私はたった一人の修学旅行から帰るためにバスに乗ろうとしていた。すると、先生から私に連絡が来た。
「木橋さん、病院から電話」
「あ、はい」
私は先生のところに向かった。病院から電話?
何か電気が走ったようにビリッと反応した。病院。秋人。電話が来る……
「もしもし!」
焦って電話を取った。
《あ、木橋さん?あの、お見舞い可能時期をあさってからにしたので、ご相談で》
よかった。病状が悪くなったわけじゃないらしい。
《黒山さん、木橋さんが来るの待ってますよ》
「はい」
私は電話を切った。そっか、楽しみなんだ。
バスに乗っている間は暇だった。いや、暇じゃないのかもしれない。だって……
「黒山がいないと何もできないの?ザーコw」
私は髪を引っ張られていた。もう諦めていたけど、きっと私を殺そうとしてる。もしくは、秋人を奪うため……
「なんか言ったらどうなの?せ、き、ぞ、う!」
これを見て先生も何もしない。もう嫌だ。こんなこと、もう嫌だ。
学校に着いた頃には、頭がずっと痛み、傷も少しあった。もう、学校行きたくない。
「ただいま」
「おかえりなさい。今日の学校は──」
まただ。嘘つかないと。
「楽しかった。修学旅行」
「そう。よかったわ」
毎日嘘つかないといけない。早く、秋人に会いたい。
秋人の病院に着いた。ここに秋人がいるんだ。私は病院の中に入って秋人の病室に行った。
「あ、木橋さん。今、黒山さん、早く退院したいからってリハビリ行ってますよ」
リハビリって、まだ退院まであるのに。私はリハビリをしているところに行った。すると、秋人が手すりにつかまりながら歩いているのが見えた。
「秋人」
「ん?」
秋人は私の方を見た。すると、秋人は私に向かって車いすを走らせた。
「楓。やっぱり来るよな。ごめん、病室にいなくて」
「大丈夫。それより、車いすになったの」
「あぁ。南高ってバリアフリーだっけ」
「エレベーターある。どうして」
バリアフリーなんて聞く必要無いと思うけど。
「車いすで学校行こうかなって」
そっか。ちょっと嬉しい。
「秋人」
私はあのことを言おうとした。
「どうした」
「あの、いじめ」
「楓が受けたの?」
私は頷いた。秋人は私の座っている椅子の横に来て言った。
「分かった。明日、学校に行って俺が調べる。楓は自分から俺に言うなよ」
「どうして」
「気付かれてたりしたら危ないからな」
秋人、私のこと本気で守ってくれてる。そう感じた。秋人の目は見る見るうちに赤いものが見えてくる。魔力が宿ってきてるけど、どういう魔力なんだろう。
「秋人」
私が近づくと、秋人は小さく低い声でつぶやいていた。
「楓をいじめた奴殺す、楓をいじめた奴殺す」
怖い。真っ先に思い浮かんだのがそれだった。いやだって、ずっと殺すとか言ってるんだもん。
「秋人、怖い」
「え?あ、ごめん」
秋人はやっと戻ってきてくれた。
「今日中に車いすで退院するから、明日、ちょっと早めに出よう」
「うん。大好き」
私はそう言って病院をあとにした。
【黒山秋人視点】
俺は今日のうちに退院できた。車で送ってもらって、家では楓が補助してくれた。俺も少しだったら歩けるが、1分も持たない。
「楓、悪いな」
「大丈夫。んっ」
楓は不意打ちに口を付けてきた。キスだ。
「ちゅっ、ちゅ」
舌が絡まる音が鮮明に聞こえる。
「ぷはぁ、楓、不意打ちするなよ」
「ごめん。久しぶりだから」
楓は手を振って言った。まだ寝る場所は別々だから。
なんか不自由な生活だな。
俺はネットに仰向けになって思った。もう少し楽に暮らしたいけどな。
「楓……いじめた奴絶対殺す」
楓を傷つけるなんて考えるやつが悪いんだ。絶対に──
「秋人、入っていい」
楓か。
「いいよ。入って」
楓はゆっくり入ってきた。部屋着のままだったが、いつもより大きいサイズっていうか、ゆとりがある。
「秋人、着替えないの」
「今から着替えようと思ってた。別に来たっていいけど」
楓は少し笑っていた。そんなに笑顔は見せないんだが。
「なんか楽しいことあったか?」
楓は首を横に振った。
「なんだろう、何となく笑った」
なんだそれ。意味も無いのに。
「それで、何のようだ」
「あ、そう。今度、吹奏楽部が幸田市ショッピングモールで演奏するんだけど、そのレッスンで秋人に来てほしい」
レッスン?ああ、そういうことか。
レッスンの先生を呼ぶと金がかかるから俺を呼んだのか。同じ高校生だからかな。
「ごめん、無理かも。多分楓に贔屓する」
「なんで」
「かわいいから」
俺は即答だった。すると、楓はいつもの表情で言った。
「じゃあダメ」
さすがにそうだろうな。
「じゃあ、用はそれだけか」
「うん。じゃ、休んでね」
楓は俺の部屋から出て行った。さて、何しようとしてたんだっけ。
「そうだ、着替え」
俺は真っ黒のTシャツと真っ黒のズボンを速やかに履いた。サイズはジャストくらい。ちょっと大きいかな?
「うん、しっくりくる」
俺はその服にして、楓の部屋に用も無いのにむかった。