「ここか…」
家から歩くこと数分、目的の建物に着いた。建物は木造建築の二階建てで、屋根には瓦が使われている。やはり和だ。
「こんにちは~」
建物の引き戸を開け、挨拶しながら中に入る。
「おお、来たか。諒」
中には玄十郎さんと、もう一人男性がいた。
「生活の方は大丈夫か?」
「はい。みんな良い人で良くしてもらっています」
まあ、前途多難な部分もあるにはあるけど、それは伏せておこう。
「そうか。何かあったら遠慮なく相談してくれて構わないぞ」
「ありがとうございます」
「でだ。仕事の内容を説明する前に先に穂織の情報整備部の方を紹介する」
玄十郎さんよりも後ろにいたその人が、前に出てくる。
「初めまして。大矢俊樹と申します」
眼鏡を掛け、髪は短めだがパーマがかかっている。体は細身で、背が高い。とても優しそうな人だ。
「こちらこそ初めまして、神谷諒です」
大矢さんと握手を交わす。
「他にも何人か僕の同僚がいるんだけど、それはその都度でよろしく」
「分かりました」
「それで、穂織に諒を呼んだ訳だが…最近外国からの観光客も増えてきていての。それで今は色んな所の環境を整備する必要があるのだ。店の回線も強いところ、弱いところとまちまちでな」
なるほどな。出先で急に通信遅くなったらイラつくからな…それは俺も経験がある。せめてお店に強度の強いwifiはいるな。
「でも、それだと元々の基地局か、提供事業者に依頼しないと、回線強度は上がりませんよ?」
「そうなんだよね。だから重要なところの回線強度を優先的に上げて、他は出来たらっていう感じになると思う。穂織は資金が潤沢とも言えないからね…」
大矢さんは少し目を伏せがちに言う。
こんなくらい周囲と隔絶していたら、自分たちの力でなんとかする必要は出てくる。おそらく穂織は、観光事業が主な収入源になっていて、温泉が特に有名だからそれを目玉にしているだろう。ただそれを永続できるかと言われれば、厳しいだろうな。お金は有限。だからこそ上手く使わないといけない。
「まあそこら辺はお昼でも食べながら考えようか。鞍馬さんと神谷君はどうされます?」
「わしはこの後やることがあるから、申し訳ないが遠慮させてもらう」
「俺はご一緒します」
そうして、俺と大矢さん、玄十郎さんに別れ、俺は大矢さんについていった。
「ここだよ」
「寿司屋…ですか」
大矢さんに連れてこられたのは寿司屋。さっきの事務所みたいな二階建てじゃなく、一階建ての平屋だ。
「寿司は嫌いかい?」
「いえ、好きなんですけど。なんか高そうなお店だなぁって」
寿司の値段が時価みたいなそういうお店のように見える。
「大丈夫だよ。結構リーズナブルでね、地元の人にも観光客の人にも人気なんだ。だからお金の方は気にしなくていいよ」
「そうなんですか。ありがとうございます」
ならたくさん食べようかな。…少しは遠慮するよ?何を食べようかなと考えつつ、寿司屋の扉を開け、中に入る。
「いらっしゃい!お、俊樹じゃないか!」
大将さんが声を掛ける。知り合いなのか?
「どうも。今日はもう一人いるんですけど」
「そっちの若いのか?」
今度は俺に視線が来る。
「神谷諒と言います。初めまして」
「俺はこの店の大将をやっている小林雅也だ!よろしく!」
坊主でかなりガタイが良い。威圧感あるなぁ…
「それで注文は何にする?」
「僕はいつもので」
「俺は…にぎりのセットで」
「はいよ!」
そう言うと、小林さんは寿司を作っていく。
「大矢さんは結構ここを利用してるんですか?」
「そうだね。いつもの仕事のお昼とか終わりとかに結構使うね」
「じゃあ常連ですか」
「まあ"いつもの"で通じるくらいだから」
少し笑いながら言う。なんかこういう"いつもの"で頼むのは少しあこがれるんだよな。なんか子供っぽいかもしれないけど。
「それで、今後なんだけど。さっき言った通り、優先度を決めて、やっていこうと思うんだ」
「優先度が高いのは、人が多く集まるところが比較的高いと思うんですけど」
俺が思うに、宿とか人気のお店はそれに該当すると思う。
「そうだね。だからそこは町のデータと照らし合わせながらやるかな。で、そこは事業者に依頼して、必要な道具は送ってもらう」
「今は置くだけでwifiが開通するのもありますしね」
それも昔と比べ回線速度も向上してる。
「種類はどうするんですか?新しくするのなら置くだけのとか、別途インターネット回線が必要なのもありませけど。それともルーターだけ変えますか?」
「それは場所にもよってくるかな。古いルーターだったら替えるだけで、結構変わると思うし」
「じゃあそこの調査をやらないとですね」
「今後はまずその調査からやろう。それで調査に基づいて、今後はやろう」
「分かりました」
今後のことが決まった。そして会話が一段落したとき
「へい、お待ち!」
寿司が届いた。まぐろや海老、サーモンや玉子などの定番のネタが乗っている。とても美味しそうだ。
「じゃあ食べようか」
「そうですね」
大矢さんに合わせ、いただきますを言う。まず、まぐろを食べよう。とても新鮮そうで、銀座の高級店の寿司のように見える。口に入れる。まぐろのほんのりとした甘みとシャリの酸味がよく合っていて、わさびがさらにそれを引き立てる。すごく美味しい。
「どうだい?兄さん」
「凄く美味しいです!高級店にも負けないくらい」
「へへ、そいつはよかった。さあ、どんどん食べていってくれよ!」
それを皮切りにどんどん食べていく。サーモン、海老、玉子、1つ1つを味わって食べていく。どれも新鮮でとても美味しい。あっという間に食べてしまった。
「あの、大矢さん。もう一皿頼んでもいいですかね?」
「ああ、いいよ。じゃんじゃん頼んでくれて」
「じゃあ、もう一皿お願いします」
「あいよ!」
手早く小林さんは寿司を作っていく。そして俺の前に出てくる。
「いただきます」
そしてまた食べていく。
「ごちそうさまでした」
寿司を食べきり、今はお茶を飲んでいる。
「どうだったかい?」
「このリーズナブルな値段で、あのクオリティは凄いです。また来たいです」
お世辞じゃなく本当だ。凄く美味しかったし、量も割とあったから、満足度は高い。
「じゃあお会計は僕が払うよ」
「え?いいですよ。自分の分くらい自分で払います」
そんなやりとりを何回も続けていたが、最後には押し切られてしまい、奢りというようになった。
「そういえば穂織はVRとかARはやらないんですか?」
「まあ、やりたいのは山々なんだけど、やっぱりそこの整備が難しくてね」
確かにVRをやるのであれば、まずアミュスフィアなどのデバイスを買って、WANで接続。そして脳に直接仮想の五感情報を与え、仮想の体を形作るため、それに耐えうるだけのサーバーが必要になる。そしてARであれば、ただショッピングや空間情報が欲しいのであれば特に整備する必要もないが、ゲーム…例えばOSをやろうとすると、他のことも必要になってくる。
「モバイルバッテリーみたいに持ち運び可能のがあればいいんだけどね」
「それは難しいですね…」
今のところそれらしきものは聞いたことがない。技術的にもかなり難しいだろうし。
「まあそれは今後に期待ってやつだね。ともかく各お店とかを調査するから、データを僕は確認しておく。それがまとまったら連絡するよ」
「分かりました。お願いします」
そして連絡先を交換し、俺も大矢さんもそこで別れ帰路に就いた。
原作にいなかったキャラは多々出てきますが、まあストーリー上名前があった方がいいということで、結構増やすかも。
次回もよければご覧ください。
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