私は秋人の入院当日、病院まで一緒に歩いていた。呼吸がしづらいのか、すぐに過呼吸や息切れになってしまうため、何回か休憩しながらだった。
秋人の施術を担当する先生は若い先生で、多分30代くらい。けど、慣れていそうだった。
「秋人、施術頑張ってね」
「分かってる。楓も、元気で、何事も起こすなよ」
「何その言い方」
「最後かもしれないから」
なんか急に悲しくなった。なんで、そんなこと言っちゃうかな。まだ死んじゃうか分からないのに。
「黒山さん、行きましょうか」
担当の先生が言った。そっか、もう時間なんだ。
「はい……楓、修学旅行の感想、10分話してもらうからな」
そう言って秋人は行ってしまった。私の部屋、1人になっちゃうのか。修学旅行。
「ファイト、秋人」
私は振り返らずに家に突き進んだ。振り返ったらないてしまいそうだから。
私は秋人が入院を始めた2日後から学校に行った。秋人が入院している間は自分の家にいることにした。こっちの方が電車に座れそうだったから。
実際座れて学校に行けた。私が学校に着くと、生徒会担当の先生が言った。
「楓だけか。秋人は入院か」
「はい。しばらくは」
生徒会は北高書記の美山さんと、私だけで活動していた。一気に人数が減ったのは、少し前の事件が関連していた。
「楓ちゃん、お見舞いっていつから?」
「8ヶ月後」
美山さんは「ふーん」と意味ありげな声を漏らした。何かあったんだろうか。けど、美山さんと秋人はそんなに関係はないはず。
「それより、修学旅行の件だよ。秋人が犠牲になっちゃったけど、実施できるんだから」
そう、秋人が自分の命を賭けてでも実現させたかった行事だ。修学旅行があるのは秋人のおかげと言っても過言ではない。
「人数調整は?」
「しない。私が一人で寝る」
そうした方が楽だと思った。けど、なんか不安。一人で寝るなんて。家じゃないし。
「そう?だったらいいんだけど……」
いいんだ。これで。秋人がいるって少しでも思いたい。
「寂しい?」
「……分かんない」
なんかここまで来ちゃうと何が何なのか分からなくなってくる。寂しいって何だろう。泣いたら寂しいってこと?
しかし、私は直感で答えた。
「帰ってきたら泣きそう」
「そっか。それが普通だよ」
そう言うと、美山さんはパソコンを持ってどこかに行ってしまった。
「何だったんだろう……」
私もすぐに仕事を始めた。秋人の分までやらないと。今日は授業無いんだし。あ、言い忘れてたけど、今日は生徒会だけがある日だから授業はない。
「あ、フォルダ……」
私は秋人のデータにあったファイルを見つけた。
(開いちゃおうかな)
私は好奇心で押してしまった。
そこには、いろいろな楽譜と、私のかわいい(自分で言いたくない)写真が入っていた。
(なんだろう。あ、これ一緒にいたときの)
それは私が楽器を吹いている姿が映った写真だった。いつの間に撮っていたんだろう。
(先生にお願いしたのかな……ん?なんだろう、この長文)
「Shazaibun」と書かれたファイルは、丁度北高がこっちに来たときに更新されていた。
そのファイルの中身は、思いもよらないほどの長文だった。
「今回、北高が創立して初めてとなる問題が発生した。これは今までに無かったことから見ても、絶対にあってはならないことである。そのため、北高生徒会長(以下私)は生徒会長を退任することを考えた。しかし、周囲からの声もあり、退任することは反省していることにならないと考え、引き続き就くことにした。しかし、今回の問題は私にも関係があり、してないとはいえ、同じ学校の生徒としては関係があると考えた。そこで、私は以後、この」
長文はここで終わっていた。中途半端な終わり方だったことから、おそらく制作途中で不要になってしまったんだろう。
(秋人、辞めようとしてたんだ)
何もしないと思ってたら、こんなことをしようと思ってたんだ。なんか悲しい。
(秋人……責任負わないといけなくなって、つらかったよね)
しかし、この長文の一番最後に、あるものが書かれていた。
2A15
(なんだろう。これ)
2A15。なんかの暗号かな。でも、何のために暗号化したの?なにか知られたくないことがあるのかな。
(2A15……アルファベット順?)
Aは最初だから、2+1+15=18?18に何の関係があるんだろう。
「なんだろう。分かりやすそう」
ボソッとつぶやいた。A……画数?それでも20。数に関係あるのかな。
「2、A、15」
声に出して言ってみた。
2年A組かな?それでも、15は何だろう。
「出席番号……?」
私はA組の名簿を出した。15番は、里中美幸。性格はおとなしいはずだけど、何かあった?それとも違うのかな。
「違うよね」
私は自分の仕事に戻った。