Nodding anemone   作:不思議ちゃん

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生きてます。


七十六輪目

 ふっ、と力を抜いた樋之口さんは俺の上から退くや、一人分の間を開けて座り直した。

 ほんと、こういった距離感上手いのにどうして今まで失敗してきたのだろう。

 

「私の家について、どこまで知ってるのかしら?」

「え? あー、なんか凄いってのは」

「……世の中が男女比1:4の出生率に対して、うちの血筋は男女関係なく1:3の比率を維持してるのよ。それを元手に色々と手を出して今の地位を築いたってわけ」

「そうなんだ」

 

 なるほどなるほど。

 それは確かに凄いんだろうな、うん。

 

 今更ながら『樋之口 功績』とか『偉業』で適当に検索でもしてみれば良かったかなと。

 知らなくても世の中なんとか生きていけるが、あまりにも無知過ぎるのは罪である。

 

 ……とはいえ、何をどう調べればいいのかもよく分からないが。

 

「あんまりよく分かって無さそうだけれど、まあいいわ。何が言いたいのか簡単に纏めると、今の地位を落としたく無いから面倒なのよ」

「ああ、それならよく分かるかも。得たものに執着する権力者は創作なら鉄板だからね」

 

 こいつ、みたいな顔で見てくるが勘弁してほしい。

 普段関わることのないものって知ろうと思わないのだから。

 

「つまりあのお願い事って、決められた相手と繋がるのが嫌だったからってこと?」

「そんな感じよ。私は今の活動のおかげで免除されてたわけ。その間にいい相手が見つかれば良かったのだけど、上手くいかなかったわ」

「上手くいかなかったの、家が邪魔していたりしてね」

「……まあ、あり得ない話じゃないわね」

 

 思い当たる節があるような素振りをする樋之口さんを見て、これからお世話になる予定である家の面倒臭さを考えて帰りたくなっていた。

 

 

 

 あれから三十分ほどで目的地へと辿り着いた。

 ここは樋之口家が経営している旅館の一つだとかなんとか。

 

「ようこそいらっしゃいました」

「あ、どうも」

 

 旅館の出入り口目の前に横付けされた車から降り、たぶん女将さんらしき人が挨拶してくれたのだろうけど。

 軽く頭を下げるだけで済ませて申し訳ないが、持ってきた荷物を下ろすためトランクへと向かう。

 

 大した荷物でもないしさっさと取って改めて挨拶しないと、なんて思っていたが。

 すでに従業員の方が下ろし始めていて、部屋まで運んでおくのでと言われてしまった。

 

「おかえりなさい、冬華さん。面白い方を連れてきましたね」

「……ただいま帰りました。お母様」

 

 お高い旅館はそういうものだったなと、改めてスルーしてしまった女将さんに挨拶しようと思い戻れば。

 どうやら"冬華"の母親だったようで、とんだ失礼をかましてしまった。

 

「先ほどはすみません。お世話になる桜優です」

「これはご丁寧に。冬華の母です。すぐ出なくてはいけないので挨拶だけでごめんなさいね。どうぞゆっくりしていってください」

 

 最後に何やら意味ありげな目を向けられたけれど、特に嫌な感じはしなかった。

 この人は多分、良い人だろう。

 ……この手の勘の勝率は半々ぐらいだけど。

 

 取り敢えず部屋まで案内してもらったはいいものの、どうやら冬華と同じ部屋らしい。

 なんとなくそんな気はしていたし、今となっては多少都合がいいと思うけど……夏月さんたちはなんて言うやら。

 

「それで、どうしたのさ」

 

 部屋について荷物を置いた後にすることといえば、部屋の探索しかない。

 襖などを片っ端から開けていき、何があるかの確認をしながらも、先ほどから大人しくなった冬華へと声をかける。

 

「わざわざ優と顔を合わせるためだけに来た理由が分からないのよ」

「そんなに……?」

「いや、悪かったわね。気にするのは私だけで大丈夫よ」

「冬華がいいんならいいけど、ノンビリしにきたんだから面倒なこと考えるのやめない?」

「…………そうね」

 

 難しい顔をしていたが、ふっと息を吐いて力を抜いていた。

 自分だったら少し引きずるが、勝手なイメージだけどメンタル切り替えの早さは流石と言うべきなのか。

 

「お昼食べて、涼しくなったら海辺でも散歩しよっか。近くにプライベートビーチがあるから」

「うん。楽しみにしてる」




色々と書き足したい、書き直したい部分が自分の中で目立ってきました。
主人公がこの世界に来たきっかけ的な物。
織が出てきた所の描写。
キャラ、季節の順番で会わせたのはいいけど、季節(作中内時期)も合わせればよかった。
他にも色々と書き加えたいなと。
取り敢えず、このまま完結させます。
直すかはまたそのあとで考えましょう。
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