とうとう来てしまった修学旅行当日。来てほしかったが、少し来ないでほしいとも思っていた。
私は「修学旅行のレポート」として、カメラの持参を許可してもらった。レポートももちろんだが、秋人にも見せてあげたい。そんな気持ちだった。
13:50頃にホテルに着くと、ホテルの中に入った。1人部屋で、中は広々としていた。ここに秋人がいたと思うと、少し寂しい。
18:00からキャンプファイヤーがあり、まずはそれを収めないと。の前に、まずは部屋の写真。
「秋人、退院したら来ようね」
私はそう言って写真を撮った。
【黒山秋人視点】
病院の生活は暇すぎる。毎日美人ナースと仲良く一緒に話しているが、安心してくれ。楓じゃない。当たり前だが。
それほど暇すぎるわけじゃないのか、美人ナースと話してるのは苦痛ではない。最近まで麻酔で眠っていたから苦痛になれてるのかもしれないが。
これが楓だったらなぁ。とつくづく感じる。
「秋人さんは趣味とかあるんですか?」
「無いですかね。無趣味です」
いかにも違和感がある会話。敬語だからだろうか。俺は相手が年上だから。相手は多分俺が患者だからだろう。
「あなたはあるんですか?」
「そうですね……旅行とかでしょうか」
旅行か。あ、そういえば
「修学旅行……」
「……行けなかったですもんね」
修学旅行、行きたかったなぁ。今頃バスの中なんだろうな。楓たちは。
「水沢さんは修学旅行の思い出とかありますか」
「思い出ですか?……特にないですね。結構無名な保健委員だったので」
保健委員ってそんなに目立たない委員会だっけ。目立つと思うけど。
「重要じゃないですか。保健委員」
「そうなんですけど、修学旅行は保健委員が別部屋だったので、そんな楽しめてないんです」
そんな事情があるのか……俺はもし行けてたら楓と2人部屋だったか……
「あ、秋人さん。お見舞い可能時期早めますか?」
「あ、なるべく。できればあさってあたりからお願いします」
「分かりました。楓さん、来るといいですね」
「え、けど分からないんじゃないんですか」
「それがですね、楓さん、毎日来てたんです。お見舞い」
会えるはず無いのに……無茶なことをするな、楓は。
「そうでしたか。だったら来ますよ。きっと」
「……どうしてですか?」
「楓は多分、俺のことを忘れてないでしょうから」
楓だったら来るだろうと信じていた。というか、来る。来なかったらどうするだとか、何も考えていない。
「そうですか。じゃあ、木橋さんの家に連絡しますね」
水沢さんは病室から出て行った。そういえばナースの名前、水沢さんだったな。自然に呼んでたかもしれないが、今更改めて気づいた。
「楓……」
俺は力の抜けた自分の足を見てつぶやいた。声も弱くなっているのだろうか。楓は、どういう反応をするんだろうか。
俺の中で、不安と期待が入り交じっていた。