かっこいいと言われるのは嫌。なのに付き合った   作:月島柊

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Heart.4 楓

 「今日の体育倉庫当番だれだ?」

 

体育の授業が終わり、俺は手を挙げて体育倉庫に向かった。バスケが終わった後だからか籠ごと持って行くことになった。

 

「かいちょっ」

「あ、美山。体育の当番か」

「うん。会長、バスケうまいね」

 

なんか呼び方が慣れない……けど、しょうがないんだろうけど。

 

「秋人」

「え、あ」

「こっちの方がいいでしょ」

 

心読まれてた?なんかそういう気がするんだけど。

 

「秋人、今日って部活なしで帰る?」

「無いからね。そのまま帰るかな」

「そっか。明日、放課後生徒会あるからね」

「おっけ」

 

俺は体育倉庫にバスケットボールの入った籠を入れて体育倉庫から出た。

 

 

 

 俺は帰り、楓と一緒に家に帰ることにした。

 

「楓、最近調子どう?」

「秋人と会う回数少なくなって寂しかった」

 

ありゃ、大変なことになってるな。

 

「もっと会いたい?」

 

楓は頷いた。そうか。じゃあ、なんか定期的に会いに行こうかな。

 

「今度いつ空いてる?」

「土曜日。それが何」

「デートしない?」

「デート……っ」

 

楓は少し俺から離れた。

 

「え、嫌だった?」

「嫌じゃ、ない」

 

変なところで区切る。なんか話し方に違和感感じるな。

 

「そう?ほら、電車来たよ」

「空いてる」

「夕方のラッシュ前だしね」

 

やってきた電車の中は涼しくて、かつ空いていた。

今更にはなるが、当然北高と南高は制服通学。この時期は衣替え後だから、半袖での登校になっている。北高ではジェンダー平等のため、男女の服装は制限していない。女子でもズボンの着用は可能だ。

一方南高では、ジェンダー平等の取り組みは始まっておらず、白い半袖のYシャツに、女子はスカート、男子はズボンになっている。女子はスカートの下に着用するのは夏だけ禁止らしく、それに習って楓もスカートの下はパンツらしい。見せてはくれないけど。

今まで汗だくでいたが、電車の中で汗は引き始めた。

 

 

 しかし、今日は不幸なものだ。暑さのせいだろうか。電車の電気を送る変電所がショートし、駅の間で電車が止まってしまった。電車によっては非常電源を搭載している電車もいるらしいが、この電車は古い分類のため、非常電源は搭載していない。

さらに、前の駅から定員人数くらいの人が乗ってきたため、今の車内はまぁまぁ混雑している。

停電のため、冷房は切れ、乗客は扇子や手持ちの扇風機、手で仰いだりして暑さをしのいでいた。

だが、それも限界がある。電車は2時間しても動かない。車内への避難もまだ進まない。放送によると、暑さによるショートで無線が通じないようだった。それで許可が出ないんだろう。

楓は白いYシャツがだんだん透けてきた。その透けたところを見ると、乳首が丸見えだった。

 

「え、おい、楓。下着は」

「水泳で暑くて着てない。って……」

 

ようやく気づいたらしく、楓は前を隠した。しかし、暑すぎる。窓を開けているが、風もない。

気温は一向に上がっていく。今は43度。限界だ。

 

「暑い……透けてる……」

「楓、とりあえず生きよう」

 

俺がそう言うと、ようやく外への避難が開始された。俺は最後の方に降りて、4時間ぶりに外に出た。

 

「楓、大丈夫か?」

「死にそう……気持ち悪い……」

 

ここから俺の家まで何分くらいだろう。風呂を貸してあげたい。汗をかいて気持ち悪いんだと思うから。

 

「10分か」

「どうしたの」

「あ、いや。なんでもない」

 

俺は家に向かって歩き始めた。うげぇ、Yシャツが肌にくっついて気持ちわりい。

 

「バスねぇかな」

「混んでる」

 

その発言通り、通り過ぎたバスは身動きがとれないほどの大混雑。

 

「歩くか」

 

俺は再び歩き出す。

 

 家に着くと、俺は先に母さんの許可をもらいに行った。

 

「楓は少し待ってて」

 

俺は母さんのところに走る。

 

「母さん、彼女を風呂に入れたい。いいか」

「あら、また優男復活かしら?いいわよ。そうねぇ、もう彼女ができる年だものね」

「そうだな」

「反抗期が無くて、お母さん安心だわ」

「母さんは俺を産んでくれた人だ。大切にする」

 

俺は楓のことを呼びに行く。すると、周りの不良に絡まれていた。

 

「かわいいね、嬢ちゃん。遊んでいかね?」

「あのさ、この近くにカラオケあんだけどよ、一緒に行こうぜ」

 

ああ、楓が1番苦手なタイプだ。

 

「楓、ごめん。行こうか」

「おい待てやコラァ」

「話してる途中だろうがよ、やんのかオラァ」

 

昭和のヤンキーかよ。やってもいいけど、俺の場合、「やる」じゃなくて「殺る」になるぜ。

 

「悪いがだる絡みしてる時間はないんだ」

「だる絡みとはいい度胸じゃねぇか」

 

もういいや。3mくらい飛ばしとこ。俺は蹴飛ばした。

 

「うおっ」

「さいなら。あんまり家に迷惑かけると父さんが怒るぜ」

 

俺は家の中に入る。一応父さんはまだ若い。まだ40代だし。

 

「母さん、風呂って沸いてるか?」

「えぇ。入ってきていいわ」

 

俺は一回脱衣所に向かおうとしたが、楓にどういう順番で入るかを聞いた。

 

「楓、先に入る?」

「うん」

 

楓は脱衣所に歩いて行った。俺が先に行ってたから分かったんだろう。

 

「秋人?」

「ん?なんだ」

「一緒に入る。だから先」

 

うお、マジすか。一緒に入るってもうそんな関係まで行ってたんか。

 

「え、もうそういう関係?」

 

楓は頷く。おぉ、俺はいつの間に成長してたんだ。

 

「あ、そうか」

 

変態じゃないし、裸でグヘヘなんて言わない。俺が心配しているのはその後の噂。あんまり嫌な噂が広がらないといいが。

 

「秋人、元気ない」

「え、あ、元気がないわけじゃないんだ。あの、な」

 

楓は不思議そうにして浴室の中に入った。ああ、ばれないといいなぁ。週刊誌やパパラッチがいるわけではないが、不安だ。

 

「秋人、背中洗って」

「おけ」

 

俺は楓の背中を洗う。思ったよりちっちゃい。

 

「かわいい」

「なんか違和感」

 

なんだ?

 

「絶対背中小さいからで言った」

「うげ、そ、そんなんじゃ……」

「汗かいてるから早く洗って」

 

なんか少し怒ってる?ごめん、楓。

 

「楓、怒ってる?」

「口より手動かして」

 

やっぱり怒ってる気がする。俺のせいだけどさ

 

「楓──」

 

楓は振り払って風呂に潜る。きっと弱いところをつかんじゃったんだろう。

 

「……楓は俺のこと嫌ったか」

「んん」

 

そう言いながら頷く。そうか、そうか。嫌っちゃったか。確かにそんな人嫌だもんな。

 

「本当か」

 

楓はうなずく。もう決まりだ。嫌われる行動をしてしまったんだ。俺は。知らず知らず悪口を。本当に悪かった。

 

「どうにか、機嫌直してくれないか」

「秋人がずっと一緒にいてくれるんだったら」

 

俺は楓に抱きついた。

 

「許す」

「よかった」

 

俺は短い会話で済ませた。

一緒に風呂に入り、俺たちの会話は学校の活動についての話になった。

 

「そっちの生徒会長って誰なの?」

「私」

「へぇ、そうか……」

 

ん?待てよ、私って、楓が!?

 

「楓が!?」

「そ」

 

マジかよ……風呂あがったら南高との会議俺に交代してもらおう。

 

 

 

「北高は」

「楓が知ってる人だよ」

 

遠回しに言うが、俺のことだ。

 

「そうなんだ」

「そ」

 

楓は笑った。久しぶりに笑った顔を見た。楓は普段、無感情。感情を表すことはそんなにない。いや、ほとんどない。

 

「秋人が生徒会長だったらいいな」

「そうか?ま、楽しみにしとけ」

 

俺は楓に近づいた。風呂は2人はいるともう窮屈だが、俺と楓にとってはくっつけてちょうどよかった。

 

「秋人、肌白い」

「そうかな」

 

楓は俺の頬を触る。

 

「うん、白い」

「関係あるか?触ったりして」

「分かんない」

「わかんないんかい」

 

俺は風呂に少し深く入った。

 

「あがる」

 

普通に考えて「あがる!」という意味に聞こえるだろうが、楓の場合は「あがる?」になる。あがるときは勝手にあがるだろうから。

 

「あがろっか」

 

俺は浴室のドアを開けた。籠の上側に楓の着替え、下側に俺の着替えがあった。

 

「楓、明日って生徒会の仕事あるか?」

「ないけど、朝練ある」

 

朝練かぁ。ってことはバスケ部とか、運動系?

 

「部活何入ってるんだ?」

「吹奏楽」

 

ありゃ、同じか。関係性ありすぎじゃないか?

 

「楽器は」

「ユーフォニアム」

 

おっ、一緒!

 

「俺もなんだ。吹奏楽」

「ユーフォニアム」

「そう。今、コンクール曲やってるのか?」

「うん。難しい」

 

コンクール曲っていうと、「バビロン川のほとりで」とかかな。北高はこの曲だ。

 

「バビロン川のほとりでって曲。北高と同じ」

「そうだな。今度、そっち行ったとき教えるよ」

 

俺は着替え終わると、脱衣所から出た。楓もすぐ後ろをついてくる。

 

「母さん、上がった──」

「秋人!これ見て!」

 

母さんが慌てて俺にスマホを見せる。

そこには、北高の男子生徒が北高の女子生徒と乱交している姿があった。ニュースに取り上げられ、明日の学校は休みらしい。

 

「何だよ、これ……」

 

俺はその場に固まってしまった。

 

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