よろしくお願いします。
※トレーナーは男性という設定なので、基本はトレーナー君呼びです。
「マルゼンスキー!!マルゼンスキーだぁぁぁ!!!!! マルゼンスキー!URAファイナルズ決勝を制しました!!!」
マルゼンスキーがURAファイナルズを制してから一夜明いた今日、朝の10時からいきなり電話が鳴る。
「誰だ...?こんな時間に...」
「あっ、トレーナー君?マルゼンスキーよ!」
「マルゼンか、どうした?」
「突然だけど準備して!」
「え?何の...??」
「これからドライブに行くの!じゃあねー!」
「あ、ちょっとまっ...」
電話は切れてしまった。唐突すぎる。走りだけじゃなくて電話を切るスピードまで速いのか...
「遅いわ!トレーナー君!」
トレセン学園の正門前、赤のスーパーカーの運転席にはマルゼンスキーがすでに座っていた。
「いや、マルゼンこそ速すぎだわ...昨日のURA、改めてお疲れ様」
「こちらこそよ、トレーナー君! あなたのトレーニングのおかげで勝てたんだもの!」
「そりゃあどうも」
マルゼンスキーは笑顔で返した。
「それにしても疲れてないのか?」
「全然大丈夫よっ! URAで優勝した後、トレーナー君と一緒にこうしてドライブデートしたかったもの!」
「そうだったのか...ってドライブデート!?」
「そうよ?」
「ただのお出かけじゃなくて?」
「モチのロンよ!」
......
トレーナーとして今までマルゼンスキーと接していたからかこうして誘ってくることは凄く意外でもあった。
「じゃあ早速、しゅっぱーつ!!」
「ぎゃああああああ!!!!!」
法定速度を優に超えるであろうスピードで走るスーパーカー。正直慣れるまでは怖かった。
「着いたわ!」
最初に着いた場所は水族館。まぁデートで言うなら定番スポットの一つか。
にしても広い。人生では数える程しか行った覚えがないのでこういう所には何度来てもそう感じてしまう。
「トレーナー君! あれ見て! おっきなクジラだねー!」
「ほんとだな...」
この水族館一番の目玉でもある超巨大クジラである。自分が今まで見てきた生物の中でも一番大きいのではないかと思う。
圧巻だ。
「トレーナー君! 今あっちでイルカのショーやってるんだって!」
そう言われ次はイルカショーへ足を運んだ。観客はそれなりにいる。まぁ、さすがにウマ娘たちのレースの観客数程ではないが。
「そこのお二人さん、カップル? ちょっとイルカのエサ、投げてみるかい?」
「え、あ、はい!」
飼育員さんからカップルと間違われた。さすがのマルゼンスキーも動揺したみたいだ。
「えい!」
「おー!!!」
マルゼンスキーが投げたエサは上手くイルカがキャッチをした。
観客も声を出し、拍手をした。
「お嬢ちゃん、コントロールいいねー!」
「あ、ありがとうございます!!」
さすがはウマ娘というのもあるのだろうか。パワーが普通の女性よりも強い分、飼育員さんもイルカにまでエサが届くとは少し思っていなかったみたいだ。
「トレーナー君!やったね!」
俺はマルゼンスキーを撫でて褒めた。するとマルゼンスキーは笑顔になった。相も変わらず可愛い。
「次はここでランチをとりましょ!」
次にやってきたのは至って普通のレストラン。
「すいません!」
店員さんを呼ぶ。
「はい、ご注文はお決まりましたか?」
「こちらのセットで」
「あたしもそれを!」
「こちらのセットがお2つですね、かしこまりました」
「あとすいません!このお店ってティラミスとかナタデココってあります?」
「あー...そうですね...ティラミスならありますよ」
「ではそれを"なるはや"でお願いします!」
「か、かしこまりました...」
店員さんは少し動揺していた。まぁ客からいきなり"なるはや"なんて言われたらそうなるか...俺はもう何年もマルゼンスキーといるから慣れてるけど...
「お待たせしました、こちらがティラミスになります」
「うわぁー! おいしそうね!」
「確かに美味しそうやな...」
運ばれてきたティラミスはとても美味しそうであった。
「ん? トレーナー君も一口食べたいの? はい、あーんっ♡」
少し恥ずかしくもあったがこうして食べるスイーツもとても美味しかった。
「最高だな...」
「だよね! やっぱ流行にノるのはいいね!」
俺は頷いた。この娘がタピオカを飲んだらどんな反応をするのだろうか。
そして数分後には2人とも頼んでいたセットもきた。
「こっちも美味しいね!」
「そうだな、マルゼンスキーと一緒にこういう所へ行けて、俺も嬉しいよ」
「ほんとっ!? じゃあトレーナー君をもっと喜ばせるために色んなところ、連れていってあげるね!」
ウマ娘たちのトレーニングやレース以外、トレセン学園から外に出ることはほとんど無かったためこうして学園外に出て一日中満喫できたのは凄く良かった。そしてこのプランを考えてくれたマルゼンスキーにももちろん感謝している。
気づけば時刻は昼の2時になっていた。楽しい時間を過ごすほど、早く時が経っていると思ってしまうのはどうしてだろうか。
「お次はここよ!」
続いてやってきたのはレジャー施設。
時間は少し遅めかもしれないが思ったより人は少なかった。
「あそこのジェットコースターに乗りましょ!!」
「マジか...」
けどスピードで言うなら正直あのスーパーカーと同じかそれ以下かもしれない...そんな淡い期待をもって挑む...
「そちらのお二方、カップルですか?」
「いや、あの、違います...」
またカップルと間違えられた。まぁ男女2人でこんな場所に来てたらそう間違えられるのも無理はない。
「では、行ってらっしゃい!!!」
心臓が小刻みに震えるまま、ジェットコースターはスタートしてしまった。正直超怖い。
「きゃあああ!!! 気持ちいいね! トレーナー君!」
マルゼンスキーの声ははっきりと聞こえた。だが応答する暇もなく親指を立ててハンドサインをする余裕しかなかった。
さすがウマ娘。少し速いとはいえこれぐらいのスピードでも全然平気だ。
ましてはマルゼンスキー。ターフを疾走する"スーパーカー"という異名を持ったウマだ。他の人たちよりも一番はしゃいでいるのがすぐ分かる。
数分間に渡る地獄のジェットコースターが終わった。
にしても速すぎ、長すぎ、酔いかける。
ジェットコースターがトラウマになってしまった。
昔は好きで乗っていたが数年も乗らないとこうなってしまうのかということが分かった。
「少し休ませてくれないか...??」
「えぇー!もうー?」
「ちょっと疲れたみたいで...」
「じゃあ良い休憩スポットがあるからちょっと来て!」
こうして俺はマルゼンスキーに言われるがまま一緒に歩く。
そうして着いたのはこじんまりとした館。人も並んでいる。
「ってこれお化け屋敷やないかい!!!」
「てへっ、バレちゃった?」
「いや見たら分かるし...なんならお化け屋敷って書いてあるし...」
「とりあえずならぼー!」
ウマ娘を愛でている側の人間として拒否なんて全く出来なかったため、強制的に並ばされた。
そして遂にその時がやってくる。
「この懐中電灯を持って中に入ってください」
「分かりました」
スタッフから渡された懐中電灯を持って先に進む。
こういう時にバクシンオーがいればすぐ走って終わるんだろうなぁと思ってしまう。
だが今はマルゼンスキー。そんなことを考えている暇なんてない。
「きゃぁ!!」
マルゼンスキー側からお化けが出てきた。
必死に俺の腕を掴む。
可愛い。
「うぉぉ!!」
今度は俺側からお化けが出てくる。
驚かし方や屋敷内の構造からして、並大抵のお化け屋敷では無さそうだ...
気づけばお化け屋敷も終盤。このお化け屋敷一番のスポットでもある数十メートルの長い廊下に辿り着いた。
「ねぇ、走ったらダメかな...?」
「さすがにダメだろ....」
マルゼンスキーは怖さからか走る体勢にまで入ろうとしていた。
そして案の定、両側、そして後ろからもお化けが出てきた。
驚く俺とマルゼンスキー、だが気づけばマルゼンスキーは消えていた。
もしかしてと思いながらゴール地点に行くと...
「うわぁぁぁん!! 怖かったよぉぉ!!!」
マルゼンスキーが泣いていた。
前日の夜にうまぴょい!うまぴょい!とセンターで踊っていた娘と同一人物には見えなかった。
こうして、色んなアトラクションを楽しむうちに夕方の6時を過ぎていた。
最後の乗るアトラクションはこれまた定番の観覧車である。
「いい景色だね...」
高いところから眺める景色はとても良かった。
「そうだな...」
「ねぇ。あたし、トレーナー君のことが、好きかもしれない」
それは突然であった。
「え?」
「いや...だから...君のことが好きかもしれない...というか好き!」
「実は俺も...マルゼンのこと...好きだったんだ...」
「ほんと...?」
やっと胸の内を明かせた。とは言ってもマルゼンスキーからではあったが.....
「嬉しい、嬉しいよ...」
と言いながらマルゼンスキーは俺に抱きついて泣き始めた。それはさっきお化け屋敷で流していた涙とは全く違う涙ってあったことは俺にもすぐ分かった。
夜、8時。
俺はマルゼンスキーとともにイルミネーションデートを楽しんでいた。
「イルミネーション、綺麗だね」
「そうだね...君とここに来れて...ほんとに嬉しい...」
「俺もだよ、マルゼン...」
思えば今日一日、ずっと行動をともにしてきた。
マルゼンスキーの計画していたであろうプランが成功して、自分もとても嬉しかった。
「今日は本当にありがと!!」
気づけばトレセン学園に着いていた。時刻はもう9時。
「こっちこそ、URAファイナルズ決勝、ウイニングライブの直後だったのにわざわざ誘ってきてくれてありがとう!!!」
そう言い終わるとマルゼンスキーは俺の方に寄ってきて抱きついては、接吻をし始めた。
数秒で終わるはずなのに、何十秒もしていた。
口が離れてはまたその動作が恋しくなり、気がつけば何度もその行為をしていた。
始めてから1分が経った。
マルゼンはそっと口を離した。
「今日はほんとにありがと、何度も言ってる気がするけど、ここまでできたのもトレーナー君のおかげ。ずっと...これから先も...感謝し続けるよ...」
「こちらこそ...」
2人は熱い抱擁を交わした。
「じゃあね! こんなに遅くまでありがとう!!」
そう言うとマルゼンスキーはスーパーカーに乗って走り去っていった。
学園に着いてからの3分間。
この3分は人生で一番長く感じた3分間であった。
彼女とともに歩めて本当に良かった。そう言わざるを得ないだろう。