潰えた守り人   作:スタビ

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ここから原作突入です
では、どうぞ


その1 新たな船出

「よし、準備OK」

 

仕事の依頼を受けた日から数日が経ち、今日は出発の日だ。いよいよ穂織に向かう。

 

「タクシー拾わなきゃか、めんどくせ」

 

菊岡から聞いたのだが、穂織は電車やバスなどの公共機関が通っていないため、最寄り駅まで行き、そこからはタクシーを使うしかないらしい。かなり不便な土地だ。

 

「まあしゃあないか。行ってきます」

 

ドアを開け、外に踏み出した。

 

 

──────────────

 

「ふうー…ここからはタクシーか」

 

無事最寄り駅まで着き、タクシーに乗り換える。そのためタクシー乗り場へ行く。そこで少し待っていると。

 

「あの…」

「ん?」

 

声をかけられそっちを見ると、そこには1人の男性が立っていた。

 

「どうかしましたか?」

「タクシー使うんですか?」

「そうですけど…」

 

そりゃタクシー乗り場にいたら使うだろうよ。

 

「行先はどこですか?」

「穂織ですけど」

「自分も一緒なんです!よければ一緒にいいですか?この時間あんまり本数無くて」

 

困ったような顔をしながらそう聞いてくる。

 

「ああ、いいですよ」

「ありがとうございます!」

 

お辞儀をしながら、礼を言ってくる。随分大げさだな。

 

「俺、有地将臣って言います」

「俺は神谷諒。よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします」

 

お互いに挨拶を交わす。

 

「俺のことは諒でいいですよ。敬語もいらないですし」

「じゃあ俺は将臣で。敬語じゃなくていいよ。見た目は同年代くらいだし」

 

そういう将臣は俺と同じくらいの背丈だ。

 

「諒は何のようで穂織に行くんだ?」

「俺は仕事を頼まれてね」

「あー、だから割と大荷物なのか」

 

俺は服が入ってるスーツケースに加えて、パソコンとかの仕事道具が入ってるバックもあって、結構大荷物になっている。

 

「将臣は随分と荷物が少ないな。観光目的か?」

 

将臣は肩から下げるバックが1つと俺と比べるとかなり荷物が少ない。

 

「いや、向こうにある旅館の手伝いで行くんだ。そこまで期間は長くないからこのくらいで十分かなって」

 

なるほど。それならその荷物の量でも足りる。

 

「大丈夫だろ。俺は結構長くいるからこのくらいになっちゃったけどな」

「どのくらいいるんだ?」

「半年くらいかな。その都度変わるかもしれないけど」

「結構長いんだな…」

 

そこから少し世間話をしていると、やっとタクシーが来た。

 

「お待たせしました」

「お願いします」

「お客さんどこまで?」

「穂織までお願いします」

 

運転手に行先を伝え、タクシーに乗る。そのときルームミラーで見えたが一瞬運転手が嫌な顔をしているのを俺は見逃さなかった。

 

 

──────────────

 

「お客さん着きましたよ」

「あ、はい。おい、将臣起きろ」

「んあ?ああ…」

 

隣で寝ていた将臣を起こす。

 

「どこで止めますか?」

「どこで止める?」

「とりあえず志那津荘まで行ってほしいんですけど」

 

将臣が目的地を伝える。なんだ、俺と同じなのか。

 

「あー…すみません。自分ここら辺に詳しくないもので。ですから、奥の方まで行くのは勘弁してもらえませんか?」

「(なんとも、まあ…サービスが悪い)」

 

そう考えていると、それが顔に出ていたのか、運転手が言葉を続ける。

 

「すみませんね」

「…じゃあここでいいです。いいよな諒?」

「ああ、しょうがない」

 

そこでタクシーが止まり、清算を済ませ、俺と将臣はタクシーを降りる。

 

「まったく、イヌツキの土地に来るなんて、不心得者も増えたもんだよ」

 

降りるときに聞こえてきた呟き。菊岡の言う通りこの地は忌み嫌われている。ただ俺は嚙みつく気はなかったので、それをそのまま無視した。

 

 

「まだ距離があるけど、仕方ない少し歩こう。そういえば諒はどこに行くんだ?」

「俺は将臣と同じ、志那津荘だよ」

「そうか、じゃあ一緒か」

 

息を吐き、ずっと座って固まった体を伸ばしたりしながらほぐす。

 

「あ──!つっかれたー!」

「声がでかいわ」

 

まあそうなるのも無理はないか。電車だけで2時間。タクシーで30分。将臣も同じくらいかかっているだろう。青々とした木ばかりの代わり映えしない風景の峠を抜け、やっとたどり着いた穂織。

 

「噂通り不便なところだな、ここ」

 

公共交通機関は入っておらず、あったとしてもバスが1時間に一本。タクシーか自分の車が必要になる。ただそのタクシーもさっきのように煙たがられること必至だ。こんなにアクセスが悪い割には、賑わいのある町だ。周りにも観光客らしき人が何人もいる。ここまで人気なのは、いくつか理由がある。

まず、小京都とも呼ばれる街並みは日本古来の和の雰囲気を残している。いままで通ってきた山からは想像が出来ないほど綺麗な町になっている。

そしてもう1つの理由は温泉だ。なんでも、どんな病気でも治ったり、入ればお肌ツルツルなど様々な効能があるようだ。それらが今日のネット世界で口コミなどで広がり、国内外の観光客がたくさん入ってきているようだ。

 

「まあ、行こうぜ」

「そうだな」

 

こんなところで立ち尽くしていてもしょうがない。目的地に向かって歩き出そうとした瞬間。

 

「じー…」

 

誰かに見られている視線を感じた。そっちに目を向けると女性がこっちを見ていた。

 

「あのー…」

「はい?」

 

その人は将臣に声を掛けた。

 

「もしかして、まー坊?」

「え?…芦花姉?」

 

芦花姉と呼ばれた女性は将臣の言葉を聞くと、明るい笑顔を浮かべた。

 

「随分とお久しぶりだね」

「元気にしてた?」

「元気、元気。あれ?まー坊こっちの人は?友達?」

 

ここで俺に振ってくる。

 

「駅で偶然会って、穂織に行くっていうから一緒に来たんだ」

「へえー、私は馬庭芦花。よろしくね」

「神谷諒っていいます。よろしくお願いします」

 

しっかりとお辞儀をし、挨拶をする。

 

「敬語じゃなくて大丈夫だからね」

「わかった」

 

敬語は疲れるから、ありがたい。

 

「まー坊は久しぶりだね。最後に来たのはいつだっけ?」

「多分…4年ぶりくらい?」

「そっか、もうそのくらいになるんだ」

 

2人とも久しぶりの再会を懐かしんでいる。

 

「将臣、前にも来たことあったのか?」

「ああ、まだ子供の時に母さんによく連れられて穂織に来たんだよ」

 

初めてっていう訳ではなかったのか。

 

「しかし、まー坊背が伸びたね。私が見上げなきゃいけなくなる日が来るなんてね」

「去年くらいかな。一気に背が伸びたんだよ」

 

将臣の背は日本人男性の平均身長よりも少し大きいくらいだと思う。

 

「そっか…4年もあればここまで大きくなるか…」

「芦花姉は…もしかして縮んだ?」

 

煽りを含んだ言葉を掛ける。

 

「おやまあ!生意気な子に育っちゃって、この」

 

芦花さんは将臣の頭を軽くぺしっと叩く。

 

「頭を叩くのもギリギリかあ…身体もがっしりしてるし、男らしくなったねえ」

 

将臣は照れたような笑いをしている。

 

「諒くんはなんで穂織に?」

「俺は仕事で」

「仕事?」

 

機密事項も入っているから、全部は言えない。

 

「ああ、ネットワーク関連のね」

「へえー…そこら辺は私も分からないかなぁ」

 

やっぱり、穂織はそこら辺が乏しいようだ。芦花さんの反応だけじゃ断言できないが、その可能性は高いと言える。

 

「2人はこの後はどうするの?」

「とりあえず、志那津荘かな?流石に荷物も置きたいもんな」

「ああ、流石に疲れる」

 

将臣はともかく俺は荷物が多いからさっさと部屋に置きに行きたい。

 

「じゃあ一緒に行こうよ。まだ話したいこともあるし」

「俺は構わないよ。諒は?」

「俺も別にいいけど、芦花さん時間は大丈夫なのか?」

「平気だよ。じゃあ行こ」

 

そうして俺たちは町の中へと歩き始めた。




こっちの方がサクサク書けるのはなんでだろうか…
今後も気まぐれで更新していきます。
次回もよければどうぞ

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