その3どうぞ
宿から歩くこと数分。目的地である建実神社に着いた。
「ここか…」
規模的にはまあまあ大きく、境内には人、人、人。どこを見てもたくさんの人がいて、各々カメラやスマホをある場所に向けている。
「今、ちょうど巫女姫様が舞を奉納しているみたいだね」
「へえー…でも人がいて見えづらそうだな」
背丈の高い外国人もいて、場所によっては完全に見えなくなりそうだ。
「芦花姉、祖父ちゃんはどこに?」
「将臣も見ないのか?舞の奉納」
「そうだよ、興味なさげにしないで、観光のお客さんにも人気なくらい評判がいいんだよ」
そう芦花さんに言われた将臣は舞がやっている方向に目を向ける。俺も人と人の間に切れ目が生まれたので、そこから覗き込むようにして見た。
「…」
第一印象は綺麗だった。舞をしているのは俺と同じくらいの歳の女性だろうか。白を基調とし、肩に薄いピンク色が入っている巫女装束に身を包み、右手に鍔に鈴の付いた短剣を持ち、掲げている。舞の一動作に合わせ、巫女装束に袖は翻り、雪のように綺麗な白髪は広がり、なびいていく。その全てに俺は目を奪われていた。
「…」
それは隣の将臣も同じようで、さっきまで興味なさげだった奴とは思えないくらい真剣に見つめている。しかし、本当に綺麗だ。目を一時たりとも離せない。もっとよく見たいと思い、少し体を動かしていると
「…え?」
巫女さんの頭に何かが生えた。そこで目を凝らしてよく見ると、さながらALOのケットシーのような耳が生えていた。
「あ…え?」
見間違いかと思い、一度視線を外してから、また見ると今度は消えていた。
「?…?」
頭の中に?ばかり浮かぶ。
「なあ諒…」
「もしかして…将臣も見えたか?耳みたいなやつ…」
俺がそう将臣に尋ねると、将臣は首を縦に振った。超常現象の現場に立ち会ったみたいでかなり気持ち悪い。
「2人ともどうしたの?」
「いや…なんでもない」
芦花さんは見えなかったのだろうか。特に気にした様子もない。周りの観光客も目を奪われているくらいで誰一人として気にしてる風もない。
「(俺の見間違いか…?)」
疲れているのかな…そうだよな。ゲームの中ならともかく、現実世界で人間の頭に耳が生えてくるわけがない…宿に戻ったらしっかり休も。
「2人ともどうだった?」
「凄い綺麗だった」
「そうだな。最初から見たかったよ」
「舞は春祭りだけじゃなくて、他の時にもあるから、機会はいくらでもあるよ」
それならよかった。
「じゃあまー坊、玄十郎さんのところに行く?」
「うん、そうだね」
「俺も行った方がいいのか?」
玄十郎さんとやらを俺は知らないし、会ったこともない。
「いいんじゃない?結局一緒の宿に戻るんだし」
「そっか。じゃあ一緒に行くわ」
2人は境内の少し奥の方に行く。俺はそれについていく。
「ここら辺にいると思うんだけど…あっ、廉太郎!小春!」
芦花さんが少し先にいる。ある2人を呼ぶ。
「ん?なんだ芦花姉?」
「どうしたの?お姉ちゃん」
呼ばれた2人がこっちに振り返る。
「あれ、お前…将臣か?」
2人のうち、将臣と同じくらいの背の男性がそう聞く。
「本当だ!お兄ちゃん!」
もう1人の女の子の方が声を上げる。
「久しぶり、2人とも」
「本当に久しぶりだな!最近顔を見せなかったのに珍しいな」
「祖父ちゃんの宿の手伝いでさ。母さんにあんた行ってきなさいって言われてな」
「お兄ちゃん最近来てなかったもんね」
3人はどうも旧知の仲のようだ。会話内容から大体察することが出来る。
「なあ将臣。そっちの人は?」
俺に視線が集まる。
「駅で会ったんだ。神谷諒。俺と同い年だよ」
「神谷諒だ。よろしく」
初対面である2人に挨拶をする。
「将臣と同い年なら俺とも一緒か。よろしくな。俺、鞍馬廉太郎」
「私、鞍馬小春って言います。初めまして」
「2人は兄弟で、俺の従妹なんだ」
「そうだったのか」
なるほど、だからそんなに仲が良いのか。
「あのさ、玄十郎さんはどこにいるか分かる?」
「祖父ちゃんなら今中だよ」
「例のイベントが行われているから」
「あー、例の」
3人で、俺には何のことか分からないことを話している。
「例のって?」
「伝説の勇者イベント」
「何だそれ?」
昔のRPGとかであった岩とか台座に剣が刺さってるあれか?
「この建実神社にある御神刀だよ。まー坊だったら話くらいは聞いたことあるんじゃない?」
「うん、話は知ってるけど、実際には見たことないな」
「まあ百聞は一見に如かずとも言うし、実際に見てみようか。ついでに玄十郎さんのところにも行こっか」
芦花さんの先導の元、その伝説の勇者イベントがやってる建物まで移動することにした。
今後この「潰えた守り人」をメインにしようかなと考えております。もう一個の方がほんとに進まなくてですね…
次回もよければどうぞ
ヒロインはどうしましょう?
-
1人に絞って
-
個別√方式で