ウルトラマンティガ THE ULTIMATE MAGICIANS 作:naogran
酸の湖では、静寂な空気に包まれていた。イベリーゴ軍が廃船の前に待機している。廃船では、谷の者達が武器を構えて待機している。
アンソニー「テコでも動きそうにありませんな。」
スカーレット「帰りを待っているのだ。」
アンソニー「帰り?」
スカーレット「あの2人がガンシップで戻ると信じている。」
アンソニー「ガンシップは厄介ですなぁ。今の内に一当てやりますか。」
スカーレット「お前はあの船が何だか知っているのか?」
アンソニー「セブンスインフェルノの前に作られた奴でしょ?嘘か本当か知らねえが、星まで行ってたとか何とか。」
あの廃船は元々は宇宙船だった。
アンソニー「偉く硬いから砲撃も効かねえが。なぁに。穴に打ち込めば・・・」
スカーレット「私も待ちたいのだ。」
アンソニー「え?」
スカーレット「本当に菌海の深部から生きて戻れるものならな。あの2人と一度ゆっくり話をしたかった。」
彼女は戦車から降り、人質となってるボブ達に訊く。
スカーレット「どうだ?決心は付いたか?降伏を勧めに行くなら放してやるぞ。・・・リベリオの二の舞にしたいのか?」
ベガ「アンタも姫様だじゃろうが、ワシ等の姫様と大分違うの。」
ボブ「この手を見て下され。」
右手に腫れや疣が出来てる。
ボブ「ギャビン様と同じ病じゃ。後半年もすれば石と同じになっちまう。じゃが、ワシ等の姫様はこの手を好きだと言うてくれる。働き者の綺麗な手だと言うてくれましたわい。」
スカーレット「菌海の毒に侵されながらそれでも菌海と共に生きると言うのか?」
ベガ「アンタは火を使う。そりゃあワシ等もちょびっとは使うがのう。」
ボブ「多過ぎる火は何も生みやせん。火は森を1日で灰にする。水と風は100年掛けて森を育てるんじゃ。」
ベガ「ワシ等は水と風の方がええ。」
ダウト「あの森を見たら姫様とタクト殿は悲しむじゃろうのう・・・」
この話を聞いたスカーレットが前を歩き出す。
兵士A「参謀殿。命令はまだですか?」
アンソニー「引っ込んでろ。」
兵士A「ハッ。」
彼女は谷の者達をジッと見ている。
アンソニー「何があったか知らねえが、可愛くなっちゃってまあ。」
スカーレット「アンソニー!その者達を解放しろ!」
アンソニー「ハッ?んじゃ待ちますか?」
スカーレット「兵に食事を取らせろ!1時間後に攻撃を開始する!」
アンソニー「飯ねぇ。ゆっくり食う事にしますか。」
廃船では。
村人A「ん?誰か来る!」
村人B「ボブ達だ!」
解放されたボブ達が廃船へ向かっていると。
ボブ「ん?」
ベガ「どうしたんじゃ?」
ボブ「風がない。」
ベガ「風が?・・・本当じゃ。風が止まった。」
船内では、大婆様が苦しんでいる。
少女A「婆様どうしたの?」
女性「大婆様?」
大婆様「誰か・・・誰かワシを外へ連れ出しておくれ・・・」
廃船の外へ大婆様を連れ出してあげた。
少女A「風が止むなんて初めて・・・」
酸の湖の風が止んでいる。
少女B「婆様、耳が痛い・・・」
大婆様「大気が・・・大気が怒りに満ちておる・・・」
上空を飛行するティガとガンシップ。ガンシップの燃料が半分以下まで減っている。
ジェシカ「・・・近い!」
バリー「菌海を切れた!酸の湖まで3分!」
ジェシカ「エンジンスロー!雲の下へ降りる!」
雲の下へ降下した。そこで異様な光景を目にした。
バリー「何じゃこの光は!?」
地上に無数の赤い光があった。
ティガ「ヴルグ!?」
その光の正体は、ヴルグの大群だった。
ティガ「怒りに満ちている・・・!?」
バリー「菌海が溢れた!アネモスビレッジに向かってる!」
ジェシカ「何故?どうやってヴルグを?」
ティガ「ん?」
南の方角に、何かを感じた。
ティガ「誰かが大群を引き寄せてる。」
ジェシカ「バリー!南方に向かって飛べ!」
バリー「はい!」
南の方角へ飛行する。
ティガ「・・・ジェシカ!」
ジェシカ「えぇ!バリー!照明弾!用意・・・撃て!!」
照明弾を発射。照明弾が光ると、何かが見えた。
バリー「何だあれは?」
1台の飛行ポッドが、何かを吊るして移動している。
ジェシカ「あっ!!」
吊るしているのは、ヴルグの子供だった。数本のフックが刺さっており、身体中から体液が溢れ出ている。
ジェシカ「なんて酷い事を!」
ティガ「あの子を囮にして群れを呼び寄せてるんだ!」
バリー「クソッ!!叩き落としてやる!!」
ジェシカ「ダメよ!!!!」
飛行ポッドが機関銃を連射する。
ティガ「バリー止めろ!!撃つな!!」
ガンシップが飛行ポッドから離れる。
バリー「何故じゃ!!何故撃たせんのじゃ!!」
ティガ「あの子を殺したら暴走は止まらねえぞ!!」
バリー「どうすれば良いんじゃ!!このままでは谷が全滅だ!!」
ジェシカ「落ち着いてバリー!ヴルグの子を群れへ返すの!やってみる!タクト!」
ティガ「あぁ!」
両手を挙げるジェシカをティガが握って飛行する。
バリー「姫様!タクト殿!何をするんじゃ!」
ジェシカ「バリーは皆に知らせて!!」
ティガがジェシカをコンドルに乗せた。
バリー「姫様!!武器も持たずに!!」
ティガ「タァッ!」
ハンドスラッシュでワイヤーを切った。
バリー「ああっ!!」
2人がヴルグの子の救出へ向かった。
酸の湖では、兵士達が照明弾を確認している。
偵察兵「我が軍の照明弾ではありません。」
スカーレット「距離は?」
偵察兵「約20リーグ。湖の対岸と思われます。」
スカーレット「ガンシップだと思うか?」
アンソニー「恐らく。」
すると上空に信号弾が2つ打ち上げられた。
アンソニー「救援を求める信号です。やはりガンシップですな。」
スカーレット「1時間経った。行こう。」
アンソニー「待たないんで?」
スカーレット「所詮血塗られた道だ。」
イベリーゴ軍が進行を開始した。
装甲兵士「装甲兵!前へ!」
アンソニー「殿下は中へ。」
スカーレット「ここで良い。」
右側に小さな光が接近してる。
兵士A「ガンシップだ!」
アネモスビレッジのガンシップだった。
兵士A「空襲!!!」
ガンシップに向けて一斉発砲を開始した。ガンシップが着陸しようとしてる。
スカーレット「あっ!撃つなーー!!止めろ!止めんか!!」
ガンシップがバランスを崩して不時着した。
村人達「クソー!!」
ボブ「姫様ー!」
スカーレット「この場で待機!発砲するな!」
アンソニー「殿下!!」
不時着したガンシップ。
スカーレット「あの2人はどうした!」
ボブ「姫様とタクト殿は!?」
ベガ「後ろに乗っとらんぞ!」
バリー「ヴルグだ!ヴルグの群れがこっちへ来るぞ!」
ボブ「何じゃと!?」
チャド「ヴルグが!?」
バリー「姫様は暴走を食い止める為に、タクト殿と共に向かった!戦なんぞしてる暇はない!皆高い所へ逃げろ!!急げ!!」
廃船の上では。
少女A「あ!婆様!赤い光が見えます!」
地平線にヴルグの大群の怒りの目が見えた。
少女B「どんどん増えてるみたい。」
少女A「こっちへ来るんだわ!」
大婆様「婆にしっかり掴まっておいで。こうなってはもう誰も止められないんじゃ。」
船内では、谷の者達が廃船の高い所へ避難している。
老婆「バリー、どうせ死ぬんじゃ。谷で死ねよ。」
バリー「ダメじゃ!姫様とタクト殿が諦めない限り諦めるな!」
イベリーゴ軍では。
スカーレット「良いか?出来るだけ時間を稼げ!私はすぐ戻る!」
アンソニー「殿下!まさかあれを!?まだ早過ぎます!」
スカーレット「今使わずに何時使うのだ?行け!」
戦車に乗って谷へ向かった。
そしてティガとジェシカは、ヴルグの子を囮にしてる飛行ポッドを説得している。
ジェシカ「撃たないで!!話を聞いて!!」
だが相手は話を聞かずに機関銃を連射するばかり。更に飛行ポッドからミサイルが発射された。
ティガ「ハァッ!!」
ウルトラシールドでミサイルを防いだ。
ティガ「このままじゃあの子の命が危ない!」
ジェシカ「タクト!私が気を引かせる!その間に!」
ティガ「何!?お前!」
男A「クソッ!鳥みたいな奴等だ!」
男B「あの人達は敵じゃないよ。何か叫んでいた。」
男A「作戦を邪魔する奴等は皆敵だ!早く囮を谷に放り込まないと俺達が危ないんだ!」
コンドルが接近する。
男A「来るぞ!よく引き付けてから撃て!」
照準をコンドルに合わせたその時。
男B「ああ・・・!」
コンドルに乗ったジェシカが立ち上がって両手を広げた。
男B「あ・・・!」
男A「今だ!撃て!」
男B「嫌だー!!エリスさん!!」
男A「退け!!」
コンドルから降りたジェシカが飛行ポッドに向かって落下する。だが男が機関銃を連射し、ジェシカの左肩と右足首に傷を負わせた。ジェシカはそのまま飛行ポッドに落下した。
男A「うわああ!!」
コンドルはそのまま遥か上空へ飛んで行った。
ティガ「ッ!!」
ヴルグの子を吊るしてるワイヤーを掴み、酸の湖の中州へ引っ張った。
ティガ「ハァッ!!」
マルチチョップでワイヤーを切り、飛行ポッドが墜落した。墜落した衝撃で、ジェシカと2人の男が放り出された。
ティガ「ジェシカ!」
倒れているジェシカにティガが駆け寄る。
エク『ミー。』
ジェシカ「っ・・・!」
ティガ「ジェシカ!大丈夫か?」
ジェシカ「大丈夫・・・あの子は・・・?」
ヴルグの子は苦しんでる様子だった。
ジェシカ「ヴルグ・・・うっ!!」
ティガ「大丈夫か!?すぐに傷を・・・」
ジェシカ「私に構わないで・・・!あの子を早く・・・!」
ティガ「・・・分かった。」
彼はすぐにヴルグの子に駆け寄る。ジェシカは右足を引き摺りながらヴルグの子に寄る。
ティガ「タァッ!」
ゼペリオン光線・セルチェンジビームでヴルグの子を落ち着かせ、更に刺さっているフックを消滅させて傷口を防いで止血する。だがヴルグの子の怒りは収まらない。
ティガ「怒りが収まらない・・・!でも・・・!」
セルチェンジビームをこのまま流し続ける。
ジェシカ「怒らないで・・・怖がらなくていいの・・・私達は敵じゃないわ・・・ごめん・・・ごめんね・・・許してなんて言えないよね・・・酷過ぎるのよね・・・」
セルチェンジビームの消耗でエネルギーが減り、カラータイマーが鳴り出した。
ティガ「まだだ・・・!!」
するとヴルグの子が動き出した。
ジェシカ「あっ!動いちゃダメ!!体液が出ちゃう!!」
動いた事でヴルグの子から体液が噴出し、ジェシカの服を青く染め上げた。
ジェシカ「良い子だから動かないで!」
動くヴルグの子を抑える。
ジェシカ「・・・あっ!」
対岸にヴルグの大群が押し寄せて来てる。
男A「大変だ!見付けられた!」
男B「ああ!こっちへ来る!」
動くヴルグの子をジェシカが頑張って抑えるが、ヴルグの子の力が強く、逆に押されてる。ティガはセルチェンジビームを流し続けている。
ジェシカ「ダメよ!そんな怪我で入ったら!この湖の水はダメだったら!!」
だが彼女の傷が生じた右足が酸の湖に入ってしまった。
ジェシカ「ああああーーーー!!!!!」
ティガ「ジェシカ!!!!」
するとヴルグの子の怒りが消え、後ろへ下がった。
ジェシカ「っ・・・・!!!」
倒れて右足を強く抑える。
ティガ「・・・」
エネルギーを使い続けたティガが光となり、タクトに戻った。ヴルグの子の傷が修復され止血した。
タクト「ジェシカ・・・!!」
倒れてるジェシカに歩み寄る。ヴルグの子が触手を伸ばし、傷を負ったジェシカの顔に近付けた。
ジェシカ「お前・・・」
タクト「ヴルグ・・・」
別の触手がタクトの頬を触った。
タクト「俺達を信じてくれてる・・・」
ジェシカ「うん・・・優しい子・・・私は大丈夫・・・今皆が迎えに来るからね。」
だが彼女の願いが届かなかった。ヴルグの大群が横に逸れて進軍して行った。
タクト「逸れた!?こっちへ来ない!?」
ジェシカ「ヴルグ!ダメよ!そっちは谷があるのに!!」
タクト「怒りで我を失ってる・・・!早く鎮めなきゃ!」
ジェシカ「あ!」
イベリーゴ軍の戦車の砲撃がヴルグの大群を攻撃している。
男A「ハハハハハ!馬鹿め!自分で招き寄せていやがる!」
男B「助かった・・・」
男A「すぐ脱出だ!エンジンを調べ・・・アッ!よ、止せ!は・・・話せば分かる!」
機関銃を持ったタクトが男達に銃口を向けてる。その後ろにジェシカが左肩を抑えて立っている。
ジェシカ「私達を運びなさい!あの子を群れに返します!」
男A「そ、そんな事をしたってもう無駄だ!群れは止まりはしない!」
タクト「黙れ!!」
”ズドドドドド!!!”
男達「うわあああ!!」
機関銃を連射して脅す。
タクト「俺達を群れの先に降ろすだけで良い!運べ!!」
男B「し、しかし!君達も死ぬぞ!」
タクト「谷を救えるなら命を惜しまない!さっさとしろ!」
怒りに満ちたヴルグの大群の進軍が止まらない。果たして、タクトとジェシカは谷を救えるのか。