かっこいいと言われるのは嫌。なのに付き合った   作:月島柊

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shortage. 1 足らないもの

 楓は俺と相性がどんどん合っていった。その割に、それ以外からの信頼は失い始めていた。なぜだろう。確かに、楓に信頼されていればいい。ただ、少し気に食わない。

 

「秋人、先行く」

「いってらっしゃい」

 

楓が先に出ていった。俺はリビングに取り残された。

 

「秋人、なんか背中が悲しいわよ」

「そうか?」

「楓ちゃんがいないから?」

 

そうなのか……?もう、よく分からない。

 

「分からない」

「そう。ゆっくりでいいんじゃない?考えるのは」

 

ゆっくりでいい、か。何でも早とちりに考えすぎてたか。

 

「そうだな。ちょっと部屋で考えてみるよ」

 

俺は部屋に戻った。俺に足りない物は何か。それを考えたかった。

 

 

 

 見捨てられていた時期、俺には足らないものだらけだった。生きる意味、必要な人、そして、心の一欠片。

心の一欠片だけは、見捨てられなくなってから、また1つ無くなった気がした。しかし、楓に出会ってから、必要な人、心の欠片は見つかった。

それでも見つかっていない、生きる意味が足らないのだろうか。そんなことはない。気がする。理由を問われても答えられない気がするが。

 

 

 

 結局、何も分からないまま学校に行っていた。何が足りないんだろうなぁ。

 

「おっと、秋人。なんか考え事?」

 

美山だ。美山は空いてる車内にも関わらず、わざとぶつかってきて言った。それに、俺は冷静に言った。

 

「そんなとこ」

「ほへぇ、秋人が悩むことあるんだねぇ」

「そりゃああるだろ。ロボットじゃないし」

「じゃあ何で悩んでたの?」

 

俺は美山に正直に全て言った。

そして、美山は共感するように言った。

 

「そうだよねぇ。秋人、確かに物足りないところはあるもんね。けど、私も何かは分からないんだよね」

「なんかあるだろ。美山が分かるんだったら見えるものなんだから」

 

美山は悩みに悩んで言った。

 

「スポーツできて、スタイルよくて、頭よくて、冷静で、生徒会長。もう悪いとこ無くない?」

「そうなんかなぁ、気のせいか?」

「そうかもしれないよ。だって、秋人感情あるじゃん」

 

それは関係あるのか?

 

「関係あるのか」

「あるよ。だって、秋人、私にはすごいフリーに接するじゃん」

 

言われてみれば確かに。それ以外にフリーに接する女子は楓くらいかもしれない。

 

「そう、だな」

「うん。秋人、これからもよろしくね」

 

美山は笑って言った。

 

 俺たちは学校に着くと、違うクラスのため別々に行動した。いつも通り女子の視線を集め、視線を痛く感じながら席に座る。

 

「秋人、おはよ」

「あ、おはよ。今日も痛いな」

「視線」

「そう。お前はいいよ。優しい視線で」

 

俺がそんなことを言うと、先生が入ってきて言った。

 

「ほーら、始めるぞー」

 

俺は前を向き、楓は自分の席に戻った。

 

 

 

 無事部活まで来ることができた。唯一と言っていってもいいほど、居心地がいいのがこの吹奏楽部。キリキリと痛い視線じゃなく、ふわりと優しい視線。

 

「黒山先輩、この11小節目なんですけど」

 

自分のパート、ユーフォニアムの後輩、七瀬もも。

 

「おう。バビロンのここはユーフォが出していいとこだぞ」

「ここ、スラーかけた方が良いですか?なめらかな感じで」

「ここはタンギングを使って力強く表現しよう。ただ、3拍目からあんまり音量を出しすぎないでね」

 

ももは俺のかわいい後輩だ。2年生の後輩で、1年生はこの子の妹、七瀬ゆみ。名前をひらがなにする癖でもあったんだろうか、この子たちの親は。かわいいからいいけど。

 

「あと、73小節目、先輩どうするんですか?」

 

本当はバリトンが吹くんだが、この吹奏楽部には居ないからユーフォが吹くことになっている。

 

「そうだな……俺が吹くよ。あと、ゆみに言っといてほしいんだけど、2小節目から5小節目まで俺だけ、そこから10小節目までは俺ともも、11から73まで3人、74から76が俺だけ、74から98まで俺ともも、99から115まで2人、116と117がももとゆみ、118からCODA行って最後まで3人。いい?」

 

ももはメモ帳にメモしたものを読み上げた。

 

「2から5は先輩だけ、6から10まで私と先輩、11から73まで3人、74から76が先輩だけ、77から115まで私と先輩、116と117は私とゆみ、118からCODA行って最後まで私と先輩。いいですか?」

「完璧。それでお願いね」

 

俺はもも肩を2回優しくたたいてそこから歩いて行った。いろんなところに調整しに行きたいからだ。

 

「楓」

 

楓は、今回のコンクールメンバーから外れてしまった。

 

「なに」

「この曲のCのとこ、練習してくれないか?今度やるときに楓から教わりたい」

「うん」

 

楓にショックを与えないように、俺たちに役立つことをさせている。

 

結局、足りないものって何だろう。

 




休止から明けまして、不定期投稿になります。これから休止するものが多くなると思いますが、気長に待っていてくださいね。
次回は一週間後くらい。お楽しみに!
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