ウルトラマンティガ THE ULTIMATE MAGICIANS   作:naogran

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決戦に向けて



第43話「決戦に向けて」

コーノ=マッシータ。嘗て200年前、天才魔道具士と称えられた偉大なる偉人。彼が開発したアールスハイド王国の市民証。タクトとシンは、マッシータがまだ存命していると推測した。

 

シン(普通に考えて・・・200年前の人物が今も生きている訳がない・・・でも・・・それだけの技術を持った人間もし何らかの形で寿命を延ばすような魔法を開発していたとしたら・・・!)

 

メリダ「なに馬鹿な事言ってるんだい。そんな訳ないだろう。」

 

シン「ですよね・・・」

 

タクト「まぁ、200年前の人物が今もご存命って訳じゃないよな。」

 

メリダ「市民証の発明が発表されると同時に、世界各国から大量の依頼が集まった。それこそマッシータ1人では付与に間に合わない程にね。それに、その類稀な技術はマッシータの死後も変わらず必要とされ続ける事も明白だった。」

 

タクト「死後も今も開発され続けてる理由って何だ?」

 

メリダ「それを危惧したマッシータは、ある物を作ったんだ。」

 

シン「ある物?」

 

メリダ「市民証の・・・自動魔法付与装置さ。

 

シン「自動・・・付与!?」

 

タクト「200年前にそんな魔道具が!?」

 

シン「何てこった・・・完全にオーバーテクノロジー・・・そりゃ当時の世間を騒がすはずだ・・・そんな人物が・・・」

 

タクト(ありゃま、この旦那は自分が現代と同じ事をやってるのに気付いていらっしゃらないご様子・・・)

 

メリダ「兎に角、その装置を各国に配った事で今でも市民証は作られ続けてる。だけど結局マッシータはその装置の事も秘匿したまま亡くなったから、今でもその技術は解明されてないんだよ。」

 

シン「・・・流石婆ちゃん。よくそんな話知ってるね。」

 

メリダ「魔道具士が過去の天才魔道具士の事を調べるのは当然さね。」

 

マーリン「いやいや、こんな事言っとるが、実際にここまでの事実を知っとる者はそうおらんぞ。当時、帝国の侵略を受けていたマッシータの祖国までわざわざ調べに行った位だからのう。」

 

シン「わざわざ戦争中に・・・とんでもねぇな。」

 

タクト「それを聞くと、よくぞ御無事で・・・」

 

シシリー「くすくす。」

 

シン「ん?どうしたのシシリー?」

 

シシリー「いえ。シン君はお爺様にそっくりだけど、やっぱりお婆様にも似てたんだなぁって。」

 

シン「え?似てる?」

 

タクト「どんな所が?」

 

シシリー「探究熱心な所とか、周りを気にせず突き進んじゃう行動力とか。やっぱりお2人を見て育ったんですね。」

 

急に全員が静まった。

 

メリダ「・・・何だり、誰か何か言いなよ。」

 

マーリン「ほほ。照れるわい。」

 

メリダ「照れんじゃないよ。気持ち悪い。それに・・・シン。アンタ、マッシータの技術に驚いてるけど・・・アンタだってマッシータと同じ位世間に評価されてるじゃないか。」

 

シン「!」

 

メリダ「一般に広めるにはまだ早計に思える発明品も多々あるけど、商会をと押して世界に広まった魔道具の中には最早なくてはならない物がある。人々に求められ、そして受け入れられる魔道具を開発する事は、魔道具を作る者にとって何時の時代も最も重要な事だよ。私も”導師”なんて呼ばれちゃいるが・・・マッシータやアンタの想像力はそれとはまた一線を画するものだ。見ている世界が、見えている事象が異なるのかと思う程にね。その技術は・・・私じゃ考えも付かない。アンタとマッシータ・・・何か共通する事でもあったのかねぇ・・・」

 

シン(・・・・)

 

タクト(・・・・)

 

 

 

 

 

 

夕食後。シンはタクトと一緒に自室に戻った。

 

シン「漠然とした予感だけど、多分・・・予想は当たってるかも。」

 

タクト「答えはコイツに付与された『文字』を見れば明白だ。」

 

シン「よし、タクト見よう。」

 

タクト「ああ。」

 

意識を集中して、市民証の文字を浮かばせた。

 

シン「・・・!!やっぱり・・・日本語・・・だ・・・!!」

 

タクト「魔力認証・・・本人確認・・・個人情報・・・口座情報・・・!!」

 

この4つの漢字が市民証に付与されてあったのだ。

 

シン「俺の前世でもなかったような個人認証システム・・・」

 

タクト「しかもそれを200年前に実現させた技術・・・」

 

シン「そして市民証に付与されたこの文字・・・間違いない。」

 

タクト「コーノ=マッシータは、俺達と同じ転生者だ・・・!!」

 

シン「けど明確な答えは出せそうにないけど・・・単純に考えて、地球とこの世界の輪廻は繋がっている・・・と言う事だろうか?マッシータの転生が200年も前だと言う事から時系列は関係ないのか・・・」

 

タクト「そう言えばメリダ様、マッシータは嘗て馬車に轢かれて生死を彷徨っていたって言ってた。」

 

シン「うん。それは俺の幼少期の経験との共通点・・・そこから察するに・・・前世の記憶が極稀に覚醒する条件・・・それは・・・その人間が何らかの形で死の淵から生還する事。」

 

タクト「けど俺は赤子からじゃなく、死亡した時に神様と出会ってその時点の年齢で転生された。何で俺だけが・・・?」

 

シン(・・・何だろう・・・この感覚・・・まるで・・・遥か遠い故郷の知り合いを見付けたような・・・居るんだろうか?この世界に・・・まだ他にも・・・俺やタクトやマッシータと同じ・・・遥か彼方の地球から転生した人間が・・・)

 

 

 

 

 

 

ダーム王国。

 

門番A「なあ、カートゥーン長官は?」

 

門番B「相変わらずだよ。飯も食わずに自室に篭って何かやってる。」

 

門番A「変わった男だよな。ついこの間まで俺らと騎士団で肩並べてたのに。」

 

門番B「半年程前だったか。急に魔法が使えるようになって・・・見る間に軍の戦力のトップに立っちまった。」

 

門番A「一体あの男の身に何が起きたんだ?」

 

 

 

 

そのカートゥーンは自室で、不敵な笑みを浮かべながらある本を黙読していた。

 

カートゥーン「『新・英雄物語』・・・かぁ・・・面白ェなぁ。楽しみだなぁ・・・」

 

この男は一体何者なのだろうか。

 

 

 

 

 

 

数日後。バイブレーションソード演習指南日当日。アールスハイド王国軍・練兵場に多くの騎士達が集まった。タクト、シン、トニー、ミランダ、マナミア、アズマがその様子を見に来た。

 

ミランダ「ア・・・私でも顔知ってる有名人がいっぱい・・・って言うか誰も彼も攻略作戦で活躍してた人達じゃない・・・」

 

トニー「『国を代表する実力者』だから、結局団長とかの隊長格ばっかりだからねぇ。」

 

アズマ「改めて見ると、本当壮観だなぁ。」

 

ミランダ「取り敢えず先に一言言わせて欲しいんだけどウォルフォード君・・・こう言うのはこれから必ず事前に()()に確認取ってからにしてね・・・?」

 

マナミア「ミランダ、気を確かに・・・」

 

シン「ゴメンゴメン・・・でもそんなに気後れしなくても、このメンバーの中じゃ実力的にはミランダがトップだぜ。」

 

ミランダ「ア・・・私が?何言ってんの?」

 

タクト「ドミニク総長から聞いた超災害級討伐の件や、マリアの話を聞く限りミランダは多分もう一般の軍人レベルを超えている。それに加えて今はバイブレーションソードを持っている。」

 

ミランダ「・・・そ・・・そうやって調子付けて上手く手伝わせようとしてるだけでしょ・・・こ・・・こんな・・・世界でトップ張ってる人達の前で・・・」

 

マナミア「あ、ここに居られるのはアールスハイドの方々だけですよ?」

 

ミランダ「え!?」

 

マナミア「他国の方々も回る予定ですよ。」

 

ミランダ「・・・・・・・・」

 

マナミア「あれ?」

 

トニー「マナミア様。シンが緊張解こうとしてるのに逆にプレッシャー与えてますよ。」

 

マナミア「ごめんなさいミランダ。」

 

アズマ「でもその後更に実地訓練もあるんだよな。」

 

トニー「それはまた機を見て伝えた方が・・・」

 

ミランダ(聞こえてるわよォッ・・・!!)

 

そこにドミニクとクリスティーナとモニカがやって来た。

 

ドミニク「スマン。遅れた。」

 

モニカ「皆さん揃ってますね。」

 

クリスティーナ「まだ始まっていないようですね。」

 

シン「ドミニクさん。モニカさん。クリスねーちゃん。」

 

マナミア「お母様。」

 

タクト「あれ?クリスとモニカは近衛なのに戦場に出るのか?」

 

ドミニク「恐らく本番だけな。クリスティーナとジークフリードとモニカ様は居ると居ないとで周りの兵の士気が随分と違って来るんだ。」

 

クリスティーナ「・・・ま、それにミランダとマナミア様のフォローも必要かと思いまして。」

 

ミランダ(クリスティーナ様・・・!!)

 

クリスティーナ「でも剣聖様とレイチェル様に直々に指導を受けている位だし、特に心配もいりませんよね。」

 

マナミア「はい!」

 

ミランダ(クリスティーナ様ぁっ!?)

 

 

 

 

その後。アールスハイド王国騎士団達のバイブレーションソードのデモンストレーションが始まった。

 

シン「難しいのは『魔道具を起動しながら剣を振るう』と言うその点に尽きます。兎も角慣れてしまうのが手っ取り早いです。各自、これから1日1000回の素振りを心掛けて下さい。」

 

騎士達「!?」

 

トニー(うわぁ・・・出た。シンのナチュラルなドS指導・・・)

 

ミランダ「え?私、剣聖様に毎日3000回振れって言われてるけど・・・」

 

シン「あー、俺もそれ言われてた。」

 

タクト(ドSはミッシェル譲りか。)

 

ドミニク「むぅ・・・なまじ剣技は身体に染み付いておるから・・・身体を動かす時に魔道具の起動を切ってしまうな。」

 

タクト「まあな。普段魔法を使わない人が殆どだから無理もない。」

 

ドミニク「それにしても・・・君達も忙しいだろうによく短期間でこれだけの本数の剣を用意出来たな。」

 

シン「あー・・・はは。」

 

ドミニク「何か特別な方法が?」

 

タクト「すまん。全部極秘だ。」

 

ドミニク「成る程・・・ならば質問を変えよう。シュトロームには勝てそうかね?」

 

タクト「・・・・」

 

シン「・・・正直言うと・・・分かりません。」

 

タクト「俺も。」

 

ドミニク「・・・意外な答えだな。1年前・・・練兵場での戦いを見た限りでは君達が優勢に思えたが。」

 

シン「彼奴、あの時・・・()()()()()()()()()()()()()使()()()()()んですよ。」

 

ドミニク「何?」

 

タクト「あの時のシュトロームとの戦い。奴は戦いを起こしてなかった。シュトロームは最初から逃げる前提でしか動いてなかった。仮に奴があの時に本気を出せば、アールスハイド王国は一瞬で全滅してしまうかも知れない。過去に現れた最初の魔人出現のように。」

 

シン「それに、全力のシュトロームがどの程度の力を秘めているのか、俺達には全く予想も付きません。」

 

ドミニク「・・・君達がそう言うと、唐突に生きた心地がしなくなるな・・・」

 

シン「勿論俺は・・・俺達は全力で戦います。シュトロームに・・・魔人に勝つ為に。今言える事は・・・それだけです。」

 

タクト(シュトロームに勝つのは表向き。本来はオリベイラを助ける事。それでも奴が世界を滅ぼす気なら、容赦なく倒す。)

 

 

 

 

騎士「・・・あー・・・やっぱ口で説明されただけじゃ感覚掴めねーや。ウォーレス。ちょっと実際にやって見せてくれ。」

 

ミランダ「え!?いやそんな・・・私如きが・・・」

 

騎士「手合わせしろって訳じゃねーんだ。流れだけで良いからよ。」

 

マナミア「ミランダ、お手本を見せれば皆さんコツを掴めますよ。」

 

アズマ「やってやれよ。先生。」

 

ミランダ「先生って・・・分かったわ。」

 

彼女は自前の剣を出して、剣を鞘から抜いた。

 

騎士「・・・おいウォーレス・・・お前それ・・・マジか・・・!?」

 

周囲の騎士達がミランダの剣を見て驚きを隠しきれない。その理由は、彼女が長剣を持っているからである。

 

騎士「す・・・凄まじい長剣だな・・・なあ・・・振れるか?あれ。」

 

騎士「難しいな・・・振れても標的に当たるかどうか・・・」

 

トニー(・・・あれが・・・シンがミランダに用意したって言う剣か・・・成る程。僕やシンと違い魔法を使えないミランダが・・・少しでも間合いを伸ばす為のの手段。そして、僕らよりも筋力バランスの良いミランダには、それを扱えるだけの能力(ちから)がある。身のこなし次第では相手が魔法の使い手だとしても互角に戦える。今のレベルのミランダが・・・それだけの力を振るうべき相手なんて限られてる。つまりアレは・・・シンがミランダの力を信じて託した・・・対魔人用の長剣(バスターソード)・・・!!)

 

 

 

 

クリスティーナ「シンの言うように未来はまだ闇の中・・・手を伸ばした先すら見えないような心許ない状況です。私達に出来る事は、その闇を照らすほんの僅かな灯りになる位の事でしょう。」

 

モニカ「ですが私達には、導きとなってくれる存在が居ます。背を押してくれる者達も。今はまだ暗くとも・・・私達には見える気がします。」

 

クリスティーナ「はい。何れその先で闇を祓う光明が。」

 

 

 

 

 

 

指南終了。

 

ミランダ「あ〜〜〜緊張した〜〜〜疲れた〜〜〜〜!」

 

マナミア「お疲れ様ですミランダ。」

 

トニー「でも軍人さん達、皆使いこなせそうで良かったよ。」

 

アズマ「それに、力に溺れそうな騎士は1人も居なかったな。」

 

シン「あれ絶対ミランダに触発されたんだぜ。」

 

クリスティーナ「明日からは他国回りでしょう?そちらで使う剣の用意はあるのですか?」

 

タクト「色々相談したんだ。けど他国の分は現地で各武器に付与する予定だ。」

 

シン「各国それぞれにやっぱり使い慣れた武器があるでしょ?それを魔道具化した方が本人達にとっても良いはずだし・・・その為の武器の改造(振動部と柄の切り離し)は事前にお願いしてあるんだ。」

 

タクト「迅速に付与する準備自体は完了してるんだが、本番での破損とか考えると大量に付与しておく必要があるんだ。その作業だけで俺達は手一杯になりそうなんだ。」

 

クリスティーナ「でしたら、私達軍人が数名訓練に付き添いますよ。まだ未熟ですが、今日学んだコツを伝える事は出来るはずです。」

 

シン「本当!?そりゃ助かるよ!」

 

タクト「そうだったらエミリーも指南役をお願いしとく。」

 

シン「助かるよ!ありがとう!」

 

クリスティーナ「なのでシン。あなた達は無理せず魔道具の製造に集中しなさい。分かりましたね?」

 

シン「はーい。」

 

ミランダ「くす。ウォルフォード君とクリスティーナ様って本当に姉弟みたいだね。」

 

トニー「羨ましいねぇ。クリスティーナ様が姉さんだなんて。」

 

クリスティーナ「思えばもう何年も面倒をみてますからね。手間は掛かりますが、可愛い弟ですよ。」

 

モニカ「それに、シンにはジークフリードも居ますしね。」

 

ミランダ(心底羨ましい・・・!!)

 

クリスティーナ「モニカ様。」

 

モニカ「はい?」

 

クリスティーナ「アレは身内ではありません。」

 

モニカ「うふふ。」

 

シン(相変わらず仲悪いなもう・・・)

 

タクト(喧嘩する程仲良いってか?)

 

 

 

 

 

 

演習指南2日目。スイード王国。

 

シン「良いよ!次!」

 

アズマ「よし!」

 

天幕から、付与出来た数本の剣を持って出て来たアズマが騎士達の方へ運んだ。

 

アズマ「ホラ!シンが付与された剣だ!所有者は取って訓練に移ってくれ!」

 

シン「オッケー!次!」

 

シイナ「早いね!」

 

ナナセ「凄いね!」

 

衛士隊のシイナとナナセも指南役兼運搬役を任されてる。

 

スイード騎士「い・・・一体中で何が行われてるんだ・・・幾ら御使い様とは言え・・・」

 

スイード騎士「こんな短時間で何故こんな大量に付与が出来るんだ・・・!?」

 

 

 

 

気になる天幕の中では。

 

シシリー「次こちらです。お願いしますシン君。」

 

フェオン「こっちもお願いねタクト。」

 

シン「よっしゃ!」

 

タクト「行くぜ!」

 

2人が持っているのは、スタンプ。そのスタンプの魔石が魔力を巡回させ、それを剣の刃に”バンッ”と押印した。魔力が収まってゆっくりと外す。すると刃に『超音波振動』と付与が完了した。

 

タクト「オッケー。」

 

 

 

 

ハイペースに大量の付与を行う為、シンが考え出した方法。それは、『付与の転写機』の開発。ヒントとなったのはコーノ=マッシータの話だが、シンの場合、構造自体は極めて単純。

 

1・超音波振動と概念転写の2つを鋼の板に付与。

 

2・魔道具(それ)を起動しながら武器に押印する。

 

3・バイブレーションソードの完成。

 

付与転写機の存在は、メリダに鬼の形相で釘を刺されトップシークレット。なので、訓練場の端に天幕を張ってその中で付与を行っている。

 

 

 

 

タクト「ふぅ・・・結構付与出来たな。」

 

シン「外の様子はどう?シシリー。そろそろ途切れそう?」

 

シシリー「えっと・・・」

 

外の様子を覗くシシリー。確認した後、シンにニコッとした。

 

シシリー「そろそろ休憩にしましょうシン君!もうお昼ですよ?」

 

フェオン「もうお昼なの?タクトも休憩しましょ?」

 

タクト「ああ。」

 

因みに、激務を心配したシシリーとフェオンが2日目からタクトとシンに付き添ってくれる事になった。

 

シシリー「お茶置いときますね。」

 

シン「あ、ありがとうシシリー。」

 

フェオン「タクト。これ食べてね。」

 

タクト「お。フェオンご自慢のサンドイッチ。これ美味いんだよな〜♪」

 

シン「うあ〜〜・・・肩凝るなこりゃ・・・」

 

するとシシリーがシンの両肩に両手を置いた。

 

シシリー「お疲れ様ですシン君。肩お揉みしますよ。」

 

シン「!!」

 

シシリー「・・・それとも・・・治癒魔法をお掛けする方が良いですか?」

 

シン「んー・・・今はシシリーに直接肩揉んで欲しい気分かなぁ?」

 

シシリー「了解です♡ゆっくり休んで下さいね。」

 

シン「あ〜〜〜〜気持ち良い・・・」

 

優しい肩揉みにシンが癒される。

 

タクト「お?奥様からのマッサージサービス。」

 

フェオン「あらあら。お熱いわね〜♪」

 

シン(な・・・何か、外に人がいっぱい居るとは言え、この空間でシシリーと密着してると思うと・・・ドキドキするし、何しろタクトとフェオンに見られて恥ずかしい・・・)

 

シシリー「・・・シン君。」

 

シン「へ!?」

 

シシリー「今はとても大変な時期だし・・・シン君が忙しいのも分かってるんです。けど・・・2人で居られる時間が少ないと・・・どうしても・・・我儘になってしまいそうな自分が居て・・・たまには2人きりでゆっくり・・・デートとかしたいです・・・」

 

後ろからシンを抱擁した。

 

タクト・フェオン「おやおや♪」

 

シン「・・・約束するよ。決戦の日までに絶対・・・何処かで予定を空けるようにする。」

 

シシリー「本当ですか?嬉しいです・・・」

 

タクト「なぁフェオン。俺達もデートとかするか?」

 

フェオン「そうね。もし2人と同じルートだったらダブルデートになっちゃいそうだしね。」

 

シンとシシリーが密着していると。

 

エミリー『シン!タクト!陛下が視察に来てるぞ!少し良いかー!』

 

外からエミリーの呼び声にシンとシシリーがビビった。

 

シシリー「あっ!」

 

シン「ちょっ!待っ・・・!!」

 

バランスを崩して倒れ、シンとシシリーがお茶を被ってビショ濡れになってしまった。

 

シン「はっ!!!」

 

目を開いたシンが見たのは、シシリーのスカートの中だった。

 

エミリー『シン!タクト!居ないのか!』

 

タクト「待ってくれエミリー!ちょっと準備に手間取ってる!」

 

気持ちを抑えて4人が出て来た。

 

ミランダ「・・・何であの2人ビショ濡れなの?」

 

トニー「やましい事してたんじゃないかなぁ?」

 

タクト(鋭いなトニーは。)

 

 

 

 

その後、クルト・カーナンでの演習も無事終了。エルス・イースに関しては直接的にタクト達と交流が少なかった為、送られて来た武器に付与だけを施し、マーリンとリチャードのゲートでアールスハイドから指導役や運搬役の兵士達を送る事になった。

 

そして残るのは1ヶ国。首脳会議での一件から万が一のトラブルを考慮し日程を伸ばしていたダーム王国。

 

 

 

 

ダーム王国・練兵場。

 

トニー「僕らがこの国へ直接来るのは・・・連合結成前の交渉の時以来か。」

 

ミランダ「私は初めて来たよ。」

 

エミリー「私達もだ。」

 

マナミア「ラルフ=ポートマン前長官の件で色々後ろ向きの話題の多い国ですけど。私達に対する雰囲気は他国とお変わりないですね。」

 

アズマ「何事も起こらなきゃ良いんだけどな。」

 

トニー「そもそもダーム自体が僕ら・・・と言うかシンやシシリーに対して肯定的な国のはずだからねぇ。」

 

シイナ「でも、文句を付けて来るのは一部の狂信的な宗教家とかのはず。」

 

ミランダ「有名になるのも難儀な話よねぇ・・・」

 

ナナセ(ミランダ。あなたそう言える立場なの?)

 

 

 

 

天幕の中で武器に付与しているタクトとシンに。

 

兵士「ウォルフォード殿。クリスティ殿。少し宜しいか?」

 

タクト「何だ?」

 

兵士「我が国の長官が貴殿と是非話をしたいとの事です。」

 

タクト(長官だと?)

 

シン(まさか例の王様の使いで文句言いに来たとか・・・)

 

タクト「分かった。すぐ行く。」

 

 

 

 

4人が天幕から出ると、1人の兵士が長官が何処に居るかを教えた。

 

シン「お待たせしてすいません。シン=ウォルフォードです。」

 

タクト「タクト=クリスティだ。アンタが新しい長官か。」

 

カートゥーン「・・・君達か。聞いたよ。此間の首脳会議ではウチの陛下が失礼な事を言ったみたいだね。すまなかった。」

 

シン「え?あ・・・いえ・・・」

 

カートゥーン「世界を救う英雄様相手にねぇ。あり得なくない?何考えてるんだろうね。ウチの陛下。」

 

シン(な・・・何だこの人・・・)

 

タクト(コイツ・・・自国の陛下をバカにしてるのか・・・?)

 

カートゥーン「おっと失礼。自己紹介がまだだったな。俺はヒイロ=カートゥーン。ダーム王国軍司令長官だ。」

 

シン「!!」

 

タクト(司令長官・・・ラルフ=ポートマンの正式な後任。しかもあの若さでトップの座に座ってる。名前からして平民出身か?)

 

シン「それで・・・カートゥーンさん。話と言うのは・・・」

 

するとカートゥーンがシンの肩を右腕で絡めた。

 

カートゥーン「う〜〜ン堅苦しいな。俺の事は”ヒイロ”って呼んでくれよ。敬語も禁止な?俺も”シン”と”タクト”って呼ぶからさ。」

 

不気味な眼差しに4人がぞわっとした。

 

シン「はっ!?いやいや!!初対面なのに・・・年上の人とそんな態度で話せませんよ!!!」

 

タクト(何だこの男・・・?初対面なのに馴れ馴れしい態度・・・)

 

カートゥーン「・・・まっいーや。分かったよウォルフォード君。君はクリスティ君で良いかい?」

 

タクト「あ、ああ。別に構わない。」

 

カートゥーン「それじゃあウォルフォード君。クリスティ君。俺からは1つ言っておきたい事があっただけなんだ。」

 

シン「・・・はあ・・・?」

 

タクト「言っておきたい事?」

 

カートゥーン「君達の事を敵視しているのは飽く迄陛下だけであって、ダーム王国は君達の味方だよ。ウチの者が二度に渡って最悪の不祥事を起こしかけた時に・・・君達がそれを止めてくれた事は皆知っているからね。」

 

タクト「2人への非難が少なくなったって事か。」

 

シン「そ・・・そうなんですか・・・」

 

カートゥーン「ああ。だから誤解だけはしないでくれよ。」

 

タクト「それはありがたい話だな。」

 

カートゥーン「ああ。何と言っても君達は世界を救う英雄・希望・光・・・それに、こんな可愛い婚約者と妻まで手に入れた・・・」

 

彼はシシリーとフェオンを不気味な眼差しで見詰める。フェオンとシシリーに恐怖心が上がった。

 

カートゥーン「正に”勇者”・・・なんだからね・・・」

 

シン「・・・!?」

 

タクト(勇・・・者!?何の話をしてるんだこの男は・・・!?)

 

カートゥーン「話はそれだけだよ。それじゃあ付与頑張って。俺も訓練参加するからさ。」

 

彼はそう言い残して去って行った。

 

シン(何なんだあの男・・・今までに会ったどんな人間とも・・・魔人とも違う・・・まるで相手に絡み付くような不気味さ・・・一体アレは・・・)

 

タクト(ヒイロ=カートゥーン・・・お前は一体何者なんだ・・・!?)

 

 

 

 

 

 

一方トニーとエミリーは。

 

トニー「ではまず初めに・・・魔道具。剣の付与魔法を起動して下さい。」

 

兵士「おお・・・これは・・・!?」

 

兵士「刃が・・・細かく動いているのか・・・!?」

 

エミリー「気を付けて下さい。刃に決して触れないように。」

 

その演習を見たカートゥーンが、持ってる剣の付与魔法を起動させた。

 

カートゥーン「・・・成る程。超音波振動か。」

 

兵士「・・・!分かるのですか長官!!御使い様の剣の秘密が・・・」

 

カートゥーン「秘密っつーか、効果だけな。そんな事より・・・」

 

彼は剣の刃を睨むように見始めた。

 

カートゥーン「なあ・・・この剣、『付与文字』は何処だ?」

 

兵士「え?」

 

他の兵士達が剣の付与魔法を探すが。

 

兵士「み・・・見当たりませんな・・・魔力は通しているのに・・・」

 

兵士「でも確かに魔法は付与されて・・・」

 

カートゥーン(付与されているのが『超音波振動』である事は間違いない・・・が、それをただの鉄の剣に付与するのは不可能だ・・・文字数が多過ぎる。疑問は2つ。一体どんな方法でその付与を可能にしているのか。そして何故、その付与された文字が何処にも存在しないのか。)

 

彼はチラッと天幕を見て、不気味に微笑んだ。

 

カートゥーン(なあ・・・勇者君。どんな手品を使ったんだ?)

 

 

 

 

天幕からこっそり覗くタクト達。

 

シン「な・・・何か、こっち見てる気がする・・・あの人・・・」

 

シシリー「わ・・・笑って・・・ますよね・・・?」

 

タクト「一体何なんだあの男・・・?」

 

フェオン「普通の人間とは思えなさそう・・・」

 

シン「いかんいかん。それより早く付与の方を進めないと。」

 

シシリー「あ。じゃあ次の武器を・・・」

 

フェオン「持って来たわよ。」

 

シン「待ってシシリー。フェオン。先に()()()の付与をしておくよ。」

 

フェオン「?」

 

タクト「シン。」

 

用意した2つの箱から付与転写機を出した。

 

シン「ありがとうタクト。」

 

超音波振動の付与文字は日本語。建前上はシンの創作文字と言う事になっている。それ故、基本的に他人に理解は不可能。だが、複製防止の為に念には念を入れて、タクトとシンは全ての武器の付与文字を()()事にした。そこで使うのが、もう1つの付与転写機。

 

それを押印すると、付与文字が消えた。

 

こうする事で()()()に剣から付与文字が消える。刃の交換等で柄から外された場合、付与文字は可視化されてしまう。バイブレーションソードはその特性上、刃だけを手に取って魔力を通す事は出来ない。つまりこれである程度は、バイブレーションソードに関する情報を伏せておく事が可能となる。

 

シン(正直穴は幾つかあるが、まあ、魔人撃破までの期限付きだし・・・)

 

タクト(後は連合軍の兵士達を信じるしかない。)

 

 

 

 

 

 

一方外の方では、カートゥーンがバイブレーションソードで試し切りをしていた。

 

ミランダ「す・・・凄いですね。演習を始めて僅かでもう魔道具を使いこなして・・・」

 

カートゥーン「ん?ああ・・・俺元から魔法使ってっからさ・・・慣れてんだ。」

 

ミランダ(剣と魔法の両刀使い・・・か。タイプ的にはフレイド君やウォルフォード君と同様・・・それにこの人・・・剣筋が恐ろしく安定してる・・・一体これまでどんな鍛錬を・・・)

 

カートゥーン(ふ〜ん・・・良いなぁコレ。手放したくねぇなぁ。)

 

兵士「長官。」

 

カートゥーン「あ?どうした?」

 

兵士「陛下が・・・」

 

耳打ちで陛下から呼び出しを受けた。

 

カートゥーン「・・・ちっ。良い所なのによ。」

 

バイブレーションソードを鞘に納めた。

 

 

 

 

天幕。外からカートゥーンの声が聞こえた。

 

カートゥーン「ウォルフォード君。クリスティ君。」

 

タクト「ん?カートゥーン長官か。どうした?」

 

カートゥーン「あー、そのままで良いよ。悪いけど休養が出来てね。これで失礼するよ。魔道具の提供感謝する。一月後の決戦・・・いや、もう数週間後か。互いの健闘を祈るとしよう。じゃあまた何れ何処かで。」

 

シン「・・・ええ。」

 

タクト「ああ。」

 

カートゥーン(俺が本当に用があるのは、”その先”に居るお前達なんだからさぁ。)

 

シン(ヒイロ=カートゥーン・・・この男は一体・・・)

 

 

 

 

こうして、他国を回るバイブレーションソードの演習指南は一通り完了した。魔人との決戦まで残り14日。

 

 

 

 

アールスハイド王国。

 

シン「皆お疲れ。今後の予定に関しては、また決まり次第連絡するよ。」

 

ミランダ「分かったわ。」

 

マナミア「皆さん、また。」

 

ここでトニーとミランダとマナミア別れた。

 

 

 

 

家路を歩く4人の中、シンは何かを考え込んでいる。

 

シシリー「・・・シン君?どうしたんですか?」

 

フェオン「あのカートゥーン長官の事が気になるの?」

 

シン「え?あ・・・いや。それもまあ・・・そうなんだけど。」

 

タクト「珍しいな。魔道具以外の事で深刻になるなんて。」

 

シン「まぁ。ここから魔人達の決戦までに、幾つか・・・考えなきゃいけない事があってね・・・」

 

タクト「?」

 

シン(時間はあまり残されていない・・・正直・・・気が進まない事もあるけど、やっておかない訳にもいかないしな・・・)

 

 

 

 

 

 

数日後。アールスハイド王城・アウグストの部屋。タクトとフェオンとシシリーがアウグストとエリザベートにシンの事で相談しに来ていた。

 

フェオン「実はね、シンが最近変なのよ。」

 

アウグスト「シンの様子が・・・変?」

 

シシリー「・・・はい。」

 

アウグスト「彼奴が変なのは元からだろ?」

 

タクト「ま、まぁそれはそうなんだが・・・いや、魔道具の事以外で深刻になってるんだ。何かこう・・・最近は思い詰めるように独り言を言うようになったり・・・俺とシシリーが気になってるんだ。」

 

シシリー「殿下は何かご存知ないですか?」

 

アウグスト「・・・その相談でわざわざ3人でここへ来た訳か・・・」

 

タクト「忙しいのに悪いな。」

 

アウグスト「気にするな。」

 

フェオン「オーグは何か知らない?」

 

アウグスト「何かと言われてもな・・・寧ろここ1週間シンと顔を合わせていない・・・」

 

エリザベート「・・・と言うかそれ心配するような事ですの?シンさん、昔から1人でブツブツ言って考え込んでいるイメージですわ。私。」

 

アウグスト「・・・それで?何について考えているとか・・・悩んでいるとかは心当たりもないのか?独り言の内容とか・・・」

 

シシリー「内容・・・『魔力』・・・がどうとか・・・『心』?後『言葉』が何だとか・・・」

 

アウグスト(・・・・・)

 

エリザベート「呟きが抽象的過ぎてさっぱりですわ。今後の戦いは人類の命運を懸けていると言っても過言ではありませんわよ。例えシンさんと言えど・・・プレッシャーを感じているのではなくて?」

 

それを聞いたアウグストはエリザベートを睨んだ。

 

エリザベート「な・・・何ですのアウグスト様!?」

 

タクト「婚約者を睨むな・・・」

 

アウグスト「甘いな。エリーはシンの事が何も分かっていない。彼奴がプレッシャーに潰されるような柔な神経してると思うか?」

 

エリザベート「むっ・・・アウグスト様は随分とシンさんを理解されているのですわね。」

 

アウグスト「茶化すな。いいか?ただ1つ確かなのは。今、彼奴の頭の中はシュトロームをどうやって助ける、もしくは倒すかで一杯だと言う事だ。」

 

エリザベート「・・・」

 

アウグスト「そして今までの経験上・・・彼奴が新しい何かを考えている時・・・ロクな事になった(ためし)がない。」

 

エリザベート「!?」

 

シシリー「彼処まで考え込んでいるのは初めてですから・・・どんな突拍子もない事を考えているのかと・・・」

 

タクト「おまけにそれを実行した結果、世界の常識を覆してしまうかも知れないのがオチだ。」

 

フェオン「何処まで異常なのか分からないしね・・・」

 

エリザベート「・・・アアアアア・・・アウグスト様!!すぐ!!今すぐシンさんを尋問するべきですわ!!ま・・・魔人以前に世界に何か起きてしまったら・・・!!」

 

タクト「おいエリザベート落ち着け!」

 

アウグスト「・・・尋問は大袈裟だが、事情は聞いておいた方が良さそうだな・・・」

 

シシリー「えっと・・・じゃあ今から皆でシン君の家へ向かいましょう・・・!」

 

アウグスト「ああ。」

 

 

 

 

 

 

その後ウォルフォード邸へ向かった。

 

マーリン「・・・うーむぅ・・・それについてはワシらにも心当たりはないのう。」

 

メリダ「まぁ確かに、それは放ってはおけない雰囲気だねぇ。」

 

アウグスト「・・・やはりそう思われますか。」

 

タクト「シンは今何処に居るんだ?」

 

マーリン「さてのう・・・午前中出掛けたきり見ておらんが・・・」

 

全員(・・・何だろう・・・一刻も早く彼奴を見付けなければヤバい気がする・・・)

 

フェオン「い・・・急いでシンを捜しましょ!手分けして!」

 

シシリー「は・・・はい!」

 

皆が手分けしてシンを捜すが、王都には居なかった。

 

タクト「王都に居ないって事は、彼処しかないな。」

 

 

 

 

 

 

当のシンは、荒野で1人座禅して意識を集中させていた。

 

エリザベート「あーーー!!!」

 

シン「!?」

 

後ろからエリザベートの声にビビった。

 

エリザベート「居ましたわ!!こんな所に!!」

 

メリダ「シン!!」

 

シン「な・・・何!?皆揃いも揃って・・・」

 

メリダ「ば・・・場所がこの荒野ってのが既に不吉な予感が止まらないねぇ・・・」

 

エリザベート「た・・・確かシンさんが・・・とんでもない破壊光線(?)を発射したと言うのもここでしたわね・・・」

 

アウグスト「単刀直入に訊く。シン!お前、我々に秘密で何か企んでいるだろう!?」

 

シン「んな・・・な、何を急に!?一体何の根拠があって・・・」

 

フェオン・エリザベート(わー。分かりやすい動揺っぷり。)

 

タクト「さっきシシリーから聞いたぞ。最近お前の口から妙な独り言を聞いたって。」

 

シン「独り言!?(や・・・やべえ俺・・・自分で気付かない内に何か口走ってたのか・・・!?)」

 

アウグスト「『魔力』だとか『心』だとか『言葉』だとか呟いてたんじゃないのか!?どうなんだ!」

 

シン「(あ・・・そ・・・()()()の話か・・・だったらギリギリセーフ・・・か・・・な・・・)わ・・・分かったよ!せ・・・説明するって!」

 

シシリー(・・・・)

 

再び座禅したシンが説明する。

 

シン「決戦を前にしてさ・・・改めて『魔法』について考えてたんだ。何故魔法がこの世に存在するのか。魔力とは何なのか。詠唱とは何なのかって・・・ね。」

 

アウグスト「ちょっと待て・・・詠唱?何故お前が今更そんな事・・・」

 

シン「うーん・・・考えてる内にどうしても釈然としない疑問に辿り着いちゃったんだよね。学院に入学した頃のオーグ達が・・・何故魔力制御の鍛錬なしてそこそこの魔法が使えてたのかってね。」

 

タクト(そこそこ?あれが?)

 

アウグスト「いや・・・だから当時は我々なりに詠唱によるイメージを工夫して・・・」

 

シン「そう言うけどさ。あれって、どう考えてもイメージ1つで出せる魔法の威力じゃなかったんだよ。無詠唱が主流だった爺ちゃん達の世代なら兎も角、詠唱が常識となって魔力制御の鍛錬を行わなくなったオーグ達の世代にとって、詠唱とは実は単なるイメージの補完ではなかったんじゃないのか?」

 

アウグスト「それはつまり、詠唱自体にもやはり意味があったと言いたいのか?」

 

シン「・・・少なくとも、()()()()()()()()()()()人間の詠唱にはね。」

 

メリダ「・・・世間にとっては疑う必要すらなかった事実だが・・・アンタはそこに明確な理由を求めた訳かい。」

 

シンはその言葉を聞いて首肯した。

 

メリダ「アンタの事だ。その上で、それえに関する理論的な仮説が既に浮かんでるんじゃないのかい?」

 

シン「『魔法』は、この世界にある”魔力”を集めて”イメージ”を作って発動する。イメージとは心に描いた事象。つまり、魔力は俺達の”心”に反応してる。そこから考えると・・・詠唱とはただの言葉ではなく、心を・・・意思を込めた言葉と魔力がリンクしたものとも考えられる。」

 

タクト(魔力を集めてイメージを作る・・・詠唱は心を込めた言葉・・・まさか。)

 

『言葉には力がある』。口にする事で、それを現実のものにする力が宿る。タクトとシンが前世でよく耳にした言葉を当て嵌めるとすれば・・・”言霊”

 

シン「それこそが、詠唱の本質であり練達した魔力制御を伴わずとも発動出来るもう1つの魔法の形。言ってみれば、新たな世代の新たな魔法の在り方だったんだ。」

 

メリダ「『言葉』に『魔力』が込もる・・・か。考えもしなかったねぇ・・・」

 

マーリン「ワシらからすると、決して思い至る事のない事実じゃな・・・まさか魔法自体の在り方が世代を超えて変化していたとは・・・」

 

アウグスト「2つの時代の魔法の形に触れたシンだからこそ辿り着いた結論・・・と言う事か・・・」

 

シシリー「何だか・・・凄く壮大な話ですね・・・」

 

シン「勿論詠唱に魔力を乗せるにもセンスはいるはず。オーグ達はそこに長けていたに違いない。」

 

フェオン「そう言われると、オーグ達が強いって納得出来るわ・・・」

 

タクト「最早学者レベルな結論だ。」

 

しかし、黙っていたエリザベートが口を開いた。

 

エリザベート「いえ!やっぱりそれは可笑しいですわ!色々と矛盾してますわよシンさん!」

 

シン「へ!?」

 

タクト「ど、どうしたエリザベート?矛盾って何のだ?」

 

エリザベート「だってそうじゃありません事?詠唱をしたら全ての魔法効果が向上するのであれば・・・結局世代問わず詠唱をした方がお得じゃありませんか!」

 

タクト・シン「お得・・・」

 

エリザベート「それこそシンさんの言う『練達した魔力制御を行える者』が詠唱を組み合わせたら・・・とんでもない事になるのではなくて?だけどシンさん達は相変わらず無詠唱で魔法を使用している訳でしょう!?コレは矛盾していますわ!!」

 

アウグスト「・・・エリーにしては中々考えたな・・・」

 

エリザベート「()()()()って何ですの!?人を馬鹿みたいな・・・」

 

タクト「シン、エリザベートの発言にどう思うんだ?」

 

シン「うーん・・・」

 

少し考えてから立ち上がった。

 

シン「半分正解・・・って感じかな?」

 

エリザベート「どう言う事ですの!?」

 

シン「詠唱を加える事で今以上に魔法の威力が上がるのは・・・確かだと思う。ただ、コレには少し不安要素・・・と言うかリスクが付き纏って来るんだ。例えば、戦闘においては使おうとする魔法が相手に悟られやすくなってしまう。それに、言葉に出す事によって、イメージの途中修正が出来なくなってしまうんだ。」

 

シシリー「治癒魔法にも言える事ですよね。治療中、予想外の怪我は見付かった時なんかは・・・無詠唱でないと咄嗟に対応出来ないと思います・・・」

 

マーリン「詰まる所、魔法自体の出力は上がるが・・・」

 

メリダ「応用は利かなくなる・・・と言う事だね。」

 

エリザベート「むぅ・・・成る程・・・」

 

アウグスト「だけどシン・・・お前、今度の戦いで詠唱も利用する気だろ?」

 

シン「!?」

 

アウグスト「さもなければこのタイミングでそれについて悩む必要などないからな。違うか。」

 

タクト(オーグは鋭いな。)

 

シン「ま・・・まあ・・・ね。(ど・・・どうしても気が進まない検証事項その1がこの『言霊による詠唱』だ・・・今まで一切やらなかった詠唱をいきなり戦闘中行うとか・・・小っ恥ずかしくて出来る気が・・・)」

 

アウグスト「お前自身が戦闘には不向きだと言ったのにどうする気だ?詠唱で魔法の内容がバレて対処されては元も子もないんだろ?」

 

シン「・・・例えば・・・だけど、詠唱しても()()()()()()()()()()()()()()()()対処のしようがない・・・と思わないか?」

 

タクト「・・・」

 

アウグスト「どう言う意味だそれは・・・」

 

今シンが言えるのはこれが限界。これ以上はアウグストやメリダ達の前では話せない事である。それが、彼の気が進まない検証事項の2つ目だった。

 

シシリー「・・・・・」

 

メリダ「・・・まあ兎も角、アンタなりに色々と考えてはいるんだろうけど、危ない事だけはしないでおくれよ。魔人との決戦は大変な事だけど、それで全てが終わりって訳じゃない。アンタにはその後も、守るべきものや守るべき人が居るって事だけは忘れるんじゃないよ。」

 

シン「・・・うん。それは分かってる。」

 

アウグスト「世界を滅ぼすような魔法だけは使ってくれるなよ。」

 

シン「・・・・・・それも分かってるっつーの!!」

 

タクト「おい何か変な間が入ったぞ。」

 

フェオン「使っちゃうフラグでも立ったんじゃないの?」

 

シン「そんな訳ねーよ!!信じてくれよ!!」

 

 

 

 

 

 

次の日の朝。アールスハイド高等魔法学院・Sクラス。

 

アリス「ほえぇ!詠唱ってそんな効果があったんだ!?」

 

トール「魔力は心に反応する・・・魔法に一番大事なのはイメージだと昔から言われているのに気が付かなかったなんて・・・」

 

リン「先生も知らなかった?」

 

アルフレッド「あのな、俺以前に魔法学術院のお偉方が引っくり返って驚くレベルの事実だぞ、それ。」

 

レベッカ「また新たな発見が出た訳ですね。」

 

アリス「・・・・・」

 

シン「ん?ど・・・どうしたアリス。急に真剣に考え込んで・・・」

 

アリス「ちょっと黙っててシン君。魔力が・・・自分の心に反応する・・・自分の思い通りになる・・・それってつまり・・・」

 

シン(・・・!アリスのこの反応・・・ひょっとして・・・アリスも俺と同じように言霊を戦闘に応用する術を思い付いて・・・!?)

 

アリス「今まで試した事もなかったけど・・・それを採用すれば・・・まさか・・・まさか・・・!!」

 

彼女が突然魔力を集め始めた。

 

シン「!?」

 

タクト「おいアリス!!急に魔力を集めて何しようとしてんだ!?」

 

マリア「ちょっと教室よここ!?」

 

アリス(”言葉”に”魔力”を込める・・・)

 

息を吸って、言霊を呟く。

 

アリス「我は求める。」

 

シン(これは・・・!)

 

アリス「我が身と、我が心。その全てを満たすべく。甘美にして、甘味なる。その神々しきまでの威容を我が前に示し給え!超幸福的甘味顕現魔法(スイーーーーーーーツ)!!!」

 

言霊を使ってスイーツを具現化しようとしたが、魔力が霧散してしまった。

 

アリス「・・・!?魔力が・・・霧散した!?そんな・・・!?バカな・・・!ケーキは・・・!?アップルパイは何処に・・・!?・・・はれ?」

 

後ろを見ると、皆がガクッとなってる。

 

マリア「や・・・やっぱり何時ものアリスだわ・・・」

 

トール「ちょっと真面目に何するか気になったんですけど・・・」

 

ユリウス「心と言うか、欲を口にしただけで御座る・・・」

 

リン「・・・アリス。流石に今のは恥ずかしい。」

 

アリス「・・・!!」

 

失敗及び羞恥をしてしまった事を理解したアリスが崩れてしまった。

 

シン「・・・・・・」

 

アリス「!!!」

 

怒りの矛先はシンに向けられた。

 

アリス「シン君の嘘吐き!!こんなに心から欲してるのにケーキ出て来ないじゃん!!」

 

シン「アホかーーーっ!!!出るかんなモン!!」

 

アリス「魔力が心の中を再現するなら、何が出来ても可笑しくないじゃん!!」

 

シン「そこまで複雑な物体まで具現化出来たら最早何でもアリだろーが!!いいか!?魔力とは恐らく世界の大気中に充満する精神感応性の高い物質なんだ!!その物質が心に反応してイメージした結果に合わせてその『質』を変容させるってのが俺の仮説なんだ!!つまり変容するのは『質』だけで物体のような様々な要素が絡まり合って構成されたものは質だけ変えようが具現化は不可能って事だ!!分かったか!!」

 

アリス「・・・分かるかーーーーー!!!」

 

シン「逆ギレすなっ!!!」

 

マリア「いやアリスは兎も角、今のシンの説明は普通に理解不能だわ。」

 

トール「いや凄いんですよシン殿は・・・ただ何と言うか・・・我々凡人の二歩三歩先を行き過ぎて逆に何が凄いのかよく分からないんですよ。」

 

タクト(まぁこれが現代人とこの異世界人の見解の相違だがな。)

 

シン・アリス「はぁ・・・はぁ・・・」

 

タクト「あれ?なぁアリス。」

 

アリス「何?タクト君。」

 

タクト「さっきのお前の詠唱だけど、あれお前が考えたのか?それとも誰かのを参考にしたのか?」

 

アリス「え?自分で考えたよ?」

 

タクト「あの一瞬で?」

 

アリス「そう。まあ正直な所、今までも詠唱内容なんて適当だったからねぇ。」

 

マリア「あはは。実は私もー。中等部2年性が考えそうな痛〜い詠唱もよくやってたわ当時。」

 

シン(詠唱は適当でもいい・・・そんな曖昧な認識でも発動はするのか・・・待てよ・・・そうか・・・コレってひょっとして・・・懸念していた事が1つ解決するかも・・・!!)

 

マリア「ああ・・・このパターン・・・また何かシンが・・・」

 

トール「思い付いたんですね。」

 

アリス「だね。」

 

シシリー「・・・」

 

アウグスト「シンはシンで何か考えがあるようだが、それはまあ良い。問題は()()の方だ。何せ先日のシュトローム直属の魔人との戦い・・・シンとタクト以外は誰も魔人を撃退出来ていないんだからな・・・分かっているとは思うが・・・このまま決戦に臨めば、少なくともシンとタクト以外のメンバーは生きて戻る事すら難しいだろう。各々が個別に戦えるだけの手段が必要だ。むろん、既にその準備に入っている者も居るだろうし。」

 

 

 

 

トニーとマナミアとフェオン達はジェレミーとデリックとローランドの3人と模擬戦をしている。

 

ユーリはビーン工房で魔道具を見ている。

 

 

 

 

アウグスト「逆に、戦いを望まない者に出撃を強制するつもりもない。」

 

 

 

 

マークとオリビアは、草原に居る。

 

 

 

 

アウグスト「だが忘れてはならないのは、この決戦は今までと同じではない。我々が退けられればその瞬間、人類は終わると言う事だ。皆、改めて覚悟を決めて欲しい。人類存続の為、我々に許された選択肢は、『救済』と『勝利』だけだ。」

 

 

 

 

 

 

魔人との決戦まで残り10日となった。

 

マーリン「さて・・・と。ここまで来ては流石に我々も。」

 

メリダ「茶を啜ってる場合じゃないかもねぇ。」

 

リチャード「覚悟を決めなくてはならないな。」

 

レイチェル「この戦いは容易ではなさそうですね。」

 

『To Be Continued・・・』




キャスト

タクト=クリスティ:萩谷慧悟

シン=ウォルフォード:小林裕介
シシリー=フォン=クロード:本泉莉奈
アウグスト=フォン=アールスハイド:小松昌平

アリス=コーナー:久保田未夢
トール=フォン=フレーゲル:志田有彩
リン=ヒューズ:山口愛
トニー=フレイド:小林千晃
レベッカ=ホーク:有村蓮
マナミア=ラドクリフ:関根瞳

フェオン:内山夕実
エミリー:大橋彩香

アズマ:榎木淳弥
シイナ:内田彩
ナナセ:白石晴香

マーリン=ウォルフォード:屋良有作
メリダ=ボーウェン:高島雅羅
リチャード=ラドクリフ:堀内賢雄
レイチェル=ラドクリフ:白鳥由里
モニカ=ラドクリフ:佐藤聡美
クリスティーナ=ヘイデン:古賀葵
ドミニク=ガストール:小山剛志
ミランダ=ウォーレス:吉七味。
エリザベート=フォン=コーラル:南雲希美
アルフレッド=マーカス:駒田航

ヒイロ=カートゥーン:櫻井トオル





次回予告

魔人との決戦まで、残り10日が過ぎた。タクト達は各々の覚悟を決めて決戦に備え始める。そして、禁断の魔法を見出したシンは。

次回ウルトラマンティガ

馳せる思い

お楽しみに
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