「──ですので、北高との合同修学旅行は実施の方向で進めたいと思います」
楓の言葉を頼りに、俺は北高の方針を自信を持って話した。
内容としては、「北高のふしだらな行為については、無視できないことであるが、今登校している生徒には関係していないため、それを理解していただきたい。そして。前々から進めてきました計画であるため、予算面、タイミングから考えても、実施する方向でいる」と伝えた。
会議が終わり、俺は廊下に出た。角で曲がるところにある壁の前に辿り着き、曲がろうとした瞬間、俺は壁に押しつけられた。
「おい、さっきの会議でお前となんつった」
「え、あ、実施の方向で検討すると」
「その前だ!」
「あ、北高の乱交については今いる生徒には関係ない」
「それだ!何したかわかってんのか!?」
厄介な捉え方をされたか。一応誤解を解かなければ。
「何も関係していないということではなく、被害を受けていないという意味で──」
「言い訳は要らない!」
突然ナイフを取り出される。そして、俺に向けて刺そうとする。
「ほう、これでびびってんのか。まだ子供だな」
そう言うと、半袖だった俺の腕をナイフで斬った。
「っ!」
俺は声が出そうになる。ただ、声を出したらまた面倒なことになる。それだけは避けたい。
「そこ、何してるんだ」
そう言うことを話す声が聞こえると、俺を押しつけていた人たちは
腹部にナイフを刺したまま去って行った。
「黒山、大丈夫だったか」
北高の生徒会担当の上西先生だ。
「あ……」
声が思うように出ない。なぜだろう。
腕を見ると、赤い液体が重力に従って下に垂れていて、服に同じであろう液体が滲んでいる。そこに、さっき刺されたナイフがある。上西先生はそっとナイフを抜く。
「血が出てるな。南高の保健室を借りよう」
冷静な先生でよかった。俺は上西先生について行った。
南高の保健室。というか、保健室は落ち着く感じがする。匂いもいい感じだし、何より静か。
しかし、今回は違う。苦しく、思うように話せず、事情を聞いてきても、上西先生が代わりに答える感じだった。分からないところは、上西先生が「はい」か「いいえ」で答えられる質問にしてくれた。それで、首を動かすだけで答えられた。
「ちょっと傷の状態見ますね」
保健室の先生は傷口を見てくれた。すると、黙って電話をし始めた。
約10分後、救急車だかパトカーだか消防車だかのサイレンが聞こえた。だんだんと近づいてきて、1番大きくなったところで止まった。そして、金属同士があたる音が聞こえた。聞き慣れない音だ。
「状態は!」
「会話しづらい状態です!」
俺は水色のシートの上に寝かせられ、救急車の中へ。
なぜだろう。目覚めたのは病院の中だった。点滴がなされていて、それまでの記憶はほとんどなかった。
(俺、どうなるんだ)
そんなことを思っていると、看護師が1人やってきた。
「起きましたか。よかった。退院は4ヶ月後になります」
4ヶ月か。そこまで長くないだろう。
「あ、はい」
いつの間にか話せるようになっていた。きっと治ったんだろう。
「あと、言いづらいんですが」
看護師は俺が頷いた後、深刻そうに言った。
「このまま何もしないと、余命は1年です」