今日の部活はOFF。週に1回のOFFだ。
俺は教室から出て真っ先に昇降口から出た。美山は部活だし、楓は先生の手伝い。俺が先に帰るしかなかった。
時間は17時過ぎ。次の電車は17:05発快速だから……!
「まずい!」
俺は走って上町高校駅に向かった。あと3分。歩いて2分ごろだからギリギリだ。
危機一髪、出発30秒前に飛び乗った。俺は勢い余って前の人にぶつかった。
「きゃうっ」
「すみません!」
俺が謝ると、そこにはももとゆみがいた。
「先輩?」
「もも。ゆみも」
なんか恥ずかしかった。後輩に敬語なんて……
「先輩、今日はもう帰るんですか」
「うん。もう用事無いから」
ゆみは俺にくっついて言った。なんか柔らかいなぁ。あ、胸か。
「先輩っ」
ももが一緒にくっつく。
「あの、あんまりくっつかれると」
「いいじゃないですか。だって好きですし」
多分恋愛感情ではないと思うんだけどな。
「ひゃっ」
2人が俺に密着する。電車の中が急に混み始めたのだ。この電車は快速。終点大西まではもちろん、大傘や南小歌までも先着する。帰宅時間も被っていることから、かなり人がいた。
「むぎゅう……くるちい……」
「せんぱぁい……」
2人とも上目遣いで俺を見る。かわいすぎる姉妹だ。瑞浪を思い出すじゃないか。
「せんぱぁい、もうちょっと詰めて貰っていいですか?」
「ああ、分かった」
俺が少しゆみに寄ると、なんかなんとも言えない体型になってしまう。
俺の後ろからは人が押してきて、前はももとゆみが密着している。
「先輩……苦しいです……」
「分かってんだけど……」
ももとゆみはかなり苦しそう。うつむき気味なのもあったし。そしたら、次で一回降りて後続に乗り換えた方がいいんじゃないか。そう思い、俺は次の高町で降りることにした。
「2人とも、次で1回降りよう」
「はい……」
幸いにも、こっち側が開き、すぐに降りれた。快速が混んでいるだけで、各駅停車は空いている。先に着きたいんだったら快速に乗るだろうし。
「もも、ゆみ。大丈夫か」
「はい。今度は空いてますね」
「そうだな。座れたし、楽だろう?」
俺はこの2人が来てくれて嬉しかった。
中学2年のとき、俺は今と変わらずユーフォ担当だった。俺の1つ上の先輩は、俺が後輩として入ってきた。しかし、俺の下には、1年生が入ってこなかった。それどころか、入ってきた1年生はわずか2人で、チューバ、ホルンにそれぞれ入り、俺は1年間個人連だった。
さらに、俺が3年生になってようやく入ってきたが、中学3年の引退は受験もあって、7月後半にあるコンクールを最後に引退する。8月からは俺は部活に行かなくなり、後輩に会えたのはわずか4月後半からの3ヶ月。
俺は悲しかった。ショックだった。
しかし、高校2年になってももが入り、3年になってからゆみが入ってきた。後輩が2人もいる。俺にとってはこれまでに無い喜びがあった。
そんな部活も、俺はあと1ヶ月ほどで引退。10月後半のコンクールで引退だ。
「ゆみ、もも、引き継いでね」
「はい。絶対」
「継ぎます、絶対」
信頼できる後輩で良かった。最後のコンクールで金賞を取りたいけど、俺たちだったらできる気がしてきた。