラは数人の男子に混ざって戦闘の話をしているようだ。今のところ単純に戦闘の話しかしてないため放置している。

 本来なら俺だってあっちに行きたいけどなかなか抜け出せないでいる。どうやら彼女達は俺が男だなんて言っても微塵も信じておらず。挙げ句の果てに俺の胸に同情の視線を向けてこう言った。

 

「大丈夫ですよ。認めたくないかもしれないけど、女は胸じゃないですから!」

 

 なんて言ってきたのである。正直もうなんて言っていいか分からなくなってしまった。

 俺が男と信じてないのはまだいいとして、流石に今のはなんかこう……心にくるものがあったぞ?

 

主様(マスター)を愚弄するなどこの娘達は礼儀というものが著しくかけていますね》

 

 おおっと!シエル先生がお怒りだ。

心にくるものがると言ったが、別に気にしてないから先生もそんなに怒んなくてもいいのにな。

 

《………主様(マスター)に免じてここは許すとしましょう》

 

 

 その後、俺は女子集団から抜け出すことは出来ずに夕食を終えて自室に戻ったが、ヴェルドラは食後の運動に行ってくると言って信治等何人かの男子を連れてどこかに行ってしまった。

 そして俺は、自室の中から万能感知にて雫が部屋で一人でいるのを確認した。そして、とりあえず誰もいない今がチャンスと思い早速雫に会いに行く。

 

「どうした!そんなものでは我に傷一つつけられぬぞ!!」

「いやいや!最初から無理だって!!」

「ヴェルドラさん強すぎだろ!」

 

 雫の部屋に行く途中に中庭からヴェルドラの声が聞こえたと思ったら案の定信治等をしごいていた。

 普通の高校生だった奴らに急にヴェルドラの相手なんてそりゃあ無理な話だろう。と思ったが、これを機に少しでも強くならればいいか。

 

「クアーーーハッハッハ!!」

 

 ほどほどにしろと声をかけてかけてから、ヴェルドラの戦闘音が聞こえなくなった頃雫の部屋についた。

 コンコンという木の扉をノックした音が響き反応を伺う。

 まぁ、何も問題ないのは万能感知で確認済みなんだけどな。一応マナーだし。

 

「はい」

「リムルだけど……ちょっと中に入ってもいいか?」

 

 程なくして雫が扉を開けてくれたので中に入る。周りに誰もいないが一応扉が閉まってから遮音結界を張った。

 

「夜分遅くにごめんな?早い方がいいと思って」

「いえ、それで何か用ですか?」

 

 俺は頷いて持っていた長包を雫に渡す。

 なぜいちいち持っていたかというと、普通に不自然だからである。

考えてもみてくれ、6、70センチくらいの長さの長包を、俺が懐から出したらあまりにも不自然だろ?「その服は某青ダヌキ(ネコ)のポケットかよ!」なんてツッコミが飛んでくるかもしれない。………いや、まぁそれよりヤバいんだけどさ。

 

「これは……」

「御所望の品だ。王都についてから取りに行ったから今日中に渡そうと思ってな。訓練とかでも使うだろうし、何より使い慣れてないとダメだもんな」

 

 雫ははっとして包んである本体を取り出す。

 そこには鍔がなくやや反光沢のかかった藍色っぽい青の鞘と刀の柄が姿を現した。

 うん。材質からデザインまで全てお任せにしたけど、シエル先生なかなかセンスあるなぁ。渋いながらも綺麗な青?藍?と雫の名前を掛けているんだな。

 今は暗いから藍色が強く見えるけど、明るいところでは綺麗な青に見えることだろう。

 チャキっという音と共に刀身が現れ、雫は刀を引き抜いた。

 波紋なんかはないが、少ない月明かりを反射するくらいに刀身は綺麗に磨き上がっている。

 先端が両刃になっているので、鋒両刃造(きっさきもろはずくり)になっている。普通の刀よりも戦闘に向いているから使いやすいだろう。

 

「こんなにすごい刀、初めて見ました。いいんですかこんな業物いただいて……」

「あぁ、気にしなくていいよ。それよりも一つ教えて欲しい事があるんだけどさ」

 

 とりあえずものは渡したので、俺は雫の部屋にに来た本当の目的の方について話を始めることにした。

 

「まず、ぶっちゃけるけど。雫の思っている通り俺は日本に縁がある。それどころか、地球ともこのトータスとも違う世界の住人だ」

「っ……」

「そこで質問なんだけど、なんで俺が日本に縁があるって分かったの?もちろん刀のこともあるだろうけど、それだけじゃないよね?戦闘を行う世界なら刀だってあってもおかしくはないだろ?現に俺のいた世界ではそこまで珍しい武器じゃなかったからな」

 

 雫はしばらく黙って俺の言葉(ほとんど最初の方だろう)を咀嚼していたが、こっちをはっきりと見て口を開いた。

 

「見たんです」

「え?何を?」

「リムルさんを、日本で」

 

 ………は?ドウイウコトデスカ???

 

「前に通り魔に刺された男の人を助けている?リムルさんを見てて、あまりに綺麗な人だったから覚えてたんです」

 

 あの場にいたの!?

 たしかに俺は一度日本に、それも俺が刺された直後に戻って俺の蘇生をしたけど、あの場にいたのはせいぜい2、3分くらいで………え?その中に雫が居たって?どんな偶然だよ!!

 

《万能感知の記録と照合が終了しました。たしかにあの場に雫が発見されました》

 

 まじかよ!シエル先生まで認めちゃったよ!そりゃあもう仕方ないね。回避しようがないじゃん。

 

「な、なるほどね。うんわかった。こっちでも確認が取れたよ。ありがとう。」

「い、いえ」

「ちなみにその時誰か友達といたりした?」

「香織と一緒でしたけど、血が流れてて香織に見せないようにしてたので多分香織はリムルさんのこと見てないと思いますよ」

「そうか。うん、ならまぁいいか。でもこのことは俺達の秘密にしてくれると助かる」

「それは、はい。こんなすごいものまで貰ったので」

 

 とりあえず直近の不安要素が解消されたので俺は遮音結界を解除して雫の部屋から出た。

 

 

 

 ありふれたおまけ

 

 

「昼ごろに来たの冒険者さん、料理上手だったね〜」

「たしかに!手際も凄い良かったし、何よりほんとに美味しかった!」

「あれだけ上手なら店を開いたり、なんならここで働くこともできると思うんだけどなぁ……」

「なになに?狙ってんの?まぁ、かっこよかったもんね〜?」

「ちょっ!そんなんじゃないし〜」

 

 先程ヴェルドラがお好み焼きを振る舞っていた厨房では数人の女性がキャッキャとガールズトークを繰り広げていた。

 しかし、その会話に一人参加せずに心ここに在らずといった様子でぼーっとしている少女がいた。

 その少女は最近城の料理人として新たに雇われた使用人で、こういうガールズトークが大好物というほどでもないが、参加したくなる年頃だ。実際、休憩時などに勇者一行の男子達の話にも参加していたりする。

 

「どうしたのー?さっきからぼーっとしてるけど」

「い、いえ。なんでもないです」

 

 しかし、いつもなら声をかけられたら話に混ざっていた彼女も、今ばかりは頭の中をある人がしめている。

 

「あ、もしかして……」

「え?」

「惚れちゃったの?ヴェルドラさんに!」

「え?……あぁ、いや別にそんなんじゃないですよ!」

「あら?そう?」

 

 たしかにヴェルドラさんもかっこよかったけど、それよりも………

 そう、今彼女の頭の中はリムルのことでいっぱいなのである。

 あの時去り際に見せたリムルの優しい笑顔を一番前で見てしまった彼女は見事にハートを撃ち抜かれたのである。

 美しいお顔立ちにサラサラそうな髪、そしてあの優しい笑顔に引き寄せられるように美しい金の瞳。願うならばもう一度会いたい。会ってお話ししてみたい。

 

「はぁ、リムルお姉様………」

 

 これが後に王城内で雫シスターズと双璧をなすリムルシスターズの創始者の誕生であった。

 

 

「?……??」

「リムルよ、どうしたのだ?」

「……いや、なんでもない」

 

 なんだ?今なんか背筋がゾワっとしたぞ?

 

主様(マスター)の周囲に人の反応はありません。また、精神攻撃の類をかけられたら痕跡もありません》

 

 そうか……ならまぁ、気のせいだろ。

 リムルは知らない。次に王都を訪れる時にとんでもなく恥ずかしい目に合うことを………




 どうでしたでしょうか?今回も楽しんでくれたのなら嬉しい限りです。

 今回の前書きで投稿頻度について以後気を付けると書きましたが、未だ次話をpixivの方でも投稿できておりません。
 そのため、次回がいつになるか自分でも分かっておりません。重ね重ねすみません。出来るだけ早く更新したいと思っています。
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