ウルトラマンティガ THE ULTIMATE MAGICIANS 作:naogran
魔人達との決戦を10日に控えたアールスハイド王国。
アールスハイド王城・作戦会議室。
トール「ほ・・・本気ですか殿下!?」
ユリウス「そのような戦術・・・シン殿以外の人間に出来るとは到底思えんで御座るが・・・」
アウグスト「そう思って事前にシンに話を聞いておいた。・・・と言うか、試してみたら出来た。」
トール・ユリウス「ええっ!?」
アウグスト「無論相当苦労したがな。」
トール「さ・・・流石は天才魔法使い・・・」
ユリウス「シン殿が居なければ、殿下も十分怪物で御座る。」
アウグスト「ただ・・・コツを掴めただけで、実戦で使用するにはまだ心許ない。お前達には悪いが、残りの数日間修業に付き合って欲しい。」
トール「・・・はあ。それは構いませんが・・・」
アウグスト「所でお前達は?やはりペアで動くのか?」
トール「はい。そのつもりです。」
アウグスト「・・・そうだな。お前達2人の場合、お互いの短所を補いつつ、相手の長所を活かす戦い方が出来る。分かりやすい柔と剛。それがベストかも知れんな。」
トール「ただ、その上で殿下が仰ったように。個々で戦えるだけの戦力アップが必要とは思いますけどね。」
ユリウス「2対1でこちらが勝つのは当然・・・例え2対3だろうと2対5だろうと勝つ事が出来ねば、生き残る事は難しいで御座るからな。」
アウグスト「集団戦・・・か。戦闘開始後、しばらくは各自がそれを強いられる事に違いないな・・・何せ魔人の数はこちらの倍以上は居るだろうからな。」
トール「・・・実は殿下・・・集団戦に特化した戦術・・・自分に1つ考えがあるんです。」
アウグスト「?」
トール「ただ、その為にはシン殿が嘗て我々に見せた魔法のうち1つだけ・・・どうしても自分も会得しなければいけないものがありましてね。」
アウグスト「・・・どうやらお前達も色々と考えてはいるようだな。」
トール「・・・当然ですよ。」
彼は、以前戦った魔人リオネルから頭が離れなかった。
トール「こっちは命懸けで戦ったって言うのに、顔すら覚えられていないなんてやはり侮辱ですから。」
ユリウス「今度は嫌でも忘れられんようにしてやるで御座る・・・!!」
トール「ええ!」
アウグスト「・・・」
頼もしい側近に、アウグストが優しい笑顔を見せた。
森の中。
デリック「ハァッ!!」
ラスティー「クッ!!」
ジェレミー「ドルァ!!」
ローランド「ガァウ!!」
ケイティ「ウアッ!!」
リオ・デイジー「アアッ!!」
魔喰人に覚醒したジェレミーと、魔物化したローランドと、魔人化したデリックが、リオ達と模擬戦をしていた。
デリック「ラスティー。中々良い動きだ。」
ラスティー「ありがとう。」
ジェレミー「リオ。デイジー。前より腕を上げたみたいだな。」
リオ「ありがとう。でもまだまだだよ。」
ローランド「ケイティさん。相変わらず煽ってきますね。」
ケイティ「それが私の得意技だからね。」
ジェレミー「
デリック「俺達を本当の魔人だと思って、殺しに来い。」
デイジー「ええ。この世界を彼奴らに渡すわけにはいかない!」
リオ「ジェレミー。もう1度お願い!」
ラスティー「デリック!本気で行くよ!」
ジェレミー「よし、来い!!」
デリック「見せてくれ、お前達の力を!!」
模擬戦を見物してるナージャとレオナ。
ナージャ「・・・」
レオナ「シュトロームが心配?」
ナージャ「今は兄さんじゃないけど・・・必ず元の兄さんに戻してみせる。それでもダメだったら、本気で駆逐する。」
レオナ「兄思いの良い妹ね。」
ナージャ「レオナは、デリックを信頼しているの?」
レオナ「デリックは私を助けてくれた恩人。私はデリックが行く道を一緒に付いていく。ただそれだけよ。」
ナージャ「・・・」
フレイド家では。トニーは、父と剣術の稽古に励んでいた。
トニー「ふっ・・・はっ!」
トニーの父「はぁっ!!」
トニー「はぁ・・・はっ・・・やっぱり剣に関しては、騎士団でも活躍してた父さんに稽古付けて貰うのが一番だなぁ。」
トニーの父「・・・トニー・・・お前の力になれるのなら協力は惜しまんが、何故今になって剣を?」
トニー「・・・何より相手の強さがこれまでの比じゃない・・・って言うのが一番の理由だけど、何て言うか・・・ようやく自分の戦いのスタイルって言うのが見えてきた気がしてさ。」
トニーの父「・・・剣と魔法の併用・・・ではないのか?」
トニー「んー・・・それはどっちかと言うと
トニーの父「・・・ふぅ・・・高等魔法学院に入る前にその言葉を聞ければ、私も母さんも入学を反対したりしなかったかもな・・・それがお前にとっての騎士道であるなら、最早何も言うまい。お前の信じる道を進め。恐らく、それが強さの極みへ続くただ1つの近道だ。剣に関してはウォルフォード君にだって負けはしない。それ程の
トニー「・・・うん・・・!!」
トニーの父「さあもう1本!!来い!!」
トニー「はい!!」
再び稽古を始めた。
2人の稽古を、リリアがトニーの母の部屋から見ていた。
リリア「い・・・今でもあ・・・あんな無茶苦茶な稽古してきたんですか・・・?トニー君・・・」
トニーの母「・・・そうよ。高等魔法学院に入るまでの10数年間。1日足りとも欠かさずにね。」
リリア「・・・・」
トニーの母「最愛の夫と息子が、自らの信念の為に凌ぎを削り合い成長していく。そんな様子を傍らで見ていられるなんて・・・妻として至上の幸福だと思わない?リリアちゃん。あなたもいつかそれを実感する日が来るわ。」
リリア「はい・・・えぇ!?」
トニーの母「見てよ。トニーのあの真剣な顔。普段はあんなにヘラヘラしてるのに・・・」
真剣な顔で稽古に励むトニーの顔を見て、リリアがキュンとなった。
トニーの母「あっ。今格好良いって思ったでしょ?」
リリア「う”っ・・・!!(あれ・・・?)」
稽古を見ていたリリアが、トニーの動きに違和感を感じた。
トニーの母「・・・気付いた?」
リリア「・・・は・・・はい・・・あ・・・あの・・・トニー君・・・何でわざわざ
衛士隊舎。衛士隊が模擬戦をしていた。
シイナ・ナナセ・セイラ「はぁ・・・はぁ・・・」
カオル・マモル・タカオ「はぁ・・・はぁ・・・」
アズマ「よし、休憩だ。」
シイナ「隊長・・・今回ばかりはキツイですね・・・」
カオル「流石アズマ。本気になると容赦ないなぁ。」
アズマ「いや、あれはほんの一部だ。」
タカオ「アズマ隊長の力は、アールスハイドを守る為ですかね?」
アズマ「それもあるが、俺が一番守りたいのは・・・」
ナナセ「マリアですよね?」
アズマ「・・・」
セイラ「本当、あの告白以来ずっとマリアの事を思ってますもんね。」
マモル「まさに、マリアさんの将来の旦那様ですね。」
アズマ「俺がこの剣を振るうのは、俺達を救ってくれたタクト達やこのアールスハイド王国。そして、マリアの今と未来を守る為。例え自分の身体が朽ち果てようとも、愛する者達の為に戦い続ける。それが俺の使命だ。」
カオル「・・・だったらアズマ。その使命、僕達にも背負わせてよ。」
シイナ「隊長ばかりなんてズルいですからね。」
タカオ「隊長の命令なら、何でも従いますよ。」
アズマ「お前達・・・よし。休憩終わりだ。行くぞ!」
タカオ「ええ!?早くないですか!?」
アズマ「ん〜?俺の命令なら何でも従いますって言ったよな?タカオ。」
タカオ「鬼ですね・・・」
ビーン工房。
スタッフA「こんなもんでいいかい?ユーリちゃん。」
丹精込めて作った魔法の杖の数々。
ユーリ「やぁんありがとぉ!これだけあれば充分ですぅ!わぁ!このデザイン可愛い!あっ、こっちはすっごく使い心地良さそう!」
スタッフB「それ!俺がデザインしたんだ!」
スタッフC「ユ・・・ユーリちゃんこっちはどぉ?」
ハロルド「鼻の下伸ばしてねェで氏頃しろてめェら。」
スタッフA「いいじゃないスか親方ぁ。ムサ苦しい工場に突如湧き上がった癒しと潤いの泉・・・」
スタッフB「ちょっと位堪能したって。」
ハロルド「けっ。」
モーガン「親方。彼女の使うホルスターの試作・・・こんなモンでどうですか?」
ビーン工房で働いている青年モーガンが、ユーリの使うホルスターの試作をハロルドに見せた。
ハロルド「・・・ん。良いんじゃねェか。お前から彼女にも見せてやれよモーガン。」
モーガン「え!?お・・・俺がスか?」
他のスタッフ達に囲まれるユーリに近付く。
モーガン「あ・・・あの・・・ユーリちゃん・・・コレ・・・」
スタッフA「お!何だモーガン、ホルスター出来たのか!どれ貸してみろよ!」
スタッフB「ユーリちゃん!ホルスターの方も出来たってよ!」
ユーリ「えぇ本当ぉ!?見せて見せてぇ!」
スタッフB「ホラこれだってよ。」
ユーリ「わぁ!」
自分からユーリに渡すつもりが、先輩スタッフに貸されてしまって落ち込んだ。
ユーリ「後は
スタッフD「だったらウチの実験場使いなよ!」
ユーリ「え?良いのぉ?」
スタッフE「普段から世話になってるユーリちゃんなら何のエンリョもいらねぇよ!」
ユーリ「・・・それならコレ持って今から移動しよっかなぁ?」
スタッフA「お・・・俺案内するよ。」
スタッフB「つ・・・杖持つの手伝うぜユーリちゃん!!」
他のスタッフ達がユーリに着いて行く中、モーガンは工房に残る。
ユーリ「・・・あ!モーガンさぁん!ホルスターありがとぉ♡とっても格好良いよぉコレ!」
ホルスターを作ってくれたモーガンにお礼を言ってあげた。
モーガン「・・・・」
ハロルド「・・・不器用だなお前さんも。」
モーガン「え!?・・・ホルスター・・・まずかったスか!?」
ハロルド「そっちの意味じゃねェよバカ。嬢ちゃんが気になるなら休憩がてら付いてきゃ良いじゃねーか。」
モーガン「え・・・?気になる?別にそう言う訳では・・・」
ハロルド「ん?何だ違うのか?」
モーガン「何と言うか・・・純粋に・・・スゲーなあって思って・・・俺達より年下の・・・それも女の子が・・・世界の為にあんなにも前向きになって戦えるって・・・心から尊敬しちまいますよ。スゲーっす彼女・・・」
彼女に対するモーガンの思いを聞いて、ハロルドは笑った。
ユーリ「よぉ〜し!やるぞぉ〜〜〜!!」
一方、ジュリアンとジネブラは。リオ達が居る森の丘の上に居た。
ジネブラ「ねぇ。ベルゼはどうするの?」
ジュリアン「・・・」
ジネブラ「彼女を倒すか助けるか。あなたが決めなさい。」
ジュリアン「うん。今の彼女は魔人そのもの。おまけにスパークレンスをコピーして新しい力を持ってる。助けれるのは難しい。」
ジネブラ「なら、倒すしかないって事?」
ジュリアン「いや、きっと彼女を助けれる方法が見付かるかも。それまでは・・・」
ジネブラ「・・・なら、そうしなさい。」
同じ頃。リンの自宅では。
アリス「魔人と個々に戦える対抗策・・・か。そもそも私作戦とか立てて挑むタイプじゃないしなぁ。」
リン「・・・まあ、柵に頼るしかないのは仕方無い。決戦までの期日が短過ぎる。」
アリス「まあ・・・確かにねぇ。付け焼き刃の魔法が通じる相手でもないしなぁ。短期間でパワーアップ出来るような都合良い話なんて・・・」
2人が何か対策案を考える。
アリス・リン「・・・ッ!!」
リン「ある・・・!!たった1つだけ・・・私達だけに出来る
アリス「そうじゃん・・・!!私達には
異空間収納から取り出したのは、キューティースリーの時に使う衣装とヘルメットだった。
アリス「キューティースリー・・・!!」
リン「
アリス「あっそか!・・・じゃ、名前どうする?」
リン「私達2人でやるとしたら・・・えっと・・・期間限定出動!『キューティーツイン』で行く・・・!!」
アリス「キューティーツイン!!良いねそれ・・・!!」
リン「フッ・・・これで私達のパワーアップは間違いない・・・!!」
アリス・リン(・・・あれ・・・?パワー・・・アップ・・・するか??これ・・・)
リン「ッ!アリス。頭のパーツに付いてる例の機能・・・まだ戦闘で試した事なかった。」
アリス「あー!!あのシン君が付けてくれた奴!アレ意外と使えるんじゃないの!?えーと・・・何つったっけ・・・」
アリス・リン(何つったっけ・・・)
シンが付けてくれた機能を思い出せない。
アリス「ほ・・・本番までに何とか思い出そうよ!名前分からない機能使うの何かモヤモヤする!」
リン「ウォルフォード君に訊けば早い。もしくはクリスティ君。」
アリス「や・・・やだよ!今更そんな事訊くの恥ずかしいじゃん!!」
その頃、ホーク家では。フェオン達が招待されてティータイムを戴いている。
レア「まさかレベッカの両親と対面するとはな。」
エルヴィン「初めましてだね。皆さん。娘がお世話になっております。レベッカの父で、宮廷魔法師団のエルヴィン=ホークだ。」
シェリー「シェリー=ホークよ。夫と同じ宮廷魔法師団に所属しているわ。宜しくね。」
アンナ「宜しくお願いします。」
レベッカ「そして、私の婚約者のライナーです。」
ライナー「初めまして。ライナー=アディソンです。」
レベッカの婚約者のライナー=アディソン。
レア「レベッカの彼氏って確か、騎士学院に通ってるって言ってたな。」
レベッカ「はい。ライナーとは幼馴染みで、一緒に住んでいるんです。」
エミリー「ほお?もう同棲生活か。」
エルヴィン「いや、違うんだ。ライナー君の両親は、2人が初等学院の時に魔物に襲われて亡くなってしまってね。」
ヒナ「では、エルヴィンさんがライナーさんを引き取ったんですか?」
エルヴィン「そうだ。」
イザベラ「ライナーさん。苦労されていたんですね。」
ライナー「ええ。でも、お父さんとお母さんには感謝しているんです。僕を生んでくれた事と、僕を初等学院まで育ててくれた事に。」
フェオン「ご両親思いね。天国で喜んでくれてるわ。」
ライナー「ありがとうございます。それで、タクトさんは?」
ヒナ「タクトさんなら、シンさんと特訓に行っています。」
ライナー「そうですか。」
イザベラ「それでレベッカさん。私達を招待した理由は何ですか?」
レベッカ「はい。私は勿論ライナーも魔人達との決戦に向かうんです。それで、私達を鍛えてくれませんか?」
フェオン「ええ。勿論特訓に付き合ってあげるわ。」
エミリー「婚約者同士だもんな。強くなれるまで特訓に付き合ってやろう。」
ライナー「ありがとうございます!」
エルヴィン「フェオンさん、お腹の子はどうですか?」
フェオン「ええ。すくすく育っています。」
彼女のお腹が膨らんでる。今彼女のお腹の中に新しい命が宿ってる。
そして、王都を歩くカルマとルブラ。
カルマ「魔人との決戦まで短いな。」
ルブラ「どうする?俺達も戦いに行くか?」
カルマ「当たり前だ。そうでもしないと、シュトルツにどんな顔を見せればいいか。マチ達はどうするんだろうな。」
ルブラ「彼女達も戦いに行くらしいぞ。」
カルマ「そうなのか?」
ルブラ「練兵場を借りて、ヴァーテルと模擬戦してるってミカが言ってた。」
カルマ「彼奴らも本気だな。だったら俺達も、ヴァーテルに特訓を付き合って貰おう。」
ルブラ「だな。お?」
石橋に立ってるマークとオリビアを発見した。
石橋。
カルマ「ようご両人。」
ルブラ「相変わらずデートですかな?」
マーク「あ!カルマさんルブラさん!」
オリビア「・・・・」
カルマ「って、デートって雰囲気じゃなさそうだな。どうしたんだ?」
マーク「実は・・・」
彼から衝撃の言葉を聞かされた。
カルマ「は?オリビア本気なのか・・・?」
ルブラ「アルティメット・マジシャンズを辞めるなんて・・・?」
何とオリビアは、アルティメット・マジシャンズを抜けると言うのだ。
オリビア「・・・マーク。こないだの・・・魔人領での戦いで・・・分かっちゃったんだ。私ね、何も出来ないんだよ。攻撃魔法に特化してる訳じゃない。治癒魔法が得意って言う訳でもないし、付与技術が人より優れている訳でもない。ウォルフォード君に魔法を教えて貰って、マークと一緒に・・・私にも人の為に出来る事があるかも・・・って。私に頑張ってきたけど・・・ここから先、私に出来る事は・・・多分もうない。皆の足を引っ張るだけだよ。メンバーの皆に、きっと迷惑掛けちゃう。私は、”英雄”なんて呼ばれるような人間じゃない。」
マーク(オリビア・・・)
彼女の真意を聞いて、マークは。
マーク「迷惑・・・うーん、迷惑かぁ・・・それだったら俺の方がよっぽど皆に迷惑掛けたけどな。だって俺、あの蜘蛛の災害級に捕まってしまったけど、ウォルフォード君とクリスティ君が助けてくれた。人より優れた才能なんて、俺だって持ってねーし。」
オリビア「・・・大丈夫だよマークなら。誰より頑張り屋さんだから。」
マーク「何だそれ?俺はガキか?」
オリビア「ふふ。」
マーク「・・・ま、俺としては、お前がそう言うなら反対はしないよ。戦場より安全な場所に居てくれた方がやっぱり安心だし、お前が魔人に酷い事されるなんて想像したくもねーもんな。」
オリビア「それを言うなら私だって・・・」
マーク「?」
オリビア(・・・・)
戦いに参加しない。それは、マークが皆の命が危ないかも知れない時に、オリビアだけ安全な場所に居ると言う事。だが、もしまたマークや皆があんな目に遭いそうになった時、オリビアはただマークや仲間達の無事を祈るだけ。あの時僅かに届かなかった手は・・・そんな場所に居たら、今度こそ絶対に届かない。オリビアは、その思いに葛藤していた。
オリビア「・・・・」
マーク「お前が何も出来ないなんて・・・俺は思った事ないけどな。戦いって・・・相手を負かすだけが全てじゃないし。俺はあると思うぜ。オリビアにも・・・誰にも負けない才能が。」
オリビア「マーク・・・わ・・・分からないよ私・・・自分に一体何が出来るかなんて・・・」
マーク「俺は単純だからさ。いちいち自分がそこに居るべき理由なんて考えた事ねーや。でも・・・ほんの少しだけでも、もし仲間が自分を必要としてくれたんなら・・・俺はそこに居ても良いのかもって思えるんだよな。自分の居場所は自分で決めれば良いさ。ただ俺は、お前が傍に居てくれると心強いけどな。」
オリビア「・・・・・」
何が出来るか出来ないは関係ない。例え何も出来ないとしても、この手の届かない所で、大事な人達が傷付くのを、ただ案じて待つか。それとも・・・すぐ傍で共に傷付きながら進むのかのどちらかだ。
オリビア「どうしようマーク・・・私・・・出来そうにない・・・皆の戦いを・・・ただ遠くから見守るだけなんて・・・」
不安になるオリビアの手を、マークが強く握った。
マークが「それはつまり・・・お前だってアルティメット・マジシャンズの一員って事だろ?オリビア!」
オリビア「・・・うん!探さなきゃ・・・私・・・残り時間がわずかでも・・・自分自身に出来る事・・・!!」
マーク「ああ!見付けられるさ!必ず!」
ルブラ「何か俺達、完全空気だったな。」
カルマ「良いんだよそれで。2人には2人の決意があるんだし。って、デートの邪魔して悪かったな。またなお2人さん。」
マーク「カルマさん。ルブラさん。オリビアの悩みを聞いてくれてありがとうございました。」
オリビア「私、頑張ってみます!」
カルマ「ああ。オリビア、頑張れよ。マークもな。」
アールスハイド王国・王都付近の森。
ミランダ「はぁ・・・はぁ・・・」
ミッシェル「どうしたミランダ?お前の意気込みはその程度か?その程度じゃ、マナミア様には及ばないぞ。」
ミランダ「・・・まだです師匠・・・!!私はまだ・・・やれます・・・!!はあっ!!」
ミッシェル「うむっ!」
ミランダがミッシェルと激しい特訓をしている。
マナミア「激しい戦いですね。ミランダの成長に期待出来そうです。」
マリア(・・・修行を始めて既に3時間・・・気軽に見に行きますなんてマナミア様に言うんじゃなかった・・・)
傍らでマリアとマナミアが特訓を見物している。
とある場所。
タクト「シン。詠唱は言霊と同じで、言葉に魔力が込もるって前に話してたよな。」
シン「ああ。」
タクト「そこで閃いたんだ。攻撃だけでなく、ある魔法が使えるんじゃないのかって。」
シン「ある魔法?」
タクト「それはだな・・・」
再びアールスハイド王国・王都付近の森。
ミッシェル「ホラどうしたぁ!!その程度で魔人に対抗出来るのかぁ!?呼吸を乱すな!相手の全てから集中を切らすな!!」
凄まじい剣技にミランダが圧倒されてる。
ミッシェル「視線の動きだけではない!重心の移動!筋肉の隆起!骨の軋み!指先一本に至るまで全て見極めろ!!それが行えれば魔人など恐るるに足りん!!」
ミランダ「あっ・・・ぐ!!」
ミッシェル「10分休憩!!」
ミランダ「あ・・・ありがとうございました!!」
10分の休憩に入った。
マリア(剣聖ミッシェル様・・・ぶっちゃけ魔人より恐ろしい・・・)
マナミア「ミランダ。平気なのですか?」
ミランダ「平気?何がですか?寧ろこの湧き上がる充実感・・・!!自分の高みへと導いてくれるこの瞬間瞬間に感謝しかありませんよ!!」
マリア(そー言やこのコ、こうだった。)
マナミア「満足しているようで何よりです・・・」
マリア「正直どうなのよ?ミッシェル様って。魔人より強かったりするんじゃないの?」
ミランダ「そりゃ、勿論よ。嘗ては賢者様や導師様、大司祭様に天士様と肩を並べた実力者だよ。戦争での活躍だって凄かったらしいわ。ですよねマナミア様?」
マナミア「はい。お祖父様とお祖母様からそう教えられました。」
マリア「・・・何か恐ろしい異名があるって聞いた事あるような・・・」
ミランダ「・・・ああ・・・
マリア「・・・にしても・・・ミランダ。アンタも・・・随分やるようになったわよねぇ・・・」
座り込んでるミランダの後ろには、真っ二つにされた巨大トラの災害級が横たわっていた。
マリア「準備運動で
ミランダ「・・・まだまだだよ。」
マリア(元々の戦闘スキルは決して高い物じゃなかった・・・だけど、幾度もの実戦を重ね、クリスティーナ様やミッシェル様に鍛え上げられ・・・シンの魔道具を得る事で、確実にミランダは”進化”した。剣士としては恐らく既に・・・マナミア様と同様世界でも屈指のレベル・・・!!・・・私は剣士じゃないから見立ては大凡だけど・・・スイードの時や魔人領の砦に居た平民魔人相手なら・・・今のミランダの敵じゃない。だけど、もし相手がハンター魔人やシュトローム直属の魔人だったら?その剣は敵に届くのか?・・・人の心配してる場合じゃないわね。殿下に言われた魔人対策・・・私だってまだ何も浮かんでないのに・・・残り後1週間足らず・・・一体どうしたら・・・)
ミランダ「・・・!・・・ア!!マリア!!!」
マリア「うわぁびっくりした!!」
ミランダ「何考え込んで突っ立ってんのよ!そこに居られると修行のジャマ!」
マリア「あ、ゴメンゴメン。」
10分の休憩を終えた時、ミッシェルが何かを思った。
ミッシェル「・・・決戦を前に色々と考える所があるようだな。マリア君。」
マリア「はっ・・・あ・・・あの・・・はい・・・」
ミッシェル「アルティメット・マジシャンズの中でも、君の実力はトップクラスと聞いている。ならばここへ来ての小細工など必要ないと思うがな。」
マリア「・・・・・・」
ミッシェル「まあ、とは言え、今度乗り込むのは敵の本拠地だ。強張るのも無理はないが。・・・ミランダ。君は決戦時は・・・軍に混ざって帝都周りの災害級を討伐する予定だったか?」
ミランダ「はい。ドミニク局長にはそのように言われています。」
ミッシェル「ふーむ・・・そうか・・・」
マリア・マナミア・ミランダ「?」
ミッシェル「・・・決まりだな。ミランダ!君はアルティメット・マジシャンズと共に帝都内に潜入し、マリア君と組んで魔人共を蹴散らして来い!」
マナミア「ミランダが、私達と?」
ミッシェル「はい!」
マリア・ミランダ「・・・・はい!!?」
ミッシェル「お互い1人じゃ不安も残るだろうが、そこは剣士と魔法使い!互いの弱点を補い合って挑めば、恐れるものは何もない!」
マリア・ミランダ「・・・・・」
2人は同時に互いを見る。
マリア(考えもしなかったけど・・・自分の背中を・・・このコに預けられるとしたら・・・ムチャクチャ心強いかも・・・!!)
ミランダ「で・・・でもドミニク局長には・・・」
ミッシェル「気にするな。あんな小童。私が一言言っといてやる。」
マリア「小童・・・」
マナミア「でしたら、お祖母様とお母様にも言っておきます。ミランダをアルティメット・マジシャンズに加えるように。」
ミランダ「マナミア様・・・」
ミッシェル「唯一懸念があるとすれば、ミランダに魔人との戦闘経験が乏しい事か。・・・うむ。マリア君。君も今から我々の特訓に参加しなさい。」
マリア「へ!?」
マナミア「ミッシェル。私も特訓の参加を希望します。」
ミッシェル「分かりました。マナミア様。」
マリア「マナミア様も!?」
ミッシェル「私を仮想『魔人』として、3人で死ぬ気で向かって来ると良い・・・!!」
本気モードに覚醒したミッシェル。
マリア・ミランダ(・・・魔人より恐えぇ・・・!!)
アールスハイド王都・ラドクリフ教会。
シシリー『癒しを司る、慈悲深き光の神よ。我が”聖女”の御名においてここに願う。その大いなる安らぎの包容と祝福を。粛然たる救いの威光とその加護を、今一時我が前に示し与え給え。』
言霊を詠唱し、少女を癒した。
神子A「な・・・何・・・と言う・・・」
神子B「これまで以上に・・・治癒そのものの御力を増した・・・と言うのでしょうか・・・」
シシリー「もう大丈夫です。」
神子A「お疲れ様です。聖女様。」
少女はシシリーに手を振り、母親と共に家へ帰って行った。
リチャード「シシリー。上達したみたいだな。」
シシリー「ありがとうございます。リチャード様。」
神子A「せ・・・聖女様。後学の為に是非ご教授頂きたいのですが・・・何故詠唱を行う事で魔法そのものに変化が・・・?」
シシリー「シン君曰くこれは・・・”言霊”・・・と言う事です。変化が起きたのは、従来のようにイメージ補完として詠唱を行ったのではなく。詠唱自体に魔力を乗せる事で、より現実的に詠唱内容を顕現させた為です。」
神子A「へ・・・へぇ・・・」
何の事かさっぱり理解出来ない。
シシリー「ごめんなさい。全部シン君の受け売りですけどね。」
リチャード「やはりシン君は、我々より頭脳がズバ抜けているのか?」
シシリー(・・・とは言え・・・実際に”言霊”を使用する事で、ここまでの変化があるなんて・・・)
神子A「・・・」
シシリー「ん?どうかしましたか?」
神子A「・・・いえ。聖女様は常日頃から御謙遜されていましたが・・・詠唱の中に”聖女”の御名があった事に、少し感激してしまいまして・・・」
シシリー「・・・今でも自分が”聖女”と呼ばれるような人間だとは思えませんが・・・嘗てのエカテリーナ教皇がそう呼ばれ、御自身の力で今の御立場を得られたように・・・”聖女”の名を継ぐ覚悟を持つ事で、その名が宿す御力を私も借りられたらと思いまして・・・」
彼女の言葉に、神子達は感心した。
夜になり、シシリーは仕事を終えた。
シシリー「わあ・・・すっかり遅くなっちゃった・・・」
リチャード「シシリー。ご苦労だった。帰ってゆっくり休むといい。」
シシリー「はいリチャード様。」
家路を歩いていると。
タクト「ようシシリー。」
フェオン「夜遅くご苦労様。」
シシリー「タクト君。フェオンさん。お2人はデートですか?」
タクト「気分転換にな。シシリーはラドクリフ教会で手伝いか?」
シシリー「はい。」
フェオン「ねぇタクト。魔人領での決戦までどの位だったっけ?」
タクト「後5日だ。それまで皆鍛錬を積んでいる。」
シシリー「・・・・」
するとシシリーが、異空間収納から無線通信機を出した。
タクト「ん?」
一方のシンは、部屋で考え事をしていた。
シン(いよいよ時間がなくなって来たな・・・そろそろ例の魔法を試す時か・・・周りへの影響を考えると・・・実験場所は・・・海・・・だな・・・だとすると、ずっと宙に浮いている必要がある・・・浮遊魔法との同時使用・・・か。例の魔法に集中するなら、浮遊用の魔道具を用意した方が良いか・・・)
急いで浮遊用の魔道具の開発を始めた。
しばらく時間が経過し、マーリンとメリダとアザレアはぐっすり眠った。
シン「・・・よし、行くか。」
椅子から立ち上がった瞬間。
”ジリリリリリ!”
シン「っ!?だ、誰だ?こんなタイミングで・・・もしもし?」
ビビりながら電話に出た。
シシリー『・・・こんな遅くにごめんなさい・・・シン君。』
シン「シシリー!?ど・・・どうした!?」
シシリー『・・・シン君。何か・・・危ない事をしようとしていませんか?』
シン「・・・・・!!な・・・何で急に?」
シシリー『・・・少し待っていて下さい。』
ゲートが開くと、シシリーが出て来た。
シン「・・・シシリー?」
すると今度は。タクトとフェオンがテレポートで現れた。
タクト「ようシン。」
フェオン「あらシシリー。」
シン「タクト・・・?フェオンまで・・・?」
タクト「いやぁ、さっきシシリーが無線通信機出したから、ひょっとしたらお前に関係ある事かなって思って。」
シシリー「・・・ん?」
机に置かれてる浮遊用のブーツを見付けた。
シシリー「シン君。こんな時間に・・・何処かへ出掛けるつもりだったんですか?」
シン「え!?」
タクト「・・・これ、浮遊用のブーツか?」
シン「あ・・・」
シシリー「・・・少し前から気になっていました。シン君、”言霊”の件だけでなく・・・まだ他にも私達に秘密にしている事・・・ありますよね?」
シン(・・・・!!)
シシリー「・・・・・!」
シン(シシリー相手に誤魔化しは通じない・・・か。)
彼女の真剣な眼差しに、シンは打ち明けた。
シン「・・・ある魔法を・・・試す必要があるんだ。もしオリベイラを救えなかった時の為の、オリベイラを倒す・・・その為だけに使う魔法・・・」
フェオン「オリベイラを倒す為に使う魔法?」
シン「うん。今まで何体もの魔人と戦って来たけど・・・彼奴は唯一、俺の魔法とティガの力を障壁で防いだんだ。つまり今の段階では俺の魔法は・・・彼奴に通じない可能性がある。」
シシリー「・・・・」
シン「だから・・・より強力な魔法を考え出したんだ。下手をしたら相手所か、術者の俺も危ない・・・それこそ、この世界に大ダメージを残し兼ねない魔法を。」
タクト(世界に大ダメージを与える魔法・・・まさか・・・!)
シン「勿論そんな魔法の事を知ったら、オーグや婆ちゃんには止められる。だから・・・誰にも秘密で実験を行おうと思ってたんだ。・・・ゴメン。シシリーにも、タクトやフェオンにも・・・心配させたくなくて・・・」
シシリー「・・・シ・・・シン君の馬鹿!!」
シン「!?」
突然シシリーが怒り出した。
シシリー「そんな危ない事を1人でしようとしていたなんて!!もしシン君に何かあったらどうするんですか!!お婆様に言われた事・・・忘れちゃったんですか!?『危ない事はするな』って・・・それって決して・・・『戦いの時に』って言う意味だけじゃなかったはずです・・・!!シン君を失うような事になったら・・・私はどうすれば良いんですか・・・」
シン「・・・・」
シンは分かっていたつもりだった。守るべき者の為にも、自分を蔑ろにしてはいけない事。だが、誰にも伝えず実験を行おうとしていたと言う事は、心の何処かで彼自身が『失敗などあり得ない』と思っていたと言う事。もし本当に実験で自分に何かあった時、残された世界や残された仲間達がどうなるか、彼は想像していなかった。シンは目先の使命感に囚われ、何処か慢心していた。これまでのように実験は必ず上手く行くと。
シン「・・・ごめん・・・ごめんなシシリー・・・俺・・・」
シシリー「・・・私も行きます。」
シン「え?行くって、まさか・・・実験に?」
シシリー「はい。」
タクト「シシリーが行くなら、俺も行く。」
フェオン「私も行くわ。あなた達2人だけだと心配だから。」
シン「2人まで・・・」
シシリー「もしもシン君に危険が及びそうになった時は・・・私達が全力で守ります。」
タクト「念の為だが、実験の旨は書き残そう。最悪の場合、俺達4人がここに戻らなかった時の為だ。」
シシリー「その時は・・・きっと殿下やマリア達やアズマさん達が必ず魔人達を討伐してくれます!そう信じましょう!」
彼は驚いた。シシリーはシンよりとっくに決しの覚悟を決めていた。もしあのまま実験に成功してしまっていたら、シンは増長してしまっていたかも知れない。『力に溺れてはならない』と。シシリーに言われた気がしたと。
シン「・・・分かった。一緒に行こう。」
実験場所は海。4人が浮遊してる。
シシリー(海・・・それもこんな沖まで来て・・・一体どんな魔法を・・・)
フェオン(一体何の実験をすると言うの?)
タクト(・・・・)
シン「・・・まあ色々と大袈裟な事言ったけど、万が一の事態すら起こらないよう細心の注意を払うから。3人は取り敢えず下がって見てて。」
3人が距離を取った。確認したシンが魔力を集める。
タクト「凄い風圧だ・・・!」
そして、小さく言霊を呟いた。魔力が集まり、空に向かって放った。その魔法は巨大なビーム状に一直線に放たれた。
シン「は・・・はは。取り敢えずは・・・成功・・・かな?」
シシリー「はわ・・・シ・・・シ・・・シン君。そ・・・空・に・・・空に穴が空いてます・・・」
空の雲が巨大な円形に割れていた。
フェオン「な、なんて凄まじい魔法なの・・・!?」
タクト(さっきの言霊とビームと威力・・・まさか・・・核!?)
実験が終わり、4人はシンの部屋に戻った。
フェオン「凄い魔法だったわね・・・」
タクト「肌がまだ熱い・・・」
シン「冷やせば正常になるよ。」
冷気能力で熱い肌を冷やす。
タクト「俺の心配より、シシリーの心配したらどうだ?」
シン「え?」
当のシシリーはぽかん・・・となってる。
シシリー「あ・・・あ・・・あんなに凄まじい威力だなんて・・・」
シン「シ・・・シシリー?大丈夫?」
シシリー「こ・・・怖かった・・・です・・・」
今度は怯え始めた。シンがシシリーの隣に座って落ち着かせる。
シン「ちゃんと魔法の事、説明しとくべきだったな・・・ごめんね?」
シシリー「・・・許しません。」
シン「・・・え?」
タクト(許す気ないっぽい。)
シシリー「・・・ギュッ・・・てしてくれたら許してあげます。」
シン「っ!・・・ごめん。」
優しくシシリーを抱き締めた。
シン「・・・もう許してくれる?」
シシリー「・・・キスしてくれたら許してあげます。」
シン「・・・」
そう言われて、シシリーにキスをした。
シン「・・・じゃあこれで・・・」
シシリー「・・・まだです。」
シン「えぇっ!?こ・・・これ以上何を・・・」
シシリー「・・・・」
シン「あっ!・・・」
シシリー「・・・私に言わせないで下さい。」
フェオン「前途多難ね。シン。」
タクト「あはは・・・(まさかシンが核魔法を使うとは・・・)」
ラドクリフ邸。
リチャード「マナミア。お前にこれを授ける。」
マナミア「お守りですか?」
渡されたのは、真珠を模ったお守り。
リチャード「そのお守りには、お前達を護る魔法が付与されている。」
レイチェル「如何なる時でも、それがあなた達を護ってくれます。」
マナミア「お祖父様、お祖母様、ありがとうございます。」
お守りを両手で優しく握る。
ブルースフィア帝国・帝城。
その女は、今でも時折夢に見る。炎に巻かれる家。原型すら留めぬ家族の姿。その時折の夢を見ているのは、魔人ミリアだった。
ミリア「帝国の貧しい家庭に生まれ、平民にありがちな苦しい日々を送りながらも。私はハンターとしての立場を得て、何時しか一線で活躍するようになっていた。離反した魔人の中に、元ハンターの人間が何人か居たでしょ?全員顔見知りよ。勿論、あのデリックもその1人。」
ゼスト「・・・・」
ミリア「元々の魔法の才のお陰か、組織内で上へ行くのは苦労しなかったわ。ただ、そのせいで目立ち過ぎてしまったのね。貴族に目を付けられて、情婦になるよう誘われたわ。その時の家業じゃ一生掛かっても手に出来ないような大金を積まれてね。」
しかし、彼女はそれを断った。当時若かったミリアは、
ミリア「それがいけなかった。奴等の目が私の周辺に向けられる事になってしまったのだから。」
彼女には嘗て、愛する両親と妹が居た。
ミリア「奴等は何の躊躇いもなく、私の家を焼き払ったわ。私が魔物討伐で家を空けている時を狙って、私の家族が全員家に揃っている時を狙って。私は呪ったわ。自分達のプライドの為に他者の人生を踏み躙る貴族達を・・・そして、あまりに浅はかだった自分自身を・・・『魔法は精神力に大きく左右される』。家族を失って不安定になった私は、途端に仕事の依頼をこなせなくなった。・・・すると、どうなると思う?分かるでしょ・・・あなたなら。」
ゼスト「信頼を得ていたはずの国の上層部までもが・・・あっさりとアナタを切り捨てたワケだ。」
ミリア「その通り。文字通り私は全てを失った。それこそが、奴等の狙いだった。そうなればもう・・・後は・・・奴等の思うまま。」
だが、そんな時ミリアを救おうとある人物が現れた。それが、魔人化したオリベイラ、オリバー=シュトロームだった。彼は業火の魔法でミリアを弄ぶ貴族達を消し炭にした。後に聞いた話だと、その頃はシュトローム自ら帝国貴族の裏側を探っている最中で、偶然にもその暗躍を知ったと言っていた。
シュトローム『あなたがミリアさんですか。噂は予々耳にしていますよ。実は私これから・・・この帝国を打倒する為の同志を集めようと考えていましてね。あなたの中に、まだ復讐の炎が灯っているのなら、その為に人である事を捨てる覚悟があるのなら・・・私と共に来てみませんか・・・』
これが、ミリアがシュトロームに忠誠を誓う切っ掛けとなった。
ミリア「シュトローム様にとっては帝国を滅ぼす為に手駒が必要だっただけかも知れないけど・・・その時の私にとって、その手は唯一縋れるものだった。彼の目的の為に生きる事が・・・私の全てになったわ。その先はあなた達も見てきた通り。何故今シュトローム様が・・・あのような不安定な状態になってしまわれたのか。正確な事は私にも分からないわ。」
ゼスト「フム・・・成る程。貴重なお話・・・ありがとうございます。」
ミリア「・・・白々しいわね。」
ゼスト「え?」
ミリア「私の過去を聞きたいなんてただの建前で、実際は何らかの形でシュトローム様にお力添え出来るヒントを得たかっただけでしょう?」
ゼスト「いえいえ・・・考え過ぎですよ。」
ミリア「・・・もういいかしら?戦いまで日も近い。私は行くわ。」
ゼスト「・・・ミリアさん。
ミリア「・・・・・魔人なのに、あなたは優しいのね・・・ゼスト。」
ゼスト「誰よりも主に忠誠心を持っているだけです。当然の事じゃありませんか。何故なら我々にとって彼の方は・・・紛れもなくブルースフィア帝国皇帝なのですから。」
その会話を盗み聞きしてる人物が居た。ベルゼだ。
ベルゼ(忠誠心ねぇ〜。でもミリアだけ生き残させるなんて、何考えてるんだろうねぇ〜?・・・まぁミリアはシュトロームとある関係を持ってるんだし無理もないか。それよりも、早くこの痣を彼奴から何とかしなきゃいけないし。)
脚に広がる痣に少し焦っている。決戦まで残り・・・後3日。
全てを決する戦いを目前に迎え、各国軍も徐々に魔人領へ向け進行を開始した。アルティメット・マジシャンズとその一部の関係者はゲートによる移動が可能な為、決戦直前にアールスハイドを発つ予定になっている。メンバーもそれぞれの修行や準備に追われ、しばらくは顔を合わせる機会が減っている。全員が後悔しない形で決戦に臨めればと願う。
タクトとシンは、大凡の準備が整い、切り札の魔法の実験も終える事が出来た。今日は僅かに出来た時間を使い、シシリーとフェオンとの『約束』を果たす事にした。
シシリー「お・・・お待たせしました。」
シン「おお!今日は一段と可愛いねシシリー!」
シシリー「あ、ありがとうございます!」
タクト「全くお熱い事。」
フェオン「流石未来の夫婦ね。」
4人はアールスハイド王国でダブルデートをする。栄えてる商店街を回り、カフェで一息付く。
タクト「夕日が綺麗だな。」
フェオン「ええ。」
展望台で夕日を眺める。
シン「・・・」
そんな中、シンは両親と楽しく歩いてる女の子の笑顔を見た。
シン「ああ言う小さな子供達の未来を守る為にも、負けられないよな・・・絶対に。」
シシリー「・・・はい。」
フェオン「そうね。生まれる私達の子供の未来も守らなきゃね。」
タクト「ああ。」
シン「・・・シ、シシリー。決戦が終わって・・・無事世界に平和が戻ったら・・・今度こそ結婚式を挙げて・・・それから・・・」
彼はシシリーに改めて告白をした。シシリーは、シンの告白を受けて嬉し涙を流した。2人はお互いを抱擁した。タクトとフェオンは優しい笑顔で見てる。
その夜。アールスハイド王城。
メイ「あれぇ?」
アウグストの部屋を出るエリザベートの姿を目撃したメイ。
メイ「エリー姉様!」
エリザベート「ドキッ!」
メイ「こんな時間までお兄様の部屋に居たんですか?珍しいです。」
エリザベート「そそそそうですわね!も、もう戦いまで日が無いので・・・ついゆっくりしてしまいましたわ!」
メイ「何慌ててるです?疚しい事でもあるです?」
エリザベート「い・・・いいから!それよりあなたは何の用ですの!?メイ!」
メイ「あ。お父様にお兄様を呼ぶよう言われたです。」
その後、アウグストはディセウムの部屋へ。
ディセウム「いよいよだなアウグスト。アルティメット・マジシャンズの方の仕上がりはどうなのだ?」
アウグスト「・・・そうですね・・・」
少々眠気気味のアウグスト。
ディセウム「ん?何か疲れとらんか?」
アウグスト「え!?い・・・いえ!我々に関しては特に問題ありません。私は、そう信じています。」
ディセウム「ほう。お前がそこまで言い切るとは・・・心強いな。」
アウグスト「これは確証ではないのですが・・・恐らくシンとタクトの奴が、我々には秘密で何かを企んでいるようですしね。」
ディセウム「秘密?」
アウグスト「何やら誤魔化していましたが、魔人対策の切り札的な魔法か何かだと思います。」
ディセウム「切り札・・・・・・・それ逆に懸念材料ではないのか?」
アウグスト「ははは。もう今更です。・・・2人を信じましょう。」
ディセウム「・・・そうだな。大丈夫か・・・シン君とタクト君なら。」
アウグスト「大丈夫でしょう。あの2人なら。」
ディセウム「お前がそこまで信頼のおける人物に出会えた事が・・・学院で得られた何よりの財産だな。」
アウグスト「・・・シンとタクトが居れば・・・今後、世界に何が起ころうとも。まあ何とかなるでしょう。」
ディセウム「(見据えているのは、飽く迄魔人を倒したその先・・・か。)そうだな。
アウグスト「ええ。
1ヶ月後。魔人領。遂に、決戦当日が訪れた。
アールスハイド陣営。衛士隊、エミリー達もここに着いてる。
ドミニク「あれがウォルフォード君達が打ち立てた『壁』か・・・壮観だな。」
アズマ「本当、あれがシン達が作り上げたと言っても驚くばかりだ。」
ルーパー「実際の所、魔物だけならほぼ通過は不可能な代物だからな。」
ジークフリード「魔物だけなら・・・ッスか。」
ルーパー「その通り。魔人の手に掛かれば・・・アレを破壊ですら造作もねェ事だろ。」
そこに、偵察に行ったティオとシイナとナナセが戻って来た。
シイナ「アズマ隊長!ドミニク局長!ルーパー師団長!災害級の姿が確認出来ました!」
アズマ「どうだった?」
ナナセ「1ヶ月前と違い、『壁』周辺には集まって来ておらず、半壊した城壁付近で帝都を守るように陣取っています。」
ティオ「もううじゃうじゃ徘徊してるみたいだよ。」
カオル「縄張りを守る事を優先してるって訳か。」
ドミニク「ウム・・・此方としては都合が良いな。」
ジークフリード「え?」
タカオ「ドミニク局長、それはどう言う・・・」
ドミニク「『壁』に穴が空いた途端、魔物が溢れ出て大混戦になるのを防ぎ易くなる。」
クリスティーナ「そう言えば・・・シュトロームは『一月後に壁を破壊する』と言っていましたが・・・そのあたりの想定はどうなっているのですか?」
ドミニク「ウォルフォード君やクリスティ君や殿下と相談して・・・結論が出た。『壁』は寧ろこっちから”穴”を空ける。」
クリスティーナ「!?」
ジークフリード「は!?」
エミリー「こっち側から空ける!?」
ヒナ「ドミニク局長!本気なのですか!?」
ドミニク「もし奴らの攻撃で同時に複数箇所穴を空けられてしまえば、嫌でも我々の戦力を分散せざるを得なくなってしまう。」
セイラ「・・・もしかして、先手を取って、私達が災害級を防ぐのに最も都合の良い広さで1箇所のみ空けるって事ですか?」
ドミニク「そうだ。それをウォルフォード君に『壁』を消滅させて貰う。そしてそれと同時に、アルティメット・マジシャンズが帝都を目指し突入する・・・!!」
クリスティーナ「確かにそれならば魔人達は・・・シン達が帝都を目指している最中、呑気に他の箇所の壁を壊している場合ではなくなりますね。」
ルーパー「奴らからすれば、何よりの障壁は、我々軍ではなく世界侵攻でhもなく、アルティメット・マジシャンズの18人だからな。」
イザベラ「そこにお姉ちゃんとグレアさんも加わっている。」
ティオ「後はデリックとレオナもね。帰ったら家族が待ってるもの。」
ジークフリード「でも思ったんですけど、シン達って空中移動可能ですよね。壁に穴を空けたら、まっすぐ帝城辺りを目指して飛んで行く訳ですが?」
リオ「あ、僕もそう思った。その方が効率良いんじゃないかな?」
ルーパー「ジーク。それにリオよォ。シュトロームクラスの魔法の使い手が何処から狙ってるか分からない状態で、お前ら、気軽に飛んで移動なんか出来ると思うか?」
リオ「え?」
ルーパー「これまでと違い、
ジークフリード「・・・な、成る程・・・そりゃ無理だ・・・」
リオ「確かにそれは死ぬ確率が100%になるね・・・」
デイジー「流石ルーパー団長ですね。」
ドミニク「・・・さて・・・各国軍の隊列も整って来たようだ。そろそろだな。」
各国軍の隊列が整った。別の場所では、ジュリアンとジネヴラとラスティー、レオンとソフィー、アザレア、盗賊団クレージュとシエル、マジックシスターズも整っている。
アウグスト「全員揃っているか?」
シン「いや・・・2人程まだだな。」
タクト「アリスとリンが遅れてるな。」
アウグスト「・・・全く・・・」
アルティメット・マジシャンズが揃うまで、アリスとリンのみ。
遂に、魔人達との決戦の日を迎えた世界。次々と再会するタクトの仲間達。人間か魔人か。未来を手にするのはどっちだ。