潰えた守り人   作:スタビ

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えー…お久しぶりでございます。前回の話からは約1か月。活動報告から数えれば約3週間とめちゃめちゃ間が空いてしまいました。ここ数話は謝罪と言い訳フェイズが必ず入ってる気がするんですがね…まあ言い訳は後書きの方に回すとして
それではその20、どうぞ


その20 2つのアドバイス

「ただいまー」

「戻ったぞ」

「おかえりなさい」

 

学校から家に帰ってき、常陸さんに迎えられた。

 

「身体の方は大丈夫でしたか?」

「うん、問題ないって」

「よかった…あ、あの精神面の方って何をやったんですか?」

「…軽いカウンセリングみたいなものかな。別に重いものじゃないから大丈夫」

 

本当は重いものなんだけど、あまり言うことでもないからな…説明した方がいいのかもしれないけど秘密にしておきたい。

 

「そうですか…」

「そういえば、将臣と朝武さんは?」

 

何か言いたそうな常陸さんをスルーして、話題を変える。

 

「有地さんは玄十郎さんのところに、芳乃様は舞の練習をしています」

「将臣は玄十郎さんのところ?何しに行ってるんだ?」

「それはわからないです。私も玄十郎さんのところに行ってくると言われただけなので」

 

うーん…何でだろうな?考えても特に思い当たるようなことはない。

 

「…まあいっか。朝武さんは舞の練習だっけ、それって毎日やってるのか?」

「病気の時は流石に休まれますが、それ以外は毎日ですね」

 

毎日…か。それは凄いな。もし俺も何か毎日ずっと続けているものがあったら、少しくらいは嫌になりそうだけど、朝武さんは

 

「…辛いとか思ったことないのか?」

「多分ないであろうな。芳乃のあの性格上」

「ですねぇ。神谷さんもご存じの通り、意地っ張りですから。それに芳乃様は小さい時からずっとやってきたので、もう体にしみこんでいるというか、生活の一部になっているのだと思います」

「なるほどね…」

 

なかなか大変なんだな、巫女っていうのも。普段から肩肘張ってる感じだ。その苦労とかは俺には想像できないなぁ…

 

「じゃあ俺はやることやるんで、何かあったら呼んで」

「仕事ですか?」

「いや、仕事とは違うんだ。前の学校の教授に頼まれたのがあってね」

 

前、川井教授に頼まれていたVR空間の構築がまだ終わっていない。というかあんまり手をつけられていない。時間は一応まだあるにしろ早く終わらせたい。

 

「わかりました。それなら夕飯の用意が出来たら呼びに行きますね」

「ありがとう、助かるよ」

 

それじゃ、と言いその場を後にし、自分の部屋に戻る。ただムラサメはそのままついてきている。

 

「何でついてきてるんだ?」

「ご主人もいないから暇なのじゃ。それに諒の仕事も気になるからな」

「別に面白いものでもないぞ?」

「吾輩が気になるだけだから気にしないでやってくれ」

 

そうは言われても後ろで浮かばれていて気にならない方が無理な話だと思うけど…まあいいか。

 

「わかった」

 

俺は手早く必要な機器の準備をする。一通り準備をしたらパソコンを立ち上げ、ソフトを開く。前回保存したところで止まっており、今日はこの続きからやる。とりあえず何追加するかな…軽い町みたいなの作ってみるかな。

 

「なら…」

 

手早くプログラムを組んでいく。正直建物の中に何か追加するのはめんどうだから、ハリボテでもいいかな…でも何軒かはしっかり作って見よ。カタカタとキーボードを叩き、必要な情報を打ち込んでいく。

 

「諒、それは何をやっているのだ?」

 

後ろにいたムラサメに声を掛けられる。

 

「ん?ああ、これ?VRの構築をしてるんだよ」

「ぶいあーる?」

 

この反応は知らないか、まあそりゃそうか。

 

「VRっていうのは正式名称がバーチャル・リアリティ。日本語にすると仮想現実っていう意味になるんだ」

「仮想現実?」

「ああ、難しい言葉で言っちゃうと、表面的には現実ではないが、本質的には現実。つまりは現実に限りなく近い世界ってことだな。で、まあそれは少し前から開発されてきてて、最初はゴーグルみたいな形で頭から被ってやってたんだ」

 

名前が確か…P○VRだっけか。

 

「そこからどんどん開発は進んで、今だと同じゴーグルのような形ではあるんだけど中身が違うんだ」

「どんな風にだ?」

「完全なフルダイブを実現したんだ」

「…どういうことなのだ?」

 

やっぱりそういうところには疎いか。

 

「今までのだとやるとき人は起きてる状態でやってたんだけど、フルダイブだと人は寝てる状態で意識をその空間に飛ばしてやるんだ。少し難しい話にはなるんだけど、その機械”ナーヴギア”とか”アミュスフィア”は使用者の脳そのものと直接接続するんだ。使用者の脳から発生させられる、歩く・走る・掴むとかの動きの電気信号、人間の五感の電気信号を機械がキャッチして、現実世界とは別の、全てがデジタルで構成された別世界に送る。そこでプレイヤーは仮想の体を持ち、操っていくんだ」

 

流石に話が難しすぎたかなと思い、ムラサメの方を見ると、予想通りポカンとした顔をしている。

 

「まあ要はゲームの中に入れるとでも思っておけばいいよ。それで今俺はそれに対応するVR空間の構築を、前の学校の教授に頼まれたからやってるんだ」

「…難しいことはよく分からんが、なるほどな。それでこれはいつまでに完成させるんだ?」

「早いに越したことはないんだけど…まだ少し時間がかかるかな。ちょっとアイデアに詰まったりしてるから」

 

前回からアイデアに詰まり気味になってしまっている。なかなかテーマの”和”に合うのが思い浮かばない。

 

「なら吾輩も少し手伝うぞ。どんなのがいいんだ?」

「テーマは”和”なんだけど…何かあるか?」

「和か…なら昔の城下町のようにしてみるのはどうだ?家とか城、川とか」

「なるほどね、けど川か…」

「何か悪いのか?」

 

少し考え込む俺にムラサメは少し心配そうに声を掛けてくる。

 

「液体を表現するの凄い難しいし、めんどうくさいんだよね。まあそういうテクスチャ使えば少しは楽になるけど」

「むむ…ならしない方がいいのか…」

「出来ないことはないからやってみるよ。その案はいいアイデアだし」

 

大きな枠組みを決めればその後は作業がやりやすくなる。

 

「なら町みたいにしないとな…」

 

町というと必要なのは家とかお店とかの建物、道、あと道のわきにあるような針葉樹とか桜とかの木か。それで川は…左右を分けるように真ん中に配置して、それなら橋も作らないとか。そんな感じで何を追加するなど色々考えながらプログラムを組んだり、オブジェクトを配置していく。ソースコードに目をやりながら打ち込んでいると、ソースコードが何段にもなりかなり複雑化してきている。まあそれはしょうがない。いくら効率化しても長くなるものは長くなる。川のプログラムはとりあえず町が完成してからにするとして、どんどん作っていかないと。

 

「これはまだ時間かかりそうだな…」

 

良いアイデアが貰えた半面、なかなか時間がかかりそうで面倒くさい。そんな気持ちを入れながら小さく呟く。そんなときに部屋の扉がガラガラっと開いた。そっちに目を向けると朝武さんがいた。

 

「神谷さん、夕ご飯が出来ましたよ」

「わかった。すぐ行く」

 

今まで作業していたデータを保存してからパソコンを閉じ、立ち上がる。そしてリビングに向かっていった。

 

 

 

 

 

「神谷さん、前の学校の教授に頼まれてたことって何だったんですか?」

 

夕飯を食べている最中、常陸さんからそう聞かれる。

 

「そういえば言ってなかったな。プライベートVRの構築だよ」

「プライベートVR…ですか?」

 

今度は朝武さんにそう聞かれる。

 

「VRはわかる?」

「一応…知識程度ですが」

「将臣は恐らく馴染みがあるとして…常陸さんと安晴さんはどうですか?」

「私も芳乃様と同じくらいですね」

「僕は名前だけかな」

 

一応知ってはいるのか、なら説明はいらないか。

 

「前の学校自体がインターネットとか情報システムとかを専門にやれる学校で、その中のゼミの1つにVRを専門にしてるのがあったんだ。そのゼミでVR空間を作ってきなさいってのが課題として出るんだ」

「でも学生で作れるもんなのか?俺も興味はあったけど、難しそうでやめたんだけど」

「ちゃんとしたプログラムの知識とか、色んな知識はいるけど、前よりは作りやすくはなってるぞ。ザ・シードが流通したことで基礎プログラムは元々組まれてる状態だからな」

 

ザ・シードによる恩恵は俺もかなり受けている。本当に以前に比べて格段に作りやすくなっている。

 

「けど色々追加したりすればするほど複雑化していくのには変わりないけどな。俺の作ってるやつも効率化はしようとしてるけど、ソースコードが何段にもなってて凄い複雑になってるんだよな」

「うわぁ…やっぱり俺には無理そうだな」

「勉強すれば誰でも出来るようになるよ」

 

どれをやるかによって習得難易度は違うけどな。時間かかるやつはめっちゃかかるし、簡単な奴はすぐに習得できる。本当にまちまちなんだよな。

 

「そういうもんか…」

「そういうもんだよ」

 

将臣はまだ不満そうだが、それ以上は聞いてこなかった。

 

「そういえば、将臣は何しに行ってたんだよ」

「何しに…って?」

「常陸さんに聞いたけど玄十郎さんのところに行ってたみたいじゃん。目的もなく行くわけじゃないだろう?」

 

俺がそう聞くと、将臣は俺から目線を外した。その目は泳いでいる。

 

「あー…いやー…なんというか」

「そんなに言いにくいことなんですか?」

「言いにくくはないというか、なんというか…」

「煮え切らないですね」

 

将臣の答えに朝武さんがほんのちょっとだけイライラする。まあ、俺はそこまで深入りするつもりはない。

 

「…言えないのであれば話さなくていいや。別に詮索する気はあまりないし」

「そうしてくれると助かる」

 

将臣もそう言ってることだし俺はその話はそのままスルーした。そうしてその後は特に他愛のない話をし、夕飯を食べ進めていった。

 

 

 

 

 

「…よし、続きをやらないとな」

 

夕飯も食べ終わり、満足した中で部屋に戻る廊下を歩いていた。とりあえず部屋に戻ったらVRの続きを進めないと、期限に間に合わなくなる。頼まれてやってることだから期限に遅れるようなことはないようにしないと。

 

「あ、諒」

 

そんなことを考えながら歩いていたら向かい側から将臣が来た。

 

「どうした?」

「さっきの…」

 

さっき…というと夕飯のときのことか?

 

「俺はあの時渋ってたけど、やっぱり一人くらいには説明した方がいいかと思って」

「そんなに大事なのか?」

「一応…俺だけじゃなくて周りの人にも関係があることだし…」

 

玄十郎さんのところに行ったのが周りにも関係する…か…おそらくだけど

 

「それって祟り神に関連してか?」

 

俺がそう指摘すると将臣は目を見開いた。

 

「…よくわかったな」

「そりゃわかるわ。将臣は学院でも何かをやってるわけでもないし、玄十郎さんに頼み込むなんてよっぽどのことだろうとは思ったからな」

 

それに将臣は朝武さんや常陸さんと祟り神の退治に行って帰ってきたときにどこか少し思い詰めているような雰囲気を出していおり、自分でも何か考えていたのだろう。その考えに基づいて何故かはわからないが玄十郎さんを頼ったのだと俺は思っている。

 

「で、正確にはなんでなんだ?」

「今まで何回か祟り神の退治に俺もついていってるんだけど、俺は叢雨丸の使い手になっても戦力になれてないしむしろ2人に守られててお荷物になってる気がするんだ」

「でも朝武さんと常陸さんの2人は将臣よりも長く戦ってきてるんだぞ?最近来たばっかりの将臣が力になりにくいっていうのも無理はないと思うんだが…」

「それでも男の俺が女の子に守られてるっていうのはなんというか、情けないというか…」

 

なるほどね…つまりそれは

 

「俺が2人を守りたいし、情けない姿を見せたくない。要は見栄を張りたいってことだろ?」

「っ…悪いかよ」

「別に悪くはないと思うぞ。俺も将臣と同じような状況になったらそういう風には考えると思うし、見栄を張りたいっていうのも立派な原動力だからな」

 

男の原動力というのは元来単純なものだ。そんなことで?というものが案外男にとっては大事だったりする。

 

「それで将臣の腕前が上がれば2人の負担も軽くなってくるから万々歳だろ」

「そうなってくれればいいんだけどね…なかなかきつくて…」

「あー…」

 

確かに、そんな気はする。神社で見ただけだけど着物を着こなし、シャキッとした佇まいで、その目は威圧感が半端なかった。

 

「なんか厳格って言葉が似合いそうな人だもんな」

「ほんとそれなんだよな…年も結構行ってるはずなのに」

「ここじゃ案外お年寄りの方が強いのかもな」

 

笑いながら冗談めかして言う。流石にお年寄りの全員がそうじゃないとは思うけどな。

 

「流石に若い奴の方がだろ」

「そうだな」

「まあ…死なない程度に頑張れよ」

「そうする…でもお祖父ちゃんの特訓はマジで死にかけん」

 

将臣は特訓を思い出したのか顔が青くなり少し身震いしている。

 

「そう言ってるうちは大丈夫そうだな」

「マジできついんだって!お祖父ちゃん剣道の師範代持っててすげえ強いんだから」

「へえー…そりゃ凄いな」

「諒も今度来てみるか?」

「いや遠慮しとくよ。剣道なんてほとんど経験ないから」

 

体育で約4時間分くらいしかやったことないから素人に毛が生えた程度だ。

 

「2人に良いところみせられるようにならなきゃな」

「別にそれが目的じゃないんだけど…しっかりやるよ」

「おう。それじゃ部屋に戻るよ、まだVRが完成してないからな…あ」

「?どうした」

 

戻ろうとしていて将臣と逆を向いていた体を将臣の方に向き直す。

 

「1つアドバイスだ」

 

俺の経験則から言えるあることを言う。

 

「どんな動作にも必ず”起こり”がある。相手を観察し全てを見通せ。そしてどんな状況でも視野を広く、頭を冷静にな」

「…え?」

 

突然俺に言われ将臣は呆けている。俺は呆けている将臣をしり目に自分の部屋に戻っていった。

 

 

 

 

「…さっきのアドバイスの意味をしっかり汲み取ってくれてるといいけど」

 

部屋でVRの構築をしながら呟く。自分の経験から出たアドバイスだけどかなり有用なんじゃないかと思っている。スポーツとか、ただの日常生活とかの行動でもよく観察していれば、癖や動きを見抜くことが出来る。それが祟り神で、将臣たちを攻撃をしようとするのであればそれ相応の予備動作が必要になってくる。俺が攻撃を受けた触手の長さはそこそこ長かったからかなり大きな予備動作をしていた。それを見逃さなければ回避も反撃も出来るというわけだ。そして冷静に。頭に血が上りすぎると視野が狭まるし、正常な判断が出来なくなってしまう。命の危険と常に隣り合わせの状況では冷静さを失えば、待っているのは”死”だと言っても過言ではない。

 

「生存率を上げるための鉄則だからな…」

 

あの世界で俺だけじゃなく周りも常に意識し、実践したことだ。命というのはどんなことでも、どんな場面でも愛おしい。命は決して軽くない。それを絶対に見失ってはいけない。

 

「ちょっとでも将臣の中でプラスに働けばいいな…」

 

そう呟き、それまでの思考を切り替え、VR制作に取り組んでいった。




それでは言い訳をさせてください。活動報告で夏休みが始まったが筆が進んでいないので少々お待ちを、としたのですがその後、えげつないほどモチベが落ちましてハーメルン自体を2週間くらい開かなかったです。その後他の方の小説はまた読み始めたのですが、自分の方の小説は全然進まず。バイトも始めたので私生活も忙しくなり、やっと筆が進みだしたのは4日ほど前で、かなり間隔が空いてしまい待ってくださった方がいらっしゃれば申し訳ないです…
今後なんですが、1週間ごとのように明確に日にちを決めず、不定期更新で行こうと思います。そして失踪は絶対せずに最低でも1か月に1話は出したいと思います。もちろんそれ以上投稿できるように努力はします。
では次回、いつになるかはわかりませんが、是非ご覧ください。
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