ウルトラマンティガ THE ULTIMATE MAGICIANS 作:naogran
崩壊したダンスホール。
ミリア(ゼスト達は・・・今頃シン=ウォルフォードと交戦中かしら。一度自室に戻ってから・・・そちらへ・・・)
マリア「何処行く気よ?さっきので終わったと思ってんなら・・・甘いわよ・・・!!」
自室へ戻ろうとするミリアをマリアが呼び止めた。
ミリア「私を引き留めた事・・・後悔するわよ、あなた達。」
マリア「ミランダ達は・・・」
オリビア「・・・大丈夫です。3人共魔力の反応は残ってます。」
トニー、マーク、ミランダの3人は重傷を負っているものの、まだ魔力が残っている。
アズマ「そうか・・・」
マリア(オリビア・・・危機的状況でもちゃんと敵を見てる・・・アリスから聞いた一月前のような動揺は見られない。)
この1ヶ月で、オリビアは成長してる。マリアはそれに感心してる。
マリア「強くなったわね、オリビア。ミランダの代役・・・アンタに任せるわ。」
オリビア「!」
アズマ「待てマリア、俺がミランダの代役を・・・」
マリア「アンタはそこにいなさい。また無茶して重傷負ったらつまんないわよ。」
アズマ「マリア・・・」
マナミア「マリア。私がミランダの代役を務めます。」
マリア「ありがとうございます。ですがオリビアにお願いしましたので、大丈夫です。」
マナミア「そうですか・・・」
マリア(シンに倣って・・・私も試してみようかな。)
以前シンから教わったあの力を使ってみる。
マリア『魔法イメージ構築。火炎。旋風。燃焼。破壊。』
オリビア(言霊・・・!!)
アズマ(タクトが言ってた言霊なのか・・・?)
マリア「赤竜召喚!!!」
巨大な赤竜を召喚し、ミリアに向けて放った。
マリア(出来た!!)
マナミア(赤い竜!?)
ミリア(これは・・・!!)
オリビア(壁を破壊する時にウォルフォード君が使った言霊の短縮・・・!!凄い・・・マリアさんももう自分のものに・・・!!)
ミリア「!」
迫る赤竜を魔法衝撃で受け止める。
ミリア(この威力・・・圧力・・・恐らく人類の中でもトップクラスの実力者・・・!!)
すると魔法障壁にヒビが生じた。
マリア(撃ち抜ける・・・!!敵の障壁を・・・!!)
ミリア「・・・・これじゃ
だがミリアが予想もしない行動に出た。
マリア・オリビア・マナミア・アズマ「!!?」
それは、魔法障壁の多重展開。破壊される寸前の魔法障壁の後ろに重なるように2つの魔法障壁を展開したのだ。赤竜は多重魔法障壁を貫けず消滅した。
マリア(し・・・信じられない・・・!!私の今出来る限りの最大級の魔法を・・・無傷で凌がれた・・・!!)
ミリア「こちらの番ね。」
無数の球体型の魔法を3人に飛ばした。球体は3人の周囲に止まった。
アズマ「何だ?」
すると球体が一斉に破裂した。
マリア・オリビア「うわっ!!」
アズマ「シャボン玉!?」
マナミア「ッ!!」
油断してる隙を見たミリアがマリアに迫る。
マリア「はっ!!」
ミリアに気付いて避けようとしたが。
マリア「なっ・・・!!」
足を蹴られバランスを崩し、顔を鷲掴みにされ、そのまま地面に叩き付けた。
マリア(この・・・女・・・体術まで・・・!?)
更に、ミリアが生成した巨大な魔法がマリアを包み込んだ。
アズマ「マリアあああぁぁーーーーー!!!!!」
オリビア「・・・・!」
マナミア「マリア・・・!」
ミリア「後2人・・・」
???「いや?まだ5人だよ?」
ミリア「っ?」
地面からベルゼが飛び出した。気を失ってるマリアを抱えてる。
アズマ「お前は・・・!?」
オリビア「ベルゼ・・・さん・・・!?」
ベルゼ「ヤッホー。久し振り〜♪」
マナミア「どうしてあなたがここに・・・!?」
アズマ「お前・・・何しに来た・・・!!」
ベルゼ「そんな怖い顔しちゃダメだよ?」
更に地面からティガが飛び出した。
オリビア「クリスティ君!!」
アズマ「タクト!」
ティガ「ベルゼ!追い詰めたぞ!」
ベルゼ「そんな事言ってる場合じゃないよ?アレ見て?」
ティガ「何?・・・ッ!ミリア!?」
ベルゼ「それと、彼女とあの3人を治してあげて。」
ティガ「マリア!トニーにマークにミランダ・・・ミリアにやられたのか?」
ベルゼ「大丈夫。4人共生きてるよ。早く治してあげて。」
ティガ「・・・タァッ!」
額のティガクリスタルに右手を当てて、セルチェンジビームで4人を治した。
ベルゼ「これでOKだね。」
ティガ「ッ!」
カラータイマーが点滅し、ティガが地面に膝を着き、光に包まれタクトの姿に戻った。
タクト「さっきの戦闘で力が・・・」
ミリア「ベルゼ。あなたは一体?」
ベルゼ「ごめんねミリア。私、あなた達を裏切るわ!」
そう言った瞬間、ベルゼがミリアに高速で飛び込んだ。
ミリア「ッ!」
ベルゼ「ヒヒッ!」
不気味な笑みを浮かべ、ミリアの顔面を右手で掴もうとする。
帝城・黒い空間。
実体のない存在「ベルゼめ。この期に及んで悪足掻きとは。」
シュトローム「ベルゼさんが・・・?」
実体のない存在「フッ。まぁ良い。真の計画にベルゼは不要。必要なのはお前だけだ。」
シュトローム「真の計画・・・?」
同じ頃、帝城の外では。
ナージャ「ふぅ・・・」
ケイティ「これで最後かな?」
別行動していたナージャとケイティが斥候魔人を討伐し終えていた。
ナージャ「・・・うん。周辺に魔人の気配はないわ。」
ケイティ「もう皆城へ行ってるみたいだね。」
ナージャ「私達も行かなきゃ。」
???「おーい!」
ケイティ「お!デリック!レオナ!」
そこにデリックとレオナが合流した。
レオナ「そっちは討伐し終えた?」
ケイティ「たった今終わったよ!」
デリック「よし、俺達も・・・」
???「あー!ちくしょー出遅れた!」
ナージャ・ケイティ・デリック・レオナ「ん?」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
アリス「シン君達もう全部終わらせちゃってないだろーね!?」
ケイティ「ヤッホー皆ー!」
アリス「あ!ケイティ!ナージャにデリックにレオナも!」
ロクサーヌ「お兄ちゃん、そっちは大丈夫だった?」
デリック「問題ない。」
ケイティ「お!あなたがロクサーヌだね?私はケイティ=グレイスだよ!宜しくね!」
ロクサーヌ「ユーリとレベッカから話は聞いてるわ。宜しくねケイティ。」
レベッカ「皆さん、先輩達はもう城へ向かったんですか?」
ケイティ「うん。私達は別行動で他の魔人や魔物を討伐してたんだ。今終わったけど。」
アリス「それじゃあ早く行こう!出遅れた分頑張らなきゃ!」
このメンバーで帝城へ駆け込んだ。
リン「あちこちで魔力の衝突が起きてる・・・いや心配はなくはない。」
デリック「アイツらでも一筋縄じゃいかないって訳か。」
ユーリ「ねぇねぇ、どっち行くぅ?」
アリス「そりゃオリベイラの居るシン君達の方・・・」
リン「敵との戦力差がありそうなマリア達の方・・・」
2人の意見が食い違った。
デリック「・・・どっち行く?」
ユーリ「魔人の殲滅は絶対だから、苦戦しそうなマリア達の方へ行く方がまぁ正解かしらねぇ。」
リン「よし!」
アリス「えーーー!?」
ユーリ「簡単に命投げ出そうとした事に正解はあげられないけどねぇ。」
リン「め・・・面目ない・・・」
怒ったユーリがリンにグリグリする。
ロクサーヌ「怒ってる・・・」
一行はマリア達の援護に向かう。
その道中。
ケイティ「随分激しくやってるね。音がこっちにまで響いてるわ。」
ナージャ「?」
アリス「どしたのナージャ?」
ナージャ「・・・この部屋から何かを感じたわ。」
廊下にある1つの扉の前に止まった。
扉を開けると、そこは女性の部屋があった。
デリック「妙に生活感があるな。」
アリス「と言うか、ついさっきまで使ってたような感じしない?」
ユーリ「それに何となく部屋の雰囲気が女性的と言うか・・・」
リン「もしかしたら、1月前に見たあの女魔人の・・・?」
アリス・ユーリ「!」
デリック「ミリアの事か。」
アリス「でもナージャ、この部屋がどうかしたの?」
ナージャ「違う。ここじゃない。もっと奥の方から・・・ん?奥に部屋があるわ。」
部屋の奥の部屋のドアを見付けた。
ドアを開けて部屋を見た。
全員「え・・・!!??」
アリス「な・・・何・・・あれ・・・!?」
そこでアリス達が見たのは、目を疑うようなものだった。
ケイティ「ど・・・どう言う事なのこれ・・・!?」
ロクサーヌ「誰の・・・!?」
アリス「い・・・急いでシン君達に知らせなくちゃ・・・」
果たして彼女達が目撃したものとは何だったのか。
一方のシンは、ゼストと睨み合っていた。
ゼスト「やれやれ・・・結局これで私は隊員の全てを失ってしまった訳か・・・彼らを軍に誘い入れた張本人として・・・地獄に堕ちても贖えんな私の業は・・・」
シン「諜報部隊員が丸ごと国を裏切ったってのか・・・ローレンスの口振りだと・・・軍に在籍していても平民出の人間は不遇な扱いを受けていたって事だよな。それでもお前達が突然、帝国軍から居なくなったのなら・・・国としては相当痛手になったんじゃないのか?」
ゼスト「・・・フ・・・フハハハハハ!ハッハッハッハッ!”神の御使い”などと呼ばれていても、やはり平和な国で培われた思考しか持てないのだな、シン=ウォルフォード。ブルースフィア帝国と言うものをお前は何も分かってはいない。我々の部隊が軍部に於いて何と呼ばれていたか教えてやろう。力によって派手に敵を斬り伏せる騎士ではなく、華麗な魔法で敵集団を打ち払う魔法使いでもない。地を這い、コソコソと敵の情報や弱点を探る我らは・・・”ネズミ”なのだそうだ!」
シン「え・・・ネズミ!?」
ゼスト「部下達が命懸けで敵国の情報を入手して来ても、軍上層部を占める貴族共から掛けられる言葉は・・・いつだってまず罵倒だ。」
幾ら懸命に任務や戦いをこなしても、貴族達は平民の人間達を認めず自分の事にしか興味がない。
ゼスト「くく。それでも情報だけはきちんと我々から吸い上げていくのにな。ウォルフォード、お前は先程我々が軍を裏切る事が国の痛手になると言ったな?」
シン「・・・・・・」
ゼスト「まるで的外れな意見だよ!奴らは任務中に部下が死んでも痛くも痒くもない!我々平民など壊れれば幾らでも替えが利く道具としか見ておらぬのだからな!部下が1人倒れる度・・・居なくなる度に・・・私がどれだけ葛藤した事か・・・!!」
以前。ゼストが彼らに与えた選択肢は、本当に正しかったのか。ゼストはその感情に苛まれ続けた。だが。
シュトローム『救い難き愚かなるこの国を根底から滅ぼす為、私に力を貸して貰えませんか。』
魔人オリバー=シュトロームとの出会いがゼストや隊員達の運命を変えたのだ。
ゼスト「シュトローム様が・・・シュトローム様だけが我々の力を本当に必要として下さったのだ!魔人となる事で、『ネズミ』から初めて『人』へと変われたのだ!!我々に生きる意味を・・・与えて下さったのだ・・・」
魔人達はシュトロームをまるで神のような存在だと崇めていた。
シン「・・・生きる意味・・・か。だったら・・・だったら何でお前達やシュトロームは・・・
ゼスト「・・・・・!?」
アウグスト「・・・シン、どう言う事だ・・・それは。」
シン「魔人達は最初からこの戦いに勝利して世界を滅ぼすつもりなんかない。恐らく全員が『死』を受け入れて戦いを臨んでいる。シュトロームは・・・いやオリベイラに関しては最初から・・・この国で・・・この場所で最期を遂げると決めていたんじゃないのか?だから頑なにこの国から動こうとしなかったんじゃないのか・・・!?」
ゼスト「・・・・・・・」
シン「何があった!?お前達の生きる意味が一瞬にして失われた理由は!?答えろ!!!!」
ゼスト「・・・・その『答え』は、お前が自分でここから先へ進んで確かめるがいい。私を倒したその後にな・・・!!」
バイブレーションナイフを強く握ったゼストがシンに急接近。シンがバイブレーションソードでゼストのナイフと渡り合う。
ゼスト(我々に起きた”事実”は差し置いても・・・何れにせよ我々はシュトローム様に・・・最後まで『生きる目的』を提示して差し上げる事は出来なかった。我々に生きる『意味』を与えて下さった恩返しを・・・結局何も出来ぬままだったのが何よりの心残りだ・・・そして・・・戦争で妻と子を亡くした私が・・・過酷でこの国で絶望の中生き延びられたのは・・・お前達が私を信じ・・・力となってくれたからだろう。)
シン「!」
今ゼストの脳裏には、帝国時代とアルティメット・マジシャンズに敗れて逝った隊員達の姿が映ってる。シンは悲しい表情に変わったゼストを見て止まった。
ゼスト「・・・すまない・・・ローレンス・・・そして・・・他の隊員達よ・・・軍の部隊へ誘い入れた事も・・・魔人となる道を選ぶ事になったのも・・・全て私の責任・・・!!お前達の命を奪ったのは他でもない・・・この私だ・・・!!」
大切な隊員達の命を奪ってしまった。ゼストはその責任に厭世観を抱いてる。
シン「・・・・・」
再びゼストがナイフでシンのバイブレーションソードと激突する。暴走するゼストにシンが言った。
シン「勝手な事は・・・言えないけど・・・リーダーが魔人になるからと言って、部下が全員それに倣うとは思えない。よっぽどアンタの事を信頼し・・・その行く先を疑わなかったんだろう。平民の立場から軍の人間へと誘い入れた事・・・感謝こそしても、恨んでなんかいなかったんじゃないか?魔人となる道を選んでしまったアンタを・・・それ自体を認める事は決して出来ない。けど・・・隊員達はきっと誰もアンタを責めはしないよ・・・」
ゼスト(・・・シン=ウォルフォード・・・お前は・・・自らの命を奪わんとする相手にまで、そのような言葉を掛ける事が出来るのだな・・・)
ナイフを振り上げたゼストがシンに迫る。シンはバイブレーションソードを水平に素早く振り、ゼストの胴体を切り裂いた。
ゼスト(・・・ウォルフォード・・・お前ならば或いは・・・シュトローム様の事も・・・)
胴体を切り裂かれたゼストが倒れて絶命。諜報魔人部隊が全て討伐された瞬間である。
討伐したゼストとローレンスの遺体を布で被せ、シシリーとトールが、シンとアウグストに治癒魔法で回復させる。
シシリー「・・・・・」
シン「・・・よし、じゃあ・・・行こう。オリベイラの所へ。」
回復し、オリベイラの元へ行こうとした時、1人の人物が走って来て現れた。
???「ウォルフォードくぅーーーーん!!殿下ぁ〜〜〜〜!!」
シン「ッ!!ユーリ!?」
アリス達と別行動してるユーリだった。
シン「1人か!?一体どうした!?アリス達と一緒じゃ・・・」
ユーリ「た、た・・・大変なもの見付けちゃったのよぅ・・・!!今すぐ一緒に来てぇ・・・!!」
シン・アウグスト「・・・・!?」
果たして、ユーリが見た予想外のものとは何なのか。
同じ頃タクト達は。
ベルゼ「・・・ありゃ?」
不気味な笑みを浮かべたベルゼがミリアに飛び込んだが、ミリアの氷柱が腹に直撃していた。
ベルゼ「あらら、猪突猛進し過ぎちゃったかも・・・」
氷柱が腹に刺さり、ベルゼが地面に倒れた。
タクト「ベルゼ!」
ミリア「やっぱり私には敵わないわねベルゼ。さて、あなた達に選択肢をさせてあげるわ。1つ目は、今すぐ引き返してウォルフォード達と共にこの城から立ち去る事。2つ目は・・・」
オリビア「出来ない!」
ミリア「?」
アズマ「オリビア・・・?」
オリビア「あなたには悪いけど、私達は人類の為・・・世界の為に・・・魔人殲滅と言う使命を持ってここに来てる。例え最後の1人になったとしても・・・私達は諦めずに戦う・・・!!」
タクト(・・・オリビア、成長したな。)
ミリア「・・・見た目によらず勇気があるのねあなた。じゃあお望み通り、仲間達と共に氷柱の雨に貫かれて死になさい。」
真上に巨大な魔法陣が出現し、そこから無数の巨大な氷柱が出現した。
オリビア「はっ!!」
タクト「何・・・!?」
ミリアが右手を振り下ろし、氷柱が降り注いだ。
オリビア「くっ・・・!!」
タクト「ハァッ!!」
魔法障壁とウルトラシールドで氷柱の雨を防ぐ。
タクト(膨大な量の魔力で放たれる魔法・・・恐らくほぼ無限に降る・・・!!)
オリビア(障壁を解けない以上反撃は不可・・・この場からの移動も不可・・・!!)
タクト(”詰み”だ・・・ちゃんと計算してやがる・・・!!)
ミリア「ホラ。もう障壁に綻びが出てきた。」
タクト・オリビア「ッ!!」
ウルトラシールドと魔法障壁に罅が入り始めた。
アズマ「もういいタクト!オリビア!」
タクト「馬鹿野郎!お前らを守れないなんて出来る訳がねぇよ!」
オリビア(一か八か・・・障壁を解除した瞬間にゲートを開いて敵の背後へ・・・!!ほぼ間違いなく私自身も重大なダメージを負う事になるけど・・・下手したら死・・・それでも・・・やるしか・・・!!)
ミリア「!?」
その時、巨大な炎と水が無数の氷柱を破壊した。
オリビア「ッ!!?え!!?」
ミリア(火炎と水の魔法で氷柱を残らず破壊した・・・一体誰が・・・)
タクト「・・・まさか!!」
氷柱を破壊したのは、気絶していたマリアと倒れていたベルゼだった。
マリア「オリビアァーーーーーッ!!
ベルゼ「タクトォーーーーーーッ!!
オリビア「マリ・・・!」
タクト「ベル・・・!」
名前を呼ぼうとしたが、マリアとベルゼの眼差しを見てタクトとオリビアが察した。オリビアがゲートを展開し、ミリアの後ろを取った。タクトが走り出し、ベルゼと共にミリアの左右を取った。
ミリア「ッ!!!」
マリアとオリビアの爆発魔法、タクトの最大威力のハンドスラッシュとベルゼの血の爆発魔法がミリアを飲み込んだ。
マリア・オリビア「はぁ・・・はぁ・・・!」
タクト・ベルゼ「はぁ・・・はぁ・・・!」
アズマ「・・・奴は!?」
マリア「!?」
爆炎が晴れ、マリアが驚いた。
ミリア「・・・驚いたわ。想定よりずっと強いのね・・・あなた達。私の上を行くにはまだ甘いけどね。」
何と、四方に魔法障壁を同時展開した無傷のミリアが立っていた。
オリビア(四方同時の障壁展開・・・!!)
マリア(この女・・・魔法のセンスは最早・・・)
タクト(シンと同等レベル・・・!!)
ベルゼ(やっぱり強いわね・・・ミリア・・・!)
一方倒れていたマークが目を覚ました。
マーク「はっ!」
トニー「あ、マークも気が付いた。」
マナミア「マーク大丈夫ですか?」
トニーとミランダは既に目覚めている。
マーク「トニーさん!アズマさん!マナミア様!お・・・俺ら確か魔法でやられて・・・敵は・・・」
アズマ「見ろ。」
ミリアと戦ってる4人を見た。
マーク「あ、あれはベルゼ・・・?何でここに・・・?」
アズマ「彼奴、急に魔人側から寝返ったらしい。理由は不明だ。」
トニー「にしても、魔法使い同士の極致みたいな戦いだよ。剣をメインに戦う僕らには、ちょ〜〜っと入れる余地がないかなぁ?」
タクト、マリア、オリビア、ベルゼがミリアと激しい戦いを繰り広げている。ミリアに過去の思い出が脳裏に浮かんだ。
ミリア(・・・思い出すわね。まだハンターとして戦っていた頃。私はいつも1人だった。身を守るのも、敵を仕留めるのも。全ては自らの腕1つに懸かっていた。敵が例え何十いようと、何百いようとも・・・)
トニー「・・・あのミリアって言う魔人。一月前といい、今の戦いといい、どちらかと言うと、大規模魔法を得意としてる印象を受けるなぁ。」
マーク「1点集中型の俺らとは真逆ッスね。」
トニー「・・・まぁ、僕らは『対魔人』を想定してシンとタクトから指導を受けて来たからね。」
ミランダ「それって要するに威力を高める代わりに範囲を絞ってるって事でしょ?あれだけの戦いをする奴が1点集中が苦手とは思えないけど。」
トニー「・・・まぁそれはそう思うよ。(・・・ただ・・・もし付け入る隙があるとすれば・・・)」
ミリアが水魔法を放水した。
マリア「うわっ・・・!」
ベルゼ「よっと!」
4人がジャンプで躱した。だがミリアが放水した水魔法を氷魔法で凍結させた。
マリア「!!!」
タクト「何!?」
マリア「ヤバい・・・!!」
ミリア「(情報通りなら、ウォルフォードとクリスティ以外は自身での浮遊魔法は使えないはず。)さぁどうするのかしら?」
マリア(物理障壁・・・いや、炎で氷を溶か・・・ダメだ間に合わない!!)
オリビア「掴まってマリアさん!!」
真下にゲートを展開したオリビアがマリアの手を掴んでゲートを通る。
ミリア「!!」
ゲートがミリアの背後を取った。
マリア「お返しよ!!!」
炎と電撃の合体魔法を発動した。しかしこれもミリアが魔法障壁で防御した。
ベルゼ「前がガラ空きよ!!」
タクト「今度こそ!!」
ミリア「!?」
爆炎からタクトとベルゼが現れ、光と魔法を込めた拳でミリアの魔法障壁を殴った。魔法障壁が破壊され、ミリアが後ろにジャンプした。
ミリア(やはりこの2人は侮れない。けど、ベルゼが裏切る理由は何なの・・・?)
マリア「くっそう!ここまで魔法が通じない相手初めてだわ!」
タクト「ああ。やっぱ一筋縄じゃ行かねぇな。」
するとオリビアが、この戦いに違和感を感じ、ある戦い方をマリアに提案する。
オリビア「マリアさん。魔法の攻撃範囲・・・絞れますか?」
マリア「え!?どう言う事!?」
オリビア「えと、何て言うか私とマリアさん・・・相手の魔法の規模に釣られてつい広範囲の魔法使っちゃってません?」
マリア「・・・そう言やそうね。こっちからしたら相手はただ1人なのに。けどあの女には鉄壁の障壁が・・・!」
オリビア「そうですか?でもマリアさん。火竜の魔法で相手の障壁破り掛けてましたよね?」
マリア「!!」
オリビア「私の魔法じゃ多分、相手の障壁にヒビ1つ入れられません。攻撃は任せます。私が敵の動きを・・・止めますから。クリスティ君も攻撃は任せます。」
タクト「俺もか?まぁ良いけど。」
オリビア「ベルゼさんは・・・援護お願い出来ますか?」
ベルゼ「何か作戦があるんだね?任せて♪」
マリア「でもオリビア・・・あんたどうやって・・・?」
オリビア「・・・躊躇っちゃダメですよマリアさん。私はマリアさんを信じてますから。」
マリア「オリ・・・」
止めようとするマリアだが、オリビアがミリアに向けて風魔法を発射した。
ミリア「・・・微風ね。」
風魔法を風魔法で相殺した。だが。
ミリア(・・・2人!?)
すると正面に不適な笑みのベルゼが迫って来て、ミリアの右腕を掴んだ。
ベルゼ「捕まえた♪」
ミリア「!?」
更にオリビアがゲートで現れ、ミリアの左腕を掴んだ。
マーク「オリビア!!」
ミランダ「敵の腕を・・・!?」
アズマ「ベルゼ!?」
オリビア「マリアさん撃って!!」
だが、ミリアの膝蹴りを腹に受けた。
ベルゼ「ぐっ!?」
更にベルゼの腹にも膝蹴りを喰らわせた。
ミリア「勇気ある行動は認めるけど、近接戦の覚えも無しに敵に近付くのはナンセンスよ。ッ!?」
さっきの膝蹴りを受けたオリビアとベルゼの握力は緩んでない。
ミリア(まさか・・・まだ腕を・・・!?)
オリビア「マリ・・・ア・・・さ・・・早く・・・!!」
ベルゼ「タクト!早く!」
タクト「ああ!」
触発されたマリアが魔法を発動する。
マリア(ムチャ言うわねオリビア・・・!!それだけ接近した状態に魔法を放つって事は・・・!!その分相応の制度の威力調整と命中率が求められるって事・・・!!)
タクト(ベルゼ、お前オリビアに便乗しやがって・・・!!)
両腕を大きく振って、放さないオリビアとベルゼ同士をぶつけさせた。しかし、2人の握力は弱まらない。
オリビア「放・・・さ・・・ない・・・!!」
ベルゼ「姑息な手は・・・謹んで欲しいね・・・!!」
マーク「オリビアァ!野郎俺が代わりに・・・」
トニー「マーク!今は4人を信じるんだ!」
マーク「・・・!」
オリビアを助けに行きたいが、トニーの言葉で自分を抑え込む。
タクトとマリアがハンドスラッシュと魔法弾を同時発射。ハンドスラッシュはベルゼのスカートを掠り、魔法弾はミリアの横に着弾した。
マーク「外した・・・!!」
マナミア「無理もありません。仲間があんな近くに居たんじゃマリアは・・・」
マリア(巫山戯んな・・・巫山戯んな・・・私・・・!!オリビアが・・・!!彼処まで体張ってチャンス作ってんのに・・・!!ビビってる場合か・・・!!しっかりしろ・・・!!)
タクト(ベルゼ・・・何で今更俺達に協力を・・・え!?)
敗れたスカートから、痣に侵されてる脚を見た。
タクト(痣・・・?何だあれ・・・!?)
ミリア「首を刎ねるわ。勿論覚悟の上よね?お嬢ちゃん、ベルゼ。」
今度は魔法で2人の首を刎ようとするミリア。
マリア「ッ!!!!」
タクト「ダァッ!!!!」
マリア「うあああっ!!!!!」
ハンドスラッシュと火炎弾の同時発射。
ミリア(超高速の炎弾と光弾・・・!!規模は小さくても威力は先程の炎竜以上・・・!!)
ベルゼ「うわあ!」
右腕を前に突き出して三重魔法障壁を展開し2つの攻撃を防いだ。だが、1枚目の障壁に穴が生じた。
マーク「1枚目の障壁を撃ち抜いた・・・!!」
ミランダ「でも、アイツには届いてない・・・」
テレパシーを使ったタクトがマリアに作戦を伝える。
タクト(・・・マリア、俺が合図するまで構わず撃ち続けろ。)
両手に光のエネルギーを集める。
マリア(・・・分かった!)
火炎弾を放つ。すると2枚目の魔法障壁に先程よりも大きい穴を開けた。
トニー「それだ・・・!!」
マーク「トニーさん!?」
アズマ「どうしたんだ!?」
トニー「敵幹部に元ハンターがいるって言う話は聞いていた・・・大規模魔法は・・・多数の魔法を相手する為に会得したものだと考えれば・・・恐らくはあの女がそうなんだろう!如何なる強力な魔物に多勢で襲い掛かられたとしても、あの障壁は絶対に破れなかったはずだ。けど今彼女が相手しているのは、知能を持たない魔物なんかじゃない・・・!!」
そう、今ミリアが相手しているのは、タクトとマリア。
トニー「障壁の破壊を明確な目的として一点集中攻撃される・・・そんな事、恐らくは魔人になる以前から1度としてなかったはず・・・!!」
アズマ「そうか!魔物は障壁を破ると言う目的を持たない!」
マナミア「障壁を破る目的を持った者と出会った事がない彼女としては致命的なミス!」
ミリア(片腕を抑えられている以上、両手でのガードは不可・・・魔法による迎撃も不可・・・!!残る障壁は1枚・・・仕方無いわね。持久戦になるけど・・・扱える魔力量はこちらが上回る。ならば・・・まだ有利・・・!!)
1枚までになった障壁が、3枚に再生した。
マーク「障壁を再生された・・・!!あれじゃキリがない!!」
ミランダ「マリアももう限界なんじゃ・・・」
トニー「・・・いや。」
アズマ「マリアは今・・・」
マリアが再び火炎弾を放った。三重の障壁を一点集中で全て貫いた。
トニー「マリアの魔法の精度と威力が増してる・・・!!魔法に込める魔力の密度が更に上がってるんだ!!」
ミリア「・・・!!」
オリビア「あなたが今相手しているのは、紛れもなく人類最強の魔法師2人。あなたの負けよ!」
ベルゼ「ヘヘッ!」
タクト「マリア!今だ!!」
マリア「うああぁぁぁっ!!!!!!!!」
超高速のハンドスラッシュと火炎弾が1つとなって最後の魔法障壁を貫き、ミリアの顔左に直撃した。直撃を受けたミリアが血を流し、後ろへ倒れた。
トニー「・・・っ!」
マーク「や・・・」
ミランダ「やった・・・!!」
オリビア「・・・・」
マリア「ぜぇっ・・・はぁっ・・・完っっっ全に燃料切れよ・・・!!こんにゃろう・・・!」
タクト「俺達を見縊った報いを受けろ・・・!!」
マーク「オリビア!!」
ミランダ「ちょっとマリア大丈夫なの!?」
倒れたミリアにベルゼが近付き、彼女からネックレスを奪った。
ベルゼ「これはお駄賃として頂くよ。」
戦いの後。
マーク「ムチャすんなよバカ・・・!!」
オリビア「ゴ・・・ゴメンねマーク。」
トニー「流石だったよマリア。」
ミランダ「ボロボロじゃんアンタ。」
マリア「たはは・・・」
マナミア「でも立派でしたよ。」
マリア「ありがとうございます・・・」
アズマ「やったなタクト。」
タクト「ああ。ちぃーと疲れたけど。」
ベルゼ「やっぱりタクトは侮れないね。」
タクト「・・・ベルゼ、その痣は何だ?」
ベルゼ「え?ああこれ?」
マリア「アンタ、前に会った時そんな痣無かったよね?それにそのペンダントは?」
ベルゼ「これはね、教えてあげる前に・・・」
後ろを見ると、倒れていたはずのミリアが起き上がっていた。
ベルゼ「まだ終わってないようだよ。」
タクト「・・・みたいだな。」
ミリア「1人残らず疲労困憊の様子ね・・・だったらやっぱり・・・私の勝ちだわ。今度こそ纏めて塵にしてあげる。」
両手に魔力を集め、タクト達にトドメを刺そうとする。
トニー「・・・!」
ミランダ「く・・・!」
トニー「・・・あれは・・・無理だねぇ。」
マーク「くっそ・・・せめて体にダメージが残ってなきゃ・・・」
オリビア「マリア・・・さん・・・」
マリア「・・・悔しいけど、やっぱりあの女の方が魔力の総量は遥かに上だわ。」
タクト「今度こそ終わりみたいだ・・・」
ベルゼ「・・・ん?来る。」
??? 「待って!!!!!」
突然、聞き覚えのある声と壁を破壊する音が鳴り響いた。ミリアがその音に目を向けた。そこに立っていたのは・・・
アリスとリンとレベッカ、ナージャとケイティとデリックとレオナとロクサーヌだった。
トニー「アリス・・・リン・・・レベッカ・・・!?」
タクト「デリックにナージャにケイティにレオナ・・・その子は?」
デリック「話は後だ。」
マリア「・・・ちょっと待って、ナージャそれ・・・何持ってんの・・・!?」
ナージャの両手には、毛布に包まれてる男の子の赤ん坊を抱えている。
トニー「あ・・・赤ん坊・・・!?」
アズマ「一体何処で・・・!?」
マーク「まさか帝国の生き残り・・・!?」
ナージャ「それを訊きにここに来たのよ。あなたに。」
彼女の目線がミリアに向かってる。
リン「この子は・・・あなたの部屋に居た。一体誰の・・・子供?」
ミリア「・・・返・・・して・・・返しなさい・・・!!その子は私の子よ・・・!!」
赤ん坊を抱えてるナージャにミリアの怒りと魔力が上昇している。
アリス(匿われていた以上・・・危害を加えられる心配は・・・ないか。)
ナージャ「落ち着きなさい。ここに降ろすわ。危害は加えてない。」
抱えてる赤ん坊をゆっくりと床に下ろした。ミリアが赤ん坊を抱える。
赤ん坊「・・・ふぐ・・・ああっ、あぁー!あぁー!」
ミリア「・・・よしよし。ごめんなさいね。大丈夫よ。」
赤ん坊「・・・あ・・・あぶ・・・」
さっきまでの怒りが嘘のように消え、母親のような表情になった。
マリア(な・・・何・・・?本当なの・・・!?そもそも魔物・・・魔人って子供なんか出来るの・・・!?)
トニー(・・・でも見た目からしても最近生まれた子にしか・・・)
アウグスト「・・・スマン。通してくれ。」
アリス・リン「え?」
そこにシンとアウグスト、シシリーとフェオンとグレアが合流した。
アリス「殿下・・・!シン君も・・・!」
フェオン「タクト!大丈夫?」
タクト「ああ。心配ない。」
シン「マジだったのか・・・本当に・・・魔人に・・・子供が・・・」
ミリア「・・・・・」
こちらを見てるミリアにシンが訊く。
シン「その子に手を出すつもりはない。良かったら・・・教えてくれないか。その子は一体・・・」
もう隠し切れないと悟ったミリアが、赤ん坊の事を話す。
ミリア「この子は私とシュトローム様の子よ。」
全員「!?」
なんと赤ん坊は、シュトロームとミリアの間に授かった子供だった。
ナージャ「って事は・・・その子は私の甥っ子・・・!?」
赤ん坊「あぁー。」
毛布が捲れ、顔が見えた。その顔を見たタクト達が驚愕した。
タクト達「!?」
赤ん坊を見た瞬間、その場に居た全員が全てを理解した。魔人達が何故自ら未来を閉ざすかのように『死』を選択したのか。
シン「そう言う・・・事かよ・・・!!」
タクト「だからアンタ達魔人は・・・!!」
魔人達は自ら滅びの道を選んだのではなく、選ばざるを得なかった。
シン「魔人にとっての『絶望』の答えがこれか・・・!!」
その赤ん坊の目は・・・
人間の目をしていた。
実験は失敗に終わった。帝城で行われていた実験の全貌は、魔人の子供を授ける事が出来るかと言う。しかし、生まれたのは魔人の子ではなく、人間の子だった。
ミリア(形はどうあれ、結果が何であれ、シュトローム様が嘗て残せなかった子供を・・・せめて私が代わりに残して差し上げたかった。生まれて来た子が魔人ではなく人の子だったとしても・・・私やゼストは、それでも良いと思っていた。)
決戦前。
ゼスト『数日後の決戦・・・あなたは何があっても生き残るべきだ。この意味・・・分かりますね?』
ミリア(生まれて来たシュトローム様の子を・・・この先守り抜いて行く事が私の使命だと私達は理解していた。・・・でもねゼスト、私はあの時1つ嘘を吐いたの。何故今シュトローム様が・・・あのような不安定な状態になってしまわれたのか。正確な事は私にも分からないわ。逃げたのよ私・・・分かっていた癖に真実から、ただ目を逸らしたかったの・・・
全ての責任の重荷を抱えてしまったミリアは涙を流し始めた。
ミリア「・・・ごめん・・・なさ・・・い・・・ごめんなさい・・・シュトローム様・・・お願い・・・この子だけは助けて・・・」
タクト「・・・・・・」
ミリア「あなた達が魔人を見逃す事が出来ないのは分かってる・・・私の事はどうしたって構わない・・・だけどこの子は・・・この子だけは・・・」
自分の命を投げ捨てる覚悟は出来てる。しかし子供を助けて欲しいと懇願するミリアにシンが。
シン「なぁミリア。誓えるか?その子を真っ当な人間に育てると。決して人間に対して敵意を持たせないと。」
マリア「え・・・」
アウグスト「・・・シン、お前・・・」
ミリア「・・・私まで・・・見逃すって言うの?あなた・・・」
シン「俺だって・・・自分で甘い考えだって分かってる・・・けど・・・だけど・・・!殺せるかよ・・・!!罪のない赤ん坊を・・・出来るワケねェだろ・・・!!その赤ん坊から・・・母親を奪い去るような事を・・・!!」
シシリー「シン君・・・」
タクト「お前・・・」
アウグスト「・・・シン。お前の言う罪無き赤子や人々を、数知れず殺してきた相手だぞ。お前が救おうとしているのは。」
その言動にシンがアウグストの胸ぐらを掴んだ。
シン「だったらお前は・・・どうすんだよ!?オーグ!!」
タクト「シン落ち着け!」
アウグスト「赤子は兎も角・・・お前は私の立場で考えて、目の前の魔人を見逃せると思うか?オリベイラの宣言前ならまだしも・・・こいつらは人類に対して明確な敵意を表明してしまったんだ。我々が何の為にここへ来たのか忘れたのか?」
マリア(シンの気持ちはよく分かる・・・けど殿下の言い分が正しいのも・・・さっきまで自分が戦ってた相手なのに・・・答えが出せる気がしない・・・)
シシリー「・・・・・・」
アウグスト「この作戦の・・・この部隊の責任者は私だ。ここから先、この事が原因で問題が起きた場合・・・全責任は私が取る事になる。分かるな?」
シン「・・・・待てよオーグ!言い出したのは俺だ!責任は俺が取る・・・!!もし将来、この2人が人類の脅威になるような事になったら・・・俺が命を懸けてでも償ってやる・・・!!」
タクト「シン・・・」
アウグスト「・・・そうか。だったら私達2人が責任者だな。」
シン「・・・・え?」
アウグスト「各々、この部屋での事は見なかった事にしろ。戦っていたのは・・・メッシーナ達か。魔人はタクトとメッシーナが倒し、この部屋を後にした・・・それだけだ。」
全員がポカンと拍子抜けな表情になった。
シン「オーグ・・・お前もしかして最初から・・・」
トール「殿下だって、そこまで非情に徹する事が出来る人間じゃありませんよ。」
ユリウス「我々は分かっていたで御座る。」
アウグスト「人道に反する行為をして来た相手に、同様の行為を行って良い道理はない。少なくともそれが正しいかどうかは私が判断する。将来、国を治める人間としては・・・正解ではないのかも知れんがな。」
タクト「オーグ・・・」
フェオン「・・・流石未来の国王様ね。」
彼の優しい気遣いにミリアは俯いた。
ミリア「・・・本当に・・・甘いのね・・・あなた達。」
アウグスト「我々はブルースフィアの人間ではないからな。」
シン「あ、ローレンスに言われたの根に持ってる・・・」
ミリア「心配しなくても・・・この子が・・・人類の脅威に晒すような事にはしないわ・・・この子には・・・シュトローム様が得られなかった幸せを・・・少しでも掴んで欲しいから・・・」
シン「・・・良ければ聞かせてくれないか?シュトローム・・・いや、オリベイラの事・・・」
ミリア「・・・この子の名前、シルバーと言うの。正式には・・・シルベスタ=フォン=ストラディウス。嘗て生まれて来られなかった・・・シュトローム様の・・・お子様の名前・・・」
ナージャ「そして・・・私の甥っ子。」
そしてミリアから、オリベイラが帝国を憎む経緯を事細かに告げられた。
シン「そう言う事だったのか・・・リチャードおじさんの言ってたのと同じだ・・・」
マリア「前に賢者様から聞いた魔人もそうだったけど・・・魔人化するには充分に足る理由があったのね・・・」
ミリア「目的を果たし、生きる意味を失ってしまったシュトローム様に・・・せめて未来を見せて差し上げたかった・・・なのに・・・その為に生んだこの子は・・・魔人ではなく人間だった。」
タクト「魔人と言えど、元々は人間。そしてアンタ達魔人に残された未来は絶望・・・か。」
シン(これで一応オリベイラの動向に納得出来た・・・か。)
ミリア「シュトローム様は・・・今も世界の全てと・・・御自身の破滅を望んでいらっしゃる・・・お願い・・・シュトローム様を・・・解放して差し上げて・・・」
涙を流し、タクト達にオリベイラを止めて欲しいと望む。
シシリー「良いんですか?あなたは今も、彼の事を愛しているのでは?」
ミリア「・・・勿論・・・心からお慕いしているわ。でも・・・だからこそこれ以上・・・彼の方が苦しんでいるのを見たくはないの・・・私では・・・あの方の生きる希望にはなり得ないから・・・」
フェオン(如何なる理由があったとしても・・・愛する人の死を願うのがどれ程辛く悲しい事か・・・)
シン「分かった。約束するよ。俺が、必ずオリベイラを止める。行こう・・・オーグ。」
アウグスト「ああ・・・!!」
トール「あなたももう少しの間、城に身を潜めておいた方が良い。帝都は今完全に包囲されていますから・・・」
ミリア「ええ・・・分かったわ。ありがとう。」
アルティメット・マジシャンズとベルゼが玉座へ向かおうとした時。
ミリア「あなた。」
ナージャ「ん?」
呼び止められたナージャがミリアに顔を向ける。シン達も止まり、ミリアに顔を向ける。
ミリア「ごめんなさい・・・あなたのお兄様を私は・・・」
ナージャ「・・・もう良いのよ。」
優しい笑顔をミリアに見せ、彼女の手を優しく握った。
ナージャ「こうなっちゃったのはあなた達のせいじゃないわ。元凶は、あなた達の人生を狂わせた帝国そのものよ。この戦いが終わったら、あなたはその子と共に解放される。だから、後は私達に任せて。必ずオリベイラ兄さんを止めるわ。」
ミリア「・・・ありがとう・・・」
優しい言葉にミリアは泣いた。
ナージャ「・・・じゃあ行こう。皆。」
シン「ああ。」
デリック「皆。俺達他の魔物を倒しに行く。」
レオナ「私も行くわ。」
ロクサーヌ「私も行く。私の話は戦いの後でね。」
タクト「分かった。」
ケイティ「私も別行動するわ。ナージャ、頑張ってね。」
ナージャ「ありがとうケイティ。」
ケイティ「じゃあね!」
4人は別行動する。
玉座の間へ向かう途中。
タクト「さて、ベルゼ。お前のその痣とミリアから奪ったネックレスは何なんだ?」
ベルゼ「そうだった。忘れてたわ。」
マリア「それって元々あなたの物なの?」
ベルゼ「私のってじゃないけど・・・これを。」
するとベルゼが、持ってるネックレスを口の中に放り込んだ。
全員「!?」
そのネックレスをそのまま飲み込んだ。
マリア「ちょっと!?何してるの!?」
フェオン「お腹壊すわよ!?」
ベルゼ「ウ・・・ウッ・・・!!」
ネックレスを飲み込んだベルゼが苦しむ。
アリス「あわわわわ!ベルゼが窒息しちゃうよ!!今助けるよ!!」
タクト「ん?待てアリス!」
アリス「何で止めるの!?」
タクト「痣を見ろ。」
ベルゼの痣が消えていく。
アリス「え?どう言う事?」
ベルゼ「ヴェェェ!!」
口から黒い塊を吐き出した。
全員「・・・!?」
ベルゼ「ハァ・・・ハァ・・・これで解放されたわ・・・」
トニー「何・・・?この黒い塊は・・・」
グレア「皆、これ毒だよ?」
シン「毒・・・!?」
ベルゼ「実はね私、この帝国で毒薬を飲まされてずっと苦しんでたの。でもようやく解放されてスッキリしたわ。」
タクト「毒を盛られた・・・一体誰に?」
ベルゼ「フードを被った男。顔は見えなかったけど。恐らく私の予知能力を危惧して毒殺しようと企んでたのかも。」
タクト「それで、予知でミリアが解毒薬のネックレスを持ってる事が分かって俺達と共闘してたのか。」
ベルゼ「ご名答♪もうこれであなた達へ向ける敵意は完全に無くなったから安心して。」
改めて玉座の間へ向かう。
シン(オリベイラ・・・お前はあれだけ自分の事を想ってくれる人と、帰りを待っている人が居るのに・・・それでもなお破滅の道を選ぶ事しか出来なかったんだな・・・いや・・・本当に心から愛する存在を失ったとしたら・・・それでも・・・無理はないのか・・・)
不安に駆られるシンに、シシリーが頼もしい言葉を掛ける。
シシリー「シン君。傲慢な言い方になるかも知れませんが・・・私は何時までも、あなたの心の希望であり続けますから!」
シン「・・・・!!」
自分を添い遂げてくれる相手がそこに居る。シンの不安は消え、シシリーに微笑んだ。
アウグスト「さぁ・・・ようやく到着だぞ。最後の目的地・・・玉座の間だ。」
ナージャ「兄さん・・・」
遂に玉座の間が彼らの目の前に。
オリベイラの救出へ向かったアルティメット・マジシャンズ。実体のない存在が自らその正体を明かす。そして帝国に隠されたあり得ない真実を告げられる。