「将臣、どうした?」
俺は状況を確認するために将臣に近づく。
「この人のお子さんが迷子になったって」
「迷子?このあたりでですか?」
向かいにいるお母さんと思われる女性に聞く。
「はい。ここに来るまで一緒に居たんですけど、途中で急に走り出してしまって」
「それではぐれたと…」
「そうなんです」
はぐれたか…この親は何をやっているんだ?小さい子供は好奇心の塊だ。目に映るもの全てに興味を示す。手を繋ぐなりしないと、そりゃはぐれるだろうな。
「お昼過ぎから境内に居ましたけど、小さい子供は見ていないですね」
「そうですか…イヌツキなんてところに連れてくるんじゃなかった」
小さく言ったその呟き。俺は聞き漏らすことなく聞こえ、少しだがイラっとした。自分の不手際の棚に上げ、環境のせいにしていることに。しかしそれを今言っても意味はないので、グッとこらえ、努めて冷静に切り返した。
「そんなものありませんから、ただ単に迷子になっているだけですよ」
「でも探したんですよ!?」
「不十分な可能性もありますし、お子さんと入れ違いになってる場合もあります。自分たちも手伝いますから、特徴を教えてください」
「いいんですか?」
「ええ、遅くなる前に見つけてあげないとまずいですし」
「警察には連絡しましたか?」
そう将臣が聞くと、女性は首を横に振った。
「すぐに見つかると思ったので連絡していないです。でも、連絡した方がいいですね」
「すぐに連絡してください。その間に探してみます」
警察に連絡してもらう前に名前と特徴を教えてもらい、写真ももらう。
「名前は龍成君。歳は5歳。髪は短めで、青いシャツとハーフパンツか」
「警察に任せた方が早いのではないか?」
「広範囲ならな。近辺だったり、ピンポイントで探すのなら自分たちで探した方が早い」
警察は人手がどうしても多くなり、細かいところを見落とす可能性がある。狭い範囲なら自分たちで探した方がいい。
「ムラサメちゃんも手伝ってくれるよな?」
「そりゃもちろん手伝うが、吾輩が見つけられても、ご主人か諒に伝えることしかできないぞ?」
「大丈夫。それで構わない」
「ならムラサメは俺たちが探せない、狭いところとか探してくれないか?好奇心に任せて隠れちゃったっていう可能性もあるかもしれないから」
子供は小さいから、考えつかないところに入り込んじゃうこともあるからな。
「じゃあ見つけたら、ここでまた合流か、大声を出してもらうってことでいいか?」
「それについては気にしなくてもよい。ご主人の場所はご主人の魂を通じて分かる。だから合流に関しては問題ない」
なんとも不思議なものだな。魂と直結してるってことなのか?
「俺監視されてる?」
「そういう訳ではない。あくまで”大体の居場所がわかる”だけだ。明確には分からぬ」
それでもかなり凄い力だ。何かあった時は頼りになりそうだ。
「それでもすれ違いの心配はない」
「なら合流方法は任せる。俺と諒は神社とその周辺を探してみる」
「了解」
「承知した」
そう言うと、ムラサメがその場からスーッと消えていった。
「現実離れしてるよな…」
「ほんとそうだな。まあ探そうぜ」
そうして、俺たちは神社とその周辺を探していった。
「将臣どうだった?」
「いや、いなかった」
あれから境内全体を探していたが、龍星君は見つからなかった。
「どうする?少し範囲広げるか?」
「そうだな。ムラサメは将臣の場所は分かるって言ってたから移動しても大丈夫だろ」
そうして俺たちは街の方へ向かっていった。
「やっぱりいないな…」
街もできるかぎりの範囲を探していたが、まったく見つかる気配がない。もう空もオレンジに染まってきている。
「神社に来るときに道に迷ったのかな?」
「うーん…待てよ?もしかして山に入ったっていう可能性はないか?」
「でも、一人で入るか?」
「可能性だけならあるだろ。男の子だぜ?冒険したいっていうのもあるかもしれない」
男の子はそういうのにかなり興味を示すからな。それに建実神社は少し高い位置にあって周りが山に囲まれている立地だからすぐに山に入れる。
「それなら早く見つけてあげないとまずいんじゃないのか?」
「まさしくその通りだ。急ごう」
そして今度は街から山へ移動していった。
「ここもか…」
山に移動して将臣と2人で歩きながら探しているが見つからない。もう空も暗くなってきている。
「かなり日が落ちてきたな…」
早く見つけてあげないとまずい。
「龍星くーん!」
将臣が思いっきり叫ぶ。しかし返事はなく、聞こえるのは風の音と葉が揺れ、こすれる音くらい。人の気配は全く感じられない。
「流石に山の中に入るのは考えすぎだったかな…」
いくら男の子と言っても勝手に一人で山に入ったりはしないか。
「戻ろうか」
「そうだな」
だいぶ暗くなってきていて、夜目が利かなくなってきている。この中で探すのは流石に危ない。来た道を戻ろうと向きを変えたときに
カサッ
「ん?」
後ろの茂みから音がした。龍星君が隠れているのか?
「龍星君?」
将臣が声を掛けるが返事はない。しかし
ガサ…ガサ…ガサと確実に何かがこっちに近づいてきている。
「龍星君じゃないとなると、何が来てる?」
人じゃないとなると、野生の動物か?ただそれにしては規則的に音がしすぎている。得体のしれない何かに少し恐怖する。
「…走るか?」
「いや、危なすぎる」
暗い山道を全力疾走したら、けがをする可能性もあるし、斜面を転げ下りれば最悪の可能性もある。
「来たっ…!?」
音がすぐ近くまで迫ってきている。そしてガサっと揺らしながら茂みからそれが出てくる。それは…生き物と形容できない、ただ泥を練り上げたような塊だった。しかしそれは少しずつ俺たちの方に寄って来る。
「将臣、少しづつ下がれ。いつでも逃げられるように」
将臣にそう伝える。俺の勘がこいつはやばいと言っている。ゆっくり下がっていると、パキッと乾いた音が響く。それを合図に
「ッ!?」
目の前を何かが通りすぎていった。これはまずい!
「走れ!」
そう叫び、一気に走る。あの攻撃には明確な殺意があった。どっと汗が吹き出る。呼吸が乱れる。しかし走るのは止めない。止めたら、その時に俺はどうなっているか分からない。その時、ゾクッとした感覚を覚える。直感に身を任せ、前に跳ぶ。俺が居た場所にさっきの触手のようなものが叩きつけられる。
「やばい…」
確実に俺を殺しに来ていた。その恐怖に足が竦み、動けなくなる。逃げなきゃと分かっているのに動けない。
「大丈夫か諒!?」
「いいから、早く逃げろ!」
2人同時は一番最悪だ。そう思い、なんとか将臣だけでも逃がそうとする。
「でも…」
「いいからっ!行けっつってんだよ!」
思いっきり叫ぶ。それを聞いた将臣は少し苦しい顔をしたが、すぐに走って行った。
「(これで将臣は大丈夫…俺は相変わらずやばいな…)」
冷静を装っているが、考えられたのはここまでで、他のことは考えられない。頭の中には逃げなきゃということだけで埋まっている。
「(くそっ!早く立てよ!)」
自分の体が動かせない。意思を込め、力を入れても、恐怖が体を縛り付け言うことを聞かない。しかしその時一瞬体が動かせた。ゆっくり立ち上がり、逃げようと足に力を込めた瞬間
「がっ!?」
脇腹を殴られた。俺の体が飛ぶ。飛んだ先は危険だと言っていた斜面方向。そのまま斜面を落ちていく。
「ぐ…あっ!」
肩や足を地面や木に打ち付けながら、落ちていく。そして徐々にスピードが落ちていく。完全に落ちきり、止まった。一番下に着いた。足に冷たい感覚を覚える。
「(川…か…?)」
冷たい感覚と、殴られた脇腹は焼けるような鈍い痛みが走り、足や肩は鋭い痛みが走る。
「(ああー…声が出ねぇ…)」
助けを呼ぼうにも痛みのせいで大きな声が出せない。幸いにもさっきの塊が追ってきてないから、すぐに命の心配はしなくていいだろう。だが、どうするか。俺はもう動けないし、将臣も恐らく山から下りただろう。
「(このまま…かな)」
ネガティブな方向に思考が走り出した瞬間。
「諒!」
山を下りたと思った将臣が来た。
「大丈夫か!?」
「大…丈夫…じゃ…ない」
将臣の問いに途切れ途切れになりながら答える。
「くそっ!ムラサメちゃん!」
将臣が呼ぶと、どこからともなくムラサメが現れた。
「どうしたご主人?…って諒!?何があった!?」
俺の今の姿を見て、ムラサメは驚き、詰め寄ってくる。
「ちょっとな…」
「ちょっとどころじゃないだろう!?」
おっしゃる通りである。正直大事故レベルだ。
「諒動けるか?」
「…無理」
「くそ。ムラサメちゃん誰か助けを呼んでくれ!」
「分かった!」
そう言うとムラサメはまたその場から消え、どこかに行った。
「すぐ呼んできてくれるからそれまで耐えろよ!」
「あー…すまん。無理だ…あとは頼ん…だ」
そこで俺は意識を手放した。
ここら辺から結構ストーリー組むのが難しくなってきますね。原作主人公とオリ主をうまく噛み合わせないとなので、まあがんばります。
次回もよければご覧ください。
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