急な言葉に、俺の脳は理解できなかった。
「余命」ってなんだ
「1年」とはどのくらいだ
俺の「命」はどこまで持つ
考えて、考えて。時間が経ってからようやく意味が分かってきた。
俺が生きられるのはあと「1年」。「365日」である。それ以上は……
ん?待てよ、「何もしないと」って言ってたよな。じゃあ、「何か」したら生きられるのか?
俺はそれが分かるとすぐに聞いていた。
「どうすれば、生きられますか」
「……魔術系統の施術を行えば、今までと同じように生きられますが、成功率は……」
言うまでもなかったのだろう。しかし、言ってくれた。
「40%ほどで、失敗するとそのままの余命です」
「施術はどのくらいかかるんですか」
「大体8ヶ月程度です。施術が終わっても4ヶ月は様子見ですね」
要するに結局1年ってことだ。
「一回、彼女のところに行っていいですか」
「いいですよ。明日、昼頃に戻ってきて下さいね」
「分かりました」
俺は許可をもらって病室から出た。ふらつくことなく歩くことができた。
俺の家に楓はいて、俺は楓に相談があると言って、個室に招き入れた。楓は何を話されるのか分からないままいつも通り無表情な顔だった。
「……楓、運命の決断をしてもらいたい」
俺は2つの選択肢を与えた。
「1、このまま俺が家にいて、1年間一緒にいる」
「1年経ったら」
楓は真剣な表情で言った。俺も深刻だが、真剣な顔で言った。
「死ぬ」
「……どうして」
「余命だよ。1年」
俺はもう一つの選択肢を言った。
「もう一つは、1年会わないで、来年からずっと一緒にいられる。手術みたいなのを受けるんだ」
「成功する」
「分からない。それはやってみないと。でも、4割くらいだってさ」
要するに、1年一緒にいて、それ以降会えないか、1年会わないで、来年からずっといられるか。ただし、成功するかは分からない。
「……お見舞い、行ける」
「手術が終わったら。どうする?」
楓は黙ったまま考えていた。そうなるはずだ。生死が関わってるんだから。
「……しばらく1人で考えさせて」
「いいよ。考えて」
俺は部屋から出た。楓がどうしたいのか。俺はそれに従いたかった。
俺は階段を降りて母さんと話した。
「母さんは手術を望むか」
「まぁ、そうねぇ。秋人はもとから魔力はあるし、大丈夫だとは思うけど……」
心配なのには変わらないそうだ。
母さんは昔から俺のことをよく思ってくれた。だから一層心配なのだろう。
「あとは、楓の判断ね」
「あぁ」
母さんも楓に委ねていた。
自分一人で判断するんだったら、余命の方を選ぶ。複雑だが、おそらくそっちを選ぶ。
「……」
「秋人」
階段の途中から楓の声がした。
「決めた。手術受けて、ずっと一緒にいたい」
そうか。意見は尊重しなくては。じゃあ、明日病院に行って結果を報告しよう。
「修学旅行、行きたかった」
楓は俺の隣に座って言った。そうか、1年だから修学旅行もなしか。
「そうだなぁ。感想教えてくれよ」
「ん。そうだ、お見舞いいつから」
「明日の8ヶ月後から」
それで、急に会話は途切れてしまった。部屋全体の音が何も聞こえなくなった。まるで世界から音が消えたかのよう。
「今日、もう寝る」
「私も」
俺と楓は母さんにそう告げると、少しゆっくりと寝室に向かった。
「楓、ありがとう」
「どうして」
「俺だったら正しい判断できてなかったと思う」
俺はそう言って、寝室に入り、鍵を閉めた。