ウルトラマンティガ THE ULTIMATE MAGICIANS 作:naogran
第78話「東方の使者」
世界中を混乱に陥れた魔人オリバー=シュトロームとその配下達。
その脅威と絶望から人々を救ったのは、アールスハイド王国王太子アウグスト率いるアルティメット・マジシャンズ。
そしてその筆頭シン=ウォルフォード。
超古代の巨人ウルトラマンティガの力を受け継いだタクト=クリスティだった。
しかし、その裏で暗躍していたのは、別世界からこの世界に流れ着いた闇の魔術師ドグラ・マグマだった。
彼らはオリバー=シュトロームことオリベイラ=フォン=ストラディウスを救出し、ドグラ・マグマを倒した。
魔人領攻略作戦や各国が力を合わせ戦った最終決戦・・・後に人々はこの戦いを『魔人王戦役』と呼んだ。
その数ヶ月後、世界中を闇に包み込もうと企んだ闇の巫女ヘザーが現れ、大いなる混沌の邪神を生み出した。激闘の末、ウルトラマンティガとウルトラマントリガー、そしてアルティメット・マジシャンズとユエリアンの戦士達に敗れた。
そしてそのヘザーとの戦いから1年半が過ぎたある日。
シルベスタ「あ〜〜〜ん・・・むっ!」
シン「すっかりご飯も1人で食べられる様になったな。偉いぞシルバー。」
シルベスタ「あい!」
シシリー「フフ。」
ウォルフォード夫婦と一緒に居るこの赤ん坊はシルベスタ。愛称はシルバー。嘗て魔人の子を出産する実験として誕生した子だったが、魔人ではなく人間の子として誕生した。今はオリベイラの希望でウォルフォード夫妻に引き取られ幸せな日々を過ごしている。
シシリー「ほら。口にごはん付いてますよ。」
ナプキンでシルバーの口を拭いてあげた。
シルベスタ「まんま!まんま!まんまあ!」
シシリー「あらあら。またママにあーんして欲しくなったんですか?」
シン「はは。シシリーにはまだまだ甘えん坊だなぁ。」
ミリアに対しての想いからか、最初はシシリーにも遠慮が見えたが、今ではすっかりシルベスタの母親になってる。
シシリー「ほーら。パパが寂しそうにシルバーを見てますよ〜〜。」
シルベスタ「ぱぁぱ!」
天使の笑顔でシンを見てパパと呼んだ。
シン(可愛いなぁ・・・!)
幸せな一家団欒の元に英雄マーリンとメリダがやって来た。
メリダ「アンタ達!またそんなにのんびりしてたのかい!」
シン「あ。祖父ちゃん祖母ちゃん。」
メリダ「大事な日に遅刻なんかしちゃ大変だよ!さっさと準備をしな!」
マーリン「ほっほ。メリダの言う通りじゃ。・・・ではその間シルバーはひいじいちゃんが可愛がってやろうかのう!」
シルベスタ「ばぁば!!ばぁばあ!!」
メリダ「おお何だい!シルバーはすっかりひいおばあちゃんっ子になって!」
曽孫を抱いてデレデレのメリダに対し、マーリンは曽孫を取られて涙を流している。
シン「じゃあシルバーは祖母ちゃん達に任せて、俺達も準備しようかシシリー。」
シシリー「はい。何と言っても今日は・・・」
制服に着替えてゲートを潜る。
アールスハイド高等魔法学院・Sクラス。
シン「お。」
ゲートを潜って登校したシンとシシリー。
シン「流石に全員揃っている・・・か?」
アウグスト「シン。」
マリア「おはよー2人共。」
トール「時間ギリギリでしたね。」
アウグスト「フッ。子育てに余程苦戦していると見える。」
シン「遅れたのはシルバーが原因じゃないぞ!ただ・・・その〜〜〜・・・」
シシリー「私達がつい構い過ぎちゃうだけです・・・」
マーク「幸せそうで何よりっス!」
ユーリ「ホントにねぇ。」
シン「そ、それでタクトは?まだ来てないに見えるけど。」
するとゲートが出現し、タクトが現れた。
タクト「悪い悪い。遅れた。」
シン「おはようタクト。」
タクト「皆揃ってるな?いや、アリスがまだか。」
アウグスト「お前もルシアの子育てで忙しそうだな。」
タクト「まぁな。今はフェオンやイザベラや皆が面倒見てくれているから大丈夫だ。」
シシリー「タクト君も幸せそうで何よりです。」
トニー「・・・まあ、それはそれとして・・・」
リン「・・・うん。」
シン「いよいよ卒業式かぁ。」
そう。今日はシン達の卒業式である。
トール「何だかんだあっと言う間でしたね。」
ユリウス「気のせいか、思い出の大部分を魔人が占めてる気がするで御座る。」
シン「言うな言うな。」
タクト「俺なんて思い出の大半は魔人とヘザーが占めてんぞ。」
シン「それも言うな。」
アウグスト「しかし、我々の関係はこれで終わりではない。寧ろより密になっていくだろう。明日から我々はアルティメット・マジシャンズとして・・・本格的に活動を始める。今までは学生と言う身分を考慮して緊急時以外は依頼を受けて来なかったが・・・組織として活動を始める以上、これからは任務をこなすのが日常になるからな。事実、我々の卒業を今か今かと待っていた人間達が世界中に幾らでも居る事だろう。」
マーク「・・・!」
アウグスト「よって今後は遅刻等絶対に許されん。分かったら・・・」
そこにゲートが出現し、アリスが飛び出した。
アリス「だっはあ!!危うく卒業式まで・・・」
シシリー・マリア「あ。」
アリス「あぁ・・・」
ゲートから飛び出したアリスはパジャマのまま。アウグストに怒りの電撃が帯電している。
アウグスト「分かったら5秒で着替えてここに戻って来いアリス=コーナー・・・」
アリス「ひゃっ・・・ひゃいいぃ!!」
タクト「じゃあ俺講堂で待ってるから、お前達の卒業式を目に焼き付けておくからな。」
シン「ああ。」
5秒後に制服に着替えたアリスが戻って来て、担任のアルフレッドが教室に入って来た。
アルフレッド「おーい。そろそろ時間だぞ。」
シン「アルフレッド先生・・・」
アルフレッド「お前達とは取り敢えず今日でお別れか。言っちゃ何だが、他の脅威の何百倍もの重荷を背負わされた気分だが、まあ楽しかったよ。」
マリア「先生・・・」
シン「3年間・・・お世話になりました。」
アルティメット・マジシャンズがアルフレッドに頭を下げて感謝した。
アルフレッド「・・・これから先もお前達には過酷な環境が待ち受けている事だろう。だが一番に守るべきは自分の命。その事だけは忘れるなよ。来年度からは精々楽をさせて貰うよ。お前達みたいなのはもう二度と現れないだろうしな。」
マリア「もう先生ったら・・・」
講堂。アウグストの妹のメイがくしゃみをした。案外すぐやって来る次の脅威と噂されている。
そして卒業式自体は滞りなく進み・・・シン達の高等学院生活は無事幕を下ろした。
卒業式を終えた夜。ウォルフォード邸にて。
マリーカ「卒業おめでとうございます!」
シン「おおっ!すっごい料理!!」
メリダ「料理長のコレルとフェオンが腕によりを掛けて作ってくれたよ。」
フェオン「今日はシンとシシリーの卒業祝いだから沢山作ったわよ!」
コレル「存分にご堪能下さい。」
タクト「改めて、卒業おめでとう!シン!シシリー!」
卒業パーティーは大盛り上がり。
しばらくするとシルベスタに眠気が入り、シシリーがシルベスタを抱えて部屋へ戻って行く。
ルシア『シルバー寝ちゃったね。』
フェオン「そうね。ルシアも眠くなったんじゃない?」
ルシア『うん・・・お母さん・・・眠い・・・』
フェオン「分かったわ。タクト、私はそろそろ戻るわ。」
タクト「ああ。また後でな。」
ルシアを抱えてクリスティ邸へ戻って行った。
メリダ「さぁて・・・シルバーとルシアもねんねの時間だし、ここらでお開きにするかな。」
シン「そうだね。」
メリダ「最後に1つ・・・いいかい?シン。」
シン「ん?」
メリダ「これで学生と言う気楽な身分は終わりだ。これからは社会人として、あんたの全ての行動に責任が問われる。これまでの様に・・・ディセウムや殿下が庇い切れない事も必ず出てくるだろう。改めて1人の人間として気を引き締めて生きて行くんだよ。シルバーが騒動ばっかり起こす恥ずかしい父親だって思われない為にね。」
シン「・・・わ、分かってるって!これでも常識は身に付けて卒業したつもりだよ!」
タクト「んな事言って、頭の中はシルバーの事でいっぱいだろ?」
シン「うぐっ・・・!」
メリダ「それにドグラ・マグマとの戦いで最後に使ったアレを私は忘れてないからね。」
部屋に戻るとシシリーがベッドに座って待っていた。
シン「シルバーは?」
シシリー「ぐっすり寝てますよ。1日バタバタしてて疲れたんだと思います。」
彼女の隣にシンが座る。
シン「オリベイラとシルバーの事で色々あったけど、これで晴れて学院を卒業して・・・ようやく俺達も新婚らしい生活を送れるかな・・・」
シシリー「・・・そうですね。私ちゃんと覚えてますよ。魔人との決戦前のデートの時・・・シン君が言ってくれた事。」
シン「・・・あ。」
『決戦が終わって、無事世界に平和が戻ったら今度こそ結婚式を挙げて・・・それから・・・俺達も幸せな家庭を築いていこう。』
デートの時に言ったあの言葉を思い出したシン。
シシリー「シルバーの事も勿論愛してますけど・・・いずれはやっぱり私、シン君との・・・その・・・」
シン「シ・・・」
シシリー「シ・・・」
2人が言おうとしたその時。
”ジリリリリ”
シン・シシリー「ッ!?」
部屋に置いてある無線通信機の着信音が鳴り響いた。
シン「だ・・・誰だよこんな深夜に・・・」
シシリー「丁度・・・0時を過ぎたタイミングですね・・・」
『明日から我々は・・・』
シン「・・・・まさか。」
通信元が誰かなのか理解して通信に出た。
シン「・・・よう。大義名分は出来たかよ。オーグ。」
アウグスト『スマンな深夜に。だがこの時間から我々の任務はスタートしたぞ。』
シン「だぁからってこんな時間に・・・!!」
アウグスト『まあ何も今から出勤しろとは言わん。ただ一刻も早く伝えねばならんのは事実でな。緊急の用件だ。だが内容はすぐには説明出来ん。明日の朝1番に王城に来てくれ。』
シン「・・・・・気になるな。何が起きた?」
アウグスト『兎に角明日だ。横にいる
通信終了。
シン「だそうだ。緊急と言う割に集合は明日。前々から抱えてた案件だなさては・・・」
シシリー「きっちり時間を遵守する辺り殿下らしいと言うか何と言うか・・・今晩は・・・早めに休んだ方が良さそうですねシン君。」
アウグスト(・・・オーグのバカ野郎・・・)
翌朝。アールスハイド王城にシンとシシリーが訪れた。
シン「入るぞオーグ。」
アウグストの部屋に入ると、他の皆が既に来ていた。
シン「あれ!?何だ皆集合してんじゃん。まさか全員夜中に呼び出し食らったのかよ。」
マリア「私んトコはトールからね。謝ってたけど。組織の稼働開始0秒から仕事入るとは夢にも思わなかったわ。」
アリス「私なんか実際夢の中にいたのに・・・ねむ・・・」
リン「でも遅刻しないだけ昨日のアリスよりはマシ。」
トニー「結婚式の段取り決める予定だったんだけど、こりゃ延期かなぁ?」
マーク「ウチも同じっス。」
シン「あれ?タクト、今回カサンドラと一緒なのか?」
タクト「付き人としてレナードを呼んだんだが、アイツ今騎士団の訓練に参加してるから、カサンドラを代わりに付き人として連れて来てる。」
カサンドラ「タクトがアウグストからの呼び出しって聞いたので興味があります。」
シシリー「フェオンさん達はお留守番ですか?」
タクト「ああ。しばらくゆっくり休ませてあげようと思ってな。んでオーグ。俺達を呼んだ理由は何だ?」
アウグスト「ああ。全員集まったな。まずはタクト以外全員着替えて貰う。アルティメット・マジシャンズの新たな制服だ。」
タクトを除いた全員が新しい制服に着替えた。用意した制服は、今までの戦闘服と色合いは似ている。ネクタイも用意されてる。
アウグスト「今後依頼主との話し合いの場合に戦闘服で出向く訳にはいかんからな。まだ魔法付与はされていないから。悪いがシン、タクト。後で頼む。」
マリア「おお!良いじゃん良いじゃん!」
アリス「何か大人の女って感じ!?」
ユリウス「これまでと比べると少し窮屈で御座るな。」
トール「まあ礼装を兼ねていますからね。」
シン「すぐ慣れるだろ。」
タクト「新しい制服。皆似合ってるな。」
マリア「何時だったか殿下が言ってた卒業後の特殊部隊の話・・・いよいよ始まるのね。」
アウグスト「準備は良いか?出発するぞ。恐らくタクトやお前達は誰も行った事がないだろうから、私がゲートを開く。」
すぐにゲートを展開した。
シン「そう言やまだ仕事内容聞いてないぞ。」
シシリー「何処へ向かうんですか?殿下。」
アウグスト「魔人領攻略作戦に於いて結成された連合国の1つ・・・」
ゲートを潜って着いた場所。そこは・・・
男性客人「ホンマに!?これそんなにすんの!?冗談やろ!?そら高いわ!まけてェな!」
商人A「いやいやそら殺生やでおっちゃん。ウチもギリギリでやらして貰ってんねんで?」
女性客人「兄さん商売人としての度量見してやー?もうちょっとイケるんちゃうの?」
商人B「コイツはそんじょそこらじゃ手に入らん一品やさかい!今回逃したら二度とお目に掛かれん事間違い無しや!」
商人C「今回限りのセール品やでー!寄ってったってやー!」
シン「活気あんなぁ・・・ここがエルスか・・・」
カサンドラ「エルス初めて来ましたけど、凄い賑やかですね。」
タクト(ってか国民皆関西弁使ってるな。)
アウグスト「魔人領再開発の件では、必要な資材等はその殆どをエルスに一任しているからな。国の内外問わず、エルスの商人達は今最も活発に仕事に当たっているはずだ。」
用意されてる馬車にそれぞれ乗り込んで出発した。
アウグスト「ここからは馬車で大統領府に向かう。」
マリア「エルスの大統領って言えば・・・」
シン「アーロンさんだな。」
タクト「マーリン様やメリダ様の元お弟子さんだな。」
カサンドラ「アウグスト。依頼主はもしかして・・・」
アウグスト「ああ。想像通りだ。」
シン「今回の用件は大統領からの正式な依頼って事か。大事だな・・・」
アウグスト「今後の予定になるが、近い内に各国から数名、我々の本部〈ウォルフォード商会の最上階〉に事務員が派遣される事になっている。我々がクリーンな組織であると証明する為・・・まあ平たく言えば監視員だが。彼らが着任して初めて正式な組織の稼働とするつもりであったが、それを待たずしてアーロン大統領から直接の依頼が来てしまった・・・と言う訳だ。とは言え、タイミング的に見てもアーロン大統領は我々に配慮して卒業を待っていてくれたのだろう。彼自身、国民から選ばれた代表であるが故に周囲からの
シン(アーロンさん・・・配慮したのは祖母ちゃんに・・・ではないと信じよう。)
マリア「事務員の派遣って、連合国からですか?」
アウグスト「ああ。」
シン「連合国・・・ダームからもか?」
アウグスト「・・・まあな。」
マリア「ダームってクーデターが起きて王政が撤廃されたのよね。『ダーム共和国』に改名されたんだっけ。」
シン(バイブレーションソード演習の時の・・・)
タクト「なあオーグ。お前ヒイロに会った事は?」
アウグスト「まだない。まあ何れは・・・顔を合わせる事になるだろうが。」
シシリー「国の運営自体は上手く出来ているんですか?」
カサンドラ「それなんですが、君主制から民主制に移行してから、ダームは貴族制度を撤廃して一般市民から議員を選出する政治形態にシフトしたと。けど街や国を治めるノウハウを持たない若者達に政治を任せた所で国が上手く回るはずがないと。ですよね?オーグ。」
アウグスト「ああ。カサンドラの言う通りだ。議員と商人の間では賄賂が横行。それ所か、議員の息が掛かった犯罪組織まであると言う噂だ。」
タクト「随分と堕ちたもんだなダームは。」
アウグスト(国家としてみれば最悪と言わざるを得ないが・・・運営資金自体を犯罪によって賄い国のトップがそれを吸い上げているとすれば・・・ある意味為政者だけは国を好きに操れる状態にあるとも言える。まるでブルースフィアだ。)
シン(民主制への移行は前世の歴史から見ても珍しい事ではないけど・・・その際は元支配階級の人間も一部政府に残しておくものじゃないのか?素人ばかりで国家の運営なんて誰の目から見ても・・・)
マリア「何か・・・試行錯誤してるって言うよりも。」
シシリー「とても国民を想って政治を行なっている様には見えませんよね。」
タクト「自分達に多額の利益が手に入ればそれで良いと考えている連中で構成されているかもな。」
アウグスト「率直に私が感じた感想を言おうか?ヒイロ=カートゥーンは・・・まるで国を使って遊んでいる様にしか見えん。」
大統領府に到着した。
大臣「お待ちしておりましたアウグスト殿下。そしてアルティメット・マジシャンズの皆様。」
カサンドラ「これが大統領府・・・初めて見ました・・・」
タクト「何だ?気になるのか?」
カサンドラ「はい!」
1人の大臣に案内された場所は、会議室。
アーロン「おおアウグスト殿下にシン君にタクト君!皆さんも忙しい中よぉ来てくれたな!」
会議室に入るとアーロンが居た。
シン「お久し振りですアーロンさ・・・大統領。」
アーロン「アーロンさんでかまへんで。狭い会議室でスマンがテキトーに掛けてくれ。」
カサンドラ「・・・」
1人内装を見てるカサンドラにタクトが。
タクト「なぁアーロン。カサンドラを散歩させてくれないか?どうやら大統領府に興味があるらしくて。」
アーロン「そうなんか?ああかまへんで。」
タクト「カサンドラ、しばらく遊んで来い。」
カサンドラ「え?良いんですか?ではしばらくの間お暇しますね。」
1人大統領府の散歩へ出掛けたカサンドラ。
タクト「さてアーロン。話を戻してくれ。」
アーロン「せやな。今回は俺個人の依頼ではなく、エルスの代表としての要請や。ここからはおフザケなしで話すわ。」
それぞれが席に座ってアーロンの依頼を聞く。
アーロン「さてまず皆さん方に、1つ聞いておきたいんやが。エルスの東側・・・つまり一般に出回っている世界地図の右端から先に何があるかはご存知か?」
世界地図の右端から先。その話に全員はそれぞれ顔を合わせる。
シン(学院で少しその事も習ったな・・・)
タクト「確か険しい山脈が広がって、その先には前人未到の広大な砂漠があるって噂だが。」
マリア「その先には何があるかはまだ分かっていないって話よね?」
アーロン「その通りや。けど、それは事実ではないねん。その先にあるもの・・・実はエルスの一部の人間だけは知っとんねや。」
マリア「え・・・!?」
シン(初耳だな・・・)
アーロン「大砂漠を超えた先・・・そこには、今も人が暮らす国があるんや。」
全員「!?」
アーロン「昔から何年か一度、砂漠と山脈を越えてエルスにまで辿り着く人間はおったんや。マトモに歩けば1年は掛かる様な険しく厳しい道のりやさかい。辿り着いた人間の何十倍もの人間が行き倒れたに違いあらへん。」
トール「知ってましたか?そんな情報。」
トニー「いやぁ、全くだねぇ。」
アーロン「そらそうや。どことも国交を持ってへん国・・・交易を独占する為に徹底してエルスが情報統制敷いとったからな。」
シン(成る程それで・・・ん?でもそれって向こうからすると・・・)
アーロン「本来ならこの先も漏らしたくなかった情報やが・・・そうも言ってられへんくなってな。何としてでもあちらさんと交易をせなばならん理由が出来た。」
シン「理由・・・ですか?」
アーロン「ああ。こっから先は
シン(当人?まさか・・・!?)
大臣がその当人をお連れした。
アーロン「紹介するで。遠き東方の国『クワンロン』から来た、ミン=シャオリンさんとリーファンさんや。」
女性の名はミン=シャオリン。小柄で、黒く長い髪を独特な形で編んでいる。アールスハイド周辺の人間に比べて彫りが浅く、前世でいう東洋人っぽい顔立ちをしていた。
そして続いて入ってきたのは男性。彼の名はリーファン。大柄で、筋骨隆々。同じく黒い髪を、後ろで三つ編みにしている。彼も東洋人っぽい。
シャオリン「初めまして。」
アウグスト「ああ。我々はアーロン大統領の要請でここへ来たアールスハイドの特殊部隊・・・」
シャオリン「アルティメット・マジシャンズですね。噂には聞いています。とても・・・お強いのだとか。」
シン「噂ってまさか・・・クワンロンで!?」
シャオリン「あ、いえ。失礼致しました。噂を耳にしたのはここエルスで、です。正確なこちらの言語を学ぶ為に半年程滞在しておりましたので。」
タクト「半年もエルスに?」
シャオリン「元々我々の国にもこちら側の言語はある程度伝わってはいたので、幼い頃より学んではいたのですが。なにぶんこの国の言語は想定していたものと
シン「ああ!」
シャオリン「習得に苦労しましたんやで・・・あ!したん・・・です。」
エルス訛りで喋ってしまい、すぐ標準語に修正した。
マリア(な、何だか可愛らしい子じゃない。私達とはやっぱり少し雰囲気違うけど・・・)
シン(つーか想ったんだが、辿り着いた国がエルス以外だったら、クワンロンの人達随分事情が変わってたんじゃ・・・)
アーロン「ミンさん。交渉は後で幾らでも出来るさかい。まずは事情を説明してもろても?」
シャオリン「分かりました。改めまして・・・ミン=シャオリンと申します。こちらはリーファン。私達はクワンロンの商人です。私達が命をを懸けてここへ来た理由・・・それは、エルスとの交易が出来なければ、私達の家が滅んでしまうからです。」
アリス「・・・!?」
トール「滅ぶって・・・!?」
シン(おいおい、いきなり物騒は話が出て来たな。)
タクト「理由を聞こうか。」
シャオリン「はい、皆さんこれをご覧下さい。私達が扱っている商品です。」
布に包まれてる商品をテーブルの上に置いた。
シン「・・・!?これは・・・皮・・・鱗か?」
アリス「見た事ある?こんなの・・・」
シン「爬虫類の角鱗にしては・・・デカ過ぎるよな・・・」
タクト「何の物体だ?これは・・・」
赫色の鱗らしき物体。これは一体何なのか。
アリス「魔物化した大蜥蜴の皮・・・とか?」
ユリウス「こんな巨大なサイズのトカゲはいないで御座る。」
マリア「いやホラ、魔人領入った時に戦ったみたいな・・・」
シン「あれは魔人が造った特殊個体で自然界にはまずいないだろう。」
タクト「なぁ、触っても良いか?」
シャオリン「どうぞ。」
鱗らしき物体を触ってみる。途中で軽く叩いてみる。
タクト「結構硬いな。」
アーロン「あーーー・・・相談中に申し訳ないが、諸君。”分からない”が正解や。この生物は
シン「え?アーロンさんもこの生物を見た事が?」
アーロン「うーん・・・しもたな。そこの説明が必要になるんやったな・・・シン君。コイツはな・・・嘗てオヤッさんとお師匠さんの・・・息子の命を奪った生物なんや。」
全員「!?」
タクト「マーリンとメリダの息子の命・・・まさか!!」
シン「・・・教えて下さいアーロンさん。コイツの正体を・・・」
アーロン「結論から言おか。これは『竜鱗』や!」
赫色の物体の正体は、竜の鱗だった。
シン「りゅ・・・竜ぅぅ!?龍が存在すんのぉーーーー!?」
タクト「って事は、2人の息子のスレインを殺した竜の・・・」
アーロン「ああ。竜の魔物や。」
シン「以前タクトを探しに行ったアストラルと同じって事か・・・?」
マリア「え・・・!?マジなの・・・!?賢者様達の伝記には・・・敢えて物語性を出す為に『竜』と言う表記になってたとばかり・・・」
アリス「ホ・・・ホントに他にも竜が存在するの・・・?」
シャオリン「いますよクワンロンには。幾らでも。」
アーロン「これは単なる予測やが、昔俺らの見た竜は、恐らく何かの間違いでこっちの世界に迷い込んで来てしまった個体なんやと思う。実際問題その後、こっちで竜を見たなんて情報はあらへんしな。おっと・・・随分話が脱線してすまんなミンさん。」
シャオリン「いえ。竜が存在しない世界の人からしたら当然の反応です。私達が取り扱っているのがこれら竜の鱗や皮・・・牙などです。捕獲や加工が困難故に高級品ではありますが、決して珍しいモノではありません。」
タクト「エルスとの交易で取り扱いたいのが竜の素材なのは分かったが、出来なければ家が滅ぶってどう言う事だ?」
シャオリン「・・・理由あって竜の素材がクワンロンで売買出来なくなりました。つまりこちらの国々と交易を行えなければ・・・我が家所か、その道を生業とするクワンロンの商人達は衰退の一途を辿るのみ・・・」
アーロン「こっちからしてもクワンロンとの交易が可能になれば、竜の素材を世界に流通させる事が出来る。こんなデカイ取引・・・見逃す手はないやろ?」
シン「・・・・・・」
アウグスト「つまる所我々に依頼したい内容と言うのは・・・」
アリス「まさか空を飛んでクワンロンまで行けと!?1年掛かる距離を・・・!?」
アーロン「ちゃうちゃう!」
ゲートを使って移送と言う案を考えていたのだが断念した。
アーロン「流石に多忙な君らにそんなコトは頼めへん。ので!!君らに依頼したいのは!!クワンロンまで辿り着ける
アルティメット・マジシャンズ「・・・・はいぃぃぃぃっ!?」
依頼内容は、クワンロンとエルスを行き来出来る空飛ぶ乗り物の制作だった。
アリス「飛ぶ!?乗り物が!?どうやって!?」
トール「いやだからそれを我々が・・・」
マリア「りゅ・・・竜の存在よりビックリだわ・・・!!」
アーロン「君ら自身空は飛べるし、何よりシン君とタクト君は魔道具界の異端児や!やってやれん事ないと俺は見とるんやが・・・どうや!?」
シン(オーグ・・・お前依頼内容は全部聞いていたのか?)
アウグスト(
シン(・・・タクト。)
タクト(ああ。)
お互いを見て頷いた2人。
シン「少し考える時間を下さい。」
アーロン「勿論や。一月程あれば結論出せそうか?」
タクト「いや、1分で充分だ。」
アーロン「1分!?」
タクト・シン「・・・・・・・」
シン(前世で実現しろって言われたら相当な知識と技術・・・時間が必要になるけど・・・)
タクト(俺の前世ではガッツウイングを何度も見ているが、流石にその技術は持ってないし開発出来ない。)
シン(魔法が応用出来るこの世界なら・・・離着陸は浮遊魔法で・・・)
タクト(そして姿勢維持の為の翼・・・方向転換を可能にするには翼にフラップを取り付ければ・・・)
シャオリン(まさか・・・本当にその様な物が・・・)
1分も経たずに、タクトとシンが結論を決めた。
シン「分かりました。今ここで完成までの保証は出来ませんが、引き受けましょう!」
タクト「クワンロンの為だ。一肌脱ごうか。」
シャオリン・リーファン「!!」
アーロン「ホンマかいな2人共!!いやぁ流石や!!こりゃあ夢が広がってきたわ!!材料調達や建造は勿論ウチでやるさかい!早速設計の方に・・・」
アウグスト「大統領!アーロン大統領!」
興奮するアーロンをアウグストが止めた。
アウグスト「それを造るに当たって守って頂かねばならない公約が幾つか出てきます。まずは詳細を公式文書にして頂けますか?」
アーロン「おおそらそうやな!ちょっと待っとき!官僚達に声掛けて来るわ!」
マリア「お・・・鬼の様なスピードで話が進んでくわね・・・」
トニー「流石エルス・・・」
トール「殿下が居なければ今日中にでも施工に掛かりそうな勢いですね・・・」
リーファン「・・・シャオリンお嬢様。あの件は。」
シャオリン「あ、そうでした。皆さん。もう1つ相談がありまして。」
シン「え?また何か依頼が?」
シャオリン「人探しです。」
マリア「人探し?」
シャオリン「はい。この似顔絵の人物を探しているんです。」
1枚の古びた似顔絵を皆に見せた。その似顔絵は、猫耳が生えてる少女だった。
タクト「古びてるが、鮮明に見えるな。」
シン「猫耳の少女・・・獣人か?」
タクト「・・・あれ?これって・・・カサンドラ?」
全員「え!?」
するとその時、会議室にカサンドラが戻って来た。
カサンドラ「いやぁ色んなお部屋があって興味深かったです〜!」
タクト「ああお帰りカサンドラ。」
カサンドラ「あら?お客ですか?」
タクト「ああ。クワンロンと言う東の国から来たシャオリンとリーファンだ。」
カサンドラ「へぇ〜クワンロン。初めて聞く国名ですね。」
シャオリン「・・・!」
リーファン「お嬢様・・・!」
シャオリン「ええ・・・!」
カサンドラを見たシャオリンとリーファンが驚いてる。
シャオリン「あなた・・・」
カサンドラ「はい?」
シャオリン「あなたもしかして・・・ゲルダですか!?」
カサンドラ「・・・はい?」
シン「ゲ、ゲルダ?」
カサンドラ「え?何?ゲルダって何ですか?」
タクト「カサンドラ。どうやらこの2人、お前を探してるみたいなんだ。似顔絵だってあるぞ。」
猫耳の少女の似顔絵をカサンドラに見せた。
カサンドラ「・・・これって私ですか?」
シャオリン「間違いないわ・・・ようやく出会えたのね・・・」
突然シャオリンが涙を流した。
カサンドラ「え、だ、大丈夫ですか!?」
タクト「シャオリン。すまないが、カサンドラは記憶喪失なんだ。」
シャオリン「え・・・?」
タクト「だから自分の過去が思い出せないんだ。」
シャオリン「そ・・・そうですか・・・ごめんなさい、何も知らず・・・」
カサンドラ「いえ、気にしないで下さい。」
シャオリン「・・・・」
アウグスト「私はこれから官僚達と話し合いに入る。皆は少し休憩しておけ。」
リーファン「シャオリンお嬢様・・・この者達ならば・・・もしや・・・」
シャオリン「・・・・」
来客用の部屋で休憩。
マリア「ふぃーーーー。何だか現実離れした話ばっかで頭ついてかないわ。」
ユーリ「未開の国に竜に空飛ぶ乗り物・・・だものねぇ。」
リン「完全にファンタジー小説の世界。」
アリス「それにあの2人、カサンドラを知ってるようだし・・・」
マリア「シャオリンさん達は?折角だから色々話を聞こうと思ったんだけど・・・」
オリビア「そう言えば・・・」
マリア「あれ?シンとシシリーとタクトとカサンドラも居ないじゃん。」
オリビア「?」
当の4人は、廊下でシャオリンとリーファンに会っていた。
シン「俺達に話って・・・さっきの件以外にまだ何かあるんですか?シャオリンさん。」
タクト「カサンドラの話ならさっき・・・」
シャオリン「シン=ウォルフォード殿。タクト=クリスティ殿。こちらに来て半年・・・貴殿らの話を耳にしない日はありません。治癒能力に関しても右に出る者は居ないとか・・・本来であれば貴殿らにお願いしたい所なのですが・・・もし可能であるなら、高名な女性の治癒師を紹介していただけないか・・・と・・・」
シシリー(・・・何でシン君とタクト君じゃ・・・それに・・・女性の・・・?)
タクト「治癒師。エルスとの交易に関係ない話だが、別の事情がありそうだな。話してくれ。」
シャオリン「・・・姉を・・・私の姉の病気を・・・治して欲しいのです。」
タクト(病気・・・それに治癒に女性を希望すると言う事は・・・恐らく女性特有の・・・これは・・・)
シン「・・・シャオリンさん。俺は自分とタクトと同等に治療に長けた女性を知っています。」
シャオリン「ほ・・・本当ですか!?それは一体・・・」
シン「シシリー=ウォルフォード。隣に居る俺の妻です。」
隣に立ってるシシリーをシャオリンに紹介した。
シャオリン・リーファン「!!」
シン「聖女の話をこちらの世界で聞いた事は?」
シャオリン「あ・・・あります!えっと・・・アールスハイドで・・・治癒に特化した能力を持つ女性が居る・・・と・・・」
カサンドラ「それが彼女シシリーです。シャオリン。」
シャオリン「・・・な・・・何と・・・」
シン「ただ・・・治療可能かどうかはまだ断言出来ません。出来るだけ詳しい事情を聞かせて貰えますか?」
しやおりん「わ・・・分かりました・・・」
自身の姉の病気を詳しく4人に話した。
シン「成る程・・・」
タクト「現状病気の進行はどうなってる?どの様な対処を?」
シャオリン「えっと・・・あ・・・リーファン。」
リーファン「コレですね。」
懐から1枚の札を出して4人に見せた。その札には、漢字らしき4文字が書かれてある。
タクト「呪符だな。」
シャオリン「その通りです。私達の国ではコレを用いて魔術を使います。」
シン(こっちにはない技術だな・・・どう言う原理なんだろ・・・魔法付与された札・・・とはまた違うのか?)
シャオリン「因みに『病気治癒』と書かれています。これによって一時的に病気の進行を遅らせています。」
シシリー「へぇ。書体は複雑だけど、文字数はこちらの世界より随分少ないんですね。・・・何だかシン君の付与する文字に少し似てますね。」
シン「え!?」
シャオリン「え?」
ビックリしたシンとは対照的に、シャオリンとリーファンの反応は薄い。
タクト(何だ?今の2人の反応?)
シシリー(あれ?私何か・・・言っちゃいました?)
シン「と・・・兎も角!魔法・・・いや魔術的要素が効くと言う事はまだ希望はあります。俺とシシリーに取り敢えず任せて下さい。」
シャオリン「本当ですか!?よ・・・宜しくお願いします・・・!!」
タクト「シシリー。もしサポートが必要だったらヒナを就かせようか?」
シシリー「ありがとうございますタクト君。ご検討させて下さい。」
カサンドラ「あ。あなた、私の事ゲルダって言ってましたよね?どうして私の名前を?」
シャオリン「あ、それは・・・」
アーロン「あー!こんなトコにおったかシン君!タクト君!」
理由を話そうとした時、丁度アーロンがタクトとシンを見付けて声を掛けた。
タクト「アーロン?」
アーロン「公式文書の概要は大体纏まったで!さあ次は設計の打ち合わせ!!」
タクト「もう終わったの!?早。」
シン「げ・・・元気ですねアーロンさん・・・」
アーロン「当然や!儲け話を目の前にして二の足踏むのは二流のやる事や!」
シン「あっ・・・とシシリー。」
シシリー「はい。」
シン「シャオリンさんのお姉さんの病気だけど、相当厄介な
シシリー「勿論です!お願いしますシン君!」
タクト「頼りにしてるぜ。聖女様。」
2人はアーロンに連れられて行った。
シャオリン「”聖女”シシリー殿。姉は・・・我々の商会の会頭です。姉が居なくなってしまったら・・・私・・・は・・・私達は・・・」
感謝を言おうにも泣きじゃくって上手く言えない。
シシリー「大丈夫。必ず私達が助けます。信じて下さい!」
泣きじゃくるシャオリンを慰める。
カサンドラ「シャオリン。私の秘密はまた今度お伺いしますね。」
2人はシャオリンとリーファンに別れを告げて行った。
シャオリン「・・・」
リーファン「お嬢様。あのウォルフォードと言う男・・・」
シャオリン「リーファン。今優先すべきは・・・交易の実現の姉の治療。そうでしょう?」
リーファン「・・・は。」
それから3ヶ月後。
シン「飛行艇が完成した!?」
タクト「早いなもう。」
アウグスト「後は魔法付与すれば試運転が可能になるだろう。まあ今回は全員で出向く必要もあるまい。」
エルスへ向かうのはタクト、フェオン、ルシア、イザベラ、ヒナ、カサンドラ、シン、シシリー、アウグスト、マーリン、メリダ、リチャード、レイチェルの13人。
エルス自由商業連合国の王城にゲートが出現した。
アーロン「お。来よったな2人共。さあさあ早速付与の方を・・・げぇっ!!?」
ゲートからメリダが現れ驚愕した。
アーロン「んな・・・何で・・・」
メリダ「何だい小僧。私が来た事に文句あるのかい?」
アーロン「めめ滅相もございません!」
リチャード「分かり易く動揺しているな相変わらず。」
レイチェル「余程メリダが怖いのですね。アーロン。」
アーロン「そ、それは・・・」
メリダ「大層な物が出来たって言うから見に来てやっただけだよ。文句言いに来たんじゃないから安心しな。(ま、後で忠告すべき事はあるがね。)」
マーリン「ホレ、アーロン。案内を頼むぞ。」
アーロン「は!はい!どうぞこちらへ!」
案内された場所は、巨大な倉庫。
シン「・・・お・・・おおお!」
タクト「これは・・・!」
倉庫に入ると、クジラを模った巨大な飛行艇が鎮座していた。
アーロン「リクエスト通り頑丈さを最優先に考えて造ってもろた。矢や砲撃程度じゃビクともせぇへんし、気圧で扉や窓が吹っ飛ぶ事もまずあらへん。収容人数は最大で40名程度。数日位なら上空で生活出来る設備は最低限整っとる。」
フェオン「凄い物を作ったのね。」
イザベラ「噂だと空を飛ぶとか何とか。」
ヒナ「タクトさんとシンさんの設計が活かされていますね。」
アーロン「その代わり重量は相当のモンやで。」
タクト「まあ浮遊はシンの魔法で行うから問題無いな。」
シン「でも天候や風には左右されますけど、速度もそこそこ出せると思うし。」
シルベスタ「おーーーーーー!おふね!おっきいおふね!」
飛行艇を見たシルベスタが大きな声を上げた。
アーロン「わはは!シルバー君も気に入ってくれた様やな!」
シシリー「『ひこうてい』って言うらしいですよシルバー。」
シルベスタ「しこーてい!」
ルシア「こんなおっきいお船初めて見た・・・」
カサンドラ「私も初めて見ました・・・」
タクト「さてとシン。始めるか。」
シン「OK。パパッと付与しちゃいますか。」
2人は異空間収納から付与するステッキを出した。そこにシャオリンとリーファンが来た。
シャオリン「シン殿。タクト殿。」
シン「シャオリンさん。リーファンさん。」
シャオリン「『魔法付与』と言うもの・・・我々も見学させて頂いても?」
シン「・・・ええ。俺は構いませんよ。」
タクト「存分に見てくれ。」
早速飛行艇に付与を施す。
シン「これだけデカいんで大掛かりに思えるでしょうけど・・・実際に動かす為の付与は2箇所のみです。」
タクト「船全体に浮遊の魔法を施そう。」
2人は飛行艇に付与を施す。シンは『浮遊』。タクトは浮遊を篆書体風にして付与する。
シャオリン・リーファン「・・・・・」
2人の付与魔法を見て何かを感じた。
タクト「後は空気の噴射口に空気噴射を付与。」
噴射口にも付与を施した。
アーロン「主翼と尾翼は操縦桿の操作で動かせるんやったな。」
シン「ええ。色々とコツがいりますが、操縦自体は極めてシンプルに出来ますよ。」
アーロン「よっしゃあ早速試運転や!!どれ、いっちょう俺が操縦を・・・」
アウグスト「大統領!操縦者はエルスで選抜して頂いているし、最初はシンが試す約束です。」
アーロン「ガーーーン!」
飛行艇をレールで運び、倉庫の外に出した。
シン「さて・・・と。」
背鰭部分がコックピットになっている。
シン「浮遊魔法。起動。」
浮遊魔法を流し入れる。
外では、飛行艇に魔力が巡回し始めた。
職人A「お、動き始めたぞーーーー!」
飛行艇がゆっくりと地面を離れて行く。
職人B「おおお・・・!」
飛行艇の初飛行。エルスの上空を飛んで行く。
職人A「し・・・信じられん・・・!」
職人B「本当にあんな巨大なものが・・・!」
飛んで行く飛行艇にこの場に居る全員が驚愕した。
飛行艇内。
アーロン「わははははは!浮いとる!ホンマに浮いとる!」
飛行艇の姿を驚愕したのは、職人達だけではなかった。
国民A「な・・・何やあれ・・・!?」
国民B「巨大な・・・鳥・・・!?」
国民C「いや・・・魚・・・!?」
エルスの国民達も同じように驚愕している。
飛行艇内。
シルベスタ「あぃさん!あぃさん!」
アーロン「ははは!そや!人がアリんこの様にちっさく見えるやろ!」
ルシア「凄い!私達飛んでるよ!」
フェオン「凄いわね!ねえイザベラ!」
イザベラ「うん!タクトさんの魔道具と違って壮大だよ!」
シン(浮遊魔法を掛けている以上、墜落の心配はまずない。まあそれでも慎重に。)
タクト「シン。」
シン「ああ。続いて空気噴射。水平移動に移ります。今回は俺が同時に行いますが、本番では2人で役割を分けて起動して下さい。」
タクト「方向転換と角度調整はこのレバーで出来る。」
操縦方法を2人の操縦士に教え込む。
しばらく教え込んだ後。
タクト「じゃあここらで操縦を代わろうか。」
操縦士A「っ!了解です。」
操縦士B「現在位置・・・クルト上空を通過中・・・間もなく元ブルースフィアの領地へ入ります。」
窓の下を見ると、ブルースフィア帝国の跡地が見えた。
シン「魔人領・・・か。」
タクト「かれこれ2年振りか。」
メインデッキを出て通路を歩いていると。
シシリー「流石に速いですねシン君。」
シン「シシリー。」
フェオン「教えは終わったの?」
タクト「ようフェオン。今終わった。」
シン「あれ?シルバーとルシアは?」
シシリー「お義祖母様達とヒナさんが預かってくれてます。」
シン「そうか。」
タクト「皆見ろ!帝都が見えたぞ!」
シン「え?」
窓の外に元ブルースフィア帝国の帝都が見えた。
タクト「あれがドグラ・マグマが建国した架空の国とは思えないな。」
シシリー「・・・シン君。いつかシルバーに・・・本当の事を・・・」
シン「?」
シシリー「・・・ごめんなさい。何でも・・・ないです。」
シン(俺達がどう取り繕うと・・・何れは必ず気付いてしまう日は来る。大事なのはそうなった時に・・・俺達がちゃんとシルバーに信頼される親であれるかどうか・・・)
別の場所では、リーファンが体調を崩してる。
シャオリン「リーファン?まさか酔ってるの?」
リーファンがまさかの乗り物酔いを起こしている。
初航行を終え、飛行艇がエルスの倉庫にゆっくりと着陸した。全員が降りる中。
メリダ「アーロン。ちょっと良いかい?」
アーロン「はっ!」
怒られるかも知れないと思ったアーロンだが。
メリダ「そう緊張すんじゃないよ。今回の件・・・もしエルスの利益のみの話だったら私は反対したけど、人助けが絡んでるじゃとやかく言う気はないさね。ただ1つだけ。アンタも知ってる様に、シンの奴は簡単にこんな大それた発明をしてしまう。タクトも同じさ。
アーロン「確かに・・・問い合わせて来る商人が沸いて出て来るでしょうな・・・」
メリダ「そこまでは最初から予想の付く事だ。ただこの先・・・もし実際に依頼人が現れた場合、必ず今回と同様に慎重な競技を通した上で話を進めるんだよ。シンとタクトの発明を悪用させない為と言うのは勿論だけど・・・技術自体を盗まれたり他国に大金で売ろうとする輩も現れかねない。分かるね?」
その言葉を全て聞いたアーロンが首を縦に振って肯定した。
アーロン「仰る通り、そう言った話は全て俺を通す様言ってありますんで。心配せんといて下さいお師匠さん。それに『浮力』とか言う概念シン君とタクト君以外に理解できへんでしょどうせ。」
メリダ「・・・人類が到達出来ない国すらあったんだ。シンとタクトと同じ思考力を持った人間が・・・絶対居ないと果たして言い切れるかねぇ・・・」
飛行艇を降りたシャオリンとリーファンの方は。
シャオリン「調子はどう?」
リーファン「もう大丈夫です。情けない姿をお見せしました。」
乗り物酔いが治った。
リーファン「気付きましたか。シン殿とタクト殿の付与文字。」
シャオリン「ええ。我が国に古くから伝わる古代文字によく似ていたわ。」
リーファン「何故そんな文字を西方の国出身であるあの男達が・・・?」
シャオリン「タクト殿の生い立ちは不明だけど、シン殿の生い立ちを綴った書物を読んだけど・・・彼らの生まれも育ちもこちら側・・・」
リーファン「少なくとも彼らにクワンロンとの接点は無い・・・と?」
シャオリン「前にも言った様にそれを問いただすタイミングは今じゃない・・・けど、事は慎重に・・・進めましょう。万が一の時は・・・」
数日後。クワンロンの出発当日が訪れた。
アウグスト「搭乗員は我々16名に加え、ユエリアンから6名。シャオリン氏・リーファン氏の2名。エルスの商人と役人が7名。操縦士が交代要員含め4名。諸々の世話係や護衛等を担当するエルスの軍人が10名。計45名だな。」
マリア「それにしてもすっごいわね!これが空を飛ぶの?」
アリス「はえー。」
レベッカ「飛行艇・・・どんな感じなのか楽しみです!」
マーク「正直俺もすっげーワクワクしてるっス!」
レア「あれが噂の飛行艇って奴か!」
アンナ「あんな大きな物が飛ぶなんて信じられない・・・」
カサンドラ「クワンロン、どんな国なのか緊張しますね。」
ナージャ「ええ。私もどんな所なのか見当も付かないわ。」
その中には、カサンドラとナージャの姿もあった。
アウグスト「取り敢えず役人の面々にだけでも挨拶を・・・」
ウサマ「おや!お久し振りですなぁ皆さん!お元気そうで何よりですわ!!」
同行する役人の中に、あのウサマ=ナバルの姿があった。
シン「あれ!ナバルさん!?」
ウサマ「僭越ながら国交を結ぶ為の使者として選出されましたわ!道中宜しく頼んまっせ!」
アウグスト「優秀なんだぞ。人並み以上にガメツイのが玉に瑕だが。」
ウサマ「嫌やわ殿下。またそんな。・・・にしてもアルティメット・マジシャンズ総動員とユエリアンの戦士と巫女6人同行とは贅沢ですな。」
シン「うーん・・・まあ少々・・・懸念がありまして・・・」
ウサマ「・・・と言いますと?」
タクト「シャオリン達が国を出てもう2年近く。向こうがどう言う状況にあるのか正直予想も出来ない。あっちからしても突然、未開の地から人がやって来る訳だし。それに今回は、カサンドラと何か関係があるかも知れないんだ。」
ウサマ「あの猫耳族のお嬢さんですかい?」
タクト「シャオリンが言うには、彼女をゲルダと呼んでいた。それも、亡き祖父と深い関係にあったと言われている。」
ウサマ「成る程・・・まあ何にせよ皆さん方が居るなら百人力ですわ。じゃあ早速搭乗するとしましょか。」
全員が飛行艇に搭乗する。
飛行艇・操縦室。
操縦士A「準備は?」
操縦士B「オーケー。」
有線通信機で艦内放送を流す。
飛行艇・先頭展望ルーム。
操縦士B『えー飛行艇内の皆様。間もなく離陸致します。』
マリア「わっ何?館内放送?」
タクト「有線通信機を応用して付けてみたんだ。」
飛行艇が離陸を始めた。
ウサマ「お!浮いたで!」
マリア「わあっ!」
飛んで行く飛行艇。目標はクワンロン。
エルス自由商業連合国・城内。
アーロン「お!任したで・・・シン君達・・・!!」
クワンロンへ飛んで行く飛行艇を見送った。
飛行艇・先頭展望ルーム。
新人兵「すっげーーー!ホンマに浮いとる!」
隊長「コ、コラはしゃぐな新人!任務中だ!」
ヒナ「彼、楽しそうですね。」
エミリー「私達も飛べるけど、こうして見ると壮大だな。」
レア「ああ!とっても楽しいな!」
しばらくして飛行艇が山脈を通る。
ウサマ「見てみ魔王さん。タクトさん。あれが1つ目の障壁。エルス東部に広がる大山脈や。」
広大な大山脈。シャオリンとリーファンが数ヶ月掛けて通ったエリア。
シャオリン「私達が数ヶ月掛けて越えた山々をこうもあっさりと・・・」
ウサマ「直に砂漠地帯に入るはずや。」
シン「有史依頼ずっとあるって言う大砂漠ですね。・・・にしても何でこの先だけがそんな土地に・・・?」
タクト「俺もこの先の事は未開だ。」
トニー「眉唾な噂ならあるよ。」
タクト「ん?トニー知ってんのか?」
トニー「まあね。高度な魔道具・・・いや兵器と言った方が良いかな?それを有した文明が遥か過去に存在して、行き過ぎたその文明が崩壊の一途を辿った結果残されたのが、砂漠地帯らしい。」
マーク「意外っスね。トニーさんがそう言う話詳しいの。」
トニー「いや、こう言うゴシップ女の子が喜んで聞いてくれるから。」
フェオン「相変わらずの女好きねあなた。」
イザベラ「何れリリアさんを裏切りそうですね。」
トニー「やだなぁ〜。そんな事する訳ないじゃないか。」
シン(高度な技術を有した全文明と・・・)
タクト(その崩壊か。)
果たして彼らに待ち受けるクワンロンの全貌とは。いざ、東の涯てまで。
松田修平
八木侑紀
水谷麻鈴
交易の為、東方の国・クワンロンへ出発したアルティメット・マジシャンズ。一方エルスでは、不審な客人が来訪。そしてその裏で陰謀が動き始める。
魔人王戦役で世界を救ったアルティメット・マジシャンズ。
しかし、戦いはまだ終わっていなかった・・・
タクト「女王メルヴィア!今度こそ、俺がこの手で倒す!」