俺は南高の生徒会長を特定できないまま、いつもより1時間早く学校へ向かった。生徒会のデータ整理があるからだ。全部南高の合同修学旅行のせいだけどよ。
「朝早くありがとうございます、生徒会長」
「おう。大丈夫だから。それより、残りの資料を」
「はい。えっと、明日、北高と南高の会議があるんですが、それを生徒会長か副会長のどちらかにしたいんですが」
会議かぁ。俺が行くのも面倒だな。内容だけだけ書いて副会長に渡すか。
「副会長に行かせる。俺、行くの面倒だから」
「あ、はい。資料を副会長に渡しておきますね」
「それで頼む」
俺は椅子に座った。副会長と書記、会計が来ると、俺は資料を配った。
「ああ、こういう感じなんだな。会長、また俺に任せるんだな」
「南高はね……」
「嫌なの?」
「嫌っていうか、不安っていうか?」
不思議な感じだけど、伝われ。
「とりあえず資料もらってるからいいけど」
「じゃあよろしくな」
俺は生徒会室の生徒会長が座る椅子で寝た。あと30分もあるんだ。少しくらい……
「生徒会長、ズルいよ」
会計から言われた。ぐぬぬ……
「分かったよ。ああ、ねみぃ」
「休むくらいだったらいいんじゃないの?」
「美山会計、そんなことないんだぞ」
寝ないと疲れはとれない。そんなの、俺だけじゃ……
「そうだ!寝ないととれないだろう!」
そこに現れたのは橋本先生だった。生徒会担当の先生だ。
「かといって、寝るのはダメだぞ」
なんだよ、味方してくれるかと思ったのに。
「だから、今寝なさい」
「え?」
思わず声が出た。そりゃあそうだろう。今寝ていいとか言うんだから。
「ね、寝ていいんすか」
「授業中に寝られちゃ困るからな!今寝とけ」
おぉ、いい学校だ。
「じゃあ、寝ます」
俺は机に腕を乗せ、その上に顔を置く。ふぅ、ゆっくり休めそうだ。
俺は美山会計に起こされた。投稿時刻の数分前で、挨拶運動の実施が待っていた。俺は制服を整え、正門前に立つ。
言いたくはないが、みんなが挨拶してる理由は俺にある。かっこいいからとりあえず挨拶しているんだろう。
もちろん、そう言われるのは嫌。ただ、理由なんてそんなもんだろう。
「おはようございます!」
「おはよう。いい天気だね」
俺はいつも囁くような声で一言付け足す。
「おはようございます」
「おはよう。勉強頑張れ」
この学校、男女比が年々変わっていっている。今は一応男子が4、女子が6だ。男子が440人、女子が660人で合計1100人。増えてきてはいるが、女子が多くなってきている。
一方、南高はというと、男女比は6対4。男子が570人、女子が380人で950人。男女比は南高が理想。最終手段として、南高と人数を調整する場合も考えている。北高と南高で、男女比5対5を目指すのだ。
しかし、そんなこと簡単にできるわけがなく、5年経った今でも実行されていない。
女子が増えてくると、男子の割合が減り、女子校になってしまう可能性が高い。それだけは避けたいのだ。
「おはようございます」
「おはよう。今日は暑いね」
みんな笑って昇降口に向かうが、今までの3人、全て女子だ。やっぱり割合が増えた。
「おはようございます」
「おはよう。熱中症気をつけてね」
美山会計は大体男子の対応。俺が女子の対応だ。
「おはようございます!生徒会長!」
「おはよう。暑いねぇ」
「暑いですよね。溶けちゃいそうです」
「熱中症には気をつけろよ。指数超えたら放送するから」
暑すぎる。最高気温が41度だ。高すぎる。
「おはようございます、今って何度ですか?」
「あっと……30度くらいか」
二酸化炭素排出量削減が効いてきて、少しずつ、気温は下がっていっている。ここも、去年は44度だったが、今は41度まで下がった。
「暑いですね」
「熱中症には気をつけろよ」
俺はそう言って送り出した。
「会長、暑い~」
「生徒会室行くか?」
「挨拶運動は?」
「いいだろ、そんなの」
俺はホワイトボードに「暑さのため挨拶運動中止」と書き、生徒会室に美山会計と一緒に戻った。
「美山は俺に普通な感じで接するよな」
「うん。だって会長、そんなかっこよくないもん」
それはそれで傷つくが、多分慰めの気持ちがあったんだろう。
「そうか。そう言われたら確かにそうだけど」
「あとは、そんなに意識してないもん」
意識の問題か。まぁ、確かに意識しなければそうでもないよな。
「ほら、さっさと行こう。もう暑すぎ」
「はいはい。ってか、Yシャツ仰ぐな。見えてる」
「あ、うそ。ごめーん」
軽い感じなのが美山の特徴だ。