生徒会室で俺が美山と仕事をしていた。唐突だが、いつもこれだ。
「美山、したの名前なんなの」
「楓花ー」
ふうか、か。
「ふーん」
「興味なさそうだね」
「あぁ。全く」
仕事に集中しているからだろう。会計報告も俺が全部やってるせいで、もう終わりそうにない。
「あ?なんか1万違う」
「どうせどっか忘れてるんでしょ」
おっかしいなぁ、ちゃんと確認したはずなんだが。
「あ、文化祭の装飾費」
168,00と入力する。合計で……
「12万7千650円で、前年度の余剰から来るから……」
前年度は2万8千円少なくなった。今年度の予算は13万。
「3万350円マイナスか」
「予算減らしていい気がするけどね」
「毎年13万って多すぎるんだよな」
このままだと余裕を持って12万円まで予算を減らしたっていい。
「1番かかってたのは?」
「文化祭運営費」
「何万?」
「6万」
正確には6万5500円だが。
「やっぱり予算減らしていいよねー」
「ま、あとは先生たちに任せよう。さ、俺たちは帰るぞ」
「はーい」
俺は生徒会室から出た。美山も後ろをすぐにつけてくるが、俺たちを取り囲んだのはとんでもない冷気。
「さむっ」
「会長、上着いります?」
「そんな呼び方しなくて結構。あと、いらん」
美山がブーブー言いながら歩く。楓のだったらいいが、美山のはいらん。
「今日って楓いないんでしょ?」
「ん?いないけど」
「じゃあ途中まで一緒に帰ろーよ」
「いいけど」
楓は休み。今日は来ていない。
「秋人ってさ、なんかハマってることとかないの?」
「無いと思う。楓がいればいいし」
楓、今元気かな。
「あーあ、私も彼氏作ろっかなー」
「それはお前の自由だろ」
俺は楓のことが頭の中から離れなかった。早く帰ろ。
俺はさっきより歩くペースを速めた。
「いい人いないんだもん」
「それを探すんだろ」
「勝手に寄ってこないかな」
「虫か」
俺は思わず言い返した。
「勝手にイケメンが寄ってきたら楽じゃない?」
「性格とかは」
「もちろんそれでも決めるよ?」
そうだよな。
楓ってどんな性格だろう……無口、クール……そのくらいか。
「そんなにいい人中々いないんだけどね~」
「クラスとかにいないのかよ」
「いても1人じゃない?」
同じクラスだが、結構いいやついそうだけどな。以外と中身がダメだったりするのかな。
「あ、楓ちゃん」
「あ、ホントだ」
楓は俺の方に歩いてきた。性格も性格だから手を振ったりはしないが、向かってきてるだけで天使のように見える。
「秋人、おかえり」
「ただいま。じゃ、また明日。美山」
「はーい」
俺は楓と一緒に家に帰った。同棲してから何ヶ月かな。そんなのどうでもいいんだけどさ。だって一緒にいれればいいんだから。
「手繋ご」
「珍しいね」
「さっき、美山さんと歩いてたから」
「嫉妬?」
「違うもん」
「もん」だってさ。かわいい。ちょっと俯きながら言ってたから図星だけど、かわいい。嫉妬してくれてるんだなぁ、楓。
「そう?じゃあ美山と手繋いでもいいのか」
「それはダメ。秋人は私のだもん」
また同じ言い方。
「やっぱ嫉妬じゃない?」
「むぅ……そうだけどさ……」
認めた。あっけなく認めた。
「ごめんね、楓。俺は楓のことを1番に思ってるよ」
「じゃあいい」
楓は俺と一緒に駅に向かった。手をつないでいるが、もう自然だった。
「体育祭何やる?」
南高校でやっている体育祭は冬に行う伝統がある。3年生の受験が終わったあとで、全員の気が楽になってからだ。なぜ冬なのかは知らないが。
北高校でやっていたときは春に行っていた。種目は基本的なものと、男子は棒倒し、女子はチアダンス。あとやってきたのは騎馬戦だろうか。男女共同で行う騎馬戦は評判がよかった。
「南高校と北高校の2つをトレードしたいな」
「うん。借り物競走とかってやってた」
「いや、やってない。騎馬戦ってやってたか?」
「ううん。じゃあ、この2つ入れたいね」
人気種目はやはり入れた方が良いだろう。
「あ、チアダンスは」
「みたいだけ?」
楓が言った。
「んなわけないだろ。北高校でやってたからだ」
「じゃあやる」
楓はスマホに入力した。まぁこれくらいだよな。
「あとは実行委員会やって採決取ってって感じか」
「うん。そういう感じ」
楓はスマホに入力し続ける。
「おい、前!」
楓は足下に気付かずに階段でこけた。俺は楓が離したスマホを片手で、楓自身をもう片方の手で支えた。
「大丈夫か」
「うん。ありがと」
俺はスマホを渡した。周りからは拍手が起こり、なんか照れくさかった。
俺は電車から降りて、楓と分かれた。明日、また学校で会う約束をして。