俺は学校に着くと、楓から距離を取って状況を見守った。朝だから、みんな俺がいることには気付いていない。
すると、教室から少し暴力で問題になったことがある、中学からの同級生、草花が出てきた。楓に近づいていて、何か体に触れていた。何をする気だろう。
「秋人?いたのか」
「あ、上西先生」
上西先生は横から話しかけた。
「楓がどうかしたか」
「気になることがあった」
上西先生は目を閉じて、耳を澄ませた。
「どうやら『まだ何もできない雑魚なの』とか言ってるな」
「なるほど。ありがとう、上西先生」
俺は車いすのタイヤを自分回して楓のところまで行こうとした。
「秋人、無理すんな。俺が押すから」
「すまん。楓のところまで」
上西先生と俺の仲だ。結構仲良く話している。それが良かったんだろう。
草花は俺が来たのに気付くと、作り笑顔をした。あきらかに良いことをした後ではないことは表情から分かる。
「草花、さっき楓に何してた?」
俺が聞くと、草花は衝撃のことを言った。
「黒山くんがかっこいいって話をしてたよ」
もう嘘ってことは分かってる。しかも、冷や汗が出ている。どうにかして言わせよう。
すると、上西先生が言った。
「汗だくだな。話しただけなのに」
上西先生が追い打ちをかける。
「なによ!楓をいじめるのが悪いって言うの!」
お、本性をだしたな。
『悪いだろ』
俺と上西先生が同時に言った。
「ほら、草花、早く行くぞ。教育室」
「は!?ちょっ」
草花は連れて行かれてしまった。あ、上西先生、車いすを押してはくれないんですか。
「秋人、押す」
楓は俺の車いすを押してエレベーターに歩く。
「秋人、ありがと」
「あぁ」
俺は親指を上に突き出す。グッドサインだ。
「優しい」
「そうか?まぁ、ありがと」
楓は一階まで俺を連れて行き、生徒会室に入れた。俺は車いすのまま黙っていた。
家に帰ると、楓が補助してくれた。楓は俺にずっとべったりくっついていて、なぜかを聞いても「補助」と答えるだけだった。きっと好意なんだろうけど。
「楓、もういいよ。一人でできる」
「だめ。まだ補助する」
楓はぎゅっと俺を抱きしめると、ベットにゆっくり寝転ぶ。
「秋人、好き」
急にどうしたんだろう。
【木橋楓視点】
私がリビングに行くと、コップに薄いピンクの飲み物が置いてあった。桃ジュースかな。私はそうだと思い、飲んでみた。
「楓ちゃん!?それ飲んだの!?」
私が頷くと、お母さんはふふっと笑った。
「今から秋人に会ってみなさい。きっと面白いことが起こるわ」
こう言われて今に至るわけだが、なぜかとても秋人が好きになってくる。くっついていたい。一緒にいたい。好き。大好き。
「楓?お前どうしたんだ」
「なんか、好き」
私は秋人にべったり。離れたいって思えない。
「秋人……」
「楓……」
秋人は抵抗することなく、私に抱かれていた。抱き心地がいい。抱きまくら。
「秋人……抱きまくらみたい」
「なんだそれ。褒めてるのか」
「私は満足してる」
秋人は不安そうな、焦っていそうな顔だった。
「秋人、キスしたら怒る」
「怒らないよ」
楓は俺に口を近づける。
「秋人、楓ちゃんどうなってる?」
母さんが入ってきた。俺は楓から離れた。タイミング悪かったな。
「なんかべったりなんだが」
「惚れ薬飲んだからね」
なんて物飲ませたんだ。けど……
「ぎゅーっ、ぎゅーっ」
手を伸ばして俺にしがみつこうとする。普通にかわいい。このままで良いかもしれない。
「かわいい」
「あら、じゃあそのままでいい?」
「いい」
母さんは部屋から出て行った。楓は首を小さく傾げた。
「キャラ変わったな」
「ぎゅーっ」
手を伸ばす。俺はその手を握った。
「ぎゅーは?」
キャラが、がらりと変わった。前まで冷静と言うより無口だったのに、今は所謂「デレデレ」の感じになってる。口調も変わり、感情があるというか、疑問の時がハッキリしていた。
「手はダメか」
「うん。ぎゅー」
俺は楓に近づき、手を楓の後ろにやった。
「ぎゅーっ、すきぃ」
「分かったから。一回着替えさせて」
「離れないとダメ?」
「1分だけ。な?」
楓は渋々部屋から出て行った。楓はいつでもかわいい。天使だ。