ウルトラマンティガ THE ULTIMATE MAGICIANS   作:naogran

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譲れないプライド
ゼスト、ローレンス、ベルゼ 登場



第49話「譲れないプライド」

帝城前。

 

フェオン「遂にここまで来たのね。」

 

タクト「ああ、行くぞ。」

 

城の門が開いた。

 

 

 

 

帝城に入った。

 

シン「敵の魔力は・・・感じないな。」

 

シシリー「・・・はい。取り敢えずこのフロアには・・・」

 

タクト「けど、何処かに潜んでる可能性がある。油断はするな。」

 

シン(ボスは最上階って相場が決まってる・・・取り敢えず上を目指すか。・・・とは言え、城の構造が分からない以上慎重に動くしか・・・)

 

 

 

 

周囲を警戒しながら、城の奥へと進む。

 

フェオン「気配は全くないわね・・・」

 

グレア「相手も慎重になっているかも・・・」

 

シン(彼処・・・階段だ。)

 

階段を発見した時、誰かに肩を叩かれた。

 

シン「うわあっ!!」

 

タクト「どうしたシン!!魔人か!?」

 

後ろに立つ人物に顔を向けた。

 

アウグスト「驚き過ぎだ。珍しく緊張していたと見える。」

 

シン「オ・・・オーグ!!」

 

魔人ではなく、アウグスト、トール、ユリウスの3人だった

 

シン「3人も城へ着いてたのか・・・!」

 

アウグスト「つい今し方な。状況報告をしながら先へ進もう。クロード、トール、索敵を頼む。」

 

タクト「グレアも索敵を頼む。」

 

 

 

 

状況報告しながら階段を上がる。

 

トール「そうですか、リン殿は無事で・・・」

 

ユリウス「流石シシリー殿で御座る。」

 

タクト「まさかデリックの妹さんが生きていたとは驚きだ。」

 

フェオン「そうね。」

 

アウグスト「・・・にしてもやはり気になるのは、シンの戦った魔人の変化だな。爆発的な魔力の増加、自我の喪失、この局面になってそのような事態が起きるとは・・・」

 

シン「この戦いが終わったら、国の機関で正式に魔人化について研究し直した方が良いと思うぜ。」

 

アウグスト「生物の()()()については無論、各国の研究機関や魔法学術院でも研究が進められているのだが・・・いかんせんその対象が()()となると前例がなさ過ぎてな・・・」

 

タクト「今回の魔人の大量出現で何か究明出来たりとかは可能か?」

 

アウグスト「期待はあまり出来んな。研究に付き合ってくれる気前の良い魔人でも居れば話は別だが。」

 

シン「やっぱりデリックかな?」

 

アウグスト「彼奴がそう安安と教えてくれる雰囲気を出してくれなさそうだが。ああそう言えば、そんな研究を熱心に行っている男も1人居たか。」

 

タクト「オリベイラか。」

 

シン(彼奴はたった1人で・・・しかも自らが魔人となりながら。『人間の魔物化』なんて言う禁断と言える実験と研究を続けて来たのか・・・)

 

 

 

 

 

 

階段を上り、一際大きい扉を開く。トールとユリウスが扉を開き、タクトが先に入って周囲を警戒する。周囲に沢山の柱が立っている。

 

シシリー「・・・!殿下!敵です!」

 

目の前に2人の人物が現れた。

 

ゼスト「・・・お着きのようだ。」

 

その2人の人物の正体は、ゼストとローレンスだった。

 

アウグスト「・・・!!」

 

シン「お前達か・・・!!」

 

タクト「王都ですれ違った彼奴らか・・・!!」

 

ゼスト「馴れ合う仲ではないが・・・ここまでの関わりを持った間柄だ。名乗らせて頂こう。魔人部隊幹部及び・・・元ブルースフィア帝国諜報部隊隊長・・・ゼストだ。そして元諜報部隊員・・・ローレンス。」

 

アウグスト「・・・光栄だな。我々の紹介は必要あるまい。悪いがお前達を倒し、ここを通らせて貰う。」

 

トール(5人全員で相手しますか?)

 

アウグスト(加減する意味はない。無論総力戦で。)

 

ローレンス「ははは。嫌になっちまうなぁ。魔人を誘導したり、司教を操ったり、教皇を襲わせたり・・・これで殆ど意味がなくなっちまった訳か。」

 

シン「・・・!!お前の・・・仕業だったのか・・・!!」

 

タクト「スイードへ魔人を誘導し・・・フラー大司教を操り・・・猊下を襲わせた元凶って事か。」

 

ローレンス「・・・俺のっつーか、シュトローム様直属の兵隊である俺らの作戦だよ。正直な話、主からは特に指示が下りて来ないんでね。」

 

シン「・・・・」

 

アウグスト(やはりシュトローム自身の意志では・・・)

 

ローレンス「所でよォ!惜しかったろあん時!なぁ!司教にお前の女襲わせた時だよ。あれでもし()()()()がキズモノにでもなってたらなぁ、お前間違いなく魔人化してたろ!?」

 

フェオン(え・・・!?)

 

グレア(彼奴らまさか、シンを魔人にさせる為に・・・!?)

 

シン「・・・・・・!!!」

 

アウグスト「乗るなよ。安い挑発だ。」

 

怒りが湧き上がるシンを、アウグストが宥めた。

 

ゼスト「いや・・・そもそもの話、あの失敗は我々が原因だ。やはり有無を言わさずクロードの命を奪う事を最優先に動くべきだったのだ。司教ではなく我々の手で直接な。」

 

タクト「なぁ、1つ聞きたい。フラー大司教が魔人化したのもお前らが原因か?」

 

ローレンス「・・・生憎、あれは俺らじゃなく司教(ヤツ)の暴走でああなっただけだ。」

 

タクト「何・・・?」

 

ゼスト「今にして思えば、そのチャンスなら幾らでもあった。なぁどう思う?クロード君。」

 

シシリー「・・・!?」

 

ゼスト「君がもし我々の手で殺されていたら、シン=ウォルフォードと言う人間は、果たして人間のままでいられたかね?」

 

トール・ユリウス「・・・・!!」

 

シン・アウグスト「・・・・・・」

 

タクト・フェオン・グレア「・・・・・・」

 

ゼスト「もし何なら今からでも試して・・・」

 

だがその瞬間、周囲に強大な魔力が充満し始めた。

 

シン「その薄汚い口を閉じろ・・・今すぐにだ・・・!」

 

それは、シンの怒りによる魔力だ。トールとユリウスが驚き、ゼストとローレンスはとてつもない魔力に少々怯んだ。

 

シン「トール、ユリウス、フェオン、グレア。皆はここでシシリーを守ってくれ。」

 

トール「え・・・あ・・・はい。そ・・・それは勿論・・・」

 

フェオン「無理はしないでよね?」

 

シン「オーグ、タクト。手ェ貸してくれるか?」

 

アウグスト「何気に初チームだな。3人で倒すぞ、彼奴らを。」

 

???「あ、グッドタイミングだね。」

 

全員「!」

 

そこにベルゼが現れた。

 

タクト「ベルゼか。」

 

ローレンス「遅ェぞお前。何処で油売ってたんだ?」

 

ベルゼ「ごめんごめん。ちょっと兵士達と遊んでただけだよ。ねぇねぇ!戦うなら私も入れてよ!楽しませてあげるから!」

 

タクト「シン、オーグ。ベルゼは俺が()る。お前達はゼストとローレンスを頼む。」

 

アウグスト「無茶するなよ。」

 

ベルゼ「やっぱりあなたと戦う運命からは逃れられないみたいだね。」

 

ブラッドスパークレンスの力を解放し、ブラッディーベルゼへと変身した。

 

タクト「ッ!」

 

スパークレンスの光を解放し、ウルトラマンティガへと変身した。

 

ベルゼ「さぁ、私の予知を外してみなさい!」

 

足元を爆破させ、下のフロアへ降りた。

 

ティガ「タッ!」

 

下のフロアへ降りたブラッディーベルゼを追うティガ。

 

ローレンス「・・・ゼスト隊長、さっきのはいらねェ挑発だったんじゃないですかね?」

 

ゼスト「いや、いい。お前の読み通りクロードの身に聞き迫る可能性があれば、奴は必ずそれを放置しない。我々としてもやはり多対1の局面は避けたいからな。さぁ、行くぞ!!」

 

遂にゼストとローレンスとの戦いが始まった。

 

 

 

 

先手としてアウグストが電撃を落とした。ゼストとローレンスが左右に避けた。

 

アウグスト「シン、分かっていると思うが・・・」

 

シン「ああ。大規模魔法や高威力な魔法は控えた方が良いな。」

 

帝都市街地と違い、ここは屋内の戦い。下手をすれば城自体が倒壊し自分達が巻き込まれてしまう可能性がある。つまりシンとアウグストがこの場で全力魔法を使う事は不可能。これがゼストとローレンスの計算の内である。

 

 

 

 

下のフロア。

 

ベルゼ「ハァッ!!トゥアッ!!ヤァッ!!」

 

ティガ「タァッ!ハァッ!フッ!」

 

ハンドスラッシュと血塊の光弾の激突が始まっていた。

 

ベルゼ「よっと!」

 

ティガ「ッ!」

 

血塊の光弾は、ティガの横の床に着弾した。

 

ベルゼ「ここ!ここにも!ここだね!」

 

光弾は、次々とティガとは関係ない所に着弾するばかり。

 

ティガ「ベルゼ何をしてる!巫山戯てるのか!」

 

ベルゼ「いや、私は至って正気だよ?最も、あなたと戦っている間はね。」

 

ティガ「何?」

 

 

 

 

上のフロア。

 

シン「ッ!」

 

バイブレーションソードを出した。

 

ゼスト「・・・フム、当然そう来るか。ではこちらも。」

 

同じくゼストもナイフを出した。

 

シン(・・・!!ナイフ・・・!?)

 

横からローレンスの魔法弾が迫るが、魔法障壁で防いだ。だがゼストに隙を見られ、接近を許してしまった。

 

シン「ッ!!」

 

ナイフを縦横無尽に振るゼストに、シンがバイブレーションソードで防ぎ続ける。

 

シン「ちっ・・・!!」

 

反撃しようにもゼストは隙を見せない。

 

ゼスト「どうしたシン=ウォルフォード、剣聖仕込みの剣がそれか?防戦一方に見えるが。」

 

シン「うるっ・・・せぇなっ!!(完全にナイフの間合いを保たれてる・・・!!一歩退けば自らも斬られるギリギリの間合い・・・!こいつ・・・胆力もある上にかなりの手練れだ!だったら!!)」

 

左手に魔力を集め、ゼストに爆発魔法を発動した。だがゼストが避けた。

 

ゼスト「驚いたな。それが話に聞く『一方向に放つ爆発魔法』か・・・全くもって面白い男だ。」

 

 

 

 

ユリウス「あの動き・・・ジョカの精鋭の魔人にも劣らんで御座る。」

 

トール「流石は敵の幹部ってところですね・・・」

 

フェオン「あの2人でも、一筋縄じゃ行けないみたいね・・・」

 

グレア「でも皆ならきっと。」

 

シシリー「・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

帝城・黒い部屋。ゼストとローレンスと戦うシンとアウグスト、そしてブラッディーベルゼと戦うティガの光景が流れている。

 

シュトローム「ゼストさんとローレンスさんとベルゼさんを、彼らが戦っている・・・」

 

実体のない存在「よくぞここまで来れたものだ。だが、()()()()が潜んでいる事を誰も知らないであろう。」

 

シュトローム「操り人形・・・?どう言う事だ!?」

 

実体のない存在「案ずるな。その答えはすぐにやって来る。」

 

 

 

 

 

 

ローレンス「ゼスト様!!」

 

ゼスト「むっ・・・」

 

アウグストの電撃を避けた。するとローレンスが両腕を上に上げた。すると床下から無数の光の柱が出現した。シンとアウグストが避けた。

 

シン「なっ・・・何だぁ!?下のフロアから攻撃が・・・」

 

アウグスト「奴だ・・・ローレンスの方の魔法だ!」

 

シン「別の部屋で魔法を発生させて、出所と方向性を掴めなくしてんのか・・・!!すげー発想だな。俺でも試した事ねーや。」

 

アウグスト(あの男(ゼスト)は・・・!?)

 

油断してしまい、ゼストに背後を取られた。

 

アウグスト「ッ!?」

 

ゼストがナイフを振る。だが気付いたアウグストが間一髪しゃがんで回避した。そしてシンにアイコンタクトをし、それを見たシンがアウグストと同時魔法攻撃を仕掛けた。

 

ゼスト「むぅっ・・・」

 

同時魔法攻撃を魔法障壁を展開して防いだ。するとローレンスが天井から無数の光を発動した。

 

アウグスト「うっ!」

 

シン「今度は天井からかよ・・・!!」

 

ローレンス「平気スか?」

 

ゼスト「ふっ。魔人(この体)になっていかなければとても付いて行けんな。シン=ウォルフォードとアールスハイド王太子。同時に相手するのは流石に生きた心地がせんな。」

 

ローレンス「事実上、人類のトップ2人を相手してる訳ですからね。そしてクリスティ。奴もトップの1人で、ベルゼと交戦している。そしてそれは同時に、コイツら3人が倒れれば人類が終わる事も意味する。」

 

ゼスト「・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

魔人になった後のゼストとローレンス。

 

ゼスト『ローレンス。何故お前は城に戻った?』

 

ローレンス『・・・そりゃ心情的に仲間(アイツら)と肩並べて戦いたかった所ですがね。主を守るのも、それ以上に重要な任務でしょ。』

 

 

 

 

 

 

ゼスト(一見軽薄そうに見えても・・・実際はお前のような男が組織には最も必要な存在だ。)

 

あの時のローレンスの覚悟を思い出したゼストが、提案を申した。

 

ゼスト「ローレンス。使うぞ、例の魔法。」

 

ローレンス「ッ!了解。」

 

 

 

 

 

 

下のフロア。

 

ベルゼ「ん?」

 

何かを感じたブラッディーベルゼが足を止めた。

 

ベルゼ「そろそろその時が来たかな?」

 

ティガ「ベルゼ?」

 

ベルゼ「ごめんタクト。私、そろそろ裏切るから。」

 

ティガ「何?」

 

ベルゼ「じゃあね。」

 

そう言うとブラッディーベルゼが別のフロアに向かって飛翔した。

 

ティガ「おいベルゼ!タァッ!」

 

飛翔したベルゼを追う。

 

 

 

 

 

 

上のフロア。ローレンスが走り出した。

 

シン(何だ!?何か一瞬違和感が・・・)

 

ローレンスが走り出しただけなのに、シンが違和感を感じた。

 

アウグスト「気を付けろシン!何かして来るぞ!」

 

シン「ああ・・・」

 

だが彼がある光景を見た。

 

シン(・・・え?ゼストが・・・消えた・・・!?)

 

煙が覆ってないにも関わらず、ゼストの姿が一瞬で消えていた。

 

 

 

 

フェオン「彼奴が消えた!?」

 

ユリウス「な・・・何が起きたで御座る!?」

 

トール「い・・・一瞬も目を離してないですよ・・・!!」

 

 

 

 

アウグスト「トール!ユリウス!フェオン!グレア!クロードから離れるなよ!!」

 

 

 

 

トール「はい!!」

 

 

 

 

ローレンス(さーて、災難は誰の元に訪れるかな?)

 

右腕を上に突き出した。下のフロアから無数の光の柱を発動した。

 

シン・アウグスト「!!!」

 

 

 

 

 

 

同じ頃、帝城付近では。

 

オリビア「・・・ようやく辿り着いたわね。」

 

トニー「だねぇ。」

 

マーク「ウォルフォード君達はもう中ッスね。」

 

アズマ「中でもう戦っているかもな。」

 

マリア「さぁ踏み込むわよ!!」

 

ミランダ「この面子だとアンタが仕切る流れなの?ねぇ。」

 

マナミア「楽しそうですねマリア。」

 

アリス、リン、ユーリ、レベッカを除いたアルティメット・マジシャンズが帝城へ向かっていた。

 

 

 

 

 

 

城内。シンとアウグストがローレンスとゼストに苦戦している。

 

シン(ゼストが消えた・・・!?)

 

だが、ゼストの姿が見えず翻弄されている。

 

シン(くそっ・・・!魔力探知しようにも・・・アイツ(ローレンス)の魔法に集中を切らされる・・・!!)

 

その時、シンの脇腹にナイフが刺さろうとしてる。だがシンが間一髪気付いてバイブレーションソードでナイフを弾いた。助かったと思われたが、シンの脇腹から少し血が滲み出た。

 

シン「攻撃された!!オーグ!!やっぱりゼストはこのフロアの何処かに居る!!」

 

 

 

 

トール「シシリー殿・・・!!これは・・・」

 

シシリー「・・・はい・・・!私もさっきから魔力探知で周辺を探っているんですが・・・居ないんです・・・!!」

 

フェオン「・・・グレアは?」

 

グレア「・・・ダメ・・・!私でも探知出来ない・・・!!」

 

索敵魔法と探知魔法でもゼストが見当たらない。

 

 

 

 

ローレンス「ゼスト様・・・いや、もう()()で良いか。隊長は魔法に関しては軍でも一目置かれる実力者でな。思いもよらない魔法を自分で考え出しちまう。諜報に必要な魔法。戦闘に必要な魔法。俺ら隊員は皆、隊長に魔法を教わった。平民上がりの隊長が、諜報部隊隊長に就く事が出来た最大の理由がそれだ。まぁ、ただ今使ってるような・・・隊員(俺ら)じゃ理解も出来ねーような魔法も多かったがな。・・・所でオイ。良いのかよ?俺の話なんかに集中してて。」

 

次の瞬間、アウグストの腹と右足に切り傷が刻まれた。

 

アウグスト「・・・・・!!!」

 

 

 

 

トール「殿下!?」

 

フェオン「オーグ!?」

 

 

 

 

シン「ッ!?」

 

更にシンの右腕にも切り傷が刻まれた。

 

 

 

 

トール「なっ・・・!!」

 

シシリー「シン君!!」

 

グレア「ああもう!!ゼストは何処に居るのー!?」

 

 

 

 

シン(確かに目の前に居るはずなのに見えない・・・魔力探知にすら引っ掛からない・・・つまり単なる『姿を消す』類の魔法じゃない・・・!見えない・・・と言うより認識出来ない・・・!?そう言えば、戦闘服の付与を決める時・・・光学迷彩以外にもう1つ姿を消す魔法を考えていた・・・ただ、()()()の場合自分ではなく相手の脳に直接干渉する魔法なだけに、安全性の面から付与を断念していたんだ・・・!!)

 

それを全て踏まえ、シンが確信した魔法。それは・・・

 

シン「”認識阻害”か・・・」

 

アウグスト「・・・!?シン、何だそれは?」

 

シン「対象を他人に認識出来なくする魔法だよ。『見えない』んじゃなくて『認識出来ない』。ゼストは自分にその魔法を掛けたんだ。つまり俺達は魔力探知は出来てるはずだけど・・・それを認識出来ていないんだ・・・!!」

 

ローレンス(洞察力までズバ抜けてんのかよ。ズリーなぁ。)

 

シン「(心臓でも一突きされたら終わりだ・・・!!)オーグ!!今すぐ防御障壁を・・・」

 

だがその瞬間、シンとアウグストの目の前で爆発が起こった。

 

シン「ぐ・・・あっ!(何だ・・・!?唐突に・・・目の前で爆発が・・・)」

 

ローレンス「さっき言ったろ?魔法は隊長の十八番だよ。」

 

 

 

 

シシリー「シン君!!殿下・・・」

 

フェオン「このままじゃ2人が殺られちゃう・・・」

 

シシリー「トールさん!ユリウスさん!私達もシン君達と一緒に・・・」

 

トール「ダメです!」

 

フェオン「どうして!?このまま2人を見捨てるって言うの!?」

 

トール「シシリー殿・フェオン殿。あなた達を守る事がシン殿からの頼みであり、殿下からの命令です。今はここを動いてはいけません。(それに・・・殿下にはまだ・・・)」

 

 

 

 

爆発魔法に翻弄されるシンとアウグスト。透明のゼストが不適な笑みを浮かべてる。

 

ゼスト(障壁を発動したか・・・これでまず王太子からの魔法による反撃はない。問題はウォルフォード。奴だけは障壁を発動しながら同時に別の魔法も使えるからな・・・致命傷狙いだった初手を感覚だけで躱すセンスは、最早脱帽だ。)

 

シン「さっきからローレンスの方が大人しいな。」

 

アウグスト「当然。奴にもゼストの位置が分かっていないだろうからな。下手に攻撃して仲間が被弾するのを避ける為だろう。」

 

シン「・・・かと言って、俺達が四方八方魔法を撃っても当たったかすら判別不可能だからな・・・くそっ・・・何とか打開する手を考えないと・・・」

 

打開する手。それを聞いたアウグストが。

 

アウグスト「いや・・・シン。私に良い考えがあるぞ。」

 

何か閃いたと同時に、魔法障壁を解除した。

 

 

 

 

トール・フェオン・グレア「え!?」

 

 

 

 

ローレンス「!」

 

シン「オイオーグ!!障壁解くなよ!?狙われるぞ!!」

 

アウグスト「ああ・・・だからこうして最初から攻撃魔法を発動しておく。」

 

両手で炎魔法を生成する。

 

アウグスト「一撃は貰うかも知れんが、その瞬間反撃を喰らわせる。」

 

シン「バカ言うなよ!その一撃が急所狙いだったらどうすんだ!!」

 

アウグスト「・・・・・・」

 

ローレンス(冷静な王太子(アイツ)らしくねェなぁ。何でわざわざ自分で策をバラす必要があんだ?)

 

シン「オーグ!せめて俺の後ろに立て!それなら背中側は俺の障壁でガード出来る!」

 

アウグストの背中にシンが立つ。

 

シン(分かってると思うが、十中八九お前に攻撃して来るぞ。)

 

アウグスト(覚悟の上さ。)

 

ゼスト(愚かな・・・認識出来ないのを分かっていてどうやって反撃する気だ?攻撃された方向へ当てずっぽうで魔法でも放つつもりか?さて・・・私の選択肢は2つ。魔法でダメージを負わせるか・・・ナイフで急所(トドメ)を刺しに行くか・・・迷うまでもないな。仕留められる方を確実に1人仕留めておくのが最善!!!)

 

無防備のアウグストにゼストが急接近し、アウグストの首に向かってナイフを振るう。

 

ゼスト(()った!!!!)

 

勝利を確信したゼスト・・・だがその時、ゼストの全身に電撃が流れた。

 

ゼスト「!!??ぐ・・・あっ・・・!!」

 

全員「っ!?」

 

電撃を受けたゼストが実体化した。

 

ゼスト(何・・・だ!?奴の体にナイフが触れた瞬間・・・全身に電撃が・・・!?)

 

アウグスト「・・・おや?どうやら上手く掛かってくれたようだな。また顔を合わせられて何よりだ。」

 

彼の全身に電撃が纏っている。

 

シン「オーグ!?お前・・・」

 

ローレンス「彼奴・・・!!全身に・・・電撃の魔法を纏っていやがったな!!」

 

ゼスト(いや・・・!!重要なのはそこではない・・・!!この男・・・!!ウォルフォードと同じく2つの魔法を同時に使用している・・・!!)

 

 

 

 

シシリー「殿下・・・凄い・・・何時の間にシン君と同じ事を・・・」

 

トール「ふうっ・・・ハラハラさせてくれますよホント。」

 

フェオン「シンと同レベルの魔法を覚えてたなんて・・・」

 

グレア「さっすがオーグ!」

 

トール(魔法の同時展開・・・まさかこんな形で・・・!!)

 

 

 

 

シン「おま・・・一撃貰う気なんてさらさらないじゃねぇか!!真の狙いがあるならちゃんと言えよ!つーかもし魔法使われてたら・・・」

 

アウグスト「敵を騙すにはまず味方からだ。シン、中々良かったぞ。お前のリアクション。」

 

シン「・・・く、覚えとけよ後で・・・」

 

アウグスト「・・・さて。見ての通り私もシンと同様の戦術を覚える事が出来たワケだが。ここからは少し私のオリジナルをお見せしよう。」

 

炎の弓と、雷の矢を同時に構える。

 

ローレンス「ゼスト隊長!!」

 

走り出すローレンス。だが。

 

アウグスト(右手の『炎』に、左手の『電撃』を・・・混合(ブレンド)させる!!)

 

炎を纏った電撃の矢を放つ。

 

ゼスト「ちいっ!これは・・・!!」

 

 

 

 

トール「殿下が恐ろしいのは・・・この短期間でシン殿の技術を呼吸してしまった上に、更なる応用魔法を編み出してしまうそのセンスですよ。」

 

 

 

 

アウグスト(炎と電撃の混合魔法!!)

 

ゼスト「むうっ!!」

 

ローレンスとゼストが魔法障壁を展開。だが防ぎ切れず、2人が混合魔法を受けて吹き飛ばされてしまった。

 

ローレンス「がっ・・・!!」

 

ゼスト「・・・・・!!」

 

吹き飛ばされた2人がすぐに体勢を立て直す。

 

ローレンス(何て威力だ・・・!!俺達魔人の障壁で防げる代物じゃねェ・・・!!それに・・・複数の系統の魔法を混合(ブレンド)されると言う事はつまり・・・相手の魔法を利用して反撃したり、他系統の魔法で相殺するのはもうほぼ不可能・・・!!アウグスト=フォン=アールスハイド・・・!!ウォルフォードと同じく・・・この男も紛れもない天才・・・!!)

 

ゼスト「・・・戦術や小細工など諸共破壊するような・・・奴もまさしく・・・他社の上に立つ相応しい存在のようだな。」

 

ローレンス「・・・冗談じゃねェっすよ・・・!!こっちは何人仲間殺られたと思ってんだ・・・!!このままで済ませてたまるモンかよ・・・!!相手が王太子となれば尚更だ・・・道連れにしてでもブッ殺してやる・・・!!」

 

憎悪と怒りがローレンスの感情を支配する。

 

ゼスト(・・・・・・・)

 

ローレンス「他社の上に立つ・・・!?どうせコイツらは足元の人間なんて見ちゃいねェんだろ・・・見てんのは金と・・・!権力と・・・!!クソの役にも立たねェプライドだけだろうが・・・!!」

 

シン(・・・・・・)

 

アウグスト「お前もやはり、他の魔人同様、国や貴族への怒りを原動力にして動いているのだな。安心しろ。私にそんなプライドはないぞ。」

 

ローレンス「黙れ!!!」

 

ゼスト「落ち着けローレンス。」

 

ローレンス「・・・・・覚えてますか・・・ゼスト隊長。俺達が初めてアンタに会った日の事・・・俺は・・・()()はあの日確信したんですよ。この世の全ては所詮、人の上にふんぞり返ってる奴らの為だけに存在してるって。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数年前のブルースフィア帝国。身体の芯まで凍り付くような雪の夜。それは・・・孤児であるローレンス達にとって『死』を実感するには十分な状況だった。

 

サイクス「・・・・よォ。このまま朝になったら俺ら氷漬けだぜ?せめて屋根の下行こうや。」

 

アベル「この人数を一泊させてくれるお人好しなんてこの国には居ないさ。」

 

カイン「裏通の長屋に居たホラ・・・彼奴の家は?」

 

リオネル「ああ・・・何年か前に脱獄して来たモーラのオヤジか。」

 

ダンテ「とっくに貴族に情報売られて塀の中だぞ。」

 

カイン「んじゃマチルダのバァさんは?ホラ、前に菓子恵んでくれた。」

 

ダンテ「・・・半年前に死んだよ。視察に来てた子爵の馬車に轢かれてな。」

 

ローレンス「こう言う時、魔法とか使えたらさ。簡単にパッと火起こしたり出来んだろうな・・・あったけェだろうなぁ。ホラ、誰かやってみろよ。」

 

カイン「・・・知らねェよ。魔法の使い方なんて。」

 

住む家も、学ぶ場所も、自由に生きる権利さえ与えられていない。それがブルースフィア帝国の最下層に居る彼らだった。

 

ローレンス「ぜー・・・ぜー・・・」

 

突如ローレンスの呼吸が荒くなった。

 

ダンテ「・・・・!ローレンス!?お前、息が・・・」

 

カイン「オイ!コイツやべェぞ!すげェ熱だ!」

 

ダンテ「移動しよう。最悪何処かの置物にでも忍び込めば・・・」

 

彼らが生まれ育ったのは中流貴族が治める小さな町。病院などの目立った施設はほぼ存在せず、有事の際は最寄りの街への移動が必要だった。それは、彼らのように病に罹患されたら大半は助からないと言う意味だった。

 

 

 

 

最寄りの街へ移動中。

 

ダンテ「意識をしっかり保て!」

 

ローレンス「さ、寒い・・・」

 

アベル「寝るなよ。・・・オイ。彼処なら・・・どうだ?」

 

ダンテ「教会・・・か。」

 

幸運にも、1つの教会が彼らの目に映った。

 

サイクス「祈りを捧げるシュミなんてねーぞ。誰か入った事は?」

 

リオネル「ない。」

 

ダンテ「・・・行こう。」

 

 

 

 

教会の扉を叩いた。すると、1人の優しそうな神父が扉を開けた。

 

神父「・・・おやおや。こんな夜分にどうされましたかな?」

 

サイクス「コイツが寒さで肺やられてんだよ。少しの間凌がせてくれよ。」

 

神父「・・・ふぅむ。そう言われましても・・・明日には巡回視察で帝都のお偉方が来られる予定で・・・君らを匿うと・・・その・・・教会のイメージがですな・・・」

 

少し躊躇っている神父に、ダンテがペンダントを神父に見せた。

 

ダンテ「大した金にもならんだろうが、これで目を瞑って貰えないか?頼む。」

 

アベル「・・・ダンテお前それ、母親の形見じゃ・・・」

 

ペンダントを受け取った神父がレンズで鑑定する。

 

神父「・・・フム・・・まぁ・・・明日の早朝までならば・・・」

 

 

 

 

匿って貰う事に成功し、彼らが教会に入った。

 

サイクス「・・・マズいぜ。風雪がないだけマシだが、寒さはハンパねェ。」

 

カイン「くそ、毛布なんて気の利いたモンもねェし・・・」

 

ローレンス「わ・・・悪い。ダンテ・・・俺のせいで・・・」

 

ダンテ「気にするな。どうせ時期が来たら金に換えるつもりだった。」

 

アベル「薬と・・・せめて暖を取れる場所がなければ・・・」

 

カイン「こんな小せェ教会に暖炉なんかねェよな・・・」

 

するとサイクスが。

 

サイクス「羽織っとけ。」

 

ローレンス「・・・!」

 

自分の上着を脱いでローレンスに渡した。

 

ローレンス「サ・・・サイクス。これお前のじゃ・・・」

 

サイクス「五月蝿ェ。暑いんだ。」

 

それを見た他の仲間達も、自分の上着を脱いでローレンスに渡した。

 

カイン「これも被っとけよ。」

 

リオネル「これも。」

 

アベル「あー暑い。」

 

ローレンス「・・・すまねェ・・・お前ら・・・」

 

 

 

 

吹雪が強くなった深夜。2台の馬車が雪道を進んでいる。

 

???「ここでいい。」

 

御者「はっ。」

 

2台の馬車がローレンス達を匿ってる教会に停車し、1人の貴族が降りた。

 

貴族の男「・・・フン。相変わらず寂れた町だ。」

 

もう1台の馬車には、ある人物が乗っている。

 

貴族男「神父!おるか!」

 

扉を叩くと、神父が扉を開けた。

 

神父「おお!これはカーディ伯爵。御到着は明日の予定では・・・?」

 

カーディ「悪いが予定が押していてな・・・視察を早めさせて貰った。町長とも今し方話をして来たわ。相変わらずがめつい男だ。」

 

 

 

 

カイン(何だ?)

 

ダンテ(こんな夜中に・・・礼拝か?)

 

 

 

 

カーディ「それよりどうだ?”創神教”の普及具合は?こんな片田舎では寄付金も大して期待出来まいが。」

 

神父「いえいえ・・・それでも町の人口は僅かずつですが増えておりますし。案外懐に溜め込んでいる者は居るものですぞ。」

 

 

 

 

カイン(創神教?寄付金?)

 

サイクス(金持ちが貧乏人から搾取する為の手段なんじゃねーの?知らね。)

 

 

 

 

神父「こちら上納金です。お納め下さい。」

 

教会の上納金が入った袋をカーディに渡した。カーディが金を確認する。

 

カーディ「・・・少し増えたな。まあ上には報告しといてやる。」

 

神父「ありがとうございます。」

 

 

 

 

だがその時。

 

ローレンス「ごほごほっ!」

 

ダンテ「ローレンス!」

 

 

 

 

カーデイ「!?」

 

ローレンスの咳き込みがカーディに気付かれてしまった。

 

カーディ「・・・おい。何だこの小汚いガキ共は?」

 

気付かれてしまったローレンス。

 

カーディ「・・・おい神父。いつからここは孤児の溜まり場になったんだ?寄付金集めが順調かと思えば、こんな連中が出入りしているとは・・・”創神教”を流布する教会として世間の印象が悪くなるわ。まさかとはと思うが、お前が許可したのか?」

 

サイクス「オイオッサン!」

 

カイン「俺らはアンタに・・・」

 

神父「・・・ええ。私が許可致しました。教会に入れねば全員で制裁するぞと脅されまして・・・致し方なく・・・」

 

アベル・カイン・サイクス「!?」

 

この神父は嘘を吐き、彼らを裏切った。

 

カーディ「クズ共が。ここは孤児院でもなければ養護施設でもないぞ。今すぐに出て行け。」

 

ダンテ・リオネル「・・・・・」

 

カイン「俺ら脅してなんかねーよ!仲間が体を壊し掛けてんだ!少しだけ・・・」

 

ローレンス「カイン・・・いい・・・」

 

カイン「?」

 

ローレンス「言ってもムダだ・・・俺の事は気にしなくていい・・・はぁ・・・ぜっ・・・分かってんだろ・・・コイツらにとっちゃ虫ケラ以下なんだよ俺らは・・・けどよ・・・」

 

ゆっくりと立ち上がり、裏切った神父の胸を掴む。

 

ローレンス「ダンテの母ちゃんの形見・・・アレだけは返せよ・・・!!そうすりゃすぐにでも出てってやるからよ・・・!!」

 

ダンテ「ローレンス・・・・」

 

神父「・・・はて?一体何の話なのか私には分かりかねますな。」

 

サイクス「ジジィッ!!!」

 

サイクスが神父を殴ろうとしたが、カーディに止められた。

 

カーディ「教会に於いて、神は何をお望みか。何をもって赦しを得られるのか。お前は知っているか?小僧。」

 

サイクス「ああ!?知るかこの野郎!放せよ!」

 

カーディがサイクスの腕を放し、彼らに話した。

 

カーデイ「罪と告白と、それに見合った寄付金だ。それによって人の罪は贖われる。お前が仮に神父を殴り付けたとしても、その罪を認め教会へ寄付したとすれば、神はお前をお赦しになるだろう。お前らが勝手気ままに教会へ踏み入り、ここに居座っている事実も、同じくそれに見合う代償を払えば赦されると言う事だ。分かるか?それが我が国に於ける教会の在り方であり、”創神教”の定義なのだ。もし本当にお前らが『形見』とやらを差し出していても、神父が『足りない』と言えば赦しは得られんのだよ。」

 

カイン「んなフザけた話が・・・」

 

怒るカインをダンテが落ち着かせた。

 

ダンテ「・・・これがこの国だ。」

 

アベル・リオネル「・・・・・」

 

カーディ「覚えておけ。『救い』は、金でしか買えん。」

 

 

 

 

 

 

ローレンス達は教会から出て行った。

 

神父「伯爵様はお優しいですなぁ。あのような者達にまで講釈を・・・」

 

カーディ「先程の話は何も教会に限った事ではない。価値の無い人間はせめて、世の理を知り、必死になって為政者に金を運ばねばならん。『上』に貢献出来る人間だけに生きる価値があり、それが出来ぬ者には何の価値もない。教会はまさしく、我が国の体制の縮図そのものだからな。お前らにはまだ、生きる価値すらない。」

 

 

 

 

 

 

教会を追い出されたローレンス達は、再び放浪する事になった。

 

リオネル「アベル。ローレンスを俺の背に乗せろ。もう殆ど意識を無くしてる。」

 

アベルが、容体が悪化してるローレンスをリオネルの背中に乗せた。

 

ローレンス「リオ・・・ネル・・・もういい・・・俺を置いて行け・・・」

 

 

 

最初から分かっていた。この国に於いては、金と権力が全てだと言う事を。力のない者には、生き延びる術さえ見付けられない。

 

 

 

放浪してるローレンス達の前に、ある男が立っていた。

 

アベル「!」

 

それは、ゼストだった。

 

サイクス「誰だ?」

 

カイン「いや・・・街の住人じゃねェだろ・・・」

 

ゼスト「!」

 

ローレンス「はぁ・・・はぁ・・・」

 

ゼスト「・・・いかんな。私について来たまえ。風説を凌げる場所を紹介しよう。」

 

サイクス「・・・オイ、どうするよ?」

 

ゼスト「凍え死にたいのなら話は別だが・・・ただ、早くせんと友人の命はないぞ。」

 

アベル「・・・・・」

 

もうこれに従うしかないと考えたアベル達が、ゼストについて行く事になった。

 

 

 

 

 

 

少し離れた家に招かれたアベル達。家には暖炉があり、ベッドがある。ローレンスはベッドに眠ってる。

 

ゼスト「様子は?」

 

ゼストの部下「薬は与えましたが・・・後は本人の体力次第ですね。生憎、治癒魔法師なんて都合の良い人間はこの街には居ませんし・・・」

 

ひと段落し、ゼストがソファに座る。

 

アベル「・・・何故俺達を助けた?」

 

ゼスト「フム・・・その説明も含めまずは・・・名乗っておくとしようか。ブルースフィア帝国軍諜報部隊隊長のゼストだ。この街に視察予定だったカーディ伯爵に帯同させて貰いここに来た。」

 

ダンテ「軍人・・・!?」

 

カイン「カーディって・・・さっきのオヤジじゃねェか!!オイ!やっぱ信用ならねぇよコイツ・・・!!何企んでやがる!!!」

 

ダンテ「待て!この場所に案内したいと言う事は、少なくとも・・・何度かこの街を訪れているのだろう。我々の事も知っていたのか?」

 

ゼスト「君達個人の事は知らなかった・・・が、()()()()()()()()の人間が数多く街に居る事は知っている。無論、この国に点在する他の街にもな。私の目的は、そんな人間に接触する事だ。」

 

ダンテ「・・・・・・何の為に?」

 

ゼスト「勧誘だよ。君達にもしその気があれば・・・帝都へ来て、私の部隊の一員として働いて貰いたくてね。」

 

ダンテ「・・・諜報部隊・・・に?何故わざわざこんな辺境に来て・・・帝都で人員を募れば幾らでも優秀な人材が集まるのでは?帝国軍の規模を踏まえれば当然のように思えるが・・・」

 

ゼスト「・・・・私自身が、平民の出でね。」

 

そう。ゼストも元々は平民の人間。アベル達は彼の言葉に黙ってしまった。

 

ゼスtp「・・・今の一言で察してくれたようだね。帝都で優秀な成績を収めた()()()()()()人間が平民の下について働こうなどと思う訳がない。そうでなくても、我が国の斥候など常にリスクと隣り合わせな上に・・・名誉の昇進などとは全く縁のない存在だからな。」

 

ダンテ「使い捨ての出来る人間がうってつけと言う事か。」

 

ゼスト「・・・言ってしまえばな。」

 

サイクス「ゴミみてェな俺らにはゴミみてェな仕事が相応しいって風に聞こえるぜ。違うか?オッサン。」

 

ゼスト「人間以下の生活を強いられるよりはマトモに生きられると言う話だよ。少年。」

 

サイクス「?」

 

ゼスト「君達も知っての通り・・・この国では生まれた時点ではっきりと命に価値が付けられる。弱者はその価値に従って無力のまま死んでいくのか。それとも抗うのか。私の目の届く範囲の人間位には・・・その選択肢を与えてやりたいのだ。」

 

アベル・カイン・サイクス・ダンテ・リオネル「・・・・・・」

 

ゼスト「疎まれようが蔑まれようが。1人でも多くその選択肢を与えてやれるのならば、私はこの部隊を命ある限り率いて行くつもりだ。答えを出すのは・・・別に今でなくて構わん。明日にはもう私は帝都へ戻らねばならん。無論、今すぐ君達を連れ帰る事は出来ない。入隊出来る年齢に達していないしね。年月が過ぎ、成長し、その時まだ私の示した道に進む気があれば、帝都の私の所へ尋ねて来てくれ。」

 

 

 

 

 

 

翌朝。雪が晴れ、外に出たアベル達が日の光を浴びている。

 

サイクス「止んだな・・・雪。」

 

アベル「・・・で、どうする?」

 

サイクス「・・・笑っちまうよな、俺らが帝都?想像すらした事ねーよ。」

 

カイン「帝都っつっても、軍の使いパシリとしてだぜ?」

 

サイクス「分かってるよ。・・・けど、死ぬまでこの街でチンケに行きてくよりは、少しはマシそーだ。」

 

ローレンス「行くよ・・・俺も。」

 

高熱から回復したローレンスが外に出た。

 

サイクス「ローレンス!大丈夫かよお前!」

 

ローレンス「俺ら全員で修行して、鍛えて強くなるんだ。軍に入れば魔法だってきっと使えるようになる。あんな連中が上に立って支配してんのがこの国なんだろ?せこせこ小銭稼いで上に金運んで媚び諂う人生なんてまっぴらだ。何となくだけど、あのゼストってオッサンも、平民出の人間として同じ平民を集め、1つの部隊を軍に起き続ける事でこの国の在り方に抵抗してるように見えるよ。」

 

ゼストの部下「オイ。街に居る間・・・どうしようもなくなった時は、またウチに来い。火くらいなら当たらせてやる。感謝しろよ。勿論俺にじゃなく、ゼスト様にな。」

 

ローレンス「・・・・強くなろう。この国の為じゃなく、自分自身の為に。」

 

数年後。大人になった彼らはゼスト率いる諜報部隊に入隊した。人の価値を決め付け利用する事しか頭にない上層の人間達と戦う為に・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在。ブルースフィア帝城。

 

ローレンス「コイツは・・・コイツらは!!俺が昔仲間と共に倒すと決めた奴らと同様の存在だ!!!差し違えてでもこの場で息の根を止めてやる・・・!!!」

 

アウグスト「・・・心外だな。幾ら何でもブルースフィアの上層部と同様に扱われるのは納得いかん。」

 

ローレンス「何が違うってんだ!!!最初から全てを手に入れ!苦労も知らず!将来すら約束されて生きてきたお坊ちゃんだろうがよ!!!」

 

トール「違いますよ!!!」

 

激昂するローレンスの言葉を、トールとユリウスが反論する。

 

トール「殿下は苦労を知らない人間なんかじゃない!!」

 

ユリウス「そうで御座る!!王族に相応しい存在になるべく・・・幼い頃から他の誰よりも努力し励んで来たで御座る!!」

 

シン「俺はオーグの立太子の儀式を壇上に立ってみてたけど、国民はそれを喜び温かく受け入れていたよ。それはオーグ自身が国民を想って、それまで接してきた結果なんだろう。オーグを、金と権力だけの為に動くような人間と一緒にするな。」

 

ローレンス「・・・・・!!」

 

ゼスト「ローレンス。認めよう、この男は。シュトローム様側の人間だ。魔人になる前のな。」

 

ローレンス「・・・それでも・・・!!それでも止められねェ・・・!!そうだろ隊長・・・!?俺達は・・・!!魔人として生きる道を選んだんだ・・・!!」

 

ゼスト「当然だ。」

 

ローレンス(()()()で待ってろよお前ら・・・俺もすぐ行くからよ。ただし、デカい手土産持ってな!!)

 

死んでいった仲間達の為に、再びシンとアウグストと対決する。

 

アウグスト「シン、お前はゼストを頼む。」

 

シン「おう!」

 

ローレンスが拡散魔法弾を発射。シンとアウグストがジャンプで避けた。アウグストが巨大魔法陣を展開し、魔法陣から大津波のような水を放水した。

 

ローレンス(水!?大量の・・・!!まるで津波・・・!!)

 

大津波のような水がローレンスを押す。

 

ローレンス「う、ぐ、おっ・・・!?」

 

アウグスト「・・・()()()()。」

 

電撃魔法を発動した。電撃が水を伝ってローレンスに迫る。

 

ローレンス(電撃が・・・水を伝って・・・!?)

 

水を浴びたローレンスが全身に強力な電撃を受けた。

 

ローレンス「っ・・・!!」

 

電撃を受けたローレンスが致命傷を負い、水の上に倒れた。

 

ローレンス(指先一つ・・・動かねェ・・・ちくしょう・・・結局俺は何の役にも・・・強ェなぁ・・・アウグスト・・・)

 

アウグストが死ぬ間際のローレンスに話した。

 

アウグスト「立ち向かって来る敵に加減は出来ん。何故なら私の後ろには仲間がいて、家族がいて、守るべき国民達がいる。先程も言ったが私に王族としてのプライドなどない。そんなもので人を守る事は出来んからな。」

 

ローレンス(『守る』・・・か・・・真逆じゃねェか・・・ブルースフィアの貴族共の思想とは・・・)

 

アウグスト「だが、お前達魔人を相手する中で・・・私にも、唯一持たねばならんプライドがある事に気付いた。人類の・・・守護者たるプライドだ。」

 

ローレンス(・・・でけェな・・・俺じゃ足元にも及ばねェ・・・過去にシュトローム様が見たと言うアールスハイドの光景・・・この男が治める国ならば・・・確かにそんな世界が・・・本当に・・・ああ・・・ちくしょう・・・悔しいなぁ・・・もし・・・もし『次』があるのなら・・・俺達もどうかそんな・・・世界・・・に・・・)

 

いつか平和な国で生まれ変われると信じるローレンスが、仲間達が待ってる居場所へ逝った。

 

フェオン「ローレンス・・・」

 

グレア「残るはゼストだけだね。」

 

残る魔人はゼスト。今、シンVSゼストの最後の戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 

同じ頃、マリア達は。

 

ミランダ「・・・ねぇ、ホントにこっちで良かったの?マリア。どう考えてもこっちは玉座のある塔の方じゃなくて・・・居住区のある城の方なんじゃないの?」

 

玉座に向かっているはずが、居住区の方角へ向かっていた。

 

マリア「確かにオリベイラの居る玉座はあっちだろうし、シン達の魔力からして敵と戦闘中だと思うわよ。」

 

ミランダ「じゃあ、尚更加勢に行った方が良いんじゃ・・・」

 

マリア「行かない理由は3つ。まずシン達の相手がオリベイラじゃない。そしてオリベイラ以外の相手がシンとタクトと殿下が居るあっちのグループに加勢は必要ない。」

 

ミランダ「・・・・・・じゃあ3つ目は・・・?」

 

トニー「・・・ああそうか。ミランダは魔力察知が出来ないから・・・」

 

ミランダ「?」

 

マリア「こっちに明らかに強力な魔人が居る。ほぼ間違いなく1ヶ月前に見たあの女の魔人よ・・・!」

 

ミランダ「・・・・!・・・つーか私、1ヶ月前の事知らないし・・・・」

 

マナミア「私も同じく。」

 

マリア「近いわよ。あの辺りの部屋の何処か・・・」

 

すると、前の扉が開いた。全員が構える。

 

ミリア「あら。やっぱりこちらに来てしまったのね。」

 

アズマ「お前は・・・」

 

1ヶ月前に遭遇した魔人ミリアが扉から現れた。

 

マナミア(あのお方がマリアが言っていた女の魔人・・・とてつもない圧を感じます・・・)

 

ミリア「ここは私の自室よ。場所を変えていいかしら?」

 

そう言うとミリアは、マリア達をある場所へ案内した。

 

 

 

 

案内された場所は、ダンスホール。

 

マリア「ダンスホール・・・?」

 

トニー「いや〜〜・・・良かったのかなぁ。素直に着いて来ちゃって・・・」

 

アズマ「少なくとも、舞踏会を開く雰囲気じゃなさそうだ。」

 

ミリア「お気に入りの場所なんだけど、恐らく、この先使う事もないでしょうから・・・ここでいいわ。いいわよ。全員で掛かって来て。」

 

突然ミリアの膨大な魔力が溢れ始めた。

 

マリア「ちょ・・・ちょい待ってよ・・・!これ・・・は・・・!」

 

トニー(何てデタラメな魔力量・・・!!)

 

オリビア(す・・・少なくてもこれは・・・)

 

マーク(殿下やウォルフォード君クラス・・・!!)

 

アズマ(魔力を感じないが・・・膨大な威圧を感じる・・・!!)

 

ミランダ「・・・何かとんでもない相手ってのは肌で感じるけど・・・私が先陣切るよ!!」

 

即座に飛び出したミランダ。

 

マリア「あ!ミランダ!」

 

トニー「僕らも行こう!」

 

マーク「ウスッ!」

 

彼女に続いてトニーとマークが飛び出す。

 

アズマ「待てお前ら!!」

 

ミランダ「はぁぁああっ!!」

 

バイブレーションソードをミリアに振り下ろした。だがミリアがそれを幽霊のような動きで躱し、ミランダの後ろを取った。

 

ミリア「ごめんなさいね。」

 

そう謝罪し、ミランダの背中に魔法弾を撃ち込んだ。

 

アズマ「ミランダ!クッ、マリアとオリビアはそこに居ろ!」

 

今度はアズマも飛び出した。

 

マリア「ちょ!アズマ!」

 

アズマ「トニー!マーク!一緒に!」

 

トニー「うん!」

 

マーク「ウスッ!」

 

アズマ・トニー・マーク「うおぉぉおおおっ!!」

 

ミリアの背後から3人が迫る。しかし、ミリアが周囲に爆発魔法を発動した。アズマとトニーとマークがその爆発魔法に巻き込まれ爆発した。

 

マリア「嘘でしょっ・・・!!!」

 

爆発魔法で周囲の物が吹き飛び、ダンスホールが跡形も無くなった。

 

ミリア「あらあら。準備運動にしては、少し遠慮がなさ過ぎたかしら。」

 

アズマ「クッ・・・!」

 

背中に魔法弾を撃ち込まれたミランダ、爆発魔法を受けたトニーとマークは倒れているが、アズマは傷が残ってるものの意識がある。

 

マリア「アズマ!大丈夫!?」

 

アズマ「ああ・・・タクトが作ってくれたこの服のお陰だ・・・」

 

マナミア「これは、一筋縄ではいかなさそうですね・・・」

 

ミリア「まぁいいわ。まだ相手は何人も残っているものね。」

 

魔人ミリアにマリア達は勝てるのか。そして、そこに2つの影が迫って来ている。

 

『To Be Continued・・・』




キャスト

タクト=クリスティ:萩谷慧悟

シン=ウォルフォード:小林裕介
アウグスト=フォン=アールスハイド:小松昌平
シシリー=フォン=クロード:本泉莉奈
マリア=フォン=メッシーナ:若井友希
トール=フォン=フレーゲル:志田有紗
トニー=フレイド:小林千晃
ユリウス=フォン=リッテンハイム:河本啓佑
マーク=ビーン:葉山翔太
オリビア=ストーン:佐藤沙耶
マナミア=ラドクリフ:関根瞳

フェオン:内山夕実
グレア:高橋李依

アズマ:榎木淳弥

ミランダ=ウォーレス:吉七味。

ゼスト:津田健次郎
ローレンス:杉山紀彰
アベル:古川慎
カイン:井上雄貴
サイクス:興津和幸
リオネル:内匠靖明
ダンテ:柳田淳一

カーディ伯爵:斧アツシ

実体のない存在:宮内敦士

ベルゼ=クラスティール:安済知佳

ミリア:大原さやか

オリバー=シュトローム:森川智之





次回予告

圧倒的な魔力を持つゼストとミリア。城に隠された衝撃の真実を見付けたナージャ達。それは、誰もが驚愕するあり得ないものだった。

次回ウルトラマンティガ

ミリアの後悔

お楽しみに
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